MYOGer NIGHT & MARKET #04 イベントレポート ~ ULTRALIGHT GARAGE MAKER MOVEMENT ~ (後編)

2025年7月。TRAILS INNOVATION GARAGE (以下、GARAGE) にて、「MYOGer NIGHT & MARKET」が開催された。
MYOGer NIGHTは第4回目の開催、MYOGerたちによるフリーマーケット「MYOGer MARKET」は今回が初開催となる。また「MSR & THERM A REST」のPOP-UP STOREも、同じ週末に同時開催された。
MYOGのギアから、大手メーカーによるプロダクトまで、さまざまなイベントコンテンツが同時並行で開催される、フェスのような会場となった。
MYOGer MARKET、MSR & THERM A REST POP-UPの様子は前編をチェックしてみてください (前編はコチラ)。今回の後編では、MYOGer NIGHT#04の詳細をレポート。
今回のMYOGer NIGHTは、特別ゲストは2組!誰が来てくれたかも、本記事でレポートしていますのでお楽しみに。
MYOGer NIGHT #04、いよいよスタート!
MYOGer NIGHT#04のスタート!
同日の日中には、MYOGer MARKET、「MSR & THERM A REST」のPOP-UP STOREで賑わっていたTRAILS INNOVATION GARAGE。
そして夕刻よりMYOGer NIGHTのスタート!
今回で第4回目となるMYOGer NIGHT。ビール片手にワイワイとMYOGについて語り合うMYOGerたち。
すでにMYOGをやっている人はもちろん、これからMYOGやりたい!という方もウェルカムなイベントだ。
MYOGに興味があること、トレイルで遊んでいること。それだけが参加条件である。イベントでは、参加者で投票する「MYOG AWARD」なども開催する。
ロング・ディスタンス・ハイカーでありMYOGerであるSHIGE (写真右)と、前回から参加してくれているMYOGerのBENJII。
女性のMYOGerたちも参加。
何度もリピーターで参加してくれているMYOGerたち (MASAさん [写真左]、JIROさん [写真中央]) と、TRAILS編集長の佐井 (写真右)。
毎回、楽しそうに参加してくれるリピーターのMYOGerたち。その常連たちと、新たに参加してくれたMYOGerたちが、毎回分け隔てなくワイワイ盛り上がれる雰囲気も、MYOGer NIGHTの特徴だ。
今回も、MYOG歴だとか初参加とかに関わらず「MYOG」という肴だけで、一気に熱量の高いグルーブができあがる。
MYOGしたギアを見せ合い、参加者投票によるAWARDも開催。
会場には所狭しとMYOGしたギアがびっしりと並ぶ。
ULレジェンド『山より道具』のテラさん登場!
『山より道具』の寺澤英明さんがスペシャルゲストとして参加!
そして、今回はスペシャルゲストとして寺澤英明 (てらさわ ひであき) さん (以下、テラさん) が遊びに来てくれた!
この日のMYOGer NIGHTで司会のTRAILS編集長の佐井が、サプライズゲストとしてテラさんを紹介すると、会場がどよどよと沸き立つ。「ULのレジェンドに遭えたよ‥」というささやき声が、会場から聞こえてきた。
テラさんと言えば、ゼロ年代のUL黎明期において、熱狂的な支持があった伝説のブログ『山より道具』(※1)。このブログでは、テラさんがそれまで見たこともない海外のULギアを中心に、自腹で購入しては理系出身の寺さんらしい科学的かつマニアックな視点でレビューし、その内容をコアなULハイカーが食い入るようにチェックしていた。
それは単なるギアレビューにとどまらず、当時評価が定まらなかったULギアを、どのように評価し、価値を見出すかという視点を提示し、ULについての知恵を広めるのに大きな役割を果たした。
MYOGerたちが作ったギアを丁寧にチェックするテラさん。
TRAILS Crewから「遊びに来てくれてありがとうございます」と声をかけると、「今まで見たことないギアもあるかも、と期待してきたんですよ」とイノーベーションが大好きなテラさんらしい発言。
その後もMYOGerたちのギアを丁寧に見て、このイベントを楽しんでくれていた。
※1 山より道具: 日本のULシーンに大きな影響を与えた寺澤さんのブログ。ゼロ年代に、海外通販でULギアを仕入れては試し、そのレビューを書いていた。当時、コアなULハイカーたちは、このブログを熱心にチェックをしていた。このブログをベースに書籍化されたのが『ウルトラライトハイキングギア』(山と溪谷社) 。
同日POP-UP STOREを開催していたMSR、THERM A RESTチームによるメンテナンスTIPSの特別レクチャー!
MSRやTHERM A RESTを扱う加者がMYOGしたギアをお披露目している風景。
今回はダブルゲストでテラさんに続き、同日にPOP-UP STOREを開催していたMSRやTHERM A RESTのPR担当の西脇さんも登場!
MYOGer NIGHTでは、MYOGの楽しさを伝えること、MYOGを始める機会を提供することなどを始め、「MYOGの知恵 (TIPS) の交換」もイベントのVALUEとして掲げている。
そこで今回は特別に西脇さんに、ウェアのメンテナンスの重要性と効果のTIPSとして、近年話題の環境に配慮した「PFC (過フッ素化合物類) フリー」のレインウェアなどの洗剤・撥水剤「STORM」を使った講義をしてもらった (このSTORMも、MSRの日本代理店を務めるモチヅキで取り扱っている)。
patagoniaで取り扱うウェアの洗剤・撥水剤がSTORMに切り替わったことなどでも、関心を持っている人もいるかもしれない。
PFCフリーの環境に配慮された「STORM」の洗剤・撥水剤がセットになったアパレルケアキット。
MYOGerたちも、PFCフリーについては関心を持っている人が多かった。とても重要なテーマなので、気になった方はぜひSTORMのホームページなどもチェックしてみてほしい。
PFC (Perfluorocarbon / 過フッ素化合物類) は、アウトドアウェアの防水・撥水技術に長年使われてきたもの。現在は、このPFCは体内に堆積すると人体に影響を及ぼすといわれ、ヨーロッパや北米では、PFCを含む製品の販売が規制されるようになった。
現在、販売されているPFCフリーの防水ウェアは、それ以前のPFCを使ったもの(C8, C6などと呼ばれる) と比べ、人体・環境への影響はないように改善されている一方で、撥水性と撥油性 (はつゆせい) は劣る。この撥油性の低さとは、汗や皮脂などの油や汚れのダメージの受けやすさを指し、これらの汚れが撥水性・防水性の低下につながってしまう。
つまり、PFCフリーの防水ウェアは、特に洗濯して、防水・撥水のパフォーマンスを復活させることが大事なのだ。
STORMの実演風景。
そんなPFCフリーの説明を西脇さんがわかりやすく解説してくれながら、実際にご自身の防水ウェアを例に、STORMを使わずにメンテナンスしていないものと、STORMを使用したもので、撥水の実演をしてくれた。
このSTORMは、環境や人体に優しいPFCフリーの洗剤・撥水剤を初めて開発したメーカーであり、他社のPFCフリーの洗剤・撥水剤にはない独自の構造 (ハイパーブランチ分子構造)を採用し、そのパフォーマンスは先述のとおりpatagoniaも認めるものとなっている。
MYOGerたちもふむふむとうなづき、ギアについての知識をひとつアップデートできたと満足気であった。
MYOGer AWARD。
MYOGer NIGHT#04の参加者たちのMYOGしたギア。制作したMYOGerは上段左から、1段目:NARI (*上)、YU-ICHI (*下)、KANEYAN、DAYLIGHT。2段目;KISSY、FUMI、KEISUKE。3段目:YAB、GEN、MASA、 EMIKO(*上)、TAKASHI (*下)、NENTA。4段目:KANAYA、JITO、SHIGE、WAKATAKE、KAN、YASU。
全員のMYOGのプレゼンが終わったところで、今回もAWARD (賞) の投票を開催。前回同様、3つのAWARDを設けた。
BEST STARTER:
TRAILSによる選出で、MYOGを初めて1年以内のMYOGerで、最も”Challenging”と感じたMYOGerに送られるAWARD。
ULTRALIGHT CLASSIC:
TRAILSが熱狂する実験的でイノベイティブなULカルチャーにおいて、その大事なエッセンスである”Simple × Classic × Super Ultralight”を感じさせてくれるギアをつくったMYOGerに送られるAWARD。
BEST MYOGer:
最も”Excitement (面白い、興奮した、興味をそそられた)” と感じたMYOGerとして、会場の参加者から一番多く票を集めたMYOGerに送られるAWARD。
■「BEST STARTER」:Kibi Porch by YU-ICHI
YU-ICHIさんがMYOGしたポーチ(22g)。
MYOGのプレゼンをするYU-ICHIさん。
「BEST STARTER」のAWARDをゲットしたのは、MYOGを始めてちょうど1年のYU-ICHIさん。MYOGしたのは、桃太郎のきびだんごがモチーフという「Kibi Porch」。
山ですれ違ったハイカーに声をかける、ちょっとしたきっかけになればと思い、桃太郎がきびだんごを巾着から出して渡して仲間をつくることに着想を得て、腰から下げるポーチを製作。
腰にも装着できるし、肩がけもできるし、夜はヘッドランプをを入れればランタンにもッグだ。腰に下げても邪魔にならない絶妙なサイズを決めるのには、だいぶ試行錯誤をしたそうだ。
YU-ICHIさんは、MYOGer NIGHTの度に新しいギアを作って参加している。今回も今までに自分が作ったことがない種類のギアをMYOGし、細かな仕様も工夫を加えて新しいものに果敢にチャレンジをしている。その姿勢が、BEST STARTERの選出理由となった。
■「ULTRALIGHT CLASSIC」:3WAYバック (カメラバッグ、バックパック、ファニーパック) by KANEYAN
KANEYANさんがMYOGした3WAYバック (184g)。
カメラバックを発表するKANEYANさん。
「ULTRALIGHT CLASSIC」のAWARDをゲットしたのはKANEYAN。MYOGしたのは、カメラバック (チェストバック) にも小型バックパックにも、ファニーパックにもなる変身ギア。
KANEYANは、第1回のMYOGer NIGHTで、サコッシュにもバックパックにもなるギアで「BEST STARTER」に選ばれた。今回は、その進化系。トランスフォームする構造は、その時のものをベースに使いながら、今回は3WAYで使えるギアを作った。
カメラバックをそのまま小型バックパックにもできることで、アタックザックとしても使えたり、自転車で使用する時にはウェストバックとしても使えたりと、一つのギアで複数の機能を持たせられないかと苦心した。また前作よりも構造をシンプルにすることで軽量化もしている。
丁寧につくることよりも、自分にとっての必要十分を実現できるアイディアをとにかく具現化してみようとする好奇心の強さを、体現したギアであったことが、今回のULTRALIGHT CLASSICのAWARDの選出理由となった。
■「BEST MYOGer」:ハラマキ by NARI
NARIさんがMYOGしたハラマキ (重量 124g)。
ハラマキを発表するNARIさん。
参加者全員から最大投票数を集め、見事に「BEST MYOGer」に輝いたのは、NARIさんのハラマキ。
お腹側はアルパカ混合ウールで保温機能を持ち、背中側は汗をかくので吸水素材の抗菌PVAスポンジを採用。背中側はバックパックがあって風も当たらないから乾かすというより、吸水に振り切った素材選びをした、という。
またセパレートできる (ジッパーで分離できる) ので、吸水素材の抗菌PVAスポンジは、テントの露を拭き取ったりするのにも使えるというマルチユース性もある。またセパレートできるようにしたのは、今後は腹側の生地と、背中側の生地について、他のものを試せるようにという狙いもあるとのこと。
会場のMYOGerたちからも、あるようでなかった構造と素材選びの観点、またハラマキだけではないマルチユース性への関心から、多くの票を集めた。このハラマキの進化系を次は見てみたい。
スペシャルゲストのテラさんから「山より道具」賞も選出!
「山より道具」賞を発表するテラさん
サプライズ・ゲストとして参加してくれたテラさんも、特別に「山より道具」賞を選んでくれることになった。
その「山より道具」賞をゲットしたのは、BEST MYOGer賞にも選ばれたNARIさん!
■「山より道具」賞:ハラマキ by NARI
テラさんとツーショットのNARIさん。
テラさんは選出理由で、「かつて自分もポッサムダウン (軽量で保温性が高い素材) のハラマキを探したことがあったんだすよ」と話してくれた。
またもともと自転車用の道具であったサコッシュを、山で使うようになったのは日本のULが生み出した文化であり、今では世界の有名ブランドさえも製品化するアイテムとなったことに触れ、「ハラマキも同じように世界に羽ばたく日本のUL文化発のギアとなれば」という期待を込めての選出であったことを語ってくれた。
今回だけの特別賞で「MSR賞」も!
■「MSR」賞:バックパック by DAYLIGHT
アメリカのアパラチアントレイルを歩くために作った、DAYLIGHTさんのバックパック。
MSRを受賞したDAYLIGHTさん。
今回、同日でPOP-UP STOREも開催してくれ、MYOGer NIGHTでもTIPSのプレゼンをしてもらったMSRチームからが、今回だけの特別賞を用意してくれた!
その「MSR」賞をゲットしたのは、アパラチアン・トレイル (AT ※2)の ハイカーであるDAYLIGHTさん!
MSRのPR担当西脇さんと、DAYLIGHTさん。
このバックパックは、DAYLIGHTさんがATをスルーハイキングするためにMYOGしたもの。ちなみにDAYLIGHTさんのATのトリップレポートは、TRAILSでも連載している (記事はコチラ)。
DAYLIGHTさんは60歳を過ぎてから、海外でのロング・ディスタンス・ハイキングの旅に出たハイカーでもある。西脇さんからも「旅への思いの強さが込められたギア」であることが、今回のMSR賞の受賞理由であると語ってくれた。
※2 AT:Appalachian Trail (アパラチアン・トレイル)。アメリカ東部、ジョージア州のスプリンガー山からメイン州のカタディン山にかけての14州をまたぐ、2,180mile (3,500km) のロングトレイル。アメリカ3大トレイルのひとつ。
MYOGer NIGHT #04に集まってくれたMYOGerたち。
ゲストも多くリッチな内容だったMYOGer NIGHT#04のレポート。
このMYOger NIGHT#04で登場したMYOGerたちのギアは、後日「MYOGer Works」の記事でレポートするので、そちらもぜひお楽しみに!
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