TRIP REPORT

TOKYO ONSEN HIKING #14 | 鐘ヶ嶽・七沢荘

2021.10.08
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TRAILS編集部crewの根津による『TOKYO ONSEN HIKING』、第14回目。

今回の温泉は、神奈川県は厚木市にある『七沢荘』。

七沢温泉郷にあり、日本の名湯百選にも選ばれている歴史ある温泉旅館だ。


登山道の途中から、厚木方面を眺める。

TOKYO ONEN HIKINGのルールはこれ。

① TRAILS編集部 (日本橋) からデイ・ハイキングできる場所
② 試してみたいUL (※1) ギアを持っていく (※2)
③ 温泉は渋めの山あいの温泉宿がメイン (スーパー銭湯に非ず)

ハイキングをするのは、東丹沢エリアにあり、厚木最高峰の鐘ヶ嶽 (かねがたけ・標高561m)。古くから信仰の山として親しまれてきた低山だ。


東丹沢の、歴史ある信仰の山。


丹沢は都心からも行きやすく、僕自身、これまで幾度となく足を運んできた山域だ。ただ、東丹沢となると大山 (おおやま・標高1,252m) くらいで、そのさらに東には目を向けていなかった。

そんな東丹沢のなかでも東端にあるのが、鐘ヶ嶽 (かねがたけ・標高561m) だ。


広沢寺温泉入口〜鐘ヶ嶽〜山神隧道〜七沢荘までのコースタイムは、2時間25分。このエリアの歴史を紹介している案内板が複数あるので、それを読みながら歩くとより楽しめる。


本厚木駅北口にある厚木バスセンターから、バスで30分。広沢寺温泉入口バス停がスタート地点。

調べてみると、信仰の山として知られていて、別名は浅間山 (せんげんさん)。山頂直下には、七沢浅間神社が建立されており、古くから養蚕・子宝・安産の神として信仰されてきた。

ちなみに、今回のルートは、七沢浅間神社の表参道でもある。地図で見たときには、七沢に住む方々にとっての里山、裏山と思っていたのだが、ただの裏山ではなかったのだ。


バス停から少し歩いたところからの眺め。正面に見える三角の山容が、鐘ヶ嶽。


痩せ尾根を越えて、かつて七沢城の見張りをしたという山頂へ。


登山道は、大きな鳥居からスタートした。

すぐさま石碑が現れる。これは「丁目石」と呼ばれるもので、山の上にある寺社仏閣を目指して信仰登山する人のために設けられた道標だ。山頂へとつづくこの参道は、28丁目まであるらしい。まだまだ先は長い。


この鳥居から登山道 (参道) が始まる。

丁目石がある表参道とはいえ、整備がしっかり行き届いているという感じではない。歩いていると痩せ尾根がいくつも現れ、道自体はかなりワイルドな印象だ。それがなんだがグッときた。僕が好きなタイプの道でもある。


木の根が表出した痩せ尾根がつづいていた。

その険しさがまさに信仰の道という感じでもあったが、僕がいちばん興味を抱いたのは、戦国時代、この鐘ヶ嶽が、ここから南東に位置する七沢城を見張る場所として機能していたことだった。

合図を送るための鐘を山頂に置いていたことから、鐘ヶ嶽と呼ばれるようになったという説もあるほどだ。


巨岩の上に石碑が立っていた。ここから七沢方面、厚木方面が、一望できる。

敵を見つけやすく、かつ敵からは見つかりにくい。たしかに、そんな感じのする登山道である。

途中、見晴らしのいい岩があった。戦国時代、ここで見張りをした人もいたのだろうか。そんなことを思いながら、僕も七沢城方面に目を向けた。


七沢浅間神社。このすぐ先にある山頂には眺望がないため、ここが表参道ラストの絶景スポット。

距離にしてあと60mという地点で、突然神社が現れた。七沢浅間神社である。こんなところによく建てたもんだな……と驚きつつ、僕は山の神に手を合わせた。


ローインパクトなULギアで、静かなひとときを過ごす。


山頂には、休憩するにはうってつけのテーブルとイスがあったので、ここでランチをとることにした。


『Snow Peak / Titan Single Mug 450』(実測68g)、『T’s Stove / チタン五徳』(実測18g)、『自作アルコールストーブ』(実測26g)。

今回使用したクッカーは、ULクッカーの定番ともいえる、『Snow Peak / Titan Single Mug 450』(スノーピーク / チタンシングルマグ450)。

たとえば、使用する湯量がドライフード用に200ml、コーヒー用に160mlといった具合で、ミニマムで行くならこのサイズ感がドンピシャなのだ。しかも、丈夫なつくりながら重量はたったの68g (実測)。

合わせたストーブは、缶コーヒーの空き缶を利用して自作した、カーボンフェルトアルコールストーブ (26g)。


自作のアルコールストーブの燃焼風景。とにかく、音が静かで、心地良い。

カーボンフェルトを用いると、燃焼音がほぼないので、とにかく静か。ローインパクトいう言葉は、本来、環境負荷の少なさを指すものだが、音が出ないというのも耳への負荷が少ない (耳障りじゃない) という点で、ある意味ローインパクトと言えると僕は思っている。


TRAILS INNOVATION GARAGEのトレイルミックス『MYOM(Make Your Own Mix)』。原材料はすべてオーガニックで、素材の味わいが楽しめる。

いつも行動食として食べていたTRAILS INNOVATION GARAGEのトレイルミックス『MYOM (Make Your Own Mix)』を、今回は食後のデザートに。

ドライフードとコーヒーでは、なかなか摂取できない、ビタミン、ミネラルが豊富なドライフルーツをメインに詰めてきた。


『Hammock Gear / Standard Hammock』(ハンモックギア / スタンダードハンモック)、Mesh Peak Pocket (メッシュ・ピーク・ポケット) とRidgeline Organizer (リッジライン・オーガーナイザー) のセット (実測403g)。

お腹が膨れたところで、ハンモックタイム! 今回使用したのは、『Hammock Gear / Standard Hammock』 (ハンモックギア / スタンダードハンモック) に、Mesh Peak Pocket (メッシュ・ピーク・ポケット) とRidgeline Organizer (リッジライン・オーガーナイザー) を組み合わせたもの (アクセサリー込みで実測403g)。

このハンモックはゆとりのあるサイジングに加えて、生地が滑らかで、寝てもつっぱり感がない。だから、ストレスなくずっと寝てられるのだ。

実際、小1時間ほどくつろいでいたのだが、そんな長居するときに重宝するのが、この2つのアクセサリー。このポケットに、飲み物や行動食、本やスマホなどを入れておくと、すごく便利なのだ。


パワースポットとしても知られる、七沢温泉。


下山道を一気に下ってロードに出ると、そのすぐそばに『山神隧道』という全長230mのトンネルがある。

汗をかいて下山してきたのであれば、温泉に入る前にここを通るのもおすすめだ。僕も往復してみたが、昼間にもかかわらずトンネル内は真っ暗で、ゾクっとする。歩いていると、まるで前に進んでいないかのような錯覚にもおちいるので、身も心もクールダウンできるはずだ。


山神隧道は、心霊スポットとしても有名。

ここから40分ほど歩くと、お目当ての『七沢荘』にたどり着く。

今回は、3代目の中村浩人 (ひろと) さんにお話を伺った。聞けば、先先代のオーナー (祖父) が1963年に民宿としてスタートしたのが、七沢荘のはじまり。1989年から3年かけて温泉を掘り当て、本格天然温泉の旅館として営業するようになったそうだ。


「宇宙と地中から元気をもらう宿」がコンセプトの七沢荘。日帰り入浴の受付時間は、8時〜20時。料金は、大人 (中学生以上) 1,100円。詳しくはホームページを参照 (https://www.nanasawasou.jp/)。

館内に入ってまず目に入るのが、この大きな岩。群馬県に流れる神流川 (かんながわ) 上流で採掘された庭石で、先先代の祖父が見つけてきたのだという。およそ16tあるらしく、当時ここに下ろしたら、もう動かせなくなってしまったそうだ。それでこれを基準に玄関を作ったため、表の道路に対して玄関の向きが斜めになっているとのこと。

実はこの七沢荘のコンセプトは、『宇宙と地中から元気をもらう宿』であり、この巨大な庭石もパワースポットのひとつである。

そのほかにもさまざまなパワースポットがあるため、本末転倒かもしれないが、温泉に入らなくてもかなり楽しめる場所なのだ。


パワースポットのひとつ、巨大三波石 (さんばせき)。

3代目の中村さんは「パワースポットっていうと怪しいと思う人もいるかもしれませんが、別に壺や石を売りつけるわけではありません (笑)。純粋に、お客様が明日家を出る一歩を応援したいと思っているんです」と語る。

お客さんが楽しんでくれることはなんでもやるフットワークの軽さが中村家のDNAでもあるようで、先代は以前、七色音楽祭という野外音楽フェスをここで開催。3代目も、独自のイベントを開催したり、公式キャラクターを作ったりと、従来の温泉旅館という枠にとらわれない活動をしているのが、興味深い。


敷地内には、開運・不老長寿の九宮飛び (きゅうきゅうとび) の秘伝スポットもある。

さて、温泉はというと、これまた最高なのだ。

県下最高濃度を誇るお湯はpH 9.54以上の強アルカリ性。リンス作用を持つメタホウ酸・メタケイ酸を含んでいて、お肌がすべすべになる。


足湯エリアも広いので、のんびりくつろぐことができる。

僕が入った男湯は、天狗の湯という露天風呂と、波動の湯という内風呂で構成されている。

特に露天風呂は開放感が満点で、日本庭園を思わせる風情ある佇まい。3つのお風呂からなる露天風呂なので、たっぷり時間をかけて味わうことができる。日本の名湯百選に選ばれ、さらにBIGLOBE主催の『温泉大賞』にも2020年、2021年と2年連続で入賞しているのも納得だ。


男湯の露天風呂・天狗の湯。

また七沢荘は、とある有名アイドルグループのファンにとっての聖地になっていて、なぜかファンがグッズを置いていくコーナーが設けられている。

自由すぎてビックリしたが、ここにも七沢荘さんならではの、面白そうなことはなんでもやろう! というスタンスが如実に現れている。

1回来ただけでは、全貌がとらえきれないくらいトピックスがありすぎるので、再訪しないわけにはいかなさそうだ。


表参道の途中にある岩場。バックパックを枕に寝そべり、至福のひとときを過ごした。

東丹沢の端のほうに見つけた、素晴らしい山と、ユニークな温泉旅館。

丹沢は、東がアツい! と思わせてくれたハイキングとなった。

さて、次の『TOKYO ONSEN HIKING』はどこにしよう。

※1 UL:Ultralight (ウルトラライト) の略であり、Ultralight Hiking (ウルトラライトハイキング) のことを指すことも多い。ウルトラライトハイキングとは、数百km〜数千kmにおよぶロングトレイルをスルーハイク (ワンシーズンで一気に踏破すること) するハイカーによって、培われてきたスタイルであり手段。1954年、アパラチアン・トレイルをスルーハイクした (女性単独では初)、エマ・ゲイトウッド (エマおばあちゃん) がパイオニアとして知られる。そして1992年、レイ・ジャーディンが出版した『PCT Hiker Handbook』 (のちのBeyond Backpacking) によって、スタイルおよび方法論が確立され、大きなムーヴメントとなっていった。

※2 実は、TRAILS INNOVATION GARAGEのギャラリーには、アルコールストーブをはじめとしたULギアが所狭しとディスプレイされている。そのほとんどが、ULギアホリックの編集長・佐井の私物。「もともと使うためのものなんだし、せっかくだからデイ・ハイキングで使ってきてよ!」という彼のアイディアをきっかけにルール化した。

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WRITER
根津 貴央

根津 貴央

1976年、栃木県宇都宮市生まれ。幼少期から宇宙に興味を抱き、大学では物理学を専攻。卒業後、紆余曲折を経て広告業界に入り、12年弱コピーライター職に従事する。2012年に独立し、かねてより憧れていたアメリカのロングトレイル「パシフィック・クレスト・トレイル(PCT/総延長4,265km)」のスルーハイクのために渡米。約5カ月間歩きつづける。2014年には「アパラチアン・トレイル(AT/総延長3,500km)」の有名なイベント「Trail Days」に参加し、約260kmのセクションを歩く。同年より、グレート・ヒマラヤ・トレイル(GHT)を踏査する日本初のプロジェクト『GHT Project(www.facebook.com/ghtproject)』を仲間と共に推進中。2018年4月、TRAILSに正式加入。著書に『ロングトレイルはじめました。』(誠文堂新光社)、『TRAIL ANGEL』(TRAILS) がある。

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