TRAILS REPORT

パックラフトのABC #01 川旅をはじめよう〜トレーニング&ダウンリバー〜

2016.08.19
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パックラフトを使って川下り(ダウンリバー)をやってみたい。そんな人には、まずはサニーエモーションの「トレーニング&ダウンリバー」への参加をオススメする。川のキホンとなる知識と技術を教えてくれながら、いきなり実際の川の上でパックラフトを漕がせてくれるワンデイ・ツアーだ。今回の記事では、その「トレーニング&ダウンリバー」の体験レポートをお届けする。

小さくたたんでバックパックに収納できてしまう、この「冒険心」をかきたててくれる旅道具=パックラフト。この道具に触れたら、きっと新しい旅のイメージがあなたの頭の中を支配すると思う。そんな川旅への誘いとして「パックラフトのABC」と題し、パックラフティングをはじめるために知っておきたいことを、レポートしていこうと思う。

今回はその連載レポートの第一弾。パックラフト未体験のライターの根津さんに、実際にサニーエモーションのツアーに参加してもらい、ツアーの内容とともに、パックラフティングの初期衝動をつづってもらった。

[MOVIE]

TRAILSのYoutubeチャンネル
https://www.youtube.com/c/TRAILS_movie

■旅道具としての舟:パックラフト
ひそかに舟に憧れていた。たとえばカヌーとかカヤックとか、そういった類いのものだ。明確な理由はないんだけど、以前からすっげー楽しそうだなと思っていたし、これで旅してみたいなあと思っていた。なにより所有しているだけでアウトドアマン!って感じがするじゃないか……そんな安直な気持ちもあった。

実際、これまで何度か体験したことはある。ただ、すべてその場限りで趣味になることはなかった。その大きな要因のひとつは、取り回しの悪さである。とにかくデカイので家での収納に困る。そして乗るとなればクルマがないとフィールドまで運べない。そんなわけで、僕のシップオーナーの夢は夢で終わる予定だった。

しかし!そこに『パックラフト』なるものが現れた。なかなか試す機会がなく、ずっと気になっている存在だった。


軽量で(2〜3kg)、折りたためる(バックパックに収納できるくらい)、インフレータブル(空気注入式)であることがパックラフトの特徴である。現在のパックラフティングは、アラスカを中心に発展してきた。アラスカの広大な荒野を旅するために、背負って歩けるパックラフトが必要となった。山を登り、峠を越えて、川が出てきたら、そこでパックラフトを膨らませて下る。重いバックパックや自転車なんかも載せることができる。

パックラフトはこんな憧れの旅をサポートしてくれる道具なのだ。パックラフトのパイオニア・メーカーであるアルパカラフト(ALPACKARAFT)のビジョンにもこのことがうたわれている。
alpacka-rafts-logo
- (私たちはボートの作り手ですが)私たちのビジョンは、ボートにフォーカスしているのではなく、ボートを使って、やりたいことをやる、行きたいところに行く、ということにフォーカスしています。つまるところ、ボートは道具でしかないのですから。だから、ボートでの旅を楽しんでください。

“Our vision is not focused on the boat. It’s about doing what you want to do and going where you want to go.  At the end of the day, the boat is only a tool.  So… good boating”

(出典:ALPACKARAFTホームページ http://www.alpackaraft.com/)

CoverShot

http://www.alpackaraft.com/ より

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http://sunnyemotion.com/ より

試してみたいという気持ちばかりが膨らんでいたなか、今回『Hiker’s Depotと行く。Sunny Emotion トレーニング&ダウンリバー プラス試乗体験ツアー』というイベントの誘いをもらった。

これは、パックラフティングガイドカンパニーであるサニーエモーション(*1)の『トレーニング&ダウンリバー』(*2)という初心者向けツアーがベースになっている。今回はハイカーズデポが、ハイカーにこの遊びを知ってほしいという想いから企画した特別バージョン。いったいどんなツアーなのか。僕が身をもって体感してきたので、その模様をお届けしたい。

(*1) サニーエモーション:日本初のパックラフトを利用したリバーガイドサービス会社であり、アルパカラフト(ALPACKARAFT)の輸入代理店でもある。少人数制で、未経験者の講習から上級者向けのルートガイドまで、随時ツアーを開催。エントリー層向けのツアーは主に安曇野エリアにて。安曇野は、北アルプスから流れる清流が作る扇状地に、適度な斜度(流れ)を持った川が多い。

(*2)トレーニング&ダウンリバー: 初めての人向けのツアー。午前に川下りの基本的な技術をマスターし、午後からはエキサイティングなダウンリバー。安曇野で随時開催している。

■パックラフト初体験
開催地は、長野県は安曇野にある犀川。東京から電車あるいはクルマで約2時間半〜3時間ほど。道中、僕は川の怖さを知らないのをいいことに、ウキウキが止まらなかった。

いよいよ、人生初のパックラフティングである。現地に到着して、自己紹介。ハイカーズデポ企画ということもあり、参加者はハイカーばかり。しかも、総勢19名という大所帯!(スタッフ含む。通常は数名で開催されている)

ツアーは午前の部と午後の部の二部構成になっており、午前中は、まず陸上でパックラフトの組み立て方(膨らまし方)やPFD(ライフジャケット)の装着方法、パドリングの仕方など基本事項のレクチャーから。



熱しやすく冷めやすい僕は、こういうイベントに参加すると、決まって最初の座学部分でダレてしまう。いい大人が何を言っているんだ!と叱られるかもしれないが、実技が待ちきれないのである。
でも今回は、例外だった。最初に、参加者がおのおのパックラフトを膨らませたのだが、それが良かった。その時点で、すでに自分のギア感が味わえたというか、愛着がわいたのである。
くわえて、サニーエモーションのガイドである柴田さんと塩崎さんの教え方がうまい!まるで僕たちの(僕だけか?)はやる気持ちを理解しているかのような簡潔で無駄のない説明のおかげで、あっという間に座学は終了。川へと移動した。

今回お世話になったサニーエモーションのガイドの二人。代表の柴田さん(右)と、塩崎さん(左)。

北アルプスの山々も望める犀川。イベントの日は、最高に気持ちいいSunny Dayだった。

午前の目的は、パックラフティングにおける基本技術の習得。主に学ぶのは、フェリーグライド(*3)、エディキャッチ(*4)、ストリームイン(*5)。いずれも川を安全に楽しむために欠かせない技術である。

(*3)フェリーグライド: 水の力を利用して、流れの中で左右に移動するテクニック。船首(バウ)を斜め上流に向け、ボートの底で流れを受け止めながらパドリングし、水の力を使って効果的に横方向にスライドする技術。

(*4) エディキャッチ:岩などの障害物に流れがぶつかると、その下流には水がとどまり渦巻いている箇所が生まれる(エディ)。本流から抜け出てこのエディに入るテクニック。下流を観察したり、水上で休憩したり、上陸する際に必要な止まる技術。

(*5) ストリームイン:エディから出て流れに乗ること。フェリーグライドの要領で上流方向に漕ぎ、ボートの底で流れを受け止めることができれば、速い流れに安定して合流、急加速ができる技術。

川のポイントポイントで、ひたすら反復練習をする。要はトレーニングである。トレーニングといえば苦しいだけでつまらない……それが常識なのだが、意外や意外ツラくない。いや、むしろ楽しいのだ。なぜって、基本的に川の流れを利用した技術なので疲れがたまらないというのがひとつ(実際、女性も年配の人も難なくこなしていた)。

もうひとつは、操縦感が味わえること。クルマでも、ラジコンでも、ゲームセンターのマシンでもいいのだが、それと同じようにモノを操る面白さがあるのだ。これは、僕がこれまで楽しんできたハイキングやトレイルランニングでは味わえない感覚である。

最初に川の浅いところで実際に舟に乗ってみながら、舟の特徴やパドル操作、川の基礎知識を教えてもらう。

フェリーグライドという技術を使い、対岸まで渡る練習。

湧水の透明度の高い水が流れる万水川。


■遊びながら学べるツアー。そしてドキドキの初ダウンリバー

午後の部は、ダウンリバー!午前中に習った基本技術を使いながらの約4㎞の川下りである。ちなみに今回のコースは、流れが穏やかで瀬も2級(*6)までしかない。くわえて、つねに北アルプスの雄大な山々を視界にとらえながらゆったり下れる。初めてのダウンリバーにピッタリだそうだ。

川に入る前に、柴田さんからリバーサイン(*7)の説明があった。川では声が届かないため、パドラー同士の意思疎通はジェスチャーで行なわれる。適切なライン取りや危険回避のためにも理解しておくべき知識である。また、不慣れな川ではスカウティング(*8)と呼ばれる下見も欠かせないとのこと。川特有の注意ポイントや、初めての人では気づきにくい危険性についても、丁寧に教えてくれた。

注意事項の解説が終わり、いざ出艇!

(*6) 瀬(流れが速く水深が浅い場所)の難易度を表す等級(グレード)。1〜6級まであり、6級が最も難しい。

(*7) 声の届かない川において、意思疎通のために使用するジェスチャー。OK、NO、ストップ、エディに入れ、ついて来い、速く、ゆっくりなど、さまざまなサインがある。パドルを使用したサインもある。世界共通。

(*8) 難易度が高いと予想される箇所において、艇を降りて陸上にあがり、危険はないか、どのルートがいいかなどを事前に偵察する行為。ダウンリバーしながら前方の状況(障害物や川の流れなど)を瞬時に判断するのは困難なため、適宜行なわれる。

午後のスタート地点。ここからダウンリバーの旅へ出発!

どんどんとコツをつかんで、笑顔でパックラフトを漕ぐ参加者のみなさん。右下はそんななかで、やや力んでいる筆者。

この舟を出すという行為が、パドルスポーツのズルいところである。たったこれだけで旅感がでてしまう。そして自分が旅に出るくせに「ボン・ボヤージュ!」と言いたくなる。

午後のコースは、午前に比べてバリエーションが豊か。流れが速いところもあれば、遅いところもある。大きな岩もあれば、橋脚もあり、川面すれすれに木の枝もあったりする。初心者向きとはいえ油断はできない。午前中に学んだ基本技術が重要になってくるのだ。

そんなコース状況を知ってちょっとだけ慌てたのは、何を隠そう僕である。てっきり、川の流れに身を任せてのーんびり下っていくだけかと思っていたのだ……。

多少の不安を抱きつつも、柴田さんと塩崎さんの指示に従いながら適切なコース取りをして障害物をかわしていく。さながら運動会の障害物競走のよう。敵の攻撃をかわすゲームのようでもあり、すっかり夢中になってしまった僕は、もっと出て来い!と思ったほど。

さらに進むと、白波が立っている箇所がいくつかあった。いわゆるホワイトウォーターってヤツである。といっても、大した高さではないので「行ける人は行っていいよー!」と柴田さん。

先生がそう言うんだから死ぬことはないだろうと思い、試しに突っ込んでみる。不規則な波がたてつづけに当たり、パックラフトはグルン、グルンとこれまでにない大きな揺れ方。ヤバッ!と一瞬思ったが、気づくとホワイトウォーターをくぐり抜けていた。

それ以来、僕はこのスリルの虜になってしまい、波を見つければ果敢に攻めていくようになってしまった。いやはや成功体験ってのは怖いものである。

実はコレ、僕だけに限ったことではない。最初は表情がこわばっていた参加者たちも、終盤には満面の笑み。ダウンリバーを心から楽しんでいるようだった。しかも教え方がいいのか、センスがあるのかはわからないが、みんなパドリングもお手のもの!といった感じになっていた。

そして気づけば、ゴール地点。4㎞の旅はあっという間に終わりを迎えた。

サニーエモーションとハイカーズデポの合同イベントだからこそ実現した、この壮観な19艇のパックラフトの大パーティ!


* * * * *

パックラフティングの基本技術を習得できるだけでなく、川下りの面白さ、醍醐味も満喫できるサニーエモーションの『トレーニング&ダウンリバー』。パドルスポーツをやってみたい人、そしてパックラフトに興味がある人には、超オススメである。ちなみに、今回の体験で味をしめた僕は、次のレベルの講習も受けたいと考えている。

今回のイベントのガイドとサポーター。上段がサニーエモーションのガイドのお二人。今回のイベントの企画者であるハイカーズデポの長谷川さん(左下)。そして長谷川さんとよく一緒に川に行っているノリさん&マミさんもサポーターとして参加してくれた(右下)。

日本でこんなたくさんのパックラフトがひとつの場所に集まったことはない、と思われる今回の大ツアーに参加してくれたみなさん。


サニーエモーションの柴田さんから、これからパックラフティングをはじめてみたい、という方へ向けたメッセージをもらったので、最後にそれを紹介したい。

sunnyemotion
- パックラフト(アルパカラフト)は、一番の特徴である携帯性はもちろんのこと、今まであった他のボートに比べ、軽い操作感・安定性が非常に優れています。そのため、流水に慣れやすく、所有しやすく、川下りがこんなに身近になるボートは他に見当たらないと思います。

サニーエモーションの “トレーニング&ダウンリバー” で伝えている内容は、技術というよりは、川の上での歩き方・止まり方・転んだ時の対処といった基本的なことです。日本全国、いや世界中に川はあるので、じっくりと取り組んで長く楽しんでいただければと思います!
(サニーエモーション柴田)


次回の『パックラフトのABC #02』は、必要なウェアとギアについて。お楽しみに!

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PACKRAFTING in 天竜川


WRITER
根津 貴央

根津 貴央

1976年、栃木県宇都宮市生まれ。幼少期から宇宙に興味を抱き、大学では物理学を専攻。卒業後、紆余曲折を経て広告業界に入り、12年弱コピーライター職に従事する。2012年に独立し、かねてより憧れていたアメリカのロングトレイル「パシフィック・クレスト・トレイル(PCT/総延長4,265km)」のスルーハイクのために渡米。約5カ月間歩きつづける。2014年には「アパラチアン・トレイル(AT/総延長3,500km)」の有名なイベント「Trail Days」に参加し、約260kmのセクションを歩く。同年より、グレート・ヒマラヤ・トレイル(GHT)を踏査する日本初のプロジェクト『GHT Project(www.facebook.com/ghtproject)』を仲間と共に推進中。現在はアウトドア系のメディアを中心に執筆活動を行なう。著書に『ロングトレイルはじめました』(誠文堂新光社)がある。

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