TRAILS REPORT

MOUNTAIN CITY LIFE | 高尾 #03 高尾 to 笠取山100mile 〜Thunder In The East〜(準備編)

2018.09.28
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取材・文:根津貴央 写真:根津貴央, 井原知一 構成:TRAILS

<Whtat’s MOUNTAIN CITY LIFE?>
「山と街をシームレスにつなぐ」。アウトドアウェアのコピーにそんな謳い文句がよくあるけど、実際のライフスタイルとして実現するのは、なかなか難しくない? 一般的には、山麓に住んでたまに都会に行く、あるいは都会に住んでたまに山に行く、というのがほとんどだ。でも、山も街も同じくらいの比重で味わうライフスタイルがあってもいいんじゃないか。そこで私たちTRAILSは、全国各地にあるMOUNTAIN LIFEでもCITY LIFEでもない、『MOUTAIN CITY LIFE』を探し、そこに足を運び、住まう人々から話を聞き、その実像に迫るシリーズをスタートさせることにしました。

* * *

前回の連載2回目では、高尾で感じたグルーヴに迫ってみた。その取材のなかで小耳にはさんだのは、トモさん(井原知一)の新たな企み、高尾から走りはじめる100マイル(160キロ)だった。

え? それってもう高尾から出てっちゃうじゃん!とツッコミそうになったが、聞けば、その遊びは高尾だから思いついたことであり、高尾でなくてはならない必然性があるようだ。

『生涯で100マイルを、100本完走』をスローガンに掲げる(現在44本を完走)トモさんが、高尾で実現させたい野望とは? 今回は、その準備編をお届けします。

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毎朝5時半から南高尾を走っているトモさん。高尾に引っ越してきたことで夢が広がったそうだ。



トモさんが目指すは『生涯で100マイルを、100本完走』。



高尾から走りはじめる100マイル。なぜまたそんなエクストリームなことをやろうと思ったのか。実は、きっかけは高尾在住の仲間たちだった。とある夜、みんなで山と高原地図を広げて眺めている時、思いついてしまったのだ。思いついてしまった以上、もはやそれを見て見ぬ振りはできない。そういう人たちなのだ。

尾崎光輝(以下、尾崎):きっかけは、トモが高尾に来てオレが秩父連山の話をした時だよね。高尾っていうのは秩父連山のいちばん端っこだと。だから、ここから奥秩父まで行けるんだよ!っていう夢を語っていたら、トモが何を思ったのか「毎月1回100マイルを走りたいですねぇ」って言い出して。

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この企画のきっかけを、昨日のことのように熱く語るジャキさん(尾崎光輝)。

井原知一(以下、井原):月刊100マイル。デアゴスティーニ!

尾崎:それでトモが「ジャキさん、100マイルのコースを1本引いてくださいよ」って言ってくれたもんだから、『LIVING DEAD AID』(高尾にあるANSWER4のショップ)で山と高原地図をバーッと広げて。

小林大允(以下、小林):最初は2枚くらいだったのに、どんどん地図をくっつけはじめちゃってね。

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地図を広げた時の盛り上がりっぷりに驚いたというコバくん(小林大允)。



高尾から笠取山までちょうど50マイル。



てっきり1回限りの遊びかと思っていたら、毎月っていうのは大げさにしても継続的に開催していくみたいだ。いったい高尾からどんな100マイルのルートを引くのか。

尾崎:高尾から100マイルってどこまでかなってなって。最初は、奥秩父主脈縦走路をぜんぶ行って瑞牆山荘までおりたいよね!なんて言ったけど、でも僕らがちゃんとサポートできて、トモが走りに集中できるコースを作りたいって思いが強くて。今回の100マイルは1本目、序章にすぎないしね。

井原:それでいろいろ話しているうちに、ウチからスタートして笠取山までがちょうど50マイルだとわかった。来いよ!と呼んでるなと。多摩川の最初の一滴があるところ。

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笠取山の山頂直下にある『水干(みずひ)』。これが多摩川の源頭であり、最初のひとしずくがしたたっている。

尾崎:多摩川の源頭だから、多摩川の水をね。

井原:源頭の水をくんで持って帰ってきて、焼酎で割ってみんなで飲みたい。

尾崎:このコースってロマンがあるんだよ。高尾からスタートして三頭山、つまり奥多摩に入ってさらにそこから大菩薩へ行く。オレ今までハイキングやってきたけど、奥多摩と大菩薩ってあまりリンクされることないんだよ。しかも今回、大菩薩から奥秩父主脈縦走路に行くわけで。奥多摩、大菩薩、奥秩父を繋ぐっていうのが、ロマンあると思うんだ。

あと、トモが「サクラ(トモさんの愛娘)行ってくるよ!」ってスタートして、「サクラただいま!」っていう絵が見たかったんだよね。それができるのって、トレイルヘッドがすぐそばにある高尾の特権じゃん。

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ルートは、トモさんの自宅をスタートし、トモズヘッド(南高尾の登山口)、草戸山、大垂水峠、城山、陣馬山、醍醐丸、浅間峠、三頭山、鶴峠、松姫峠、大菩薩嶺、柳沢峠を経て笠取山へ。片道50マイル、往復100マイル。24時間で往復する計画だ。



地図を広げることで、夢が広がる。



トントン拍子でルートが決定した。しかも、今回の高尾to笠取山は1本目にすぎず、すでに今後行ってみたいエリアも山ほどある。こうやって次々と新しいアイデアが生まれてくるのには、理由があった。それは地図である。

尾崎:高尾からなら富士山も行けるし、丹沢も行けるし、八ヶ岳だって目指せる。地図を広げることでいくらでも夢が広がるんだよね。みんなと地図を広げたあの夜が、ターニングポイントだったような気がする。モニター越しのグーグルマップから解き放たれた日。モニターで見てたらこのワクワク感はないし、バイブスは味わえない。

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山と高原地図をつなぎ合わせて作った、トモさんの夢が詰まったマップ。

井原:どうっすかこれ。地図を広げるとゾクゾクしますよね。今回は100マイルだけど、最終的には日本海のほうまで行きたいし。もう地図の上で寝たい!

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テンションが上がりすぎて、突然、地図の上に寝そべるトモさん。



高尾をきっかけに、ほかの山域を紹介する。



最初に、行く場所のあたりをつけるのではなく、まずは地図を見ながら想像を膨らませる。そうすることで、点と点が線で繋がる。みんな高尾は好きだけど、高尾単体を楽しむのではなく、高尾を起点にして楽しみを広げているのだ。その発想がおもしろい。

尾崎:関東に住んでいるULハイカーとして、奥秩父はある意味聖地で。ここは、日本におけるULハイキングの実験場だったわけ。みんな試行錯誤しながら北米のULスタイルを実践していた。この素晴らしい山域をみんなに知ってもらいたいってのもあるんだよね。高尾からアプローチできるわけだし。どんな山域だって繋がっているんだよ。みんな友だち、みんな仲間。高尾で何かしよう!だけじゃなくて、高尾から何をしよう!っていうね。

井原:なんか、山同士、手を繋いでいるイメージが浮かんじゃいました。

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「個人的には、これをきっかけに今後、高尾から10本、20本と100マイルのルートを引いて走りたい。いろんなコースができれば、それをきっかけに勝手に走りはじめる人もいると思っていて。そうなるといいですね」。

尾崎:浮かぶよねぇ。高尾と奥多摩が手を繋いで、奥多摩と大菩薩が手を繋いで、大菩薩と奥秩父が手を繋いで。そしたらさらに先から、八ヶ岳が「おーい!」ってね。

井原:来いよー、来いよー!って言ってる。

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「高尾から走って信越五岳のレース(※)会場に行って、完走して、また走って帰ってきたり。信越からさらに直江津まで行って日本海に出たり!」と、地図にない日本海を表現するトモさん。

※信越五岳トレイルランニングレース:プロトレイルランナーの石川弘樹氏がプロデュースするレース。今年で10周年を迎える。110キロと100マイル(2017年に新設)の2種目がある。



極東の高尾だからこそ、さまざまなエリアが視界に入る。



この人たちは、ボーダーレスなのだ。山をやっていると、ついつい山域ごとに好き嫌いがあったり、評価や分類をしたりしがちだが、そんなのはお構いなしに “ぜんぶ仲間だ” と言ってのける。今回のチャレンジが、ますます楽しみになってきた。

小林:いろんな山域を繋げられるのは高尾ならではでもあるよね。端っこだからこそ、ここからスタートできる。

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フロアに広がる地図を見て、あらためて高尾の存在や位置を再確認する面々。

尾崎:中に入っちゃうとそういう発想は出にくいかもね。外から見ている感じがいいんだろうね。

小林:高尾って、ある意味、世界で見た時の日本ってことだよね。極東。

尾崎:高尾からだと放射状にルートが引けるしね。秩父連山の極東ブルースだよ。ファー・イースト・ブルース!

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今回のルートの下見風景。本番は、10月頭に決行予定!

この『高尾to笠取山100mile』は、10月頭に実施する予定とのこと。すでに下見も完了して、あとはその日を待つのみ、といった感じだろうか。最後にトモさんは、こう語っていた。

井原:今回はなんかF1のイメージですね。ドライバーがいて、監督がいて、メカニックがいて。僕はサポートしてもらいながら淡々と進んでいく。ドライバーとしてミッションを遂行するだけです。とにかく、笠取山で多摩川の最初の一滴をくんでくる。みんなと美味しい焼酎の水割りを飲むために、それだけ取ってきますよ。

トモさんの生涯で45本目の100マイルは、いったいどんな100マイルになるのか。もう楽しみで仕方がない。その模様は、また次回の記事で紹介するのでお楽しみに!

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トモさんの大好きな南高尾からの眺め。ここから、トモさんの新たなチャレンジがはじまる。

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トレイルズ

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佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

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