TRAILS REPORT

HIMALAYA MOUNTAIN LIFE | 『GHT Project』計画編(2018)

2018.10.24
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文・写真:根津貴央 構成:TRAILS

ヒマラヤのロングトレイル『グレート・ヒマラヤ・トレイル(GHT)』を踏査するプロジェクト『GHT Project』。2014年にスタートしたこのプロジェクトも、今年で5年目を迎えた。

年1回のセクションハイキングを繰り返しながら全長1,700kmを踏査するのだが、5回完結という当初の予定を大幅にオーバーして、現状7回での完結を見込んでいる。

そんな状況もあって、読者のなかには「いつまでつづくんだろう?」「まだやっていたんだ!」「いまどのくらい進んでいるの?」と思っている人も少なくないはず。

そこで今回、5回目の旅の大まかな計画を紹介したい。ちなみに今回は、GHT最大の難関エリア。果たして無事にクリアできるのか、ぶっちゃけ僕自身も不安でいっぱいだ。

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ネパールのカトマンズにある繁華街タメル。欧米のバックパッカーも多い。


今回のルート概要


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GHT全図(上段)と今回歩くルート(下段)。今年の旅が終われば、あと2回で踏査が完了する予定だ。

パッと見てピンとくる人はあまりいないかもしれないが、エリアとしてはマカルー〜ソルクンブ(エベレスト)。世界第5位の標高のマカルー(8,463m)と世界第1位のエベレスト(8,848m)を有する、ヒマラヤ屈指の高峰エリアでもある。

本来であれば2年目(2015)に踏査するセクションだったのだが、標高が高く難易度が高いこともあり、ひとまず見送っていた。そしてこの5年目に、満を持して歩くというわけだ。

このセクションのスペックはこんな感じ。
【距離】 約208km
【日数】 31日(5日程度の休息日を含む)
【最高地点】 6,190m

この208kmにもおよぶルートがどんなところなのか。以下3つのエリアにわけて、見所や注意点、展望などに触れてみようと思う。


今回のルート1(ヌン〜ホンゴン):仲間の故郷に立ち寄りながらの里山逍遥。


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2014年に訪れた時のセドゥア。こぢんまりとした田舎村である。

まずは、セドゥア(標高1,500m)という村でゆっくり過ごす予定。ここは、毎年一緒に旅をしているネパール人ガイド(ライ族)の故郷。

彼とは長い付き合いで、現地ガイドというよりは『GHT Project』の一員といっても過言ではなく、もはやファミリーとも呼べる間柄だ。

実は、2014年の1回目の旅でも招かれていて、彼の家族にとてもお世話になった。今回4年ぶりにみんなに会えるのが楽しみでしかたない。長く旅をしていると、歩くだけではなくこういった人たちとの再会も大きな魅力となる。

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僕たちと旅をしている現地ガイドのプラカス(前列右から3番目)の家族および親類。

セドゥアから4日かけてこの区間の終点ホンゴン(標高2,323m)へとたどり着く。ここでようやくGHTに入ることになる。まだまだ標高は低く、棚田の多い里山を気持ちよく歩くことができるだろう。

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GHTを象徴する景色のひとつ。


今回のルート2(ホンゴン〜チュクン):最難関エリア! 標高6,000m前後の連続する峠をライト & ファストで越える。


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2014年に訪れた時のホンゴン。斜面に建てられた家々が特徴的。

ホンゴンを出発すると、すぐに急登がはじまり4,000m近くまで標高を上げることになる。いよいよ、今回の核心部のプロローグだ。

ここまでは村の民家やロッジに宿泊できたが、ここから10日間はテント泊オンリー。しかも、マカルーBC(標高4,870m)以降は、シェルパニ・コル(標高6,180m)、ウエスト・コル(標高6,190m)、アンプラプツァ(標高5,845m)と、険しい峠が連続する。

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2017年の旅で越えた峠、タシラプツァ(標高5,755m)。今年は、これ以上の峠に挑むことになる。

実はこのセクションは、2013年の10月後半、根本(GHT Projectの発起人でありリーダー)がトライしている。

彼は、この最上級難度を誇る『3Cols』を越えたいという衝動に駆られて挑んだ。でも、季節外れの大雪に見舞われてなかなか前に進めない。食料 & 燃料不足に加え雪崩のリスクも高まり、結局、迂回せざるを得なかった。つまり今回、根本にとってはリベンジでもあるのだ。

まあとにかく油断ならないエリアなので、のんびりはしていられない。そのためこの区間はポーター(荷運び担当)は同行せず、共同装備も含めたすべての荷物をそれぞれが担ぎ、スピーディーにクリアする予定だ。


今回のルート3(チュクン〜ジュビン):安堵感に浸りながら前回の出発地付近の村々をめぐる。


チュクン(標高4,730m)まで来ればもう安心。ここはロッジもありファシリティも整っているため、峠越えの疲れを癒すことができるだろう。

ここからはエベレスト街道も経由しながら、宿泊施設のある村々をめぐっていく。2017年にも足を運んだターメやナムチェにも再訪するので、それがまた楽しみ。

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2017年に訪れたターメ。山々の麓にあり、朝方の景色が最高。

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2017年に訪れたナムチェ。発展が著しく、ネパールの首都カトマンズと変わらない快適さ。

ナムチェには日本食レストランもあるので、旅を終えずして日本食にありつけてしまう。タフなセクションを無事越えてきたことに対するご褒美!といったところだろうか。

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昨年、ナムチェにある日本食レストランで食べたカツ丼。日本と変わらない美味しさに驚いた。

というわけで、今回はこれまでになく険しい山域を旅するのだが、僕たちは決して冒険をしたいわけでも、限界への挑戦をしたいわけでも、何か困難なことを乗り越えたいわけでもない。

GHTを通じてヒマラヤの知られざる魅力を体感し、それを紹介したいだけである。だから、つねに楽しむ気持ちを忘れずに旅をしたいと思う。旅の模様は、GHT ProjectのFacebookページで日々アップする予定なので、ぜひご覧ください。

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仲間の現地ガイド & ポーターと一緒に。今年はどんな旅になるのか、僕たちも楽しみ。

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WRITER
根津 貴央

根津 貴央

1976年、栃木県宇都宮市生まれ。幼少期から宇宙に興味を抱き、大学では物理学を専攻。卒業後、紆余曲折を経て広告業界に入り、12年弱コピーライター職に従事する。2012年に独立し、かねてより憧れていたアメリカのロングトレイル「パシフィック・クレスト・トレイル(PCT/総延長4,265km)」のスルーハイクのために渡米。約5カ月間歩きつづける。2014年には「アパラチアン・トレイル(AT/総延長3,500km)」の有名なイベント「Trail Days」に参加し、約260kmのセクションを歩く。同年より、グレート・ヒマラヤ・トレイル(GHT)を踏査する日本初のプロジェクト『GHT Project(www.facebook.com/ghtproject)』を仲間と共に推進中。2018年、TRAILSに正式加入。2024年よりTRAILSのHIKING FELLOWに就任。著書に『ロングトレイルはじめました。』(誠文堂新光社)、『TRAIL ANGEL』(TRAILS) がある。

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