TRIP REPORT

コロラド・トレイル | #07 トリップ編 その4 DAY10~DAY14 by Tony(class of 2023)

2025.06.18
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文・写真:Tony 構成:TRAILS

ハイカーが自らのロング・ディスタンス・ハイキングの体験談を綴る、ハイカーによるレポートシリーズ。

2023年にコロラド・トレイル (CT) をスルーハイキングした、TRAILS crewのトレイルネーム (※1) Tony (トニー) によるレポート。

今回はトリップ編のその4。今回はCTスルーハイキングのDAY10からDAY14までの旅の内容をレポートする。

※1 トレイルネーム:トレイル上のニックネーム。特にアメリカのトレイルでは、このトレイルネームで呼び合うことが多い。自分でつける場合と、周りの人につけられる場合の2通りある。


コロラド・トレイル (Colorado Trail):コロラド州のデンバーからデュランゴまで、アメリカのロッキー山脈を通る486mile (782km) のトレイル。標高3,000m~4,000mの、厳しくも美しい高山地帯の景色を楽しみながら歩くことができる。

アウトドアの町、レッドヴィルへ。 (DAY10)


レッドヴィルの街並み。オールドアメリカンな雰囲気。

朝、木々の間から漏れ出た日差しで目が覚めた。昨夜は星空を眺めようと、シェルターの入り口を大きく開けたままにしていたら、そのまま寝落ちしてしまったようだ。

今日は、ここから4mileほど歩けば、テネシー・パスだ。そこからヒッチハイクをすれば、レッドヴィルの町まで下りることができる。

そんなことを考えながら、トレイルを歩いていると、ほどなくテネシー・パスに到着。早速ヒッチハイクを試みると、5分もかからずに1台の車が止まってくれた。


ヒッチハイクで止まってくれた、ジェイミー。

止まってくれたのは、4年前にコロラド・トレイルをスルーハイキングしたことがあるジェイミー。後ろにはテキサスという名の犬が乗っており、なんとテキサスと一緒にスルーハイクをしたそうだ!

コロラド・トレイルのほとんどの区間は、犬とハイキングをすることが許可されている。トレイル上では、犬の食料や体調のケアなど、大変な部分もあるが、クマや他の動物を事前に察知してくれたりと、救われる事もたくさんあったそうだ。

犬とのロング・ディスタンス・ハイキングについて、いろいろと質問しているうちに、あっという間にレッドヴィルへと到着した。


レッドヴィルで開催されていた「LEADVILLE TRAIL 100MTB」

レッドヴィルに到着すると、想像以上に賑やかで、町の真ん中の広場で何かイベントをしているようだ。

気になって広場に行ってみると、「LEADVILLE TRAIL 100MTB」というマウンテンバイクのレースが、この週末に開催されるようで、そのレースの開催前イベントが催されていた。

レッドヴィルでは、この大会以外にもトレイルランニングの100mileレースなど数多くの大会が開催されている。その熱量を味わいながら、予約していたホステルへ移動した。


トレイルレース開催前の物販イベント

この日は、簡単に夕食分の食料の買い出しをして、いつも通りシャワーと洗濯。

それが終わったら、ホステルのキッチンで料理をしながらビールを流し込み、久々のベッドで深い眠りについた。

この旅で、初めてのゼロデイ。ローカルのメーカーを訪れる。 (DAY11)


出迎えしてくれたNUNATAKのヤン(左)と息子のビョルン(真ん中)。

今日は、この旅で初めてのゼロデイだ。

この町でゼロデイを取ったのは、行ってみたいショップ、メーカーがあったから。その中でも楽しみにしていたのが、ダウンメーカーのNUNATAK (ヌナタク)だ。

そのNUNATAKの工房兼自宅を訪れた。出迎えしてくれたのは、オーナーのヤンと、その息子のビョルン。

実は、今回、スリーピングバックのカスタムオーダーを事前にお願いしていて、それを直接受け取ろうと訪れたのだ。

今回のコロラド・トレイルの自然環境や、使い勝手、体格など様々な視点から、細かい箇所の調整を緻密にカスタムさせてもらった。ヤンからも、コロラド・トレイルで使うには申し分ないとお墨付きをもらった。

プロダクトの製作についての話や、生地の話など、作り手としての話をしていると、ヤンが「ダウンジャケットを試してみないか?」と、プロトタイプを出してきてくれた。


NUNATAKのプロダクトが生み出される工房。

ダウン量を増やしながら、細かいところを削ぎ落とし、可能な限り軽量化を施した特別仕様の一品。

僕は「もちろん!」といい、そのプロトタイプのダウンジャケットも買わせてもらった。

帰り際、2人は「レッドヴィルに来ることがあれば、必ず立ち寄りなさい。私たちがフィールドに出ていない時以外はいつでも歓迎するよ」と言ってくれた。

マウンテンバイクのルートも有名なコロラドトレイル。 (DAY12)


テネシー・パスへと送り届けてくれた、レースサポーターのマイク。

この日は、朝から出発するのではなく、あえて時間を遅らせ、10時頃に町を出発することにしていた。

昨夜、僕が宿泊していたホステルは、共有スペースのあちらこちらで、マウンテンバイクレースに参加する各チームが、翌日の早朝スタートに向けて作戦会議をしていた。

どうやら、明日の朝イチは主要道路には交通規制が掛かり、トレイル上はレースの参加者で溢れてしまうようなのだ。

そこに巻き込まれると、トレイルをハイキングするどころではなくなってしまうため、時間を調整して出発をしようと言うわけだ。


マウンテンバイクが走ってきた急峻なトレイル。

出発を遅らせたことが功を奏し、関係者にテネシーパスまで送ってもらうこともでき、この日は順調にトレイルをスタートした。

ここからは標高が3,500mほどに上がり、一気に急斜面を駆け上がる。この急峻な勾配はコロラド・トレイルの特徴のひとつであるから仕方がない。息も絶え絶え、なんとか標高を上げると、後ろからマウンテンバイクが走ってきた。

どうやらレースの後半組は、まだこの区間を通過していなかったようだ。何台か、レース参加者を見送り、また歩き始めた。


標高3500mの野営地。

コロラド・トレイルでは、マウンテンバイクでトレイルを走る人がとても多く、Far Out (地図アプリ) でもトレイル・ルートとは別に、マウンテンバイク・ルートが用意されているぐらいだ。

いつか自分もこのルートをマウンテンバイクで走ってみたいと、その想像を膨らませているとワクワクが止まらなくなった。

トレイルアウトしてPCT DAYSへ。(DAY13〜DAY14)


眼下に望むツインレイクス。

ここからはツインレイクスまで一気に下り、湖岸を歩きつつ、ハイウェイ24を目指す。ハイウェイ24からは、ヒッチハイクでレッドヴィルに戻り、そこからデンバー国際空港を目指すのだ。

そう、ここで1度、コロラド・トレイルからトレイルアウトをし、8/17-19に開催する予定のPCT DAYSに参加するのだ。

僕が、2015年にPCTを歩いた時には、PCT DAYの日程にどうしても間に合わなく、泣く泣く不参加となってしまった。だからこそ、このPCT DAYSに参加したい!なら、ちょうどコロラド・トレイルを歩く期間と重なるし、行ってみようか!と思い立ったのである。

PCT DAYSへのアクセスを考えながら、標高を下げていくと、眼下にツインレイクスが見えてきた。ツインレイクスでは、ブラウントラウトやレイクトラウト、レインボートラウトなどトラウト釣りの人気スポットだ。標高も2900mと高山地帯のため、夏場でも水温が安定しており、トラウト釣りには適地なのだろう。


コロラド・トレイルとCDTのトレイルサイン。

ツインレイクスの湖岸や、水上でボートフィッシングをしている釣り人、タックルもルアーや、ダブルハンドのフライフィッシングなど、釣り方も様々だ。そんな羨ましい光景を横目に、ハイウェイを目指し、ひたすら歩き続ける。

ハイウェイ手前、トレイルから少し離れたところで、バックパックを降ろし、道路に向かって親指を立てる。

15分、30分、1時間と時間が過ぎていく。
2時間、ようやく1台の車が止まってくれた。

明日からは大移動だ。


ヒッチハイクでレッドヴィルまで戻り、デンバー国際空港へ。

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利根川 真幸

利根川 真幸

2015年にPCT (パシフィック・クレスト・トレイル) をスルーハイキング。2023年にはCT (コロラド・トレイル) をUL × MYOG (MAKE YOUR OWN GEAR)のスタイルでスルーハイキングした、ロング・ディスタンス・ハイカー。トレイルネームはTony (トニー)。2023年10月にTRAILSにジョインし、『TRAILS INNOVATION GARAGE』の店長に。

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