TRAILS REPORT

栃木 茨城・那珂川 コンスタンティン & TRAILS Crewのパックラフティング2DAYS (後編) | パックラフト・アディクト #82

2025.08.15
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文・構成:TRAILS 写真:TRAILS、コンスタンティン・グリドネフスキー

オランダから来日していたTRAILSアンバサダーのコンスタンティンとTRAILS Crewとのパックラフティング & キャンプの旅。

この旅では、コンスタンティンをTRAILS Crewが通うホームリバーのひとつである那珂川 (なかがわ ※1) へと誘った。

前編では、DAY1の旅のスタートから鮎のやな (簗 ※2) までの行程をレポートした (前編はコチラ)。

今回の後編では、河原キャンプでの鮎の塩焼き、それぞれのパックラフターの野営スタイル、そしてコンスタンティンのTRAILS INNOVATION GARAGEの来訪レポートまで、盛りだくさんでお届けします。

※1 那珂川:関東屈指のツーリングリバーのひとつ。那珂川は那須岳山麓を水源とした川で、栃木から茨城をまたいで流れ、さいごは大洗町で太平洋へと流れ込んでいる。堰堤や人工物が少ないことから「関東最後の清流」とも呼ばれる。

※2 やな:川の流れをせき止めて、木杭や竹でつくった仕掛けなどで、鮎やマスなどの川魚を捕まえる伝統的な漁法。


DAY1は真夏らしい青空の下でのパックラフティングとなった。

パックラフトの旅の醍醐味、河原での焚き火とキャンプ。


日暮の前から焚き火を起こして、キャンプを始める。写真左よりトニー (TRAILS)、ナカザワ君、コンスタンティン。

キャンプ地の河原に到着し、各々が寝床をセットアップする。その後に、さっそく焚き火を起こして、だらだらと過ごす、素敵な河原キャンプの時間の始まり。

コンスタンティンは今までの5回の来日で、日本の川もたくさん漕いでいるので、「今まで漕いだ日本の川でどの川が好き?」という質問をしてみた。

「四万十川とか吉野川とか千歳川とか、どれもいい川だったよ。でもどの川という話もあるけど。旅のスタイルとして、僕はワンデイのパックラフティングよりも、マルチデイのパックラフティングの旅が好きなんだよね」とコンスタンティンは答えた。

「今回の日本のパックラフティングでは、今まではワンデイだけだったから、那珂川では河原でキャンプして2日間漕げてよかったよ」と今回のプランを喜んでくれた。


「大瀬やな」で買った鮎の塩焼きを焚き火にかけなおす。


「オイシイ!」と、コンスタンティンも鮎の味をとても気に入っていた。

焚き火の周りに、先ほどやなで買った鮎の塩焼きを立てて、もう一度遠火で温めなおす。しばらくすると、ほのかに魚の焼ける香りがたちはじめた。

期待をいっさい裏切ることのない鮎の美味しさ。ほろほろほぐれる柔らかい身に、ほんのりと甘い香り。最高のキャンプのスターターだ。


焚き火を囲みながらゆっくりと夜が深まっていく。

みんなそれぞれが事前に調達した、焼き鳥やら、めざしやら、イカやらを焚き火の火にかけて食べる。ナカザワ君が持ってたウイスキーをおすそ分けしてくれて、ゆるやかに酔いもまわってくる。

気がつけば、この日は満月の夜。山の向こうに大きく丸い月が上り、僕らのところを明るい光で照らしてくれていた。

夜の深い時間になってからあたたかい気温で、寝袋を使わずビヴィに包 (くる) まるだけで十分に快適な夜だった。

DAY2の朝。それぞれの野営スタイル。


夜中に雨が降り、朝方には一度雨が落ち着いた。

各々のスタイルで野営するパックラフターたち。

ここでそれぞれの野営スタイルを少しのぞいてみたい。ベースは、みんなUL (ウルトラライト) の野営スタイルだ。


コンスタンティンの野営スタイル。タープは、LesovikのHEKSA (レソヴィク / ヘクサ)。

コンスタンティンは、ハンモックで寝られないかと期待していたが、川の周りにまったくハンモックを張れる木がなくて、昨日はやや意気消沈していた。

持ってきたポーランドのブランドLesovik (レソヴィク)のハンモックを諦め、同ブランドのタープだけを使って寝床にした。

ちなみにコンスタンティンは、ロシアや東欧のブランドについても詳しく、パックラフトもロシアのメーカーのものなども所有しており、いろいろと僕たちにも教えてくれた。


小川 (TRAILS) の野営スタイル。タープは、Equinox のGlobe Skimmer Tarp 8×10 (エキノックス / グローブスキマータープ 8×10)。

続いて、小川 (TRAILS) 。パックラフトの旅で最も使用頻度が高いEquinox のGlobe Skimmer Tarp 8×10 (エキノックス / グローブスキマータープ 8×10) で野営。

Integral DesignsのSiltarp2 (インテグラル・デザイン / シルタープ2)同様の8 × 10 ft (245cm × 300cm) の大きさは、パックラフトが収まった上で屋根の下に荷物も置けるちょうどよい大きさなのが、よくこのタープを使用する理由だ。

Siltarp2と比べて比べて中央のループが2つ多いため、天候によって張り方のバリエーションを増やせるのもお気に入りポイント。


トニー (TRAILS) の野営スタイル。タープはDCF 0.8ozでMYOG (自作) したもの。

トニー (TRAILS) は今年歩いたパシフィック・ノースウエスト・トレイル (※3) の旅のためにMYOG (MAKE YOUR OWN GEAR: ギアの自作)したツェルトを、今回は持参していた。

ベースはツェルト型 (タープに前後のドアと、ボトムにスカートが付いたもの) だが、広げるとタープとしても使える。タープとして使用した際の大きさは240cm × 310cm。

ちょうどパックラフトも収まるサイズだったので、このツェルトのバリエーションの実験をしてみたかったということで持参したそうだ。サイズは想定通りで、よいテストができたという。


ナカザワ君の野営スタイル。タープは、Zpacksの8.5′ x 10′ Flat Tarp (Zパックス / 8.5′ x 10′ フラットタープ)。

ナカザワ君は、もともとIntegral DesignsのSiltarp2 (インテグラル・デザイン / シルタープ2)を愛用していたが、最近はより軽量なこのZpacksの8.5′ x 10′ Flat Tarp (Zパックス / 8.5′ x 10′ フラットタープ)を使用しているとのこと。

素材は0.55 oz/sq.の薄いDCFで、重量は195g。またSiltarp2と同様、ループが多く、張り方の自由度が高い点も気に入っているという。

※3 パシフィック・ノースウエスト・トレイル: アメリカとカナダの州境付近、ワシントン州、アイダホ州、モンタナ州の3州をまたぐ1,200マイル(1,930キロ)のロングトレイル。歴史は古く、1970年にロン・ストリックランドによって考案された。そして約40年の歳月を経て、2009年にナショナル・シーニック・トレイルに指定された。現時点において、もっとも新しいナショナル・シーニック・トレイル。

DAY2のパックラフティング。ゴールの道の駅へ。


DAY2もゆるやかながら、流れはしっかりある那珂川の流れを楽しむ。

DAY2は、朝から小雨が降り続く天気。いつもならば少し嫌になるが、むしろ灼熱の暑さがやわらいで気持ちがいい。

この日は約17km先の道の駅かつらを目指す。川はずっと穏やかな流れで、みんなでのんびりとパックラフトを漕ぐ。

途中にあるキャンプ場は、夏休みのファミリーなどで賑わっていた。川を颯爽と漕ぐ僕たちに、岸から手を振ってくれた。


途中、小休憩のために陸にあがる。

気温は昼に近づいても26℃ほど。小雨に降られながらなので、ミストシャワーを浴びているようで、体感はこれよりも涼しい。今年の夏のおそろしい暑さを忘れてしまうほどだ。

コンスタンティンは、川に浮かんでいる釣りに使う木製の舟に興味を示したり、セキレイやオオタカらしき鳥を見つけては喜んだりと、日本の里山を楽しんでいた。

2時間ほど漕いだあたりで、小休憩を挟むために陸にあがる。ゴールまではあと少し。


ゴールの道の駅かつらに到着。

スタートから3時間半ほどで、ゴール地点の道の駅かつらに到着。上陸すると、コンスタンティンはどこで覚えたのか、「オツカレサマデシタ!」とみんなに声をかけて笑いをとっていた。

道の駅かつらからは、水戸駅に行くバスが出ている。バスの時刻表を確認しながら、手早く片付けをすませる。バスの時間まで少し時間が余ったので、道の駅で売っていたよもぎまんじゅうなどを食べたりして、旅の疲れを癒した。


水戸駅へ向かうバスで帰路に着く。

旅の最後にTRAILS INNOVATION GARAGEで遊んでくれたコンスタンティン。


那珂川からの帰りにTRAILS INNOVATION GARAGEに立ち寄るコンスタンティン。

水戸駅から帰路、コンスタンティンが「TRAILSにも行ってみたい!」と言ってくれたので、帰りにそのまま東京・日本橋のTRAILS INNOVATION GARAGE (以下、GARAGE) に。

GARAGEは、海外からも多くの人が訪れてくれる場となっており、過去にはTRAILSのHIKING FELLOWのリズ・トーマスを始め、Gossamer Gearのファウンダーのグレン・ヴァン・ペスキや同ブランドのチーム、また当時のSix Moon Designsに所属していた (現在は地図アプリFarOutの最高収益責任者) ホイットニー・ラ・ルッファなどが遊びに来てくれた。

コンスタンティンもGARAGEを楽しんでくれて、日本のガレージメーカーのギアがたくさん並んでいるのを見て、「とれも洗練されたナイスなものが多いね」と喜び、また「ULギアとMYOGマテリアルが一緒になった場所は、他の国にはどこにもないグレイトな場所だね!」と、じっくりとGARAGEのなかで遊んでくれた。


TRAILSのバックパック「ULTRALIGHT CLASSIC」を背負うコンスタンティン。

TRAILSオリジナルのバックパック「ULTRALIGHT CLASSIC」も背負ってみてもらってフィードバックをもらうこともできた。

「最新のULTRAのファブリックと、シンプルでクラシカルなスタイルの組み合わせがいいね。ドレーンホールやトップサイドポケットなど細かい箇所の作り込みも考えられてるし、ウエストベルトのフィット感もいいね」とコメントをくれた。

しばらくすると別行動で東京で遊んでいた、コンスタンティンのファミリーもGARAGEにやってきた。


コンスタンティンのファミリーと一緒にディナー。

コンスタンティンは、ファミリーでもパックラフトをしたり、ハイキングをしたりと楽しんでいる。今回の日本の旅でも、四国でみんなでキャンプをしたそうだ。

奥さんのマルタも、「お店のコンセプトがほんとうに素敵!ヨーロッパにもこんなお店があったらいいのに!」とアツく話してくれた。

僕らは「また日本に来る時は声をかけてね!」と伝えると、コンスタンティンは「ヨーロッパに来る時は、今度は自分が川にアテンドするから!」と答えてくれた。

またコンスタンティンと一緒にパックラフティングできる日が、すでに待ち遠しい。


今回の那珂川の旅のメンバー。左からトニー (TRAILS)、コンスタンティン、ナカザワ君、小川 (TRAILS)。

コンスタンティンとTRAILS Crewの6年ぶりの日本でのパックラフティング。TRAILS Crewのホームリバーのひとつ那珂川を一緒に旅をした。

日本の里山を流れる川、鮎の伝統漁のやな、そして河原でのキャンプを喜んでくれたコンスタンティン。

今度は、コンスタンティの住むヨーロッパの川へも遠征したい。

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佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

[about TRAILS ]
TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。有名無名を問わず世界中のTRAILSたちと編集部がコンタクトをとり、旅のモチベーションとなるトリップレポートやヒントとなるギアレビューなど、本当におもしろくて役に立つ情報を独自の切り口で発信していきます!

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