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ルイス・エスコバルのカリフォルニア・ランニング通信 #1 / ウルトラマラソンと銀のバックル

2014.08.29
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写真/文:ルイス・エスコバル 訳:大島竜也/三田正明

7月31日に掲載されたTRAIL TALK#002にも登場してくれた、カリフォルニア在住の写真家ルイス・エスコバルの連載がスタート!自他共に認めるカリフォルニアのランニング・コミュニティのキーパーソンにして、あのランナーのバイブル『BORN TO RUN』の表紙写真も撮影したルイスによる、アメリカのランニング・カルチャーの歴史といまを伝える連続コラムです。どうぞ美麗な写真と共にお楽しみください!

■ウルトラマラソンと銀のバックル / It’s all about the buckle

テヴィス・カップは100マイル(約160km)を乗馬で競う耐久レースだ。1955年から開催されているアマチュアのための大会で、乗馬で競う耐久レースの始まりとされている。そして現代の多くの耐久ランニング・レースも、テヴィス・カップのスポンサーであるウエスタンステイツ・トレイル財団の尽力の上に成り立っているのである。

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テヴィス・カップはカリフォルニア州タホ湖畔のスクウォー・ヴァレー・スキーリゾートをスタートし、歴史的なウエスタンステイツ・トレイルを横切ってシェラネヴァダ山脈の中心を通り、ゴールドラッシュの街として有名なオーバーンでゴールする。そして24時間以内に100マイルのコースを走った後、「まだ走れる」と判断された騎手と馬のみに、その栄誉の証として銀のウエスタン風ベルトバックルが贈られるのだ。

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耐久ランニング・レースの4大大会のひとつ、ウエスタンステイツ・100マイル・エンデュランスランは1974年にゴードン・アインスレーが初めて完走した。彼はテヴィス・カップで馬と共に1971年と72年に完走したが、73年は馬の怪我のため完走できなかった。翌74年、ゴードンはその100マイルを自分の足で走ることを決め、1974年8月3日の土曜日の朝、ゼッケン0番を胸につけた彼は馬と並んでスタート地点に立った。

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朝5時、スタートの号砲が鳴らされた。馬たちが一斉に走り出し、ゴードンも山の中へと駆けて行った。耐久ランニング・レースの歴史が始まった瞬間だった。そして23時間42分後、ゴードンはそれまで誰も成し遂げたことのなかったことを成し遂げた。その夏の一日で、ゴードン・アインスレーはウエスタンステイツ・トレイルの起伏に富んだ100マイルをランナーが自らの足で完走できることを証明したのだった。

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もちろんテヴィス・カップは乗馬レースであり、1974年にランナーのカテゴリーはなかった。だが、その歴史的な走破によってゴードンにはその証である銀のバックルを授与された。ゴードン・アインスレーは一日でウルトラランニングという新たなスポーツを創り、またその歴史を築いたのだ。

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現在では銀のバックルは耐久ランニング・レースの象徴とされており、ウエスタン式のベルトバックルはヴァーモントからホノルルにいたるまで、最高位のランナーの栄冠として認知されている。こうしてウエスタンステイツ・100マイル・ランを24時間以内でゴールしたアスリートに、“100 miles 1 day”と文字が彫られた銀のバックルが贈られることになったのだった。

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ウエスタンステイツ・ 100マイル・エンデュランスランのWebsiteより:


「ウルトラランニングの世界において、銀のバックルはおそらく誰もが欲しがる賞の最たるものだろう。その起源はテヴィス・カップの完走者に送られたバックルに遡る。バックルは現在では合衆国の100マイル・レースの賞品のスタンダードとなり、100マイル以下のレースでも完走者にバックルを授与している。ウエスタンステイツ・100マイル・ランの銀のバックルはネヴァダ州カーソンのカムストック・へリテージという家族経営の会社によって作られている。24時間以内で完走できなかったランナーには銀ではないが、似た形のバックルが贈られる。すべてのバックルが手作業でつくられているので、一つとして同じバックルはない。」


It’s all about the buckle by Luis Escobar

The Tevis Cup is a 100 mile equestrian endurance ride. It is an amateur event that has been held since 1955. The Tevis Cup is considered to be the founding ride of endurance horseback riding. Many modern endurance events have been based on the efforts of the Western States Trail Foundation who is the sponsor of the Tevis Cup. The ride starts near the Squaw Valley Ski Resort at Lake Tahoe. It traverses the historic Western States Trail through the heart of the Sierra Nevada Mountain Range and finishes 100 miles away in the historic gold rush town of Auburn California. Each rider who completes the 100-mile course within the 24-hour limit and whose mount is judged “fit to continue” can elect to receive the iconic award of completion – a silver western belt buckle.

The Western States Endurance Run was first completed by Gordon Ainsleigh in 1974. He had finished the Tevis Cup on horseback in 1971 and 1972. In 1973 his horse was injured and unable to complete the ride. In 1974, Gordy decided to attempt the 100 mile horse ride on foot. On Saturday morning, August 3, 1974 in Squaw Valley, with bib number 0 pinned to his chest, Gordy lined up with the horses. At 5:00am the starters gun fired, the horses trotted away, Gordy ran towards the mountains and directly into endurance history. Twenty-three hours and forty-two minutes later Gordy showed up in Auburn. He did what had never been done. On that single summer day, Gordon Ainsleigh proved that a runner could actually traverse 100 miles of the rugged Western States Trail on foot.

The Tevis Cup is a horseback ride – it is not a run – in 1974 there was no “runners category”. At the finish of his historic run, Gordy was presented with the Tevis Cup’s award of completion – a silver western belt buckle. In one day, Gordon Ainsleigh had created a sport and a established tradition. Today, the Silver Buckle is the icon of endurance running. From Vermont to Honolulu a western style belt buckle is recognized as a the highest level of running achievement.

To this day, athletes who complete the Western States 100 Mile Endurance Run in 24 hours or less, will receive the Silver Buckle which is engraved with the words “One Hundred Miles One Day”

From the Western States 100 Mile Endurance Run website:

“The Silver Buckle is perhaps the most coveted award in ultrarunning. With roots going back to the award given out to finishers of the Tevis Ride, the belt buckle has now become the standard for 100 mile races in the US. Some shorter races even award buckles to finishers. The Western States Silver Buckle has been hand crafted by the family run business Comstock Heritage in Carson City, NV since the beginning. Below is a picture of the buckle given to the winner. All sub-24 hour finishers receive a similar buckle. Note that because these are handcrafted, no two buckles will look exactly alike.”

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Luis Escobar

Luis Escobar

写真家/ランナー。カリフォルニア州サンタマリアで写真スタジオを営みながら、高校のクロスカントリー・コーチやレース・ディレクターとしても活動を行っている。過去30年以上のランニング・キャリアを持ち、北米最大のレースのひとつWestern States 100 Miles Endurance Runには連続20回以上出場している。世界的ベストセラーになったクリス・マクドゥーガル著『BORN TO RUN』で描かれた伝説的な第一回Copper Canyon Ultra Marathonに参加し、メキシコの「走る民族」タラウマラ族と世界的ウルトラランナーたちとの貴重な出会いの瞬間を写真に納めた。クリス・マクドゥーガル自らの命名によるランナーズ・イベントBorn to Run Ultra Marathonsのディレクターも勤めるカリフォルニア・ランニング・コミュニティのキーパーソン。詳しくは、2014.07.31に掲載されたTRAIL TALK #002を参照。
http://www.allwedoisrun.com/

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