TRIP REPORT

TOKYO ONSEN HIKING #03 | 本仁田山・はとのす荘

2020.02.05
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TRAILS編集部crewの根津による『TOKYO ONSEN HIKING』、第3回目。

今回のスタート地点は、JR青梅線の鳩ノ巣駅(終点の奥多摩駅より2つ手前)。

ハイキング後のお目当ての温泉は、多摩川の鳩ノ巣渓谷にある『はとのす荘』です。

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本仁田山(ほにたやま・標高1,224m)の山頂からの眺め。反対側には、都心の高層ビル群を望むことができる。

まずは、恒例のTOKYO ONSEN HIKINGのルール紹介!

① TRAILS編集部(日本橋)からデイ・ハイキングできる場所
② 試してみたいUL(※1)ギアを持っていく(※2)
③ 温泉は渋めの山あいの温泉宿がメイン(スーパー銭湯に非ず)

今回は、町を抜けて山に入り、また町に戻ってくるという、まさに山と町をつないで旅するロング・ディスタンス・ハイキングのある一日を切り取ったようなハイキングでした。


棚沢(たなざわ)集落を抜けて地元の裏山へ入っていく。


きっかけは、地図を眺めていたら、JR青梅線「鳩ノ巣駅」のほど近くに、『はとのす荘』なる温泉旅館を見つけたことだった。

鳩ノ巣にある、はとのす荘。これがレストランだったら看板メニューなわけで、TOKYO ONSEN HIKINGとしても行かないわけにはいかない!

そんな勝手な使命感から、鳩ノ巣駅を起点にしたループコースを考えてみた。

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下山ルートは、花折戸(はなおれと)尾根を予定していたが、鳩ノ巣駅近くの橋が通行止め(2020年2月1日現在)とのことでゴンザス尾根に変更した。後半は破線ルートゆえコースタイムはないが、実際にかかった時間は6時間。下山ルートは破線ルートなので、初心者の人は注意が必要。

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スタート地点のJR青梅線「鳩ノ巣駅」。目の前に自販機があるので、ここで飲料を補充できる。

JR青梅線「鳩ノ巣駅」からすぐに歩きはじめて、またここに戻ってくる。今回は、これまで以上にアクセスが便利なルートだ。

まずは、駅からの町歩き。棚沢集落のなかを歩いていく。

休日だったこともあり、途中、民家の軒先にいた子どもが「今日は、バレーボールに行くんだよー」ってうれしそうに声をかけてきたのが微笑ましかった。

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高台からの棚沢集落の眺め。背後に並ぶ低山も美しい。


人の気配ただよう里山を楽しむ。


裏山に入ると、しばらくはスギ中心の植林エリア。

まっすぐな木が密集していて雰囲気も陰鬱としがちなため、あまり好きな人はいないかもしれないが、僕は意外とそうでもない。これはこれで里山らしい気もするし、人の営みと密接な感じがするからだ。

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場所によっては明るいところもあり、後ろから冬の柔らかな陽射しを浴びながら歩くのが気持ちいい。

しかも、ふと見上げると、こんな景色が広がっている。自然でありながら、なんだか幾何学模様のような感じもして、不思議で見とれてしまうのは僕だけだろうか。

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植林されたスギ林だからこその景色。なかなか良いと思うんだけどなぁ。

そんなスギ林に思いを馳せつつ、大好きなトレイルミックスをほおばる。

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TRAILS INNOVATION GARAGEのトレイルミックス『MYOM(Make Your Own Mix)』。今回は、ビタミンCをはじめとしたビタミンが豊富で、スーパーフードとしても知られているゴールデンベリー(インカベリー)を多めに。

そうこうしているうちにスギ林が終わり、開放感あふれるトレイルがはじまった。スギ林とのギャップが大きいからこそ、この開けた感じが際立ち、おのずと僕の気持ちも昂ぶってくる。

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ちょうど標高1,000mを超えたあたり。


ミニマムなULギアで、シンプルで贅沢なランチタイム。


歩きはじめて3時間ほどで、本仁田山(ほにたやま・標高1,224m)の山頂に到着。

今回使用するアルコールストーブは、先日、連載記事『PLAY!』に登場してくれたJSBさんからいただいたもの。

火をつけてから本燃焼までたった3秒という、スグレモノ。聞けば、3秒で時速100キロに到達するポルシェをベンチマークしたとのこと。意識する相手が斜め上すぎてビックリ(笑)。

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JSBさん自作(MYOG)のアルコールストーブは、重量わずか6g。トルネード状の炎も特徴のひとつ。

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スノーピークのチタンシングルマグ450(66g)、JSBさん自作のアルコールストーブ(6g)、ゴトク(10g)、トータルの重量は82g。

ポットは、一人用ULギアの定番、スノーピークのチタンシングルマグ450。

フード用200ml、コーヒー用200mlのお湯が、1回で沸かせるし、ランチ用の水もペットボトル1本で事足りる。

このサイズ感が、ソロのULハイキングにはちょうどいい。今回はデイハイキングだが、オーバーナイトでもこれで十分。

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今回は、比較的短めのコースだったので、軽めのランチ。インスタントのオートミール(僕の大好物)と、スティックコーヒーのみ。

食後は、おなじみハンモックタイム! 相棒はENO(イーノ)のSuper Sub(スーパーサブ)。

270g(ハンモック本体)と軽量ながらも、幅が188cmとワイドなので、窮屈感がなくとても寝心地がいい。

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ENOの最軽量モデルSub6と同じ軽量素材を用いて、幅を188cmとワイドにしたもの(Sub6の幅は119cm)。軽さと寝心地のバランスの最適化を図った人気モデル。


渓谷の絶景を眺めながら、2種類の温泉を味わいつくす。


当初のプランでは、下りは花折戸尾根を通ってそのまま『はとのす荘』へ! と考えていた。ただ、台風19号の被害もあるかもしれないので、奥多摩ビジターセンターに連絡したところ、この尾根は一般登山道ではないルートゆえ、調査していないとのこと。

ゴンザス尾根もしくは奥多摩駅方面の大休場(おおやすんば)尾根から下りることも想定しつつ進んでいくと、下山時の道標に、花折戸尾根の通行止めの告知パネルが……そこで僕は、ゴンザス尾根をチョイスすることにした。

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ゴンザス尾根の難所(?)といっても過言ではない岩場。

なんだかイカツイ名前の尾根だなぁと思って歩いていたのだが、まさにその通りで、ジャングルのように鬱蒼と木々が生い茂るところあり、滑りやすい急斜面あり、岩場ありと、登りとは打って変わって、荒々しい道だった。

ゴンザス尾根とのタイマンに没頭しすぎて、近視眼的になっていたのだが、ふと前方に目をやると遠くに下界の集落が見えていた。

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下山道から見える集落。ゴールまであとわずか。

毎回思うのだが、この光景が僕は大好きだ。家並みを視界にとらえた時の安堵感がたまらない。いや決して、緊張や不安いっぱいで歩いているわけではないけれど、なんかほっとするのだ。

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『はとのす荘』を事前に調べてはいたものの、まさかこんな崖の上にあるとは思いもしなかった。

日向(ひなた)集落の登山口にたどり着き、集落のなかを通り青梅街道に出る。そして2kmほど道なりに歩くと、『はとのす荘』が見えてくる。この方角から見ると、まさに崖に立つ温泉宿! いやあ絵になるなぁ。

この宿の最大の特徴は、2つの温泉を楽しめること。

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宿のほど近くに源泉がある、内湯。陽射しが入り込むので、とにかく明るくキレイ。日帰り入浴の利用時間は、11時半~15時(受付14時半終了)。

まず内湯は、鳩ノ巣温泉。支配人の宮川さんに聞いたところ、実はこの温泉、数年前に近くの湧水を分析したら温泉であることが判明したそうだ。

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露天風呂は、鶴の湯を使用。ここから見下ろす鳩ノ巣渓谷が最高! ちなみに、イタリアンのランチ(11時半~14時 / LO13時半 ※3日前迄に要予約)もおすすめらしく、次回は温泉とセットでそれも味わいたい。

さらに露天風呂は、幻の温泉として名高い鶴の湯温泉(詳しくは前回の記事をご覧ください)を運んできて使用している。

「自家源泉」と「鶴の湯温泉」、一度で2つの温泉を味わえるとは、なんて贅沢なんだ。泉質の違いを堪能しようと、ついつい長居しすぎて、すっかりのぼせてしまった。

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歩いて2〜3分のところにある鳩ノ巣小橋からの眺め。

また、鳩ノ巣渓谷の絶景が眺められるのも、『はとのす荘』ならでは。すぐ近くには遊歩道もあり、のぼせた僕は、ちょっとだけ散歩にでた。

そして、この鳩ノ巣渓谷の自然の造形に圧倒された。ハイキングからの温泉からの散歩、と1日でこれだけ楽しめるエリアもそうそうないのでは。もう満足感でいっぱいの1日だった。

さて、次の『TOKYO ONSEN HIKING』はどこにしよう。

※1 UL:Ultralight(ウルトラライト)の略であり、Ultralight Hiking(ウルトラライトハイキング)のことを指す。ウルトラライトハイキングとは、数百km〜数千kmにおよぶロングトレイルをスルーハイク(ワンシーズンで一気に踏破すること)するハイカーによって、培われてきたスタイルであり手段。1954年、アパラチアン・トレイルをスルーハイクした(女性単独では初)、エマ・ゲイトウッド(エマおばあちゃん)がパイオニアとして知られる。そして1992年、レイ・ジャーディンが出版した『PCT Hiker Handbook』(のちのBeyond Backpacking)によって、スタイルおよび方法論が確立され、大きなムーヴメントとなっていった。

※2 実は、TRAILS INNOVATION GARAGEのギャラリーには、アルコールストーブをはじめとしたULギアが所狭しとディスプレイされている。そのほとんどが、ULギアホリックの編集長・佐井の私物。「もともと使うためのものなんだし、せっかくだからデイ・ハイキングで使ってきてよ!」という彼のアイディアをきっかけにルール化した。

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根津 貴央

根津 貴央

1976年、栃木県宇都宮市生まれ。幼少期から宇宙に興味を抱き、大学では物理学を専攻。卒業後、紆余曲折を経て広告業界に入り、12年弱コピーライター職に従事する。2012年に独立し、かねてより憧れていたアメリカのロングトレイル「パシフィック・クレスト・トレイル(PCT/総延長4,265km)」のスルーハイクのために渡米。約5カ月間歩きつづける。2014年には「アパラチアン・トレイル(AT/総延長3,500km)」の有名なイベント「Trail Days」に参加し、約260kmのセクションを歩く。同年より、グレート・ヒマラヤ・トレイル(GHT)を踏査する日本初のプロジェクト『GHT Project(www.facebook.com/ghtproject)』を仲間と共に推進中。2018年4月、TRAILSに正式加入。著書に『ロングトレイルはじめました。』(誠文堂新光社)、『TRAIL ANGEL』(TRAILS) がある。

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