AMBASSADOR'S

ルイス・エスコバルのカリフォルニア・ランニング通信 #2 / ウエスタンステイツ・エンデュランスラン 2014

2014.10.10
article_image

写真/文 ルイス・エスコバル  訳 大島竜也/三田正明

2回目となる写真家ルイス・エスコバルのカリフォルニア・ランニング通信。今回ルイスは連載第1回目でも語られた、「世界でもっとも古くもっとも権威のある100マイル・レース」ウエスタンステイツ・エンデュランスラン2014の模様をリポートしてくれます。アメリカのウルトラマラソンのグランドスラム(4大大会)のひとつでもあるこのレースで、今年はいったいどんなドラマが繰り広げられたのか。美しい写真と共にお楽しみください。

■The Beginning

1974年、ゴードン・アインスレーはテヴィス・カップへの参加登録をした。この歴史ある大会はカリフォルニア州スクウォー・ヴァレーからオーバーンまで、シェラネヴァダ山脈の心臓部を横切ってかけ抜ける乗馬耐久レースだ。ところが、レース数週間前にゴードンの愛馬は怪我を負ってしまった。そこで彼はなんと100マイル(160km)を自分の足で走ることを決めたのだった。

驚くべきことに、彼は規定の24時間以内にレースを完走してしまった。1974年7月のひどく暑かったその日、ゴードン・アインスレーはシェラネヴァダを走って横断した最初の人間となり、アメリカのウルトラランニングの歴史の創始者となったのだった。

■The Course

歴史あるウエスタンステイツ・トレイルはかつてネイティヴ・アメリカンたちが使った道であり、その後は西部開拓者や炭坑従事者たちにネヴァダ銀山とサクラメントの街を結ぶ交通路として使われてきた。現在では様々なリクリエーションに使われるよう整備され、1974年のテヴィス・カップがきっかけとなって始まったウエスタンステイツ・エンデュランスランもここで開催されている。

ウエスタンステイツ・エンデュランスランはスクウォーヴァレー・スキーリゾートからスタートしオーバーンにあるプレイサー高校の陸上トラックでゴールするまで、累積標高で5,700mを登り6,900mを下り、シェラネヴァダのグラナイトチーフ自然保護地域内を横切って行われる。果てしない登りと急峻な下りと、凍える寒風と灼熱の暑さがウエスタンステイツ・エンデュランスランの特徴である。

■Pacer Central

ウエスタンステイツ・エンデュランスランの99km地点に位置するフォレストヒル・スクールは、ランナーの補給とサポートの面で重要な意味を持つ場所だ。多くのランナーにとって、ここはスタート以来家族や友人と会える最初の場所なのだ。ランナーたちは午後遅くこの学校に疲労困憊で到着するが、親しい顔をみてハッピーになる。この場所でランナーは補給をし、荷物を入れ替え、服を着替えヘッドライトを身につけ、これから始まる夏の長い夜のトレイルランニングに備えるのだ。

そしてこの場所は“Pacer Central”としても知られている。その名の通りここはランナーがペ―サー(伴走者)と合流する場所で、ペーサーはランナーと伴走しながらペース管理や助言などランナーのサポートをする。もちろんペーサーを使うかどうかは任意だが、多くのランナーが残り61kmを完走するため活用をしている。

■River Crossing

125km地点で、ランナーたちはドライバーズ・フラットロード近くにあるアメリカン川の支流、“Ruckey Chuckey”と呼ばれているグリーンウッド渡河地点を渡る。冷たい雪解け水が流れる胸まで水深のある川に安全用のワイヤーロープが45mに渡って張り巡らされ、ボランティアたちが急流を渉るランナーたちの手助けをする。この川の横断は、とてもエキサイティングなイベントとしてウエスタンステイツ・エンデュランスランの象徴になっている。

■2014 Champions

今年のチャンピオンに輝いたのはノースフェイスのウルトラランニング・チーム所属で、普段はアリゾナ州フラッグスタッフで薬剤師として働いている37歳のロブ・クラーだった。彼の記録14時間53分は、大会史上二番目に速い記録だった。

そして女性のチャンピオンは、オレゴン州ベンドから参加した30歳のステファニー・ハウだった。彼女もまたノースフェイス・ウルトラランニング・チーム所属で、今回が初めての100マイルレースだったが18時間1分の好記録でゴールした。ゴール後のインタビューで、彼女はこんなふうに語っていた。「優勝するためにこれまで努力してきたわけじゃなかったけれど、いまはなんだか畏敬の気持ちでいっぱいです…。夢みたい。」

■Buckle Fever

ウエスタンステイツ・エンデュランスランを30時間未満でゴールしたランナーにはウエスタン・スタイルの銅のベルトバックルが授与され、24時間未満でゴールしたランナーには“100 Miles − One Day”と彫られた銀のバックルが授与される。この銀のバックルはウエスタンステイツ・エンデュランスランの象徴で、スポーツ界で最も信仰的な意味を持つトロフィーであることは間違いない。

今年は399人がスクウォーヴァレーのスタート地点に立ち、そのうち296人がプレイサー高校の陸上トラックまで辿り着いた。公式記録の296人目の完走者は、メリーランド州コロンビアから参加した63歳のトーマス・グリーンだった。

 

WESTERN STATES 100 MILE ENDURANCE RUN 2014 by Luis Escobar

 

TheBeginning

In 1974 Gordon Ainsleigh was registered to participate in the Tevis Cup 100 Mile One Day Equestrian Ride. This historic event traverses the heart of the wild Sierra Nevada from Squaw Valley to Auburn California.After his horse became injured a few weeks prior to the ride, Gordy decided to attempt the 100 mile trail ride, on foot. Shockingly, he completed the course in just under 24 hours. On a hot day in July of 1974, Gordon Ainsligh became the first person to run across the Sierra Nevada and the founder of American Ultra Running.

The Course

The historic Western States Trail was once used by native Americans, Pioneers and Miners traveling between the Nevada silver mines and old west town of Sacramento. Today the route is maintained for multi-use recreation. The Western States 100 Mile Endurance Run starts at the Squaw Valley Ski Resort and finishes 100 miles away on the track at Placer High School in Auburn California. The course climbs nearly 19,000 feet and descends approximately 23,000 through the Granite Chief Wilderness section of the Sierra.Big climbs, steep descents, blowing cold and blistering heat are the hallmarks of the Western States 100 Mile Endurance Run.

Pacer Central

he school at Foresthill is the 62 mile mark and a key location for runner aid and support. For many runners, this will be the first place that they see their families and friends. Most runners arrive at the Foresthill School in the late afternoon or evening. All runners arrive here tired, hot and happy to see a familiar face. This is the place where runners can resupply, freshen up their packs, maybe change their clothes, grab a flashlight and prepare for a long night of summer time trail running. This is also known as Pacer Central, the place where runners can pick up a pacer. Pacers are running companions who help keep the runners on course, offer advice and support. Pacers are not required but most runners use them to help guide the final 38 miles of the course.

River Crossing

It’s ice cold and chest deep at the Rucky Chucky River Crossing. At mile 78, the runners cross the Middle Fork of the American River at the Greenwood Crossing near Drivers Flat Road, also known as Rucky Chucky. A cable is strung across the 50 yards of snow melt and volunteers assist as the runners ford the swift moving currents. The river crossing is an exciting and iconic feature of the Western States Trail.

2014 Champions

He is a member of the North Face Ultra Running Team, he is thirty-seven years old, he is a pharmacist from Flagstaff, Arizona, his name is Rob Krar and he is the 2014 Western States Champion. Rob completed the course in 14 hours and 53 minutes which is the second fastest time in race history.

Stephanie Howe is 30 years old and lives in Bend, Oregon. Stephanie is is also a member of the North Face Ultra Running Team. Her time was 18 hours and 1 minute. This was her very first 100 mile race. At her finish line interview she said, “I didn’t go in with the goal of winning, so to have the day that I had… I’m just kind of in awe – it’s a dream come true,”

Buckle Fever

Every runner who completes the Western States 100 in under 30 hours receives a Western style, bronze belt buckle. Runners who complete it in under 24 hours earn a sliver buckle engraved with the words, 100 Miles – One Day. The sub-24 hour, Silver Western States buckle is iconic and arguably the most covenanted trophy in the sport.

This year, 399 people stood on the starting line in Squaw Valley, 296 of them completed the trek to the stadium at Place High. The final official finisher was 63 year old Thomas Green of Columbia Maryland.

TAGS:


RELATED

パシフィック・クレスト・トレイル (PCT) | #07 トリップ編 その4…

ヘキサトレック (Hexatrek) | #05 トリップ編 その2 DAY…

アパラチアン・トレイル (AT) | #07 トリップ編 その4 DAY27…

LATEST

パシフィック・クレスト・トレイル (PCT) | #07 トリップ編 その4...
ヘキサトレック (Hexatrek) | #05 トリップ編 その2 DAY...
アパラチアン・トレイル (AT) | #07 トリップ編 その4 DAY27...

RECOMMEND

北アルプスに残されたラストフロンティア #01 |伊藤新道という伝説の道 〜...
LONG DISTANCE HIKER #09 二宮勇太郎 | PCTのスル...
パックラフト・アディクト | #46 タンデム艇のABC 〜ウルトラライトな...

POPULAR

北アルプスに残されたラストフロンティア #04 | 伊藤新道を旅する(前編)...
TOKYO ONSEN HIKING #14 | 鐘ヶ嶽・七沢荘...
TODAY’S BEER RUN #06 | アンテナアメリカ 関内店 (関...

STORE

GARAGE

WRITER
Luis Escobar

Luis Escobar

写真家/ランナー。カリフォルニア州サンタマリアで写真スタジオを営みながら、高校のクロスカントリー・コーチやレース・ディレクターとしても活動を行っている。過去30年以上のランニング・キャリアを持ち、北米最大のレースのひとつWestern States 100 Miles Endurance Runには連続20回以上出場している。世界的ベストセラーになったクリス・マクドゥーガル著『BORN TO RUN』で描かれた伝説的な第一回Copper Canyon Ultra Marathonに参加し、メキシコの「走る民族」タラウマラ族と世界的ウルトラランナーたちとの貴重な出会いの瞬間を写真に納めた。クリス・マクドゥーガル自らの命名によるランナーズ・イベントBorn to Run Ultra Marathonsのディレクターも勤めるカリフォルニア・ランニング・コミュニティのキーパーソン。詳しくは、2014.07.31に掲載されたTRAIL TALK #002を参照。
http://www.allwedoisrun.com/

>その他の記事を見る 

TAGS

RECOMMEND

北アルプスに残されたラストフロンティア #01 |伊藤新道という伝説の道 〜伊藤正一の衝動と情熱〜
LONG DISTANCE HIKER #09 二宮勇太郎 | PCTのスルーハイキングで気づいた本当の自分
パックラフト・アディクト | #46 タンデム艇のABC 〜ウルトラライトな2人艇のススメ〜

POPULAR

北アルプスに残されたラストフロンティア #04 | 伊藤新道を旅する(前編) 湯俣〜三俣山荘
TOKYO ONSEN HIKING #14 | 鐘ヶ嶽・七沢荘
TODAY’S BEER RUN #06 | アンテナアメリカ 関内店 (関内)

STORE

ULギアを自作するための生地、プラパーツ、ジッパーなどのMYOGマテリアル

LONG DISTANCE HIKER
ULTRALIGHT HIKER
ULギアを自作するための生地、プラパーツ、ジッパーなどのMYOGマテリアル
HIKING UMBRELLA UV
ウエストベルト
ボトルホルダー
アンブレラホルダー
コンプレッションコード
アイスアックスループ

RELATED

パシフィック・クレスト・トレイル (PCT) | #07 トリップ編 その4 DAY46~…

ヘキサトレック (Hexatrek) | #05 トリップ編 その2 DAY15~DAY2…

アパラチアン・トレイル (AT) | #07 トリップ編 その4 DAY27~DAY45 …

LATEST

パシフィック・クレスト・トレイル (PCT) | #07 トリップ編 その4 DAY46~...
ヘキサトレック (Hexatrek) | #05 トリップ編 その2 DAY15~DAY2...
アパラチアン・トレイル (AT) | #07 トリップ編 その4 DAY27~DAY45 ...