TRAILS REPORT

パックラフト・アディクト | #15 雪の釧路川・ギアレビュー (前編) 小川と根津のヘッドウェア・グローブ・フットウェア

2019.01.23
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文:根津貴央 構成・写真:TRAILS

今回のパックラフト・アディクトは、これまでのとはちょっと違う。何がって、実は『NIPPON TRAIL』のスピンオフ企画なのだ。

というのも、TRAILS編集部は、NIPPON TRAILの次なる舞台として北海道に目をつけていた。北根室ランチウェイから西の屈斜路湖へとトレイルをつなぎ、そのまま釧路川のリバートレイルもくだるという、道東ロングハイキング。しかも釧路川をくだるのは厳冬期。

なぜまた厳冬期なのか? それは、TRAILSのアンバサダーであるエリンをはじめ、海外のハイカーやパックラフターが、積雪期でもおかまいなしにパックラフトの旅にでていた姿に、強く憧れていたから。決して無理をしているわけではなく、純粋にその季節、ありのままの自然を楽しむ彼らのスタイルが格好よかった。

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Ground Truth Trekkingより。http://www.groundtruthtrekking.org/photo/erin-pulling-lituya-in-the-packraft-sled/

その想像どおり寒くも想像以上に楽しかった珍道中記は、その一部を『LDHD2019』Day1 18:00からのTRAILSのNIPPON TRAIL「北加伊道*ロングハイキング」にて。全容は2月末掲載予定の『NIPPON TRAIL』で詳しく紹介する。今回はそれに先立ち、日本のパックラフト・アディクトたちの今季のスノーパックラフティングの準備に間に合うように、ギアレビュー記事をどどんと3連発でお届けしたい。

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パックラフティング中、ふと腕を見るとたくさんの氷が……。水しぶきが瞬く間に凍っていくさまには驚かされた。

TRAILS編集部Crewの4人が、厳冬期の釧路川周辺でのスノーハイキング&パックラフティングで、いったいどんなギアを使ったのか。厳冬期ということで、いつにもまして防水、防風、防寒対策はシビアになる。その中でも頭・手・足の防水、防寒対策はもっとも重要。というわけで前編では、TRAILS編集部の小川と根津による、ヘッドウェア、グローブ、フットウェアのレビューを紹介する。

この記事をきっかけに、厳冬期も旅してみよう! そう思う人が少しでもいたら嬉しい。

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防水・防寒対策のマストアイテム(その1) 「ヘッドウェア」



■小川竜太
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<スノーハイキング&パックラフティング共通>
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[バラクラバ] finetrack / バラクラバビーニー, [帽子] Terra Nova / AJO Trapper Hat, [サングラス] Float / Hiker’s GAIA 2nd & Urban Galaxy Sunglass

小川:頭部に関しては、スノーハイキングとパックラフティングにおいて同じアイテムを使用した。バラクラバにイヌイットハットという組み合わせ。「Terra Nova / AJO Trapper Hat」(テラノバ / アジョ・トラッパー・ハット)は、TRAILS編集部Crewには笑われたが、保温性は抜群でテラノバオリジナルの防水透湿フィルム「X-DRY」がラミネートされており、防水性の面でも安心。

バラクラバは、普段からメガネをかけていることもあって、くもり防止のために口元の通気口(ブレスルーター)のあるタイプに絞り、finetrack(ファイントラック)のバラクラバビーニーを選択。ブレスルーターは、口元の濡れと凍りつきを抑える機能もある。このモデルは、同ブランドのバラクラバのラインナップの中でも保温性が高いモデルで、内側には吸汗蒸散性に優れるドラウトレイの生地を使用し、表面は雨や雪を弾く耐久撥水性を備えた素材を使用している。

釧路川は過去に2度漕いでおり、そのなかで沈(転覆)の可能性が低いセクションを選んだためヘルメットは使用しないことにした。ただし、万が一を考えて、予備の帽子「Houdini / Toasty Top Hat」(フーディニ / トースティ・トップ・ハット)とネックゲイター「Houdini / Power Hat」(フーディニ / パワーハット)も携行しておいた。

■根津貴央
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<スノーハイキングver.>
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[帽子] Outdoor Research / Wind Warrior Hat, [サングラス] Float / Urban Galaxy Sunglass ASTRA GRAY

根津:キャップは、「Outdoor Research / Wind Warrior Hat」(アウトドアリサーチ / ウィンドウォリアーハット)。普段は、フリースやウールのキャップを使うことが多いが、さすがに今回は防風性がマストだと考え、GORE WINDSTOPPER(ゴア・ウインドストッパー)採用のものにした。

より保温性の高いキャップもあるが、今回は行動着として考えていたし、汗をかいてムレ過ぎしてしまうのは嫌だったのでこれをチョイスした。

風が強いシーンも多々あったがまったく寒さを感じることがなく、防風性の高さを実感。停滞時で冷えが厳しい際には、ジャケットのフードを被ってしのいだ。

<パックラフティングver.>
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[パドリングフード] montbell / ネオプレン パドリングフード, [帽子] Outdoor Research / Wind Warrior Hat, [サングラス] Float / Urban Galaxy Sunglass ASTRA GRAY

根津:上記ウィンドウォリアーハットの下に、「montbell(モンベル) / ネオプレン パドリングフード」を着用。釧路川は沈する可能性は低いとはいえ、ゼロではない。また何かの拍子に頭に水をかぶることもあるかもしれない。そのリスクを考えこれを選んだ。

幸いにも水をかぶることはなかったため、防水性を発揮することはなかったが、バラクラバに近い形ゆえ耳まわりや首まわりが暖かく、氷点下でのパドリングも安心だった。また窮屈感がなく、フィット感もちょうどよく心地良かった。



防水・防寒対策のマストアイテム(その2) 「グローブ」



■小川竜太
<スノーハイキングver.>
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[インナーグローブ] Outdoor Research / Wooly Sensor Liner, [グローブ] Outdoor Research / Transcendent Down Gloves

小川:ダウングローブにライナーグローブのレイヤリング。いずれもスマホ用のタッチスクリーンに対応したグローブを使用。最近は、雪山やスキーでは、Outdoor Research(アウトドアリサーチ)のフリース素材のGripper Sensor Glove(グリッパーセンサーグローブ)を愛用していたが、厳冬期の道東の寒さに怖気づき、ダウングローブを選択。

想定していた最低気温マイナス15℃までは下がらなかったものの、パックラフトの後の濡れて冷えた手をすばやく回復させるために、ダウングローブの安心感は心強かった。またパックラフティングの際には、カメラの予備バッテリーをダウングローブの中に入れておき、機材の過冷却対策にも使用した。

<パックラフティングver.>
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[グローブ] Glacier Glove / Perfect Curve Glove, [ポギー] Kokatat / Neo Kayak Mitt

小川:マイナス15℃の気温までを想定して、ネオプレーンのグローブと、ポギーのレイヤリングを検討。また川の上でのスマホの操作・撮影のため、スマホにはタッチペンを付けておいた。

グローブは2mmのネオプレーンに起毛の裏地になっている「Glacier Glove / Perfect Curve Glove」(グレイシャー・グローブ / パーフェクト・カーブ・グローブ)を使用。指がパドルを握る形になっており、やや手がかじかんだときも、握力の負荷が少なく使用しやすかった。

ポギーは、3mmネオプレーンの「Kokatat / Neo Kayak Mitt」(コーカタット / ネオ・カヤック・ミット)を使用。2.5レイヤーの防水素材の「Kokatat / Kayak Mitt」(コーカタット / カヤック・ミット)も検討したが、防寒面で不安があったことと、手首部分が絞られて狭くなっており、グローブと2重で使用する際に、手の出し入れが面倒になりそうなため却下した。今回は実際はマイナス7℃〜マイナス3℃であり、グローブのみでも寒さを感じなかった。

■根津貴央
<スノーハイキングver.>
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[インナーグローブ] handson grip / HOBO, [グローブ] Black Diamond / Soloist

根津:メリノウールの薄手グローブ「handson grip / HOBO」(ハンズオングリップ / ホーボー)と厳冬期用の登山グローブ「Black Diamond / Soloist」 (ブラックダイヤモンド / ソロイスト)。

防寒だけであれば、ソロイストだけで問題ない(対応温度マイナス26℃)。ただ、極地に行くわけではなく街の近くということもあり、細かい作業もするだろうと思ってインナーグローブも用意した。案の定、写真をとったりメモをとったりという作業があり、このグローブが役に立った。フィット感にこだわったメイドインジャパンのものなので、操作性が抜群。

<パックラフティングver.>
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[グローブ] montbell / ネオプレン パドリンググローブ, [ポギー] Kokatat / Tropos Kayak Mitt

根津:ネオプレーンのグローブ「montbell(モンベル) / ネオプレン パドリンググローブ」とポギー「Kokatat / Tropos Kayak Mitt」(コーカタット / トロポス・カヤック・ミット)のレイヤリング。

厳冬期とはいえ、ほぼ常にパドリングで手を動かしていることを予想し、防寒性以上に防水性を意識したセレクトにした。実際、思ったほど気温が下がらなかったこともあり、寒さを感じることはほぼなく、ポギーすら必要ないと感じたくらい。

モンベルのグローブは、フィット感がちょうど良く、立体裁断でパドルを握った状態のデザインゆえ、想像以上にラクにパドリングできた。



防水・防寒対策のマストアイテム(その3) 「フットウェア」



■小川竜太
<スノーハイキングver.>
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[ソックス] finetrack / スキンメッシュソックス 5本指レギュラー, [ソックス] Marsyas / 1.5mm インナーソックス tabi, [シューズ] Salomon / Quest Winter GTX, [スノーシュー] Northern Lites Snowshoes / Race

小川:シューズは、以前マイナス15℃の環境で使っても問題なかった「Salomon / Quest Winter GTX」(サロモン / クエスト・ウィンター・ゴアテックス)を選択。パックラフティングとなるべくギアを共通化し、ハイキングからパックラフティングに移るときに着替えの負担を少なくするため、シューズの内側にネオプレーンのソックスを履いた。

ドライレイヤーとして、finetrack(ファイントラック)のスキンメッシュソックスを履き、肌をドライに保つように、いつも以上に足のケアは気をつかった。

パックラフティング後のソックスとして、予備に厚手のウールソックス「point6 / Expedition tech」(ポイント6 / エクスペディション・テック)も持参しておいたが、結果的にパックラフティングでは足は濡らさずにいられたので、これは実際はハイキング中にも使用しなかった。

<パックラフティングver.>
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[ソックス] finetrack / スキンメッシュソックス 5本指レギュラー, [ソックス] Marsyas / 1.5mm インナーソックス tabi, [ソックス] Level Six / Fusion Sock, [シューズ] Atom / 田植用長靴 軽快ソフト, [オーバーシューズ] Crescent Moon / Snowshoe Booties

小川:今回、いちばん頭を悩ませたのが足の防寒。ソックスなしのドライスーツを使用したため、足を濡らさないことを最重視したレイヤリングを検討。

そのため一部のカヌーガイドなども使用している、靴の入り口が足にタイトにフィットする田植え用の長靴「Atom(アトム) / 田植用長靴 軽快ソフト」を選択。

濡れない前提であるものの、万が一のときや、汗ムレによる冷え対策のために、長靴の中は、ドライレイヤーとしてfinetrackのスキンメッシュソックスを履き、その上にネオプレーンのソックスを2枚重ねて履いた。それでも寒さが耐えられなかった場合に、スノーシュー用の「Crescent Moon / Snowshoe Booties」(クレセントムーン / スノーシュー・ブーティー)を用意しておいた。結果的に、このブーティーは必要なかった。

■根津貴央
<スノーハイキングver.>
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[ソックス] Smartwool / Mountaineering Extra Heavy Crew Socks, [シューズ] CRISPI / NORDLAND, [板] MADSHUS / EON

根津:ソックスは、厚手のウールソックス「Smartwool / Mountaineering Extra Heavy Crew Socks」(スマートウール / マウンテニアリング・エキストラ・ヘビー・クルー・ソックス)のみ。

このソックスの暖かさはヒマラヤ登山でも体感済みで、今回使用するブーツ「CRISPI / NORDLAND」(クリスピー / ノルドランド)の保温性も考えると、この組み合わせで問題ないと判断。実際まったく問題なかった。

ちなみに今回僕は、スノーシューの代わりにBCXC(BCクロカン。詳しくはコチラ)を使用。そのため必然的にこのブーツになったのだが、レザー製で柔らかいため単体(板なし)でも充分使えて便利だった。事実、飛行機で東京に戻ってくる際もこのブーツを履いていた。

<パックラフティングver.>
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[ソックス] Smartwool / Mountaineering Extra Heavy Crew Socks, [ソックス] montbell / ネオプレン プレーンソックス, [シューズ] Atom / GREEEN MASTER

根津:ソックスはスノーハイキングと同じもので、その上に防水対策として、2.5mm厚のネオプレーンソックス「montbell(モンベル) / ネオプレン プレーンソックス」と、長靴「Atom / GREEEN MASTER」(アトム / グリーンマスター)」を併用した。

長靴はいろいろタイプがあったが、防水性に加えて、保温性、ソールのグリップ力を加味してこれを選んだ。パックラフトに乗り降りする際は、水に浸からざるを得ないことが多い。そんな時も、寒さや冷たさを感じることなく行動できた。

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雪の釧路川はしんと静まりかえっていて、神々しく、緑豊かな夏よりも印象的だった。

今回は、TRAILS編集部の小川と根津によるギアレビューを紹介しましたが、次回は残りのふたりが登場。

『雪の釧路川・ギアレビュー(中編)佐井夫妻のヘッドウェア・グローブ・フットウェア』をお届けしますのでお楽しみに!

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WRITER
トレイルズ

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佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

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