TRIP REPORT

BCXC Trip | BCクロカンで旅する北八ヶ岳

2019.01.16
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文:根津貴央 構成:TRAILS 写真:根津貴央、福地孝

2019年、最初にお届けする旅のテーマは、BCXC! そう、BCクロカンである。

ん? なんだそれ? そう思った人も多いかもしれないが、ご心配なく。日本全国のアウトドア好きに聞いても、おそらく知らない人のほうが多いんじゃないかというくらい、まだマイナーなアクティビティ。

詳しくは後ほど説明するとして、簡単に言ってしまえば、登りは歩けて下りは滑れるスキーだ。

滑るだけでもなく、歩くだけでもない。TRAILS編集部はそこに強く惹かれた。これがあれば、雪山を縦横無尽に自由に遊びまわることができる。

かつて僕らがパックラフトに出会った時と同じようなワクワク感を抱いた。僕らの旅の可能性をあらゆる意味で拡張してくれそうな、新しい旅のツールを手に入れたような気がした。

パックラフトを手にしてからは、トレイルをハイキング・トリップし、川が出てきたらパックラフトを膨らまして渡ったり、くだったりするようになった。まさしくそれと同じように、ハイキングしながら雪が出てきたらBCXCで旅をする。そんな遊び方ができると思ったのだ。

そんな風にBCXCにただならぬ可能性を感じてしまったTRAILS編集部。今回、Crewのひとりである根津が、北八ヶ岳でBCXCトリップをしてきた。この新しい旅のツールで、北八ヶ岳をどう楽しんできたのか。とくとご覧あれ!

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北八ヶ岳の雨池。1月は雪におおわれて湖上を歩くこともできる。



『BCXC(BCクロカン)』ってなに?



まずは『BCクロカン』について簡単に。これは『バックカントリー・クロスカントリー・スキー(Backcountry Crosscountry Ski)』の略称で、『BCXC』と表記されることも多い。

大元は、北欧でクロスカントリー・スキーの一種として誕生した『クロスカントリー・ダウンヒル・スキー(Crosscountry Downhill Ski)』。ダウンヒルというと滑降するイメージがあって誤解される可能性もあるため、日本で紹介する際に『バックカントリー・クロスカントリー・スキー』(※)と名付けたとのこと。

※バックカントリー:近年、スキー場外や手つかずの自然のことを指すようになっているが、英語本来の意味としては田舎や農村のこと。BCXCにおいては、ハイキングのような手軽な遊びとして日本に紹介しようとした背景もあり、裏山や里山といった意味合いでバックカントリーという言葉を使用している。

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板は、MADSHUS(マズシャス)のEON(イオン)。ビンディングは、ROTTEFELLA(ロッテフェラ)のBC AUTO(ビーシーオート)。ブーツはCRISPI(クリスピー)NORDLAND(ノルドランド)。ちなみに僕は、これら一式をセット販売している、名古屋のアウトドアショップ『MOOSE』で購入。

まあそんなウンチクはもちろん後から知ったことで、そもそも僕がBCXCの存在を知ったのは約1年前のこと。登って、歩いて、滑れるスキーであることを知り、冬のハイキング、冬の歩き旅に活用できるんじゃないかと思ったのだ。

それまでは、「スキー=滑りを楽しむスポーツ」という印象(偏見?)しかなく、なんか自由度が低いというか、旅感がなくグッときていなかった。その固定観念が揺らいだ瞬間だった。

ちょうど遊び仲間であり、日頃からお世話になっている福地さん(アルトラを扱う株式会社ロータスの代表であり、STRIDE Labのオーナー)が、BCXCにハマっていたこともあり、昨年、彼と一緒にBCXCでアメリカを旅した。

その旅は、冬のイエローストーン国立公園をBCXCで歩きながら冬のオオカミを探す、というもの。2泊3日のトリップは最高に楽しかった。

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福地さんと一緒に旅した、冬のイエローストーン国立公園。

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冬のオオカミを探すべく、広大なエリアをBCXCで動きまわった。



北八ヶ岳のBCXCトリップへ



それから約1年が経過し、2019年はBCXCやるぞー! と意気込んでいた僕は、年明け早々に福地さんに声をかけ、仲間たち(総勢5名)とともに北八ヶ岳へ向かったのだった。

ピラタス蓼科スノーリゾートに到着し、北八ヶ岳ロープウェイに乗って一気に標高2,230mにある山頂駅へ。

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坪庭でBCクロカンを履いて歩きはじめる。

一年振りのBCXCということもあって、やや緊張しながら坪庭を歩きはじめる。最初はぎこちなかったが徐々に感覚を取り戻し、そうそうこれこれ! やっぱBCXC快適だわー! と思うように。

この快適具合は、実際にやってみないとわからないかもしれないけど、まあとにかくラクで気持ちがいい。雪上ではスノーシューもかなりラクチンだが、さらに浮力が増して、かつ推進力が向上した感じ。驚くほどスイ〜スイ〜とスムーズに前進することができる。

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BCXCであれば、歩くよりもずっと速く進むことができる。



急斜面は、板をはずしストックがわりにして歩く



とはいえ、BCXCをはじめたのは去年なので、歩きは問題ないが滑るとなるとまだまだ技量不足。そのため、ひとり最後尾でコケながら進んでいくのだが、まあでも技術なんてのは転びながら覚えるもんだ! と思っているので気にしない、気にしない。

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板は約2kgと軽量なので、持ち運びもラクチン。

ちなみに今回のルートは、北八ヶ岳の雨池ピストン。ハイキングであれば往復約3時間ほど。

途中、傾斜が急なところは、さすがに板をつけたままでは難しいので、無理をせずに板を持って歩く。たかだか2kg程度なので、気軽に持ち運べるのもBCXCのいいところ。ストックがわりにしながら斜面をゆく。



雪におおわれた雨池の湖上で遊びまくる



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雨池は一面の雪。湖上を楽しめるのもこの季節ならでは。

そして、ついに雪におおわれた雨池に到着! 湖の上を歩けるのもこの季節ならでは。天気も抜群に良くて、もうサイコーとしか言いようがない。

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開放感を満喫しながらのランチタイム。

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突如はじまったBCXC湖上往復レース。ノートレースの場所があると、ついつい滑りたくなってしまう。

お昼休憩をたっぷりとってから、北八ヶ岳ロープウェイの山頂駅を目指してふたたびスタート。

さすがに往路で滑りにも慣れたので、復路はもう安心。歩いて、滑って、あっという間に山頂駅まで来てしまった。

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BCXCの機動力たるやハンパない。まさしく新しい旅のツールだ。



慣れたら急斜面だって滑れるのが、BCXCの真骨頂!



あとはロープウェイで一気に下るだけ、と思っていたら「せっかくだからゲレンデを降りていこうか!」と福地さん。

いやいや、さすがにゲレンデは無理でしょ……と思ったが、BCXCの真骨頂は、歩くだけではなく滑れる点にある。

今後のロングツーリングのためにも、これはやるっきゃないなと意を決した僕は、ゲレンデに挑むことになった。

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横滑りのお手本を見せてくれる福地さん(右)。

横滑りさえ覚えればどんな斜面でも行けるから! ということで、まずは福地さんのお手本から。

簡単そうに見えて、これがけっこう難しい。とにかく反復練習を繰り返しながら横滑りをじわじわ覚えていく。

ベテランの福地さんは、こんな感じで事もなげに滑っていく。

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テレマークで颯爽と滑っていく福地さん。

中盤までかなりビビりまくっていた僕も、途中でもうビビっても何も変わらないなと思うように。吹っ切れてトライ&エラーを繰り返しているうち、最後の最後でなんとかターンのコツをつかむことができた。

久しぶりにこんなにできないことを体感したし、久しぶりに頭ではなく体で覚える経験をした。なんだか懐かしい気分になったのは、きっと、幼いころに自分が初めて自転車に乗れた時と同じ感覚をいだいたからだろう。



北八ヶ岳でBCXCといえばこの宿



無事にくだり終えたあとは、みんなで夕食へ。

行き先は、クルマで20分ほどのところにあるコロモデゲストハウス。ここはフランス料理とワインが抜群に美味しい宿。今回はスケジュールの関係で泊まることはできなかったけど、夕食だけ事前に予約しておいたのだ。

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コロモデゲストハウスで、フレンチに舌鼓を打ちながら今日一日の旅を振り返る。

このコロモデゲストハウスのオーナーの佐藤さんはテレマークスキーヤーで、BCXCにも精通している人物。板やブーツのレンタルはもちろん、BCXCやテレマークの体験イベントも開催しているので、未経験者やビギナーは一度ここに足を運んでみるといいだろう。

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BCXCで旅した北八ヶ岳は、ハイキングで訪れた時とはまた別の世界のように思えた。

雪上を、時には歩き、時には滑り、縦横無尽に動きまわるBCXC。

積雪期なのに無雪期以上の機動力を持つこのアクティビティは、底知れぬ可能性を秘めている気がしてならない。僕個人はもちろんTRAILS編集部としても、BCXCをガンガン掘っていこうと思っているので、今後の記事をぜひお楽しみに! 次はテント泊込みのツーリングに出かけたい。

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WRITER
根津 貴央

根津 貴央

1976年、栃木県宇都宮市生まれ。幼少期から宇宙に興味を抱き、大学では物理学を専攻。卒業後、紆余曲折を経て広告業界に入り、12年弱コピーライター職に従事する。2012年に独立し、かねてより憧れていたアメリカのロングトレイル「パシフィック・クレスト・トレイル(PCT/総延長4,265km)」のスルーハイクのために渡米。約5カ月間歩きつづける。2014年には「アパラチアン・トレイル(AT/総延長3,500km)」の有名なイベント「Trail Days」に参加し、約260kmのセクションを歩く。同年より、グレート・ヒマラヤ・トレイル(GHT)を踏査する日本初のプロジェクト『GHT Project(www.facebook.com/ghtproject)』を仲間と共に推進中。2018年4月、TRAILSに正式加入。著書に『ロングトレイルはじめました』(誠文堂新光社)がある。

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