コロラド・トレイル | #07 トリップ編 その4 DAY10~DAY14 by Tony(class of 2023)

文・写真:Tony 構成:TRAILS
ハイカーが自らのロング・ディスタンス・ハイキングの体験談を綴る、ハイカーによるレポートシリーズ。
2023年にコロラド・トレイル (CT) をスルーハイキングした、TRAILS crewのトレイルネーム (※1) Tony (トニー) によるレポート。
今回はトリップ編のその4。今回はCTスルーハイキングのDAY10からDAY14までの旅の内容をレポートする。
※1 トレイルネーム:トレイル上のニックネーム。特にアメリカのトレイルでは、このトレイルネームで呼び合うことが多い。自分でつける場合と、周りの人につけられる場合の2通りある。
コロラド・トレイル (Colorado Trail):コロラド州のデンバーからデュランゴまで、アメリカのロッキー山脈を通る486mile (782km) のトレイル。標高3,000m~4,000mの、厳しくも美しい高山地帯の景色を楽しみながら歩くことができる。
アウトドアの町、レッドヴィルへ。 (DAY10)
レッドヴィルの街並み。オールドアメリカンな雰囲気。
朝、木々の間から漏れ出た日差しで目が覚めた。昨夜は星空を眺めようと、シェルターの入り口を大きく開けたままにしていたら、そのまま寝落ちしてしまったようだ。
今日は、ここから4mileほど歩けば、テネシー・パスだ。そこからヒッチハイクをすれば、レッドヴィルの町まで下りることができる。
そんなことを考えながら、トレイルを歩いていると、ほどなくテネシー・パスに到着。早速ヒッチハイクを試みると、5分もかからずに1台の車が止まってくれた。
ヒッチハイクで止まってくれた、ジェイミー。
止まってくれたのは、4年前にコロラド・トレイルをスルーハイキングしたことがあるジェイミー。後ろにはテキサスという名の犬が乗っており、なんとテキサスと一緒にスルーハイクをしたそうだ!
コロラド・トレイルのほとんどの区間は、犬とハイキングをすることが許可されている。トレイル上では、犬の食料や体調のケアなど、大変な部分もあるが、クマや他の動物を事前に察知してくれたりと、救われる事もたくさんあったそうだ。
犬とのロング・ディスタンス・ハイキングについて、いろいろと質問しているうちに、あっという間にレッドヴィルへと到着した。
レッドヴィルで開催されていた「LEADVILLE TRAIL 100MTB」
レッドヴィルに到着すると、想像以上に賑やかで、町の真ん中の広場で何かイベントをしているようだ。
気になって広場に行ってみると、「LEADVILLE TRAIL 100MTB」というマウンテンバイクのレースが、この週末に開催されるようで、そのレースの開催前イベントが催されていた。
レッドヴィルでは、この大会以外にもトレイルランニングの100mileレースなど数多くの大会が開催されている。その熱量を味わいながら、予約していたホステルへ移動した。
トレイルレース開催前の物販イベント
この日は、簡単に夕食分の食料の買い出しをして、いつも通りシャワーと洗濯。
それが終わったら、ホステルのキッチンで料理をしながらビールを流し込み、久々のベッドで深い眠りについた。
この旅で、初めてのゼロデイ。ローカルのメーカーを訪れる。 (DAY11)
出迎えしてくれたNUNATAKのヤン(左)と息子のビョルン(真ん中)。
今日は、この旅で初めてのゼロデイだ。
この町でゼロデイを取ったのは、行ってみたいショップ、メーカーがあったから。その中でも楽しみにしていたのが、ダウンメーカーのNUNATAK (ヌナタク)だ。
そのNUNATAKの工房兼自宅を訪れた。出迎えしてくれたのは、オーナーのヤンと、その息子のビョルン。
実は、今回、スリーピングバックのカスタムオーダーを事前にお願いしていて、それを直接受け取ろうと訪れたのだ。
今回のコロラド・トレイルの自然環境や、使い勝手、体格など様々な視点から、細かい箇所の調整を緻密にカスタムさせてもらった。ヤンからも、コロラド・トレイルで使うには申し分ないとお墨付きをもらった。
プロダクトの製作についての話や、生地の話など、作り手としての話をしていると、ヤンが「ダウンジャケットを試してみないか?」と、プロトタイプを出してきてくれた。
NUNATAKのプロダクトが生み出される工房。
ダウン量を増やしながら、細かいところを削ぎ落とし、可能な限り軽量化を施した特別仕様の一品。
僕は「もちろん!」といい、そのプロトタイプのダウンジャケットも買わせてもらった。
帰り際、2人は「レッドヴィルに来ることがあれば、必ず立ち寄りなさい。私たちがフィールドに出ていない時以外はいつでも歓迎するよ」と言ってくれた。
マウンテンバイクのルートも有名なコロラドトレイル。 (DAY12)
テネシー・パスへと送り届けてくれた、レースサポーターのマイク。
この日は、朝から出発するのではなく、あえて時間を遅らせ、10時頃に町を出発することにしていた。
昨夜、僕が宿泊していたホステルは、共有スペースのあちらこちらで、マウンテンバイクレースに参加する各チームが、翌日の早朝スタートに向けて作戦会議をしていた。
どうやら、明日の朝イチは主要道路には交通規制が掛かり、トレイル上はレースの参加者で溢れてしまうようなのだ。
そこに巻き込まれると、トレイルをハイキングするどころではなくなってしまうため、時間を調整して出発をしようと言うわけだ。
マウンテンバイクが走ってきた急峻なトレイル。
出発を遅らせたことが功を奏し、関係者にテネシーパスまで送ってもらうこともでき、この日は順調にトレイルをスタートした。
ここからは標高が3,500mほどに上がり、一気に急斜面を駆け上がる。この急峻な勾配はコロラド・トレイルの特徴のひとつであるから仕方がない。息も絶え絶え、なんとか標高を上げると、後ろからマウンテンバイクが走ってきた。
どうやらレースの後半組は、まだこの区間を通過していなかったようだ。何台か、レース参加者を見送り、また歩き始めた。
標高3500mの野営地。
コロラド・トレイルでは、マウンテンバイクでトレイルを走る人がとても多く、Far Out (地図アプリ) でもトレイル・ルートとは別に、マウンテンバイク・ルートが用意されているぐらいだ。
いつか自分もこのルートをマウンテンバイクで走ってみたいと、その想像を膨らませているとワクワクが止まらなくなった。
トレイルアウトしてPCT DAYSへ。(DAY13〜DAY14)
眼下に望むツインレイクス。
ここからはツインレイクスまで一気に下り、湖岸を歩きつつ、ハイウェイ24を目指す。ハイウェイ24からは、ヒッチハイクでレッドヴィルに戻り、そこからデンバー国際空港を目指すのだ。
そう、ここで1度、コロラド・トレイルからトレイルアウトをし、8/17-19に開催する予定のPCT DAYSに参加するのだ。
僕が、2015年にPCTを歩いた時には、PCT DAYの日程にどうしても間に合わなく、泣く泣く不参加となってしまった。だからこそ、このPCT DAYSに参加したい!なら、ちょうどコロラド・トレイルを歩く期間と重なるし、行ってみようか!と思い立ったのである。
PCT DAYSへのアクセスを考えながら、標高を下げていくと、眼下にツインレイクスが見えてきた。ツインレイクスでは、ブラウントラウトやレイクトラウト、レインボートラウトなどトラウト釣りの人気スポットだ。標高も2900mと高山地帯のため、夏場でも水温が安定しており、トラウト釣りには適地なのだろう。
コロラド・トレイルとCDTのトレイルサイン。
ツインレイクスの湖岸や、水上でボートフィッシングをしている釣り人、タックルもルアーや、ダブルハンドのフライフィッシングなど、釣り方も様々だ。そんな羨ましい光景を横目に、ハイウェイを目指し、ひたすら歩き続ける。
ハイウェイ手前、トレイルから少し離れたところで、バックパックを降ろし、道路に向かって親指を立てる。
15分、30分、1時間と時間が過ぎていく。
2時間、ようやく1台の車が止まってくれた。
明日からは大移動だ。
ヒッチハイクでレッドヴィルまで戻り、デンバー国際空港へ。
TAGS: