TRAILS REPORT

パックラフト・アディクト | #04 夏の桂川でシェア・ザ・リバー

2018.08.01
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文:根津貴央 構成・写真:TRAILS

夏本番!特に今年は半端ない暑さがつづいていて、もう夏バテだ!なんて人もいるかもしれない。そんな時こそ、都会のコンクリートジャングルから抜け出してアウトドアを楽しもうじゃないか。

山もいいし、海もいい。でもTRAILSの夏の定番といえば、パックラフティング!涼しさを味わえるのはもちろん、時にはメロウに、時にはスリリングにと、いろんな魅力があるのがいい。

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今回、TRAILS crewが向かったのは山梨県の桂川(※1)。実は、桂川を狙って行ったというわけではない。もともと、桂川沿いのキャンプ場で遊ぶ計画があったのだ。

まあフツーのキャンプであれば1泊して翌朝に家路につくわけだが、そこはパックラフト・アディクト(中毒者)。案の定、せっかくだから川も下ろう!となったわけである。

TRAILS crewによるキャンプからのパックラフティング、いざスタート。

※1 桂川:山中湖を水源とする川。相模湖から下流域では相模川、河口付近では馬入川(ばにゅうがわ)とも呼ばれる。夏は、アユ釣りをする釣り師でにぎわう。桂川はアッパーセクションとロワーセクションに大きく分かれるが、今回はロワーセクションを下った。当日の水位情報「大月 1.27(m)」。 https://www.river.go.jp/kawabou/ipSuiiPast.do?init=init&obsrvId=0358500400001&gamenId=01-1102&fldCtlParty=no


メロウな山遊びからメロウな川遊びへ。


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月尾根自然の森キャンプ場に前日入りして、ハンモック・キャンプを楽しんだ。

今回のキャンプ地は、僕たちのハンモックイベントで毎年お世話になっている月尾根自然の森キャンプ場。もはやTRAILSの常宿!といっても過言ではない。

プライベートで平日にハンモック・キャンプを楽しもう!というのが今回の企画のそもそものきっかけ。そしてやりたいことを全部やろう!ってことで、ハンモックに加えて、バーベキューも、焚き火もやった。

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旬の食材を仕入れてバーベキュー。貸切状態のキャンプ場で夏の夜を満喫した。

さらには他のお客さんがいない(僕たちの貸切状態!)こともあって、スクリーンとプロジェクターを設営して、バンフ・マウンテン・フィルム・フェスティバルでもお馴染みのアウトドアムービーを流したりして。ここはまるで別世界。僕たちはうだるような暑さも忘れてキャンプを楽しんだ。

翌日は朝食後にいざパックラフティングへ。JR鳥沢駅からスタート地点の河原へと向かう。この川まで歩くという行為が、僕は好きだ。これも川下りの醍醐味のひとつなんじゃないかと思うくらい。だって、お目当の川を見つけるワクワク感がある。登山口を見つけても心境の変化はあまり感じないが、河原を見つけた時の高揚感といったら!

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スタート地点は、JR鳥沢駅から歩くこと約10分。のんびり歩くも、胸は高鳴るばかり。

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桂川は、行きも帰りも電車が利用できるダウンリバー。東京近郊のダウンリバーのプレイエリアとしては、御岳(多摩川)と長瀞(荒川)が2大ゲレンデ。桂川は、御岳や長瀞に比べるとパドラーが少ないため、釣り師も慣れておらず、両者の主体的な譲り合いが大事。難易度としては、ある程度の経験を積んだ人向け。目安としては御岳(多摩川上流部)を問題なく漕げるようになってから。


ポーテージすること15回。これぞシェア・ザ・リバー。


照りつける太陽の下で出艇した僕たちは、ゆるゆると下りはじめる。いやあ最高だなーと思っていた矢先、目の前には釣り師……。

アユ釣りをする釣り師だ。もちろん、これは想定の範囲内。特に夏は多くの川に釣り師がいるものだ。僕たちは手慣れた感じでポーテージ(※2)をすることにした。今日は日帰りだし荷物も少ないから、ポーテージもさほど面倒ではない。

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ポーテージも慣れてくれば煩わしさも感じなくなってくる。

再び川を下りはじめるとちょっと先に釣り師が。まあ、このくらいはいるよねーと思いながらポーテージで切り抜ける。

よし!と気持ちを入れなおした途端、前方にはまたも釣り師。しかも視界に入るだけでも3人はいる。マジか!と一瞬ひるんだが、川はみんなのものだから譲り合いの精神がなによりも大事!

特に今回は、釣り師の人たちが先にいたので僕たちが気をつかうのは当たり前。釣竿を見て状況を確認しつつ、ジャッジをする。通れない場合は、魚に影響を与えないようになるべく手前で陸にあがり、できるだけ前方で川に入る。釣り師が通してくれた場合も、極力パドルはこがないようにする。「ありがとうございます」とお礼も忘れてはいけない。川にかぎらず山も海だってそう、自然を楽しむ上ではマナーが大切なのだ。

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釣り師が見えたら無理をしないこと。シェア・ザ・リバーの精神で。

シェア・ザ・リバー!僕たちはそれを合言葉にポーテージを繰り返した。途中からなんだか面白くなって数えていたら、その回数はなんとトータル15回!パックラフティングをしながらちょっとしたハイキングも楽しんでしまった気がした。

ちなみに、今年の桂川の漁期は、ヤマメ・イワナが3月1日〜9月末日、アユが6月1日〜9月末日となっている。今回、平日にもかかわらずこれだけ釣り師がいたので、特に週末は避けたほうが良さそうだ。

※2 艇を担ぎ上げて陸路を歩いて障害物を越えること。


核心部の岩が点在する長い瀬を、縫うように抜けていく。


今回の行程(鳥沢駅〜梁川駅間)には、いくつか瀬(※3)があるが、その核心部と言えるのが後半に待ち構えている通称、丸正ウェーブ(現在は閉鎖されている丸正キャンプ場の近くにあるためこう名付けられた)。

蛇行している長い瀬で、しかも両岸が岩場なので、直前になっても全容がまったく掴めない。僕たちはスカウティング(※4)すべく河原にあがった。

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「大丈夫だろう」は禁物。ちょっとでも不安があったら迷わずスカウティング!

岩場を登ってしばらく先まで歩き、上から川をつぶさにチェックした。ところどころに岩が顔を出していて、それを避けながら縫うように抜けていく必要がある。なかなかのスリルが味わえそうなルートだった。

三人でライン取りを念入りに確認し、一人ずつトライ。沈(転覆)しないようにしっかりパドルを漕ぎながら、岩の間をうまく進んでいく。

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丸正ウェーブは、下りごたえ充分!水しぶきを受けてテンションマックス気味の佐井。

最後にクリアーしないといけないのが丸正ウェーブのラスボスであるホール(※5)だ。スカウティングの際にはかなりの落差に見えたが、実際はそこまででもなかった。でも、僕は一瞬ヤバイ!と思った。渦の流れの強さを受けて艇が想像以上に傾いてしまったのだ。これは沈するかもと思ったが、間一髪のところでバランスを取り戻し難を逃れた。

※3 瀬:川の流れが速く、水深が浅い場所。グレードが1〜6級まであり、数字が大きいほど難易度が高い。
※4 スカウティング:難易度が高いと予想される箇所において、艇を降りて陸上にあがり、危険はないか、どのルートがいいかなどを事前に偵察する行為。ダウンリバーしながら前方の状況(障害物や川の流れなど)を瞬時に判断するのは困難なため、適宜行なわれる。
※5 ホール:岩などによって大きく落ちたところに生じる循環流。ストッパーとも言う。

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3人とも無事にクリアー!何回か往復したくなるくらい楽しい瀬だった。


最後にあらわれる桂川の見事なゴルジュ。


あとは、ゴールまでのんびり進むだけ。当初は四方津(しおつ)駅まで行く予定だったが、思ったよりも時間がかかってしまったため(約4時間)、ひとつ手前の梁川駅で終えることにした。もうゴールは目と鼻の先である。

そこに現れたのが、ゴルジュ(峡谷)だった。切り立った岸壁と瑞々しい緑の木々の間をゆうゆうと抜けていく。

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ラストのゴルジュエリア。東京近郊とは思えない世界観が最高だった。水もかなり透明度が高く、清流を代表する魚であるカジカもいたほど。

まるで、スリル満点の核心部を乗り越えた僕たちを「おつかれさま!」と労ってくれているような気がして、とても気持ちが良かった。

今回のルートは、駅でいうとたったひと駅分。距離でいうとたかだが6km。最初は物足りないんじゃないかと思っていたが、ぜんぜんそんなことはなく、もう大満足。

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ゴール地点目前での佐井と根津。見よ、この達成感と満足感でいっぱいの表情を。

TRAILS crewお気に入りの月尾根の森キャンプ場沿いということもあり、桂川は僕たちのホームリバーになりそうな気がしている。

これまでのパックラフト・アディクトの連載記事のように、行程の途中でキャンプする川旅もいいけど、今回のようなキャンプからのパックラフティングというスタイルも、なかなか楽しいものだ。今後もTRAILSは、さまざまなテーマでパックラフトの旅を続けていきつつ、どんどんアディクトを増やしていきたい。桂川に関しては、漁期が終わった10月以降、紅葉の中をダウンリバーできればと思う。

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パックラフト・アディクトであるTRAILS crewも、桂川を下るのは初めて。帰りの電車では「いやあ、かなりポテンシャルの高い川だったねー」と新たな遊び場を見つけた喜びに浸っていた。

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根津 貴央

根津 貴央

1976年、栃木県宇都宮市生まれ。幼少期から宇宙に興味を抱き、大学では物理学を専攻。卒業後、紆余曲折を経て広告業界に入り、12年弱コピーライター職に従事する。2012年に独立し、かねてより憧れていたアメリカのロングトレイル「パシフィック・クレスト・トレイル(PCT/総延長4,265km)」のスルーハイクのために渡米。約5カ月間歩きつづける。2014年には「アパラチアン・トレイル(AT/総延長3,500km)」の有名なイベント「Trail Days」に参加し、約260kmのセクションを歩く。同年より、グレート・ヒマラヤ・トレイル(GHT)を踏査する日本初のプロジェクト『GHT Project(www.facebook.com/ghtproject)』を仲間と共に推進中。2018年4月、TRAILSに正式加入。著書に『ロングトレイルはじめました。』(誠文堂新光社)、『TRAIL ANGEL』(TRAILS) がある。

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