パックラフト・アディクト | #46 タンデム艇のABC 〜ウルトラライトな2人艇のススメ〜
文・構成:TRAILS 写真:TRAILS, Judson Pryanovich, Jin Fujiwara
この夏のTRAILSの特集記事として、パックラフトのタンデム艇 (2人艇) をフィーチャーした記事を、お届けしていきたい。今回から始まる全7回の総力特集だ。
なぜ、いまタンデム艇なのか?
2019年にALPACKA RAFT (アルパカラフト) の新たなラインナップとして、カヌースタイルのパックラフトであるOryx (オリックス) が登場した。コアなパックラフト・アディクトたちは、このモデルを次々と乗り始めた。敏感な旅人たちは、そこには間違いなく今までと違う新しい旅があると気づいたのだ。そして、このモデルの登場は、TRAILSのタンデム熱が再燃するきっかけともなった。
タンデム艇の楽しみとは、端的に言えば、2人でわいわい楽しく旅できること。2人のかけ合いで、ともにパドルを漕いで進んでいく密度の高いグルーヴ感が味わえる。しかも、パックラフトなので、UL (ウルトラライト) のスタイルで旅ができる。
そんなわけで、TRAILS編集部もがっつりハマっているタンデム艇の特集として、全7回で各テーマ別にその魅力をお届けする。1回目は「ウルトラライトな2人艇のススメ」、2・3回目は「2人艇の遊び方」、4回目は「遊べるフィールド」、5・6回目は「タンデム艇のモデル比較」、7回目は「タンデム艇に必要な道具」。
まず第1回は、「ウルトラライトな2人艇のススメ」として、「タンデム艇って、何が楽しいの?」というところからスタートしよう。
TRAILS編集部crewがタンデム艇だけで旅した、北海道の釧路川トリップ。まずは屈斜路湖からプットイン。
パックラフトでBUDDYと旅する。
TRAILSは、HIKING BUDDY、パックラフト・アディクト、FAMILY HIKING、BUDDY BAGなど、立ち上げ時から記事やプロダクトを通じて、パートナーや家族で旅することの素晴らしさやメリットを発信してきた。
ニュージーランドでのパックラフティング・トリップ。息子と一緒にExplorer 42 (初期モデル) を漕ぐ編集長の佐井。
当然、パックラフトに関してもBUDDYとの旅の可能性を探るべく、2015年に初期モデルのExplorer 42 (ALPACKA RAFTのタンデム艇の最軽量モデル) を購入。ニュージーランドや国内では江戸川など、いくつかのフィールで遊びの実験をした。ただ当時は舟の性能を十分に理解できず、またタンデムの経験値も今ほどなかったため、ドハマりすることなくフェードアウトしていった。
それから数年が経過し、2019年、ALPACKA RAFTからタンデム艇の新しいラインナップとしてOryxがリリースされた。
いち早くタンデム艇のOryxを入手したバダさん。経験者であれば、ホワイトウォーターも漕ぐことができる。
以来、海の向こうからパックラフトのタンデム艇で遊ぶ写真も、目に止まるようになる。そうこうしているうちに、TRAILS編集長の佐井に負けず劣らずのギアホリックである仲間のバダさんが、率先してOryxを購入し、試しはじめる。それを皮切りに、TRAILS編集部crewの小川、そして佐井が購入、気づけば仲間内でひそかなブームになっていた。
そこで、あらためてパックラフトにおけるBUDDYとの遊び方を伝えるべく、今回の『タンデム艇のABC』の企画記事を立ち上げることにしたのだ。
多摩川上流部のメロウなセクションを漕ぐ編集部の小川。
タンデムとは?
タンデム (tandem) という言葉は、もともとは、馬2頭を縦並びにつないだ馬車のことを意味していた。
そこから派生して、直列2人乗りのことを指すようになり、自転車やオートバイ、カヌー、カヤックでも使用されるようになった。
アメリカのミネソタ州にあるバウンダリー・ウォーターズにて。Photo by Judson Pryanovich
タンデム艇で旅する憧れのイメージといえば、日本では作家・カヌーイストの野田知佑さんの川旅を思い浮かべる人が多いだろう。海外でのタンデム艇の憧れのフィールドとして有名なのは、アラスカのユーコン川や、アメリカの五大湖に隣接するバウンダリー・ウォーターズなどだ。雄大な川や湖をメロウに漕いでいる、あの旅の姿である。
釧路川源流部を、カナディアンカヌーで下っていく。Photo by Jin Fujiwara
タンデム艇のメロウで雄大な世界観に、僕たちは間違いなく惹かれていた。タンデム艇には、旅欲をかきたてる特別な何かが存在しているのだ。
パックラフト・タンデムは、BUDDYとの舟旅のグルーヴ感が増すULギア。
釧路川は、BUDDYと一緒にのんびり楽しむことができる絶好のフィールド。
野田知佑さんも、よくカヌーの上で昼寝をしていた。昼寝をできるかはともかく、メロウなフィールドを旅するのが、タンデム艇の楽しさなのだ。幅が広く緩やかな流れの川や、湖が、タンデム艇と相性のいいフィールドだ。
タンデム艇は、前後2人で息を合わせながら、わいわい漕ぐ。2人で1つの舟に乗っているので、BUDDYと会話をしながら、旅することができる。シンクロ感やグルーヴ感が高いから、旅の共通体験の度合いもとても大きいのだ。
驚きや発見をBUDDYと共有しながら川を下るのも楽しい。
タンデム艇は1人艇より舟が大きいので、積載量も多い。キャンプ道具を積んだ長旅や、ファミリー・トリップなど複数人の荷物を運ぶ必要があるときに、その利点を活かすことができる。
タンデム艇なら、かなりの荷物を積むことができるので、旅の幅が広がる。
またUL (ウルトラライト) の観点でもタンデム艇はメリットがある。1人艇2つよりも、タンデム艇1つのほうが軽い。たとえば、ALPACKA RAFTの場合、1人艇のスタンダードシリーズが3kg、Explorer 42が3.6kg (初期モデルは3.1kg)、Oryxが4.9kgである。1〜2.5kgも旅の荷物を軽量化できるメリットは大きい。経済的にも、1人艇を2艇購入するよりも、タンデム艇1艇のほうが安価である。
仲間やカップル、家族と、これからパックラフトを始める人にとっては、タンデム艇を最初の選択肢として考える人も増えてくるだろう。
2人で1艇なので、UL化できることも大きなメリット。
カヌーとカヤックの違い。
ところで、カヌーとカヤックの違いはなんだろうか。ちなみに、この記事でも紹介している、ALPACKA RAFTのOryxは、カヌースタイルのパックラフトだ。ここでカヌーとカヤックの違いを紹介しておきたい。
ALPACKA RAFTのOryxを漕ぐ、TRAILS編集部の根津 (前) と小川。
そもそもカヌーとは、パドルを用いて漕ぐ舟のこと。なので、大きな分類としてはカヤックもカヌーの一種であり、カヌーを大別すると「カナディアンカヌー」と「カヤック」の2つに分かれるのだ。
カナディアンカヌーは、北米のインディアンが狩猟や移動手段に用いていた舟がそのルーツ。広いオープンデッキがあり、積載能力が高く、シングルブレードパドルで漕ぐのが特徴。スピードよりも安定性重視のつくりになっている。
カヤックも、太古の昔に狩猟や移動手段として利用されていた舟だが、カナディアンカヌーとは異なり、座席以外が覆われているクローズドデッキで、ダブルプレードパドルで漕ぐのが特徴。カヌーに比べて横幅が細く、スピードが出るつくりになっている。
現在、一般的にカヌーといえばカナディアンカヌーを指し、Oryxは、カナディアンカヌーがベース。そのため、流れの緩やかな川や湖などで、のんびりメロウに旅するのに向いている。
今年は、パックラフトのタンデム艇で遊びまくりたい。
今回の「タンデム艇のABC」第1回目は、「2人艇のススメ」としてタンデム艇の魅力の導入的な内容を凝縮してお届けした。
次回は、「2人艇の遊び方」をテーマに、仲間やパートナー、カップル、家族など、さまざまBUDDYとの遊び方を紹介したい。きっと、より具体的な遊び方のイメージを持ってもらえるのではないかと思う。
TAGS: