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リズ・トーマスのハイキング・アズ・ア・ウーマン#20 / より長くハイキングするための方法(後編)

2019.06.19
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(English follows after this page.)

文:リズ・トーマス 写真:リズ・トーマス, ナオミ・フデッツ, ブライアン・デヴィッドソン 訳:藤田快己 構成:TRAILS

ロング・ディスタンス・ハイキングにおいて、いかにして長い距離を歩くか?

前編はおもに概論的な内容でしたが、今回の後編では、栄養の取り方、リカバリーの方法、トレーニング方法など、より具体的で実践的な方法を紹介します。

数々のロング・ディスタンス・ハイキングを経験してきたリズ(※)が、実際に行なっている手法やトレーニングは、これから長い距離を歩こうと思っているハイカーにとって、大きな参考となるはずです。

※リズは、2011年に、ATにおける女性のセルフサポーテッドによる最速踏破記録(FKT)を達成した。記録は80日と13時間11分。これは当時、それまでの記録よりも約1週間ほど短いタイムだった。彼女はアメリカ3大トレイル(AT, PCT, CDT)をすべてスルーハイクしたトリプルクラウナーでもあり、アメリカ合衆国内で15,000マイル超のトレイルを歩いている。

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リズが長く歩けるのは、気合いや根性ではなく、具体的な方法を実行しているからです。



栄養のスペシャリストの見解にもとづくエネルギー学



私の友人でスルーハイカーに関する栄養のスペシャリストであるケイティー “ソルティー” ガーバーは、「栄養」をうまい喩えで説明していました。そしてそれは、アウトドア好きの人々にまさに当てはまるものでした。

彼女は、食べるという行為は火をおこすことに近い、と言います。糖分は、着火の原料となり、脂質と炭水化物は、炎を強く持続させる丸太になるのです。

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必要な栄養素を、適切なタイミングで摂取することが大切です。

もし、突然のエネルギー切れによる無力感や行き詰まりを感じた時には、糖質の多いお菓子が次の一歩を踏み出す手助けをしてくれるかもしれません。また、同じように、電解質や塩分も突然の疲労に効果的だと思います。

でも、紛れもない事実として、自分自身を元気づけ、エネルギーの持続に直接寄与する栄養素は、脂質と炭水化物です。

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私は、食事を通じて脂質と炭水化物をしっかり摂っています。

キャンプファイヤーをする時と同じように、エネルギーを維持し続けるコツは、「丸太」を投げ加えるタイミングにあります。ハイキングでも、定期的に、脂質と炭水化物を摂取することが、エネルギーの持続につながります。

キャンプファイヤーにおいて、丸太が燃え切ってしまってから新たな丸太を追加しても、同じような火の勢いはなかなか取り戻せないものです。ハイキングにおいても同様で、何も摂取しないまま、体内の脂質と炭水化物を使い切ってしまったとしたら、継続して同じ速度で歩みを進めることが難しくなります。



休憩中に疲れや痛みを回復する方法



多くのハイカーが休憩を必要とする一番の理由は、足の痛みです。その痛みはいくつかの方法によって軽減することができ、休憩を取らずにより長く歩きつづけることができるようになります。

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自分に合った良いシューズと良いソックスをチョイスしましょう。

まず、良いシューズと良いソックスを履くことです。私は、何時間も歩きつづけた後、シューズとソックスによって足が締めつけられる感覚に襲われることに気づきました。シンプルに、シューズかソックス(もしくは両方)を変えることで、かなり歩きやすくなりました。

また、足を冷たい水につけることも効果的です。腫れを抑え、痛みを軽減してくれるのです。実際に、小川に数分間足をつけた後、「新しい足」を手に入れたように感じることが頻繁にあります。

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自然食品は、ハイキング中の足と関節の痛みを軽減させてくれる可能性があります。

最後に、足の炎症時には、食事にも注意することで、より自然に痛みが解消されていきます。具体的には、炎症が起きた後、ウコン(自然物)とイブプロフェン(人工物)が痛みを軽減してくれることがわかりました。



カラダのトレーニングがもっとも効果的



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トレーニングによってカラダを整えることが、もっとも効果的です。

これまでのセクションでは、気持ちを上向かせ、エネルギーを持続させるコツについて話してきましたが、実際のところ、日々の歩行距離のアップにつながるもっとも確実な方法は、身体のトレーニングです。

でも、忙しい日常生活の中で、ハイキングのためにトレーニングする時間を確保するのはなかなか難しいものです(丸1日かかるトレーニングも多い)。

トレーニングというのは、限られた時間の中で、その時間を最大化するという点に意味があります。ベストな方法は、ハイキングやアウトドア・アクティビティを専門とした専属トレーナーを雇い、自分仕様の練習プログラムを作成してもらうことでしょう。ここでは、私が効果的だと感じたやり方を紹介します。



私が実践している具体的なトレーニング内容



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もし山火事が起きた時、速いスピードで長距離移動できるということは、自分自身の命を救うことにもなります。

まず、自分がハイキングをする上で、身体的に実現可能な要素を明確にします。次に、自分がより高めたいと思う項目について、具体的なハイキングにおける目標を設定します(歩行距離、標高差、時間、またはこれらの組み合わせ)。

自分のハイキングレベルを評価するために、私はハイキングで一番改善できそうな点をメモします。平地でのタイムには満足していても、上り坂では遅くなっていないか? コンディションの良いトレイルでは素早く動けていても、岩が多いゴツゴツした道や、泥だらけのトレイルでは遅くなっていないか?

たくさんのことを一度に改善しようと試みるのではなく(たとえば、泥のトレイルで速度と歩行距離を同時に伸ばそうとするのではなく)、私は改善が一番必要な1つの項目に焦点を絞るようにしています。(泥のトレイルを歩けるようにする、といった具合に)

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より長い距離をハイキングできるようになることは、セーフティーネットにもなります。たとえば天候悪化の際も、セルフレスキューが容易になります。

また、私は特定のトレイルでスピードが落ちる箇所があった時に、なぜ遅くなってしまうのか? を振り返り、それをどう変えることができるか? を考えます。

たとえば、私は岩が多いゴツゴツしたトレイルで速度が落ちるのですが、その理由は、私が落ちることや足首をひねって痛めることを心配してしまうからです。この不安に思ってしまう点について、岩のトレイルで落下することはない、と自信を持てる方法はあるのでしょうか? 解決策としては、たとえばハイキングポールを使ったり、よりグリップ力のあるシューズを履くことが挙げられます。

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カリフォルニア州のレインボー・フォールズにて。メインのトレイルが閉鎖されていて、長距離のハイキングが必要でした。

もちろん、練習は重要です。でも、練習するとき、どの側面に集中するかを定めることで、練習がただの反復によるトレーニングではなくなります。すぐには、こういった練習によってタイムが伸びることはないかもしれませんが、岩のトレイルを進むことに自信を持てるような精神的変化が生まれたとしたら、それはその練習の成果といえるでしょう。



トレーニングはハイキングをより楽しむための手段



LIZ13_05_Bear canisters take up significant room inside a backpack. You may need to carry a bigger backpack just to fit your bear can. Photo by Whitney LaRuffa
トレーニングを楽しむための工夫も大切です。

タフなハイキングに向けてトレーニングをする時、私は、自分のウィッシュリストに入れていた中レベルのハイキングに行くようにしています。新しいハイキングに出かけることは重要です。ハイキングに向けた反復練習を繰り返していると、ハイキングの喜びを感じなくなってしまうことがあると、個人的には考えています。

私は、個々人がトレイルを楽しむべきだと思うのです。

タフなトレイルのために、中距離のハイキングでトレーニングしていたとしても、新しいフィールドを選んだとしたら、今まで目にしたことのない光景に触れることになります。その経験そのものが、努力に対する報酬となり、より大きなゴールを達成するために練習を重ねるモチベーションとなるのです。

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より長い距離をハイキングできるようになるということは、限られた時間でより多くの山々を見られるようになるということです。フランスはコルシカのGR20にて。

より長い距離をハイキングすることは、決して他のハイカーよりも優れていることを誇示するものではありません。自慢するためのものでもありません。すべては、あなたのハイキングの選択肢を広げることなのです。

それは、より多くの山々、森、美しい景色に自分の手が届くようにする、ということです。そして、あなた自身の身体能力の範囲内において、より多くの冒険をするということです。

より長い距離をハイキングするための肉体的および精神的能力は、アウトドア・アクティビティをより楽しむためのツールでしかないのです。

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(英語の原文は次ページに掲載しています)

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WRITER
Liz Thomas

Liz Thomas

2011年にアパラチアントレイルを女性の最速タイムで制覇した記録を持っている事で知られている。また、彼女はトリプルクラウンを達成しただけでなく、米国に15以上あるトレイルでのスルーハイクを経験し、今まで15,000マイル以上ものトレイルを歩いてきた。また、彼女はその経験を長距離ハイキングコミュ二ティに還元する事にも熱心で、American Long Distance Hiking Assosication-Westのバイスプレジデンドも務めている。彼女がハイキングを本格的に始める前は、イエ-ル大学の森林環境学部で環境科学の修士課程を修了し、彼女の長距離ハイキングトレイルとその保護及びコミュニティに関するリサーチは名誉あるDoris Duke Conservation Fellowshipの賞を受けた。スポンサーはAltra, Gossamer Gear, Probar, Vermont Darn Tough socks, Mountain Laurel Designs, Sawyer filters, Montbellで、アンバサダーとして活躍している。
http://www.eathomas.com/

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