TODAY’S BEER RUN #17 | 籠屋ビールスタンド (和泉多摩川)
文:利根川真幸 写真・構成:TRAILS
What’s TODAY’S BEER RUN? | 走って、至極の一杯となるクラフトビールを飲む。ただそれだけのきわめてシンプルな企画。ナビゲーターは、TRAILSの仲間で根っからのクラフトビール好きの、ゆうき君。アメリカのトレイルタウンのマイクロブルワリーで、ハイカーやランナーが集まってビールを楽しむみたいに、自分たちの町を走って、ビールを流し込む。だって走った後のクラフトビールは間違いなく最高でしょ? さて今日の一杯は?
* * *
『TODAY’S BEER RUN』の第17回!案内役は、おなじみのビアジャンキー・ゆうき君 (黒川裕規)。
今回はいつものゆうき君とTRAILS Crewトニーに加え、ハイカーのキョウシロウ a.k.a. SAMURAIも参加!
キョウシロウは、ちょうどアメリカのCDT (※1) のスルーハイキングから帰国したばかりで、TRAILSに遊びに来ていたところだった。「一緒に走ってビール飲まない?」と誘うと、二つ返事で「いいっすね!」というハイカーらしいノリ。

CDTを2025年にスルーハイキングしたキョウシロウ。
もともと明治時代から続く酒屋である「籠屋・秋元商店」。その籠屋が2017年に立ち上げた「籠屋ブルワリー」が作ったビールスタンドだ。
「日本のビール」をつくりたいというこだわりから、日本酒など日本の醸造技術とクラフトビールをかけ合わせる、という発想で生まれたビールだという。
クラフトビールで主流のパンチのある味ではなく、「和食に合うビールの味」ということにもこだわって作ったのだそうだ。
酒屋が作った日本のビール、というアイディアに期待を抑えられずにいられない。
そんな今回の『TODAY’S BEER RUN』をお楽しみください。

※スタート地点となる『TRAILS INNOVATION GARAGE』に集合した、TRAILS Crewのトニー (左)、ゆうき君 (中央) 、ロング・ディスタンス・ハイカーのキョウシロウ (右)
※1 CDT:Continental Divide Trail (コンチネンタル・ディバイ・トレイル)。メキシコ国境からニューメキシコ州、コロラド州、ワイオミング州、アイダホ州、モンタナ州を経てカナダ国境まで、ロッキー山脈に沿った北米大陸の分水嶺を縦断する3,100mile (5,000km) のロングトレイル。アメリカ3大トレイルのひとつ。
NAVIGATOR / ゆうき君 (黒川裕規)
パタゴニアのフード部門『パタゴニア プロビジョンズ』で食品やビールを担当。前職がヤッホーブルーイングということもあり、ビールの知識も豊富。そもそも根っからのビール好きで、10年以上前からクラフトビールを個人的に掘りつづけている。TRAILS編集部crewの根津とは8年来のトレイルラン仲間で、100mileレースをいくつも完走しているタフなトレイルランナーでもある。『TODAY’S BEER RUN』のルール
①日本橋にある『TRAILS INNOVATION GARAGE』からお店まで走って行く ②『TODAY’S BEER RUN』のオリジナル缶バッジを作る ③ゆうき君おすすめのお店で彼イチオシのクラフトビールを飲む
GARAGE to 籠屋ビールスタンド
スタート地点は、東京は日本橋にある『TRAILS INNOVATION GARAGE』。
この場のコンセプトである「MAKE YOUR OWN TRIP = 自分の旅をつくる」を体験するべく、まずは恒例の『TODAY’S BEER RUN』オリジナル缶バッジづくりから。

MYOG (Make Your Own Gear) ができる『TRAILS INNOVATION GARAGE』で、オリジナルの缶バッジを作るゆうき君。

オリジナルのバッジが完成! これをキャップに付けて走る。
初冬にさしかかり、ランには絶好の季節になってきた。
今回は、アメリカの旅の匂いをまだぷんぷん放っているキョウシロウもいて、一層賑やかだ。
早朝にTRAILS INNOVATION GARAGEに集合し、ワイワイと3人でスタートを切った。

心地よい気温のなか、極上のクラフトビールを求めて日本橋の『TRAILS INNOVATION GARAGE』を出発。
今回のルート
『籠屋ビールスタンド』までは、約26km。少し遠いか?という若干の不安もありつつ、これくらいの距離はハイキングだったら余裕だなと、僕とキョウシロウはその不安をないことにして走り出した。
急がずゆっくり走っていけば大丈夫だろう。なによりこの日は天気も最高で、BEER RUNにはもってこいの気候だった。

日本橋、皇居、渋谷、梅ヶ丘を経て、多摩川沿いのゴールへ。距離は約26km。
今回は、日本橋を出発して、皇居、赤坂離宮、渋谷、梅ヶ丘をつないで、多摩川沿いまで行くルート。
途中、北沢川緑道という約4kmの遊歩道を、気持ちよく駆け抜けていく。
北沢川緑道沿いは紅葉が鮮やかに色づき、少し疲れも感じてきたところだったが、景色を楽しみながら自然と顔を上げて走り続けることができた。

途中、北沢川緑道という全長4.3キロの遊歩道を通る。
北沢川緑道を抜けて、小田急電鉄小田原線に差しかかると、そこからは沿線沿いを走っていく。もうまもなくゴールだ。
20kmくらい走っても、キョウシロウは帰ってきたばかりのぴんぴんしてる。さすが約5,000kmも歩いて帰ってきたばかりのロング・ディスタンス・ハイカーだ。
狛江の駅周辺を過ぎて、和泉多摩川の商店街に入ると、『籠屋ビールスタンド』が目に入ってきた。

2024年4月6日オープンの『籠屋ビールスタンド 』に到着。しっかり26kmの長距離を走ったので、クラフトビールの準備は万全!
『籠屋ビールスタンド』は、小田急電鉄小田原線「和泉多摩川駅」のすぐそばの和泉多摩川商店街内にあるお店だ。
商店街には地元に根ざしたお店もたくさんあり、地元の人達が楽しそうに世間話をしながら、のんびりとした時間を過ごしていた。

籠屋ビールスタンドのカウンター。
籠屋ビールスタンドの起源は、明治35年から続く、東京都狛江市の地酒専門店である「籠屋・秋元商店」。この籠屋が2017年から始めたビール醸造所・籠屋ブルワリーが運営するのが、『籠屋ビールスタンド』だ。
一番の特徴は、地酒専門店として培われた日本の醸造技術と、クラフトビールを組み合わせたところにある。
ちなみに、店の入り口には、新酒の季節に酒蔵でよくある杉玉が飾られている。
「醸造大国・日本だからこそつくれる味がある」という思いから生まれたクラフトビール。

『籠屋ビールスタンド』の佐藤さん。
出迎えてくれたのは、『籠屋ビールスタンド』の佐藤拓矢 (さとうたくや) さん。
佐藤さんは、プライベートで籠屋ブルワリーによく通っていたお客さんだった方。もともとは舞台やステージ関係のイベント企画の仕事をしていて、去年フリーランスになったタイミングで、自分の好きなビールでも、仕事の幅を広げたいという思いで、籠屋さんと話をしてここで働くことになったそうだ。
その佐藤さんに、日本の醸造技術とクラフトビールを組み合わせるという、籠屋のビールづくりへの思いについて聞いてみた。
佐藤さん:「籠屋ブルワリーの責任者の江上は、もともとサントリーで働いていたんですけど、自分のビールを作りたいという思いが強かったんです。それで籠屋の社長と一緒にやろうということになり、籠屋に入り、2017年に籠屋ブルワリーを立ち上げたんです。
ではどんなビールを作るかとなった時に、籠屋は酒屋であるし日本酒に強いので、『日本のビール』を作りたいという思いがあったんです。
『日本のビール』というと、お米や麹を入れるというやり方もありますが、そういった副原料を使わずに、ビールの作り方を変えずに作ることはできないか?って考えたんです。そのときに、日本酒の新政 (あらまさ) さんと相談して、「木桶で仕込む」という着想を得て、挑戦したんです。そこからできあがったのが、今のフラッグシップの『和轍(わだち)』です。」
「日本酒の技術とクラフトビールのかけあわせ」の話を聞いて、今日は最高なクラフトビールをいただけそうだ!という予感がどんどん高まった。
また籠屋のビールは、食事に合う日本らしいビールというが特徴だという。

店内ではタップのクラフトビールも味わえる。
佐藤さん:「籠屋のビールづくりとして、食事に合うビールをつくりたいということも、強く思っていました。日本酒は日本食とのペアリングもばっちりですけど、クラフトビールははたしてどうなのかと。
クラフトビールと食事というと、肉とか油っぽいものとかに偏ってしまいがちなんですけど、和食に本当にマッチするビールを、つくりたいという気持ちがあったんです。
なので、クラフトビールといっても、アメリカのウェストコーストIPAみたいなガッツリした味わいとは、違うものにしたいと思っていました。
一方で日本の大手メーカーのラガーも、ものによっては日本の食事と合わないこともあると感じていて、日本の大手メーカーのものとも違ったものを作ろうとしました。
そこで、きんきんと冷たい状態でのおいしさはもちろん、少し時間が経って温度が上がっても味が落ちないビールをつくりました。これにより、食事とも合わせやすい味にすることができました。」
籠屋のビールは、日本酒や味噌など日本の発酵食品で培われた知識や技術を使って、『自然に寄り添い、微生物たちの力を信じ、その織りなす調和の中で、どれだけ美味しさを引き出せるか』ということを謳っている。
この醸造の技術により、食事に合う「日本のビール」の味が生み出されたのだという。
ゆうき君のイチオシの「TODAY’S BEER」

走ったあとに飲みやすい一杯をチョイス。
ゆうき君の今日のイチオシはこれ。
『籠屋ブルワリー / 狛江CSエール2025』
ゆうき:「今回の1杯は、狛江で収穫されたフレッシュホップを85%使用した狛江CSエール2025!
今年のスタイルはゴールデンエール。CSエールは、狛江市民が育てたホップで、ビールをつくるプロジェクトで、2016年に狛江市CSA(地域支援型農業)の活動の一環としてスタートして、毎年ホップ栽培とビール醸造を続けているんだ。
今年のゴールデンエールは、柑橘系の明るいアロマが立ち上がって、モルトのやさしい甘みときれいにまとまってる。後味はスッと消えて重くないので、気づいたらもう一杯いきたくなるタイプ。バランスのよさが光る狛江ならではエールです!」

地元で収穫されたホップを85%使用した「狛江CSエール2025」。
僕もこの店イチオシの狛江CSエールをいただいた。飲んだ瞬間、フレッシュさの中にも苦みと酸味のバランスが良くごくごくと飲めてしまった。
キョウシロウは約半年間、アメリカのCDTをロング・ディスタンス・ハイキングしてきて、この1週間前に帰ってきたばかり。ずっとアメリカのビールを飲み続けてきたこともあってか、「日本のビールの繊細さに感動っすね!!」とぐびぐびと飲んでいた。
そして、地元の人が自分が育てたホップが、地元のクラフトビールの原材料となって、それを地元の人たちが飲んでおいしいと喜んでいるのは、素敵な循環だ。
佐藤さん:「はじめにもお話をしましたが、籠屋は明治35年から続いている酒屋で、ずっと狛江という場所に根ざしていてやってきたんですよね。地元に愛される酒屋として、続けてこられて。だから狛江でビールを作りたい、という思いは強いんです。
地元の狛江でホップを育てるプロジェクトも、ビールを飲まない狛江市民もプロジェクトに参加して一緒にホップを育てたりしてくれているんですよね。そうやって地元のコミュニティができることは、とても嬉しいことです。」

カウンターは、日本酒の木桶で使われる杉でつくられている。
今回は木桶で仕込んだ「和轍(わだち)」は、まだ一部の飲食店や、オンラインでの数量限定販売のみとのことで飲めなかったけど、今後は籠屋ブルワリーのこだわりが詰まった「和轍(わだち)」をぜひ飲んでみたいと思う。

2杯目は、狛江市で缶デザインを公募した「華休 はなやすめ」でも乾杯。これもまた美味。
走ったあとのクラフトビールは最高!
籠屋ビールスタンドは、「日本のビール」をつくるというこだわりから、地元で愛されるビールをつくり、地域の人たちのハブにもなっている、素敵なお店だった。
さて、次はどこのクラフトビールを飲みにいこうかな。
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