TRIP REPORT

TOKYO ONSEN HIKING #09 | 武甲山・武甲温泉

2021.01.13
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TRAILS編集部crewの根津による『TOKYO ONSEN HIKING』、第9回目。

今回は、奥武蔵エリアの最高峰としても知られる武甲山 (ぶこうさん) の麓にある、その名も『武甲温泉』。

武甲山とセットで楽しまないわけにはいかないであろう温泉だ。

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武甲山 (標高1,304m) の山頂。

TOKYO ONEN HIKINGのルールはこれ。

① TRAILS編集部 (日本橋) からデイ・ハイキングできる場所
② 試してみたいUL (※1) ギアを持っていく (※2)
③ 温泉は渋めの山あいの温泉宿がメイン (スーパー銭湯に非ず)

武甲山はこの連載初の独立峰ということもあり、山頂から眼下に見える町並みが新鮮で、横瀬町 (よこぜまち) をはじめとした秩父盆地の景色が最高だった。

一方で、盆地にいる時は、堂々たる武甲山がいつも目に入る。この切り離すことのできない山と町の世界感を存分に味えたハイキングとなった。



鳥居を起点に、表参道を歩いていく。



武甲山といえば、何を思い浮かべるだろう。奥武蔵の最高峰 (標高1,304m) 、ピラミッドのような山のカタチ、石灰岩採掘あたりだろうか。

地図を見ると、横瀬町からのメインの登山ルートには「表参道」と記されている。僕は以前からそれが気になっていた。

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スタート地点の一の鳥居 (駐車場あり) までは、西武秩父線「横瀬駅」からタクシーで12分。一の鳥居〜武甲温泉までのコースタイムは6時間5分。

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一の鳥居には駐車場があり、そこから登山道がはじまっている。

ご存知の人も多いだろうが、武甲山の山頂には『武甲山御嶽 (おんたけ) 神社』が鎮座している。

もともとここは、御嶽神社を参拝するための道だったのだ。それが現在、ハイキングコースとして整備されて多くの登山客が歩くようになった。

僕は今回、ハイキングをしつつ、信仰の山、信仰の道を楽しみたいと思ったのだ。

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山頂までつづく表参道には、神々しい雰囲気が漂っていた。



登山道というよりは、信仰の道。



歩きはじめると、一定の間隔で石碑みたいなものが道沿いにあることに気づく。

なんだろうと思って見てみると、一丁目、二丁目、三丁目といったぐあいに、順々に丁目が記されている。

これは「丁目石」と呼ばれるもので、山の上にある寺社仏閣を目指して信仰登山する人のために設けられた道標のこと。武甲山は、山頂が52丁目だ。

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ピンと張りつめた空気のなか、表参道を歩きはじめる。

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数字が記された丁目石。1丁目からはじまり、52丁目で山頂となる。

さらに、途中には祠もいくつかあり、都度その前で手を合わせるのが僕のなかでのルーティンになっていた。

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祠の前で安全祈願をする。

まさしくここは信仰の道なんだ、と思いながら歩みを進めていく。いつの間にか、山に来て自然を楽しむという感覚よりも、その自然のエネルギーや恵みに感謝する気持ちが強くなっていった。

ときおり傍に座って、自然に抱かれながら、TRAILS INNOVATION GARAGEのトレイルミックス『MYOM (Make Your Own Mix)』を口にした。いつも以上に、このトレイルミックスが美味しく感じる。

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冬のハイキングではお腹がすかないことが多い。ただエネルギーは使っているので補給は不可欠。そこで今回は、甘さと酸味が食欲をそそるドライフルーツをメインにしたTRAILS INNOVATION GARAGEの『MYOM (Make Your Own Mix)』。

ずっと上りなので決してラクなコースではないものの、「丁目石」を数えながら歩いていると、気がつけば山頂にある御嶽神社にたどり着いていた。

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武甲山御嶽神社。山頂にこんなに立派な鳥居があるとは。



レトロを意識してチョイスしたULギアで、優雅なランチタイム。



お参りを済ませ、第一展望台へ。眼前には秩父盆地がバーッと開けていて、その町並みを眺めていると、山頂にいるというよりは秩父盆地に包まれているかのような、なんだかとても心地よい気持ちになった。

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山頂から望む秩父盆地。

この素晴らしい山頂で、お昼にでもしよう! ということで、ランチタイムがスタート。

いつもはお湯をわかすだけのことが多いのだが、今回は冬まっただなかということもあり、この季節にピッタリの料理をつくることにした。

使用したクッキングギアはこれだ。

アルコールストーブは、『BRASSLITE / TURBO 2D』(ブラスライト / ターボ2D)。とても珍しい真鍮製のクラシカルなデザインが特徴的。知らない人も多いかもしれないが、その名のとおりBRASS (真鍮) にこだわったブランドだ。超軽量というわけではないが、レトロな佇まいが絵になる。

クッカーは2つ使用した。1つは『BRASSLITE / TRAIL BAKER』(ブラスライト / トレイルベイカー)。屋外でパンを焼くために作られたギアで、まさにアメリカのプロダクト! といった感じ。これをもう1つのクッカー、『trangia / MINI SET』(トランギア / ミニセット) のポットと組み合わせてみた。

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アルコールストーブはBRASSLITEのTURBO 2D (実測75g)。クッカーはtrangiaのMINI SETのポット (実測79g)。

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BRASSLITEのTURBO 2Dの燃焼風景。まっすぐに立ち上がる美しい炎が特徴的。スライド式のスリーブ搭載で、ここで空気量を制御することで火力調整ができる。

パッと見、トレイルベイカーがどこにあるかわかりづらいが、ポットのフチ3箇所に引っ掛けて内側に吊るしているのだ。今回はこの構造を利用して、蒸し器として使ってみようと考えた。冬のハイキングということで、アツアツの肉まんを食べたかったのだ!

冬らしい張りつめた空気がただようなか、ポットからぼわっと湯気が立ち上る。蒸かしたての肉まんを頬張ると、そのジューシーさもさることながら目の前が蒸気でつつまれほっこりする。なんとも多幸感に満ちた瞬間だった。

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BRASSLITEのTRAIL BAKER (実測47g) をtrangiaのMINI SETのポットに組み合わせた。これを蒸し器として使用し、肉まんを温めた。

食後は、快晴のもとで、しばらくハンモックに揺られるという贅沢な時間を過ごすことに。使用したハンモックは、『BYER / PARACHUTE TRAVELLER HAMMOCK』(バイヤー / パラシュート・トラベラー・ハンモック) というすでに廃番のモデル。

そもそも2000年頃に編集長の佐井が307gという軽さに惹かれて購入したものだが、現在も十分軽量なハンモックだ。生地の幅が広く包まれる感じが気持ちよく、くわえて、このレトロな雰囲気もグッとくるじゃないか。

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BYERのPARACHUTE TRAVELLER HAMMOCK (実測307g) は、包み込んでくれるので安心感がある。茶色だらけの冬山に映えるカラーリングも良し!



硫黄泉、炭酸泉、大広間と、身も心も癒される温泉へ。



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山頂からシラジクボへと向かうルートは、ススキが多く生えていて、明るく開放的な道がつづいていた。

のんびりランチタイムを過ごしていると、午後に入って急に寒さが増してきたので、急いで温泉に向かうことにした。

スタート地点の一の鳥居から舗装路を2時間近く歩くことになるが、ピラミッド型の武甲山を背に、たまに振り返りながら散歩気分で歩くのも悪くはない。ちょっと面倒だと思う人は、タクシーを呼んでもいいだろう。

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地元の人からも愛されている秩父湯元・武甲温泉。

武甲温泉は、1996年 (平成8年) に本オープンした温泉施設で、登山客はもちろん地元の人からも愛されている憩いの場だ。

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大広間はこの広さ! お風呂上がりにここでのんびり休憩することができる。

お風呂は、露天風呂、ジェットバス付き大浴槽、炭酸泉があり、それぞれ堪能させてもらった。露天風呂はとても開放的だし、大浴槽はジェットバスが体をほぐしてくれる。1,000mg/ℓの高濃度炭酸を含む炭酸泉は、独特の効能があるらしく、実際入ってみたがとてもリラックスすることができた。

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大浴場にあるジェットバス付き大浴槽と炭酸泉。

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露天風呂は広くて開放的。単純硫黄泉がカラダにしみわたり、癒される。

平日は1日利用で700円 (中学生以上)、土日祝祭日は900円 (中学生以上)と、この値段で1日楽しめるのもいい。手打ちそばをはじめとした地のものを使った料理も自慢だそうで、早めにハイキングを切り上げてここでのんびり過ごすのも最高だろう。

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麓から見える武甲山。

信仰の山をたっぷり味わい、その麓で地元の人々に愛される温泉に浸かる。秩父と聞くとちょっと遠い印象もあったが、都心から日帰りで十分楽しむことができた。また、ふらっと遊びに行きたい。

さて、次の『TOKYO ONSEN HIKING』はどこにしよう。

※1 UL:Ultralight (ウルトラライト) の略であり、Ultralight Hiking (ウルトラライトハイキング) のことを指す。ウルトラライトハイキングとは、数百km〜数千kmにおよぶロングトレイルをスルーハイク (ワンシーズンで一気に踏破すること) するハイカーによって、培われてきたスタイルであり手段。1954年、アパラチアン・トレイルをスルーハイクした (女性単独では初)、エマ・ゲイトウッド (エマおばあちゃん) がパイオニアとして知られる。そして1992年、レイ・ジャーディンが出版した『PCT Hiker Handbook』 (のちのBeyond Backpacking) によって、スタイルおよび方法論が確立され、大きなムーヴメントとなっていった。

※2 実は、TRAILS INNOVATION GARAGEのギャラリーには、アルコールストーブをはじめとしたULギアが所狭しとディスプレイされている。そのほとんどが、ULギアホリックの編集長・佐井の私物。「もともと使うためのものなんだし、せっかくだからデイ・ハイキングで使ってきてよ!」という彼のアイディアをきっかけにルール化した。

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WRITER
根津 貴央

根津 貴央

1976年、栃木県宇都宮市生まれ。幼少期から宇宙に興味を抱き、大学では物理学を専攻。卒業後、紆余曲折を経て広告業界に入り、12年弱コピーライター職に従事する。2012年に独立し、かねてより憧れていたアメリカのロングトレイル「パシフィック・クレスト・トレイル(PCT/総延長4,265km)」のスルーハイクのために渡米。約5カ月間歩きつづける。2014年には「アパラチアン・トレイル(AT/総延長3,500km)」の有名なイベント「Trail Days」に参加し、約260kmのセクションを歩く。同年より、グレート・ヒマラヤ・トレイル(GHT)を踏査する日本初のプロジェクト『GHT Project(www.facebook.com/ghtproject)』を仲間と共に推進中。2018年4月、TRAILSに正式加入。著書に『ロングトレイルはじめました。』(誠文堂新光社)、『TRAIL ANGEL』(TRAILS) がある。

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