TRIP REPORT

コロラド・トレイル | #08 トリップ編 その5 DAY15~DAY22 by Tony(class of 2023)

2025.09.24
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文・写真:Tony 構成:TRAILS

ハイカーが自らのロング・ディスタンス・ハイキングの体験談を綴る、ハイカーによるレポートシリーズ。

2023年にコロラド・トレイル (CT) をスルーハイキングした、TRAILS crewのトレイルネーム (※1) Tony (トニー) によるレポート。

全8回でレポートするトリップ編のその5。今回はCTスルーハイキングのDAY15からDAY22までの旅の内容をレポートする。

※1 トレイルネーム:トレイル上のニックネーム。特にアメリカのトレイルでは、このトレイルネームで呼び合うことが多い。自分でつける場合と、周りの人につけられる場合の2通りある。


コロラド・トレイル (Colorado Trail):コロラド州のデンバーからデュランゴまで、アメリカのロッキー山脈を通る486mile (782km) のトレイル。標高3,000m~4,000mの、厳しくも美しい高山地帯の景色を楽しみながら歩くことができる。

デンバーかコロラドを離れPCT DAYSへ。(DAY15〜DAY16)


レッドヴィルからバスや電車を乗り継いでデンバー国際空港まで向かう。

この日からコロラドを一時離れて、PCT DAYS (※2)に向かう。2015年にPCTをスルーハイキングしてから、実に8年ぶりの参加だ。せっかくこのタイミングでアメリカにいるのだからと、以前に歩いたPCTのお祭りに行くことにしたのだ。

ツインレイクスよりしばらく歩いた先にあるハイウェイ24から、ヒッチハイクでレッドヴィルに戻った後に一泊し、早朝からバスを乗り継いでデンバー国際空港に向かう。

コロラドトレイル周辺のトレイルタウンは無料バスが周遊しており、主要なバスターミナルにもアクセスが容易にできるのでとても便利だ。

この日はフリスコのバスターミナル経由でデンバーまで移動、デンバーへの到着はバスの乗り継ぎ時間の都合もあり、夕方の到着となった。


デンバー国際空港。

デンバーに到着した後は、REIでエマージェンシーキットの補充用として、リペアテープや虫よけのワイプ、テーピングなどの消耗品のリサプライをし、空港に向かう電車に乗ってデンバー国際空港へ。

車窓に、日焼けをし髭が伸びてハイカートラッシュ感が出てきた自分の姿が映る。PCTをロング・ディスタンス・ハイキングをしていた頃の自分が戻ってきたような感覚になり、なぜかほっとした。

コロラド・トレイルをスタートしたのは2週間前は、まだ浮足立っている感覚もあったが、ようやく地に足が着いた感じがした。

空港で翌日の早朝のフライトまで仮眠をとる。PCTをスルーハイキングしてい以来、8年ぶりとなるポートランドの街や、PCT DAYSの会場となるカスケードロックスの景色を、思い起こしながら眠りについた。


ポートランド国際空港に到着。

早朝のフライトで、デンバーからポートランドへ。翌日はカスケードロックスに向かうため、今日はポートランドで一泊する予定だ。

PCTを歩いた時はポートランドに1週間ほど滞在をしていたので、街の勝手もわかっているつもりだった。しかし、8年も経てば当然かもしれないが、ポートランドの街の雰囲気は様変わりしていた。

空いた時間で街を少しだけ散策することにし、以前にTRAILS編集部Crewの佐井も訪れているアウトドアショップ Next Adventure (※3)や、何度も通ったカフェなどに立ち寄った。

記憶の隙間を埋めていくような感覚でポートランドの街を楽しんだ。

※2 PCT DAYS: アメリカ3大トレイルの1つPCT (パシフィック・クレスト・トレイル) のフェスティバルで、オレンゴン州のカスケードロックスで毎年8月に開催される。多くのギアメーカーの出展があり、プレゼンテーション、イベント、パーティなどが行なわれる。

※3 Next Adventure:TRIAK¥LSでは以下の記事でも取り上げている。「FAMILY HIKING | #02 Portland (4歳4ヶ月) 2回目の海外ファミリー・ハイキング」https://thetrailsmag.com/archives/25665

地元ブリュワリー代表の自宅で、PCT DAYS前夜祭。(DAY17)


PCT DAYSの会場となるカスケードロックス・マリンパーク。

翌朝、ポートランドからPCT DAYSの会場となるカスケードロックスまでバスで移動。カスケードロックスの象徴であるオレゴン州とワシントン州を繋ぐ橋、ブリッジオブザゴッズが見え始め、懐かしい町並みが目に飛び込んできた。思わず笑みがこぼれてしまうほど、テンションが上がるのが自分でもわかった。

到着したカスケードロックスには、PCTハイカーたちで溢れかえっていた。たくさんのハイカーたちが、同じ年・同じトレイルを歩く同志たちが集まれる喜びを分かち合っていた。

まずは、PCT DAYSのメイン会場であるマリンパークのキャンプ場に行ってみることにした。キャンプ場に到着すると、日本語の会話が聞こえてきたので、思わず「日本人ですか?」と話しかけると、class of 2023の日本人PCTハイカーがキャンプをしていたのだ。


Class of 2023の日本人PCTハイカーたち。

日本人ハイカーたちとPCTの話で盛り上がっていると、どうやらみんなは、この後にカスケードロックスで人気のあるブルワリーのサンダーアイランド・ブリューイングの代表である、デイブの自宅の庭でキャンプをさせてもらう、とのこと。この楽しそうなプランに自分も便乗させてもらうことにした。

自宅の庭でキャンプをさせてもらうお礼として、サンダーアイランド・ブリューイングのPCT DAYSへの出店のお手伝いをするという、なんとも楽しそうなイベント付きだ。

その夜は、デイブから大量のビールの差し入れや、韓国焼き肉のトレイルマジックもあり、盛大に前夜祭を楽しんだ。


サンダーアイランド・ブリューイングのデイブの自宅で、PCT DAYSの前夜祭。

翌朝、それぞれが飲みすぎた身体を叩き起こし、PCT DAYSの会場まで向かうと、イベント開始前の街の清掃活動がハイカーによって行われていた。

PCT DAYSでは、イベントが始まる前と終わった後には、ハイカー自らがトレイルタウンの清掃活動をする。イベント開始するにあたり、トレイルタウンをより美しくすること、イベント後はイベント開始前より更に美しくすること。ハイカーがお世話になるトレイルタウンの人たちに感謝の思いを込めて、街の端から端まで清掃活動をするのだ。


カスケードロックスを清掃活動するPCTハイカー。

自分も感謝の思いを込めて清掃に参加した。こういう思いを持ってトレイルを歩くからこそ、僕はトレイルに関わっていきたいと心底思うのだ。

そしていよいよ、PCT DAYSの始まりの時間となった

トレイルに関わる人たちで盛り上がるPCT DAYS。(DAY18〜DAY19)


PCT DAYSのマーケットプレイス会場

PCT DAYSの会場はPCTハイカーや、ギア好きなハイカーたちで溢れかえっていた。

イベントは、メーカーの出店や、著名なハイカーの講演、各アウトドアメーカーが主催する様々なコンテンツと、内容は盛りだくさんである。

TRAILS編集部で、いつもトレイルの最新情報の取材をしているPCTA (PCTの運営団体) のブースもある。いつも取材に答えてくれるコンテンツ開発ディレクターであるスコットも、会場にいると聞いていたので会いに行った。

スコットは日本人ハイカーにPCTの最新のトレイル情報を届けられていることにとても喜んでおり、会うやいなや、固い握手とハグで迎えてくれた。


PCTAのコンテンツ開発ディレクターであるスコット

会場ではTRAILS – HIKING FELLOWのリズ・トーマスも、講演で登壇するために会場に来ていたので、リズにも会いに。

リズとはコロラド・トレイルをロング・ディスタンス・ハイキングするにあたり、様々な面で相談に乗ってもらっていた。

リズとは、PCT DAYSでの講演のことや、それまでのPCT DAYSのヒストリーなど、いろいろなことを話した。


トレイルネーム SNOKEL(スノーケル)こと、TRAILSのHIKING FELLOWであるリズ。

その後は、デイブがいるサンダーアイランド・ブリューイングの店番や、各アウトドアメーカーのブースを回ったりと、PCT DAYSを楽しんでいたら、あっという間に夕方に。

デイブから、夜にブルワリーで行われるナイトパーティーに誘われていたので、日本人ハイカーみんなで行ってみることにした。

ブルワリーでは、たくさんのPCTハイカーが一堂に会し、ダンスパーティーが行われていた。パーティーに集まったPCTハイカーたちはこれまでのトレイルでの疲れを忘れるくらい、お酒を飲みながら踊り、PCT DAYSの初日の夜を全力で楽しんでいた。


サンダーアイランド・ブリューイングでのナイトパーティー

翌日は、デイブのブースの店番をしつつ、各アウトドアメーカーが主催するコンテンツに参加することにした。PCT DAYSのイベントスケジュールで一番気になっていたコンテンツ、パイのノーハンド早食いレースである。

このコンテンツの主催は、Six Moon Designs。今はTRAILSでも記事を書いてくれているホイットニーが、このイベントのオーガナイザーをやっている (※ホイットニーはこの後、2025年より地図アプリのFarOutの最高収益責任者 (CRO)に就任)。

参加者は、テーブルに並べられた約30cmほどのパイを、一切手を使わずに食べるというルールなのだ。参加者はエントリーしたハイカーの中から抽選で決められるため、僕もどうせ当たらないだろうと思い、一応エントリーしてみたのである。そしたらまさかの当選との事で、名前を呼ばれた!

周りには僕よりも一回り体格の大きい参加者や、PCTを3ヶ月歩き、胃袋がハイカーストマックとなったハイカーばかり。やるしかないと覚悟を決めて、スタートの合図と共に夢中でテーブルのパイにかぶりつく。

パイを喉に詰まらせて涙目になりながら夢中でひたすらパイを胃袋にねじ込んでいった結果、10人中 2位で食べきることができ、準優勝を勝ち取ったのだ。


SixMoonDesignsによるパイのノーハンド早食いレース。

2日目の最後のコンテンツも終わり、2023年のPCT DAYSが終わった。過去に参加できなかった後悔さえも上書きするほどの最高な2日間となった。

この日のためにカスケードロックスに集まってきたPCTハイカーたちは、またそれぞれがハイキングしていた場所に帰っていく。

トレイル上で出会ったハイカーと、またトレイル上で再会することもあれば、もう二度と会うことがないハイカーもいる。PCT DAYSは、そんなハイカー同士が再会できる数少ないチャンスなのだ。


それぞれがハイキングしていた場所に帰っていくPCTハイカー。

コロラド・トレイルを再び歩き出す。(DAY20 – 22)


PCT DAYSの間、お世話になったサンダーアイランド・ブリューイングのデイブ。

最後の夜もデイブの自宅の庭にキャンプをさせてもらい、翌朝にPCT DAYSの期間中、お世話になったデイブに挨拶をして、ポートランドまで移動する。

ポートランド国際空港からデンバー国際空港への移動も、どちらの空港ももう複数回利用しているため、迷うことなく目的地に行くことができた。

そしてコロラドにまた戻ってきた。トレイルに戻るために、トレイルアウトした時と同様にデンバーからフリスコ、フリスコからレッドヴィルと、通い慣れた場所のようにスムーズに移動し、レッドヴィルにて1泊する。


レッドヴィル滞在中に何度も宿泊していたインザクラウズ・ホステル。

もうこのホステルにも4回目の宿泊となり、管理人のケントも、また来たなとニヤニヤしながら迎えてくれた。もうホームタウンのように思えてしまうレッドヴィル。

いよいよ明日からはコロラドトレイルに戻ると思うと、早くトレイル上に戻りたいと落ち着かない自分がいた。

レッドヴィルでヒッチハイクを始め、ものの数分で車が止まった。あっという間にツインレイクスに到着だ。

トレイルアウトした場所が見えてくると、リサプライ直後で荷物が重いにも関わらず、思わず足が駆け足になる。

コロラド・トレイルに合流した、トレイルを踏みしめた。その瞬間、この場所に戻ってきたかった、という自分の感情の強さに気付いた。


ようやくコロラドトレイルに戻ってきた。

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佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

[about TRAILS ]
TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。有名無名を問わず世界中のTRAILSたちと編集部がコンタクトをとり、旅のモチベーションとなるトリップレポートやヒントとなるギアレビューなど、本当におもしろくて役に立つ情報を独自の切り口で発信していきます!

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