TRIP REPORT

TOKYO ONSEN HIKING #11 | 仙元山・玉川温泉

2021.03.24
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TRAILS編集部crewの根津による『TOKYO ONSEN HIKING』、第11回目。

今回の温泉は、埼玉県は比企郡 (ひきぐん) ときがわ町 (まち) にある『玉川温泉』。

温泉旅館風情ただよう名前だが、「昭和レトロな温泉銭湯」というキャッチコピーというかコンセプトを掲げた、一風変わった温泉なのだ。

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仙元山 (標高298.9m) 付近からの眺め。

TOKYO ONEN HIKINGのルールはこれ。

① TRAILS編集部 (日本橋) からデイ・ハイキングできる場所
② 試してみたいUL (※1) ギアを持っていく (※2)
③ 温泉は渋めの山あいの温泉宿がメイン (スーパー銭湯に非ず)

このエリアは比企丘陵と呼ばれていて、今回のルート上に山の名前はあるものの、基本的には丘である。

つまり、山登りではなく、丘歩き。散歩の延長で楽しめる温泉ハイキングなのだ。


民家のすぐ裏にある裏山。


そもそも玉川温泉は、山と高原地図 (昭文社) をじーっと眺めていてたまたま見つけた温泉だ。

最寄りの駅まで歩くには遠すぎるという、やや不便な場所にあるため、これまで見逃していたのだ。でも、帰りはともかく、行きに関しては小川町駅から山をつたいながら行けそうだった。

まあ山とは言っても、メインとなる仙元山の標高はたかだか298.9m。これまでの温泉ハイキングのなかでも、ダントツに低い標高である。

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小川町駅〜玉川温泉までのコースタイムは、2時間40分。仙元山は2つあるが、1つ目のほうが標高298.9m。帰りのアクセスが不便だが、玉川温泉から約2kmのところに日影バス停があり、そこから小川町駅まで約10分。

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駅前にコンビニがあるので、そこで必要な食べ物や飲み物は購入できる。駅前商店街でのみちくさもおすすめ。

東武東上線の小川町 (おがわまち) 駅からスタートし、小川町の駅前商店街を抜けて、仙元山の麓へと向かっていく。

コースタイムどおり20分でたどり着く予定だったが、商店街の入口にあるお団子屋さんを素通りすることができず、さっそく寄り道。

みたらし団子と草もちを買い、満足げにほおばりながら歩いていたら、倍近くの時間がかかってしまった。

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小川町駅から歩きはじめて、遊歩道に入る手前からの仙元山の眺め。


庚申塔あり、城跡ありの、ただならぬ丘。


住宅地をとおり、とある民家の裏手から山道がはじまっている。入口の木製看板には、「仙元山遊歩道」と書かれている。

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小川町の町並みを背にして山のなかへと入っていく。

登山道ではなく遊歩道。そうだ、今日は登山じゃないのだ。遊歩なのだ。僕のなかに潜在している登る気持ちをすべて取っ払って、今日は遊ぶように歩くのだ。なんだか山に入る前から楽しくなってきた。

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ただの丘なんだけど、そこはかとなくワイルドな雰囲気がただよっている。

山のなかを進んでいくと、思ったほど整備されていないことに気づく。遊歩道とはいえ、木道とか木の階段があるわけではない。どちらかというと、けもの道のような雰囲気だ。でも、こっちのほうが僕にとってはむしろ遊歩っぽく感じられて、歩くほどに気持ちが昂ぶる。

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庚申塔が何十個も立ち並んでいる百庚申。

30分ほど歩いて小高い広場にでると、あたり一面に無数の石碑が並んでいた。なんだなんだ? と思って看板を見ると、これはすべて庚申塔 (こうしんとう) で、百庚申と称されているとのこと。

江戸時代に立てられたもので、中国の道教から生まれた庚申信仰によるものだそうだ。

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基本的に樹林帯だが、飽きのこない道がつづいている。

百庚申をあとにしてすぐのところに、今度は「青山城跡」という城跡が現れた。堀切 (ほりきり ※1) 跡や、本郭 (ほんぐるわ ※2) 跡などが今なお残されていて、それらをたしかめながら歩いていく。

※1 堀切:敵の侵入を防ぐための掘。
※2 本郭:郭とは城の囲いのことで、本郭とは本丸、城の中核のことを指す。

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2つ目の仙元山の山頂。石碑や石灯篭があり、厳かな雰囲気。ちなみにこの巨大な碑は、大正時代に冨士講の信者が建てたのだとか。

実は、ここを含めた比企エリアは、戦国時代、上杉氏や北条氏の戦の舞台であったため、数多くの城跡が残っている。

スタート前は、完全にみくびっていたが、ここはそんじょそこらの丘ではないのだ。


春の陽気に包まれながら、うららかなULクッキング。


山城を攻略するハイカー? のごとく歩いている僕も、腹が減っては戦ができぬ、ということで、ランチタイムを取ることにした。

春のハンモックはいい。なぜかって、宙に浮いていて背中側が涼しいから、春の陽気にピッタリなのだ。しかも、短パンだとハンモックの生地のひんやり感も味わえて、なおさら気分がいい。

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パラシュート素材を用いているため軽量で丈夫な、Hummingbird HammocksのSingle+。

今回のハンモックは、『Hummingbird Hammocks / Single+』(ハミングバードハンモック / シングルプラス)。

小さすぎず、大きすぎず、それでいて重量はたったの210g。パッカブル仕様だからスタッフザックを失くすこともなく、安心して出し入れできるのもいい。

のんびり揺られながら、TRAILS INNOVATION GARAGEのトレイルミックス『MYOM (Make Your Own Mix)』をほおばる。

事前に天気予報で気温が上がることはチェック済み。きっとフルーツが食べたくなるだろうと思い、甘みと酸味のバランスが絶妙な白いちじくをたくさん入れてきた。

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食物繊維が豊富なオーガニックの白いちじくをたっぷり入れた『MYOM (Make Your Own Mix)』。

クッカーとストーブは、素朴さをテーマにセレクト。もともと、今回は丘のハイキングということもあって、気取らず楽しもうと思っていた。

だから、クッカーもストーブも、シンプルであることはもちろん、形状も寸胴な感じがマッチしていると考えたのだ。

それで選んだクッカーが、『VARGO / Ti-Lite Mug 900」(バーゴ / チタニウム・ライト・マグ900) だ。バーゴらしいチタン製のマグで、900mlの容量がありながら重量は121g。たっぷりのお湯がわかせるので、今回、食事以外にコーヒーを2杯も飲めて、個人的には大満足。

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クッカーは、VARGOのTi-Lite Mug 900。ストーブは、BatchstovezのGram Weenie Pro。

ストーブは、『Batchstovez / Gram Weenie Pro (バッチストーブ / グラム・ウィーニー・プロ)』。20gの超軽量アルコールストーブである。

サイドバーナーゆえ、Ti-Lite Mug 900のような大きめのマグにもちょうどよく (炎がはみ出ない) 、効率よく湯沸しができる。燃焼っぷりを見てもらうとわかると思うが、ちっちゃいながらも、パワフルなのもいい。

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たかだか20gのアルコールストーブだけど、見よ、この火力の強さを。

ひとしきりランチを楽しんで、いざ温泉へ。緩斜面を下るのみということで、余力が残りまくっていた僕は、一気に駆けおりた。

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温泉にドボンしたくて、ダッシュ!


山から出ると、目の前に昭和の温泉が現れた。


実はこの下山ルートは、山と高原地図には載っていなかった。もちろんグーグルマップにも載っていない。でも地図を見ていて、玉川温泉までおりれそうな感じがしたのだ。

実際はというと、2つ目の仙元山の山頂から、玉川温泉へとつづく明瞭なルートがあった。しかも途中に玉川温泉の看板もあった。

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下山口の真ん前に、突如として現れた昭和レトロな温泉銭湯『玉川温泉』。

そして、なんと温泉は下山口の目の前に現れた。もはや、この温泉に行くためだけのルートといっても過言ではない感じだ。

しかもこの昭和感。

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ダイハツのオート三輪、ミゼットがお出迎え。

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館内にある玉川商店では、昔なつかしのおもちゃやお菓子が所狭しと並んでいる。

館内に入ると、昭和感というか、もはや雰囲気がどうこうではなく、タイムトラベルしたかのような心地になる。

昭和生まれの年配の人に人気かと思いきや、副支配人の神津 (こうづ) さんいわく「最近は若者に昭和レトロブームが来ていて、週末は10代〜20代の女性も本当に多いんですよ」とのこと。

玉川食堂という館内の食事処では、メニューにナポリンタンが主役の洋食プレートや、給食でおなじみの揚げパンもあり、昭和なフードメニューも人気だそうだ。

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「和 (なごみ) 湯」は、昭和の銭湯を彷彿とさせる富士山の絵を眺めながら温泉を楽しむことができる。

お風呂は、岩風呂がある「昭 (あきら) 湯」と、富士山の絵が描かれた風呂がある「和 (なごみ) 湯」があり、週ごとの男女入れ替制になっている。

今回は、「昭湯」の岩風呂に入ったのだが、露天の気持ち良さはもちろんのこと、地下1,700mから湧き出るph10のアルカリ性単純温泉は、湯上りの肌がすべすべして爽快。ハイキング後にうってつけだった。

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「昭 (あきら) 湯」の岩風呂は、広くて開放的。

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実に広々としていて、人里離れた温泉宿に来たかのよう。

さらに、大広間でカラオケも楽しめたり、図書室で本を読みながらくつろぐこともできたりと、温泉だけ入って帰るのがもったいないくらい。

次に来るときは、温泉以外もたっぷり味わいたい!

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丘とは思えない、素晴らしいトレイルがたくさんあった。

ハイキング後の温泉っていうのは、メインディッシュの後のデザートみたいなイメージかも知れないが、今回はどちらも主役という感じがした。

なんなら、温泉を楽しんでからハイキングに行くというのもありかもしれない。

さて、次の『TOKYO ONSEN HIKING』はどこにしよう。

※1 UL:Ultralight (ウルトラライト) の略であり、Ultralight Hiking (ウルトラライトハイキング) のことを指す。ウルトラライトハイキングとは、数百km〜数千kmにおよぶロングトレイルをスルーハイク (ワンシーズンで一気に踏破すること) するハイカーによって、培われてきたスタイルであり手段。1954年、アパラチアン・トレイルをスルーハイクした (女性単独では初)、エマ・ゲイトウッド (エマおばあちゃん) がパイオニアとして知られる。そして1992年、レイ・ジャーディンが出版した『PCT Hiker Handbook』 (のちのBeyond Backpacking) によって、スタイルおよび方法論が確立され、大きなムーヴメントとなっていった。

※2 実は、TRAILS INNOVATION GARAGEのギャラリーには、アルコールストーブをはじめとしたULギアが所狭しとディスプレイされている。そのほとんどが、ULギアホリックの編集長・佐井の私物。「もともと使うためのものなんだし、せっかくだからデイ・ハイキングで使ってきてよ!」という彼のアイディアをきっかけにルール化した。

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WRITER
根津 貴央

根津 貴央

1976年、栃木県宇都宮市生まれ。幼少期から宇宙に興味を抱き、大学では物理学を専攻。卒業後、紆余曲折を経て広告業界に入り、12年弱コピーライター職に従事する。2012年に独立し、かねてより憧れていたアメリカのロングトレイル「パシフィック・クレスト・トレイル(PCT/総延長4,265km)」のスルーハイクのために渡米。約5カ月間歩きつづける。2014年には「アパラチアン・トレイル(AT/総延長3,500km)」の有名なイベント「Trail Days」に参加し、約260kmのセクションを歩く。同年より、グレート・ヒマラヤ・トレイル(GHT)を踏査する日本初のプロジェクト『GHT Project(www.facebook.com/ghtproject)』を仲間と共に推進中。2018年4月、TRAILSに正式加入。著書に『ロングトレイルはじめました。』(誠文堂新光社)、『TRAIL ANGEL』(TRAILS) がある。

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