TRAILS REPORT

PLAY!出社前に遊ぼう # 05 | TRAILS × 山川幸雄(JSB) JSB・ULコーヒー(松屋式ドリップ)

2020.01.31
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文:根津貴央 取材・構成・写真:TRAILS

What’s PLAY? | 平日にトレイルで遊ぶオトナをもっと増やすための連載企画。オトナになると、仕事が忙くて遊ぶ時間がない、とつい言ってしまいがち。でも工夫次第で時間はつくれるもの。いつか仕事が落ち着いたら遊ぼう、なんて思っていたら、いつまでたっても遊べない。遊ぶなら今。『PLAY!』のスローガンは『Now or Never.』。今がチャンス!今しかない!今でしょ!だ。

この連載では、毎回、平日出社前(ときどき退社後)にTRAILS編集部crewがその時遊びたい人に、その時遊びたいことをオーダーして、ただただ一緒に遊ぶ模様をお届けします。一番大事なルールは遅刻せずに出勤すること。

* * *

第5回目のゲストは、この人。

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日本を代表するアルコールストーブ・ビルダーの山川幸雄(JSB)さん。アルコールストーブといえば、この人抜きには語ることはできない。

アルコールストーブ・ビルダー界の巨匠として有名な、JSBさんこと山川幸雄さん(※1)。

JSBさんは、一見、普通の方に思えるかもしれないが、日本のUL(ウルトラライト)黎明期から自作アルコールストーブの巨匠とリスペクトされてきた、知る人ぞ知るUL界の偉人だ。

まぎれもなくアルコールストーブのイノベイターであり、彼のアイデアや技術を用いて誕生した市販アルコールストーブも少なくない。

当時ULハイカーにとって、アルコールストーブはMYOG(自作)するものというのが共通認識だった。JSBさんをはじめ、日本におけるULシーンの黎明期を支え、ULをやる人で通らない人はいないブログ『山より道具』の寺澤英明さんなどが中心となって、アルコールストーブを自作しては、仲間同士でフィードバックをし、改良を重ねていた。

そんなJSBさんが、自作のアルストを山ほど抱えてTRAILSオフィスにやってきた。

※1 山川幸雄:JSBという屋号で知られる日本を代表するアルコールストーブ・ビルダー。JSBという名称は、アマチュア無線をやっていた頃のコールサインが由来。機械加工業を営む父のもと、幼い頃からモノづくりに親しみ、高専卒業後、大学では機械工学を専攻。ウルトラライト(UL)の黎明期だった1998年頃からアルコールストーブの自作を手がけ、類稀なる専門性と探究心で、次々と斬新な機構のアルコールストーブを製作。彼のアイデアから生まれた市販品も多く、日本のULシーンの牽引役の一人、寺澤英明さん(TRAILSの記事「土屋智哉のMeet The Hikers! ♯3」に登場)のブログ『山より道具』でも、たびたび紹介された。

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ULバックパックで颯爽と登場したJSBさん。

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自作のアルコールストーブをたくさん持ってきてくれた。アルスト好き垂涎のシロモノばかり。これはヤバイ!

JSBさんは、とにかくいろんなアルコールストーブを作りまくっている。販売したらいいのに! と思ったりもするが、本人は、売ることよりも世界にただ一つしかない新しいものを生みだすことが楽しいのだという。

しかもJSBさん、今回TRAILS編集部crewのカズが参加できないことを聞き、プレゼント用にオリジナルのアルコールストーブを作ってきてくれた。

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重量わずか7グラムの、JSBさんオリジナルFREVO(フレボ)ストーブ。

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機能面へのアプローチの秀逸さに目がいきがちだが、女性を意識して「ロゼ」の缶をチョイスするあたりの気遣いがJSBさんらしい。

と、冒頭からずっとアルコールストーブの話をしているが、今回の「PLAY!」テーマはそれじゃない。

実は、JSBさんは大のコーヒー好き。2011年頃から、特別な道具がなくても山でコーヒーを楽しむべく、身近なものでコーヒーを淹れる方法を試行錯誤しつづけているというのだ。

その、JSBさんならではのULスタイルのコーヒーを飲もう! というのが、今回のテーマ。まずは使う道具一式を紹介しよう。

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左上から時計回りで、粗挽きコーヒー、ポット、自作アルコールストーブ、蒸らし用フタ、箸、スプーン、ペーパーフィルター、自作の針金ドリッパー(U-heart wire)、ゴトク、ライター、アルコール、サーバー(アルファ米のパッケージ)。

超シンプル! 今回はあらかじめ豆を挽いてきてもらっているが、山に持っていく際は、豆のまま持っていって、その辺に転がっている石で叩いて細かくするのもおすすめとのこと(豆が入ったビニールを手ぬぐい等で包み、その上から石で叩く)。

では、さっそくJSBさんにJSB・ULコーヒーを淹れてもらおう。ちなみに、淹れ方は松屋式ドリップ(※2)とのこと。

※2 松屋式ドリップ: 名古屋にある珈琲専門店「松屋コーヒー」発祥の淹れ方。旨味成分だけを抽出するため、雑味がなく、時間が経っても味が劣化しない独自の抽出法。

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まずは、粗挽きコーヒーを入れて、スプーンで真ん中にくぼみができるように成型する。

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こんな感じのクレーター状になればOK!

これ何がすごいかって、ドリッパーだ。みんなコーヒー豆に気を取られていたのではないだろうか。違う、違う、そうじゃない。目を凝らしてよーく見てほしい。

気づいただろうか? 針金なのだ。針金しかないのだ。アウトドア用のドリッパーは数あれど、これほどまでにシンプルなものがあっただろうか? ULの極みだ。

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JSBさん自作の針金ドリッパー。その名も、U-heart wire(ユー・ハート・ワイヤ)。U字かつハートをあしらっていることから命名。U(優)heart(心)、つまり、やさしいこころを持ったワイヤーという洒落も込めている。

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このハートはただの装飾ではなく、これがあることで持ちやすく、かつカトラリーを置くこともできるスグレモノ。

聞けば、針金を刺す位置も重要らしく、コーヒーを受けるサーバーの径にあわせてベストなポイントが瞬時にわかる、オリジナルメジャーも自作している。

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針金を刺す位置はサーバーの径に応じて変わる。どこに刺すのがいいか一発でわかる自作のメジャー。パッと見は、何がなにやらさっぱりわからない(苦笑)。

さてここからが本番だ。まずは、JSBさん自作の箸を利用しながら底の部分から徐々にまんべんなく湿らせる。蒸らしの工程だ。

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蒸らしの工程。最初は中心だけに注ぎ、底から円を描いていく。薄く成型したコーヒー粉を濡らすことによって崩していく。このコーヒーの層を利用して濾すのだ。ペーパーではなくコーヒーの粉で濾すのがポイントらしい。

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JSBさん自作の箸の先端は三角錐の形状に削ってある。このカタチにすることでまっすぐキレイにお湯が流れていくという。

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フタをして、最低3分は蒸らす。蒸らすことで、一つひとつの粉の芯まで浸透させることが重要。手書きの目盛りが書き込まれた道具たちにも、MYOGの魂を感じられてグッとくる。

この蒸らしの時に落ちたコーヒーは、少し雑味があるため、よりすっきりとしたコーヒーを好む人は使用しないこともあるという(JSBさんは使わない派)。そして、いざ抽出!

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アルコールストーブ・ビルダーというよりは、もはやバリスタの表情。お湯の温度は85℃くらい。抽出の際は、外側近くからテーブルマウンテンを崩しながら全体を沈ませる。人数分の半分の量(180cc)を落とす。

3人分作ってくれると言っていたが、2人分もないんじゃないかという段階で、注ぐのをやめてしまうJSBさん。え? これだけ? と思ったら、おもむろにお湯を足しはじめた。

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さらに180ccのお湯を足して完成!

聞けば、人数分の半分の量で「旨味」は出つくしてしまうのだという。そして、それ以降は「雑味」が出る。だから、残り半分はお湯を足す。これが、コーヒーの旨味だけを味わうためのやり方だそうだ。

なるほど! でも、聞いただけではシロウトの僕たちはよくわからない。ということで、蒸らしの時に出たコーヒーと、旨味を出し切ったあとのコーヒーも作ってもらい、計3種類を飲み比べしてみることにした。

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左から、蒸らしの時に出たもの、旨味だけを抽出したもの、旨味を出し切ったあとのもの(右端は使い終わったコーヒー粉)。JSBさん曰く「味をたとえるなら、最初のものはチンピラで最後のものは暴力団かな(笑)」。

結果はというと、僕たちのフツーの味覚をもってしても、その違いは明らかだった。蒸らしの時のコーヒーと、旨味抽出後のコーヒーは、後味が悪く、これが雑味ってやつか! と3人とも驚いた。

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「えーーーっ、ぜんぜん違う! めちゃくちゃ美味しい」と顔を見合わせるTRAILS編集部crewの3人。

そして、旨味だけのコーヒーがこんなに爽やかで味わい深いとは思ってもみなかった。正直、想像を超えていて、みんな感動しっぱなし。

「これ、山でやったらさらに最高だろうな!」。ということで、TRAILSスタイルのセット(2人用想定)を作ってみた。

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BatchStovez(バッチストーブ)とFOSTER’s BEER(フォスターズビール)の缶を採用。

3人とも、新しいコーヒーの楽しみ方を知って、すぐにでも山に行きたい気分になっていた……が、まずは仕事、仕事! JSB・ULコーヒー(松屋式ドリップ)で旨味チャージしたので、今日も1日突っ走れそうだ。

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JSBさんのULコーヒーを飲んで、みんな大満足!

【さて、次はだれとどこでなにをするのか? 次回のPLAY!もお楽しみに】

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佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

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TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。有名無名を問わず世界中のTRAILSたちと編集部がコンタクトをとり、旅のモチベーションとなるトリップレポートやヒントとなるギアレビューなど、本当におもしろくて役に立つ情報を独自の切り口で発信していきます!

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