TRAILS REPORT

WHAT’S MC2T / マウンテン・レースを始めよう

2014.08.08
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■走り終わるのが寂しいレース

翌朝は朝6時に起床し、我々TRAILS取材班も撮影班として所定の持ち場に向かった。林道の終点からトレイルに入ると20分程で急斜面に遭遇、登りきるとトレイルは痩せたシングルトラックになり、朽ちかけた木の橋を渡る箇所もある。これは確かに普通のトレイルレースではありえないコース設定だと思わされた。

レースのスタート地点まではキャンプ場から車で30分ほどかかり、そこまでの選手の送迎はスタッフ/選手それぞれの車に分乗して行われるため、失礼ながら素人集団の運営では当然スタート時間は押すだろうと考えていた。が、予想は見事に裏切られた。車両班の綿密な計画と奮闘の甲斐あってレースは朝8時の定刻通りにスタートし(本当に信じられない!)、選手たちより30分ほど先行していた僕らもすぐに第一集団に追い抜かされた。

ヤセ尾根を登りきり、さらに急斜面をロープで下るとレース最初の徒渉ポイントに出たが、思ったよりも水深が深く(膝上まであった)、普通なら渡ることを諦めそうな川だった。我々TRAILS撮影班はレース前半はここで徒渉する選手たちを写真に収めていたが、川を見た瞬間の選手たちの「ここを渡るの!?」と言わんばかりの表情が印象的だった。けれど意を決して渡る時には、なぜか皆笑顔なのだ。徒渉ポイントはここからさらに何カ所も続くのだが…。

すべての選手を見送った後、僕らはゴールに移動した。ゴールには”MOUNTAIN CIRCUS”とアプリケが縫い付けれた手製のゴールテープが準備され、TRAIL TOBAのリーダー・ドミンゴさん率いるULTRA LUNCHの暖かいスープとパンが選手たちの帰還を待ちわびていて湯気をあげていた。我らが撮影班長、パーゴワークスの斉藤徹さんは選手たちのゴールの瞬間を撮影しようと手製のGoProワイヤー撮影システムのセッティングに余念がなく、そして自分の仕事を終えたクルーたちは、すでにひと足早く祝杯をあげている…。

相当の寒さを覚悟していたが、空は嘘のように晴れ渡り、秋の美しい小春日和だった。まだしばらく選手は来ないだろうと高を括り、やっと一息ついて遅い朝食のカップラーメンにお湯を注いだ瞬間だった。歓声があがり、見るともう最初の選手がゴールに駆け下りて来るところだった。速い!20キロ以上の激しい山道のコースを、3時間もかかっていない。

それからは次々と選手たちがゴールに飛び込んできた。すべての選手のためにゴールテープが用意され、クルーたちはハイタッチで選手たちの健闘を讃えた。走り終わった選手たちに聞くと、皆口々に最高に楽しかったという。女子1位のマウンテン・クイーンに輝いたチームFUJIYAMA UNITEDの竹本佳世子さんは、走り終わるのが寂しかった言っていた。ずっとトレイルを走り続けていたかったと。それってどんな気分なんだろう?

こうして『マウンテン・サーカス2 in 丹沢』は、これ以上ない程の大成功で終わった。とにかく選手もクルーも、すべての人の笑顔が印象的なレースだった。レースを走りきった充実感とやりきった充実感に満ちていた。そして選手たちは次のマウンテン・サーカスでの再会を約束して、それぞれの地元に帰っていった。次のマウンテン・サーカスは一体どこに行くんだろう?

仲間は全員で迎える。

仲間は全員で迎える。

MC2Tのマウンテン・キングに輝いた阪田哲一郎さん(AND TAR)、第二位の田垣内伸章さん、第三位の北野拓也さん(共にM.R.H.C.)

MC2Tのマウンテン・キングに輝いた阪田哲一郎さん(AND TAR)、第二位の田垣内伸章さん、第三位の北野拓也さん(共にM.R.H.C.)

改めてこれだけ多くの人々が純粋に楽しむためだけに集い、膨大な手間と労力を惜しまず数々の困難をくぐり抜け、そして最高に素晴らしい1日を過ごしたことに拍手を送りたい。 そう、楽しむってこういうことだ。掘っていけば楽しいことっていろいろあるし、なければ作っちゃえばいいんだ。

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三田正明

三田正明

1974年東京都国立市出身。2001年に『Title』(文藝春秋)の連載「To The Boy /少年犯罪被害者の旅」でカメラマン/ライターとしての活動を始める。2001年にザンビアで皆既日食を見て以来南アフリカ・ジンバブエ・タイ・インド・オーストラリア・アルゼンチン・ブラジル・メキシコ・トルコ・ネパール・アメリカ・カナダ・モンゴルなどを放浪。これまでに皆既日食を五度、部分日食を二度、皆既月食を一度見ている。次第に旅の途上で出会った大自然の世界に傾倒し、気がつけばヒマラヤや北米大陸や日本各地のトレイルを歩くように。雑誌『スペクテイター』や『マーマーマガジン』を始めとする多くの雑誌にアウトドアにまつわるドキュメンタリーやトラベローグや連載記事を執筆、TRAILSではメインライターとエディターを務める。
masaakimita.web.fc2.com

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