TRIP REPORT

TOKYO ONSEN HIKING #02 | 倉戸山・丹下堂

2020.01.10
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TRAILS編集部crewの根津による『TOKYO ONSEN HIKING』、第2回目。

前回は、檜原村(ひのはらむら)でしたが、今回はその北側に隣接する奥多摩町へ。

目指す温泉は、奥多摩湖の湖畔にある『丹下堂(たんげどう)』です。

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倉戸山(標高1,169m)付近からの眺め。きらめく奥多摩湖が美しい。

あらためて、このTOKYO ONSEN HIKINGのルールを3つ紹介しておくと……

① TRAILS編集部(日本橋)からデイ・ハイキングできる場所
② 試してみたいULギアを持っていく(※)
③ 温泉は渋めの山あいの温泉宿がメイン(スーパー銭湯に非ず)

今回は、ルートも温泉も、いい意味でマニアックな感じ。

奥多摩をハイキングする場合、たいがい下山後にそそくさとバスに乗ってひとまず奥多摩駅へ!(駅周辺でゆっくりしよう) となりがちなんだけど、麓にもいいところがあるんだ! そんな再発見の旅にもなりました。

※ 実は、TRAILS INNOVATION GARAGEのギャラリーには、アルコールストーブをはじめとしたULギアが所狭しとディスプレイされている。そのほとんどが、ULギアホリックの編集長・佐井の私物。「もともと使うためのものなんだし、せっかくだからデイ・ハイキングで使ってきてよ!」という彼のアイディアをきっかけにルール化した。



源泉をスタートして、湖畔の裏道ハイク!



奥多摩湖の周辺だと、御前山や六ツ石山あたりも候補になる。でも僕が地図を見て惹かれたのは、そのいずれでもなかった。

『女の湯(めのゆ)』なるバス停を見つけたのだ。そしてそこから破線ルートで倉戸山(標高1,169m)を経由し、お目当ての『丹下堂』まで道がつづいている。温泉から温泉へ !? これは、なんだかおもしろそうじゃないか。

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スタート地点の「女の湯(めのゆ)」バス停までは、JR奥多摩駅からバスで約20分。全行程のコースタイムは3時間45分(山と高原地図)。登りは破線ルートで、足場がやや悪く、想像以上に時間がかかる。ゴール後は「倉戸口」バス停から奥多摩駅まで17分。

女の湯バス停でバスを降りると、はす向かいに「鶴の湯温泉 源泉」の立て看板。

あとで地元の人に聞いたところ、もともと鶴の湯温泉は小河内村(おごうちむら)にあったが、小河内ダムの建設により湖底に沈んでしまったとのこと。ただ現在も、女の湯をはじめ当時の集落名が残っているのだそうだ。

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「鶴の湯温泉」の歴史は古く、起源は南北朝時代までさかのぼる。なんと660年くらい前。

湖畔のバス停からは、裏道のような登山道がはじまっている。ん? これであってるのかな? とちょっといぶかしがりつつ進んでみる。

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奥多摩湖の湖畔ハイキングからスタート。



さすがはマイナートレイル。手足も使って急登をはい上がる。



散歩気分だったのもつかの間、急登が目の前にあらわれた。しかも足場もあまり良くない。

実はこのルート、地図(昭文社・山と高原地図)で見ると、がっつり破線ルートなのだ。スタート時は、ぜんぜん余裕じゃん! なんて、ひとりごとをつぶやいていたんだけど、やっぱり破線は破線なのだ。

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さすがは破線ルート。道迷いはなさそうだが、油断すると足を踏み外したりくじいたりしかねない。でも、個人的にはちょっとアドベンチャラスで楽しかった。

まあでも急ぐことはない。ゆっくり行けば急登だってこわくない。がんばって一気に行こうとするから、途中で息切れしてあらぬことが起こったりする。

そう思って、僕は休憩しまくった。奥多摩湖を眺めながらの休憩は最高だ。

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登りの途中、見晴らしのいい休憩スポットがあったので、しばらくひなたぼっこ。

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今回も行動食は、TRAILS INNOVATION GARAGEのトレイルミックス『MYOM(Make Your Own Mix)』。素材はすべてオーガニックで、手前味噌ながらやっぱり美味しい。

山頂直下までくると、ようやく斜面もなだらかになった。地面はたくさんの落ち葉で埋もれ、木々はまばらで陽光がきらめく。しかも山頂へとつづく道は、樹木のトンネルのよう。

ひとり静かに歩み進んでいくと、その先には別世界の入口があるじゃなかろうか……。そんなありもしない妄想を抱てしまうほど、幻想的な雰囲気をまとっていた。

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山頂直下。写真だけではなかなかこの独特の雰囲気が伝わらない。ぜひ歩いてみてほしい。



広い公園のような頂上で、ULギアによるBBQパーティー。



山頂付近は、驚くほど広く、開放感にあふれていて、どでかい公園にでも来たかのようだった。

今回、僕が持ってきたアルコールストーブは、これだ!

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アンチグラビティギアのカタディンストーブは、本体が30g。頑丈で踏んづけたりしても問題なし。

AntiGravityGear Katahdin Stove(アンチグラビティギア / カタディンストーブ)。これは、火力の強さと、ゴトクがいらないのが、最大の特長。「あ、ゴトク忘れた!」というあるあるをやらかしたとしても、へっちゃらなのだ。

しかも重心が低いので、平型のクッカーやフライパンを乗せても安定感がある。じゃあせっかくだからと、今回僕は、フライパンを持っていった。

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このストーブなら、径の大きなクッカーでもぐらつきにくく安心。ちなみに今回のクッカーは、トランギアミニ。ポット93g、フライパン75gのセットでトータル168g。

ひとりBBQなんてさみしいだけかと思ってたら、そんなのはおかまいなく場の空気を一気に盛り上げてくれるこのソーセージの威力たるや。やっぱソーセージは無敵なのだ。

おなかが満たされたあとは、お昼寝タイム。今回は、「宿泊道具としてのハンモック」の代表格であるHENNESSY HAMMOCK Hyperlite A-sym Zip(ヘネシーハンモック / ハイパーライト アシンメトリー ジップ)。

さすがは特許取得のシステム(※)。とにかく寝心地が良く、あやうく寝過ごすところだった。

※ 寝た際に、自然ともっとも快適で寝心地がいいポジションになるよう、ハンモック本体が “非対称の構造” になっている。これはヘネシーハンモック独自のシステムで、特許も取得している。

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ハンモックは、ヘネシーハンモックのハイパーライト アシンメトリー ジップ。浮遊感を堪能しながら、詩をしたためてみたり !?



ダムに沈んだ、幻の温泉「鶴の湯温泉」。



下りは、登りとはうって変わって緩斜面がメイン。途中、気持ち良すぎて、まるで鹿になった気分で、ピョンピョン跳ねながら駆け下りていった。

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重力に身をまかせているうちに走りだしてしまうほど、極上のダウンヒル。

下山口直前、右手に鳥居らしきものが見えたので振り返ると、温泉神社なるものがあった。もともと鶴の湯のそばにあったらしいが、ダム建設により、ここに遷ったとのこと。

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足早に下っていたら、気づかず通り過ぎてしまいそうになった温泉神社。鶴の湯温泉がいつまでもつづきますように。

ついに、『丹下堂』に到着。どちらかというとドライブインに近い佇まい。それもそのはず、もともと食事処としてスタートして、その後、日帰り温泉をはじめたお店なのだ。

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1957年ごろに、食事処としてオープンした丹下堂。その後、平成になってから鶴の湯温泉も入れるようにしたそうだ。

なので、美味しそうな食事メニューがたくさんある。事前に調べていた僕は、ここの「シカ肉定食」(奥多摩産シカ肉を味噌ダレで漬けこんだもの)を食すぞ! と意気込んでいた。

ところが、昼にのんびりしすぎて閉店ギリギリに入ったので、それは叶わず温泉に直行。

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硫黄泉ながら、硫黄のにおいはほとんど感じない。脱衣所に、鶴の湯温泉の歴史が書かれた紙が貼ってあるので、必見。

こぢんまりとした温泉だが、泉質はバツグン。PH10のアルカリ性単純硫黄泉で、神経痛や切り傷、消化器病、皮膚病などにうってつけらしい。

広々した温泉もいいけど、ひとりでのんびりするには意外とこのくらいがちょうどいいのかも。家でくつろいでいるかのような気分だった。

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まるで自宅にいるかと思うくらい居心地がいい。

聞けば、昨年10月の台風19号の被害の印象が残っているという。ご主人曰く、奥多摩でもこの辺りは問題なく、従来どおり楽しめるので、ぜひたくさんの人に来てもらいたいとのこと。

次は、温泉に加えてシカ肉定食を食べに来よう!

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シカ肉だけではなくヤマメの塩焼きやとろろめしも名物とのこと。ちなみに不定休らしいので、訪れる際は事前に電話確認を。

第2回目の『TOKYO ONSEN HIKING』も、大満足!

小河内ダムの建設により、沈んでしまった「鶴の湯温泉」は最高だった。

現在、鶴の湯は源泉が汲み上げられ、タンクローリーで旅館や入浴施設にも運ばれている。そのお湯を源泉近くでゆっくり味わえるのは、『丹下堂』くらいとのこと。

事前準備はしてくるものの、やはり、来てはじめてわかることが山ほどある。それがこの連載の真骨頂なのかもしれない。さて、次の『TOKYO ONSEN HIKING』はどこにしよう。

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WRITER
根津 貴央

根津 貴央

1976年、栃木県宇都宮市生まれ。幼少期から宇宙に興味を抱き、大学では物理学を専攻。卒業後、紆余曲折を経て広告業界に入り、12年弱コピーライター職に従事する。2012年に独立し、かねてより憧れていたアメリカのロングトレイル「パシフィック・クレスト・トレイル(PCT/総延長4,265km)」のスルーハイクのために渡米。約5カ月間歩きつづける。2014年には「アパラチアン・トレイル(AT/総延長3,500km)」の有名なイベント「Trail Days」に参加し、約260kmのセクションを歩く。同年より、グレート・ヒマラヤ・トレイル(GHT)を踏査する日本初のプロジェクト『GHT Project(www.facebook.com/ghtproject)』を仲間と共に推進中。2018年4月、TRAILSに正式加入。著書に『ロングトレイルはじめました』(誠文堂新光社)がある。

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