LONG DISTANCE HIKERS DAY 2019 イベントレポート② | HIKER’S MEMORIES
今回は、『LONG DISTANCE HIKERS DAY 2019』のイベントレポート第二弾。
前回は、イベントのコンテンツのなかから『NEW YEAR TOPICS』を取り上げて、最新のトレイル情報を共有しました。今回は、前回とは打って変わって、イベントに参加してくれた4つの年代(CLASS)のハイカーの声をお届けします。
メモリーズ① 昨年、海外のロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきたばかりのハイカー。メモリーズ② 2年連続で歩いたハイカー。メモリーズ③ 2年前に歩いたハイカー。メモリーズ④ 今年、旅に出ようと計画しているハイカー。合計10名(10組)のインタビュー。
2016年にこのイベントを立ち上げた時は想像もつかなかったくらい、毎年多くの新しいハイカーが集まり、ロング・ディスタンス・ハイカーのコミュニティは年を追うごとにどんどん大きくなっています。
今年、そんなハイカーたちは『LONG DISTANCE HIKERS DAY 2019』に参加して、何をどう感じたのでしょうか?
メモリーズ① CLASS OF 2018 : 旅から帰ってきたばかりのハイカー
■ 佐藤有希子 – AT
仲間や自分の居場所が見つかった感じがしたし、抱えていたモヤモヤも発散できました。
佐藤有希子さんは、信越トレイルを歩いたことがきっかけで、AT(アパラチアン・トレイル)をスルーハイクした。
佐藤:「私がお客さんとして参加した2017年と比べて、たくさんの人が来場していて驚きました。それだけ、ロング・ディスタンス・ハイキングに興味がある人が増えているのだと思うので、とてもワクワクします。
実際に登壇してみて、こんなただのいちハイカーの下手な話を、熱心に聴いてくれるお客さんの温かさに救われました。あと、会場に来てくれたお客さんの熱気と集中力がすごいなと感じました。
今回、ATを歩き終えて登壇者としてこのイベントに参加してみて、仲間や自分の居場所が見つかった感じがしました。抱えていたモヤモヤも発散できました。やっぱり、トリプルクラウン(※)目指します!」
※トリプルクラウン:アメリカの3大トレイル(アパラチアン・トレイル、パシフィック・クレスト・トレイル、コンチネンタル・ディバイド・トレイル)のこと。この3つをスルーハイクしたハイカーを指すこともある。
■ 提橋真由美 – JMT
最高に楽しいけれど、ハマってしまったら抜けられない危険な場所(笑)。
2018年、JMT(ジョン・ミューア・トレイル)をセクションハイキングした提橋真由美さん。なんと、人生初のテント泊がJMTだった。
提橋:「このイベントは、ロング・ディスタンス・ハイキングを好きになった人にとって、最高に楽しいけれど、ハマってしまったら抜けられない危険な場所(笑)でもあると感じました。
今回参加して良かったのは、ハイキングが好きな仲間に出会えたことです。これから旅に出ようというお客さんや、すでに歩き終えたハイカーたちのその後の話をまた聞いてみたいし、それが今後の楽しみのひとつになりました。
私は昨年、JMTのセクションハイキングをしたのですが、距離の長さによって体験することや感じることの違いがあると感じたので、さらに長く歩くことへの憧れが生まれました」
■ 山下直輝 – JMT
このイベントは、あくまで歩いたことで得たことを話すだけ。それがいい。
2018年、JMTをセクションハイキング した山下直輝くんは、今年もJMTを歩く予定だ。
山下:「このイベントの好きなところは、話す側の人に押し付けがましさがない点です。あくまで歩いたことで得たことを話すだけ。歩くか歩かないかは自分次第。
時間、お金、慣習、しがらみ、そこからどうやって抜け出そう? その背中をそっと押してくれる人がたくさん居てくれるのはとても嬉しく思います。
今年は会場で『みちのく潮風トレイル』の方々と話し、歩く側だけでなく作る、整備する側の人たちの熱い想いを聞くことができたのも良かったです。僕も歩いてみようと思いました」
メモリーズ② CLASS OF 2017-2018 : 2年連続で旅をしたハイカー
■ 清田勝 – PCT, AT
エンジェルがいないアメリカのトレイルなんて、考えられません。
2017年にPCT(パシフィック・クレスト・トレイル)、2018年にATをスルーハイクした清田勝くん。今年はCDT(コンチネンタル・ディバイド・トレイル)を歩くべくすでに準備を始めている。
清田:「TRAILS、ハイカーズ・デポ、登壇したハイカー全員で作りあげた雰囲気が、とても心地良かったです。
『TRAIL ANGEL(※)』というトークセッションに僕も参加しましたが、アメリカのロングトレイルカルチャーを感じてもらうには、一番いいコンテンツだったと思います。エンジェルがいないアメリカのトレイルなんて、考えられませんしね(笑)。
僕が、去年、今年と連続で参加する理由は、ロングトレイルに夢を見る人が参加しているからです。僕の経験によって誰かの夢が現実になり、その人が帰ってきた時の姿を見るのが、めっちゃ楽しみです」
※TRAIL ANGEL:ハイカーを支えてくれるトレイル・エンジェルについて、各ハイカーの思い出やエピソードを語るコンテンツ。
■ 本間馨 – PCT
普段の生活のなかで遠のいていくハイキングの記憶や感覚が、蘇ってくる。
2017年、2018年と連続でPCTを歩いた本間馨くん。ご覧のとおり、野営も慣れたもの。
本間:「登壇者として参加してみて、ハイカーのみなさんと時間と空間を共有できたことが、ただただ楽しかったです。普段の生活のなかで徐々に遠のいていくように感じるハイキングの記憶や感覚が、ぐっと蘇ってくることが嬉しかったです。
また、日本のトレイルの話を聞き、日本を歩きたい!と強く感じました。これまでアメリカのトレイルを歩き、見つめるなかで、正直言って “日本を歩くこと” に対してリアリティを持てずにいた気がします。でも、『みちのく潮風トレイル』の話も聞いたりして、初めて日本のトレイルと旅が、目の前に見えてきたように感じました」
■ 丹生茂義 – PCT, AT
「あれは夢だったのか?」という感覚が「あれは現実だった!」に変わる。
2017年にPCT、2018年にATをスルーハイクした丹生茂義。清田くんとは仲良しで、2年連続のクラスメイト。
丹生:「ロング・ディスタンス・ハイキングを終えて帰国した後、“あれは夢だったのか?” という感覚が時間の経過とともに大きくなるのですが、このイベントによって “あれは現実だった!” と再認識できます。だから歩き終えたハイカーにとって、このイベントはなくてはならないものだと、あらためて実感しました。
長沼さん(2012:PCT)と小山くん(2018:PCT)のトークセッション『釣りして歩いたPCT』からは、次回の旅のヒントをもらえました。ちなみに小山くんとは昨年のこのイベントで知り合って、彼にPCTのアドバイスをしていたんです。それが今回は、逆に自分が彼から刺激を受けている事実。そこにこのイベントの意味を感じました。化学反応が起こる場所、それがこのイベントなのだと思います」
メモリーズ③ CLASS OF 2017 : 2年前に旅をしたハイカー
■ 岡松岳史 – AT
まるで、アメリカのトレイルで一緒に過ごしたハイカーたちといるみたい。
2017年にATを歩いた岡松岳史くん。今回登壇して話してくれたトレイル・エンジェルのエピソードは、最高に面白かったと多くの人が絶賛。
岡松:「今年で3回目の参加(うち2回登壇)でした。年に1度の参加なので1年間全くお会いしない方がほとんど。でも、みんな温かいというか、同じ会場で同じ空間に身を置いている感覚が、まるでAT(アパラチアン・トレイル)で同じシェルターやホステルで過ごしたハイカーたちとの雰囲気のようで、懐かしい感覚になります。ここは言わば、居心地の良い三鷹のトレイルです。
自分は、ロング・ディスタンス・ハイキングから帰ってきて物欲(ハイキングギア以外)がほぼなくなりました。ただ、物欲がなくなった一方で、こうやっていろいろな人と話したり、同じ時間を共有することの喜びや楽しみが増えたように思います」
■ 地現葉子 – TA
『WOMEN’S HIKING TIPS』は、倍の時間があっても良かったくらい盛り上がりました。
2016年〜2017年にかけてニュージーランドのテ・アラロアを歩いた地現葉子さん。彼女の赤裸々なトークは、建前がなくとてもリアルで、参加者からも好評だった。
地現:「『WOMEN’S HIKING TIPS(※)』は、2016年の第1回目にお客として参加した時にすごく良かったコーナーだったので、今回話し手として参加できて嬉しかったです。やはり女性ハイカーにとって関心が高いなと思いました。質問はまだまだいっぱいあったと思うので、倍くらいの時間があっても全然いけたと思います。
イベント終了後に、提橋さん(Class of 2018)と “女って面倒くさい” という話をしたのですが、時間があればそういう話をしても面白かったかも知れませんね。また来年、楽しみにしています」
※WOMEN’S HIKING TIPS:男性とは異なる、女性のロング・ディスタンス・ハイカーならではの考え方、歩き方、トレイル上の生活術。トレイル上での体調管理や食生活は?日焼け対策は?トイレの問題は? リアルな女性ロング・ディスタンス・ハイカーを迎え、女性ハイカーだけのクローズドな環境で、普段メディアでは扱いにくいリアルな情報提供をすべく語ってもらうこのイベントの定番コンテンツ。
2016年に開催された第1回目の『LONG DISTANCE HIKERS DAY』からの定番コンテンツ『WOMEN’S HIKING TIPS』。今年もたくさんの女性ハイカーが集まり、まるで修学旅行の女子会のごとく大いに盛り上がった。
メモリーズ④ CLASS OF 2019 : 今年、旅に出る予定のハイカー
■ 雨宮裕輝・縄倉瑠璃子 – JMT
鮮度の高い情報と、たくさんのハイカーの経験談が聞ける場所。
今年二人でJMTを歩くことを計画中の雨宮裕輝さんと縄倉瑠璃子さん。初めてこのイベントに参加して、たくさんの刺激を受け、その勢いで二人でロング・ディスタンス・ハイキングについて熱く議論したとのこと。
雨宮・縄倉:「今回初めて参加しました。イベント内では、インターネットや書籍などでは追いついていない鮮度の高い情報を教えていただけました。多くのハイカーの方々の経験談を聞くこともできるので、特にこれから歩く人にとっては非常に魅力的なイベントだと感じました。
また、実際にトレイルを運営されている方々や、さまざまな形で関わる方々の話から、トレイルの立ち上げ、運営、存続のリアルな実情に触れることができました。おかげで、自分が何か貢献できることはないだろうかと、考えるきっかけになりました。自分もできることから実践していければと思います」
■ 川越翔平・小川はるか – PCT
こういう場があるなら、次は僕たちも記憶と記録を伝えていきたい。
今年二人でPCTを歩くべく、すでにパーミットも取得済みの川越翔平さんと小川はるかさん。小川さんは、『WOMEN’S HIKING TIPS』に参加してとても学びがあったとのこと。
川越・小川:「初めての参加だったのですが、参加する前はコンテンツもたくさんあるし、と完全に受け身の姿勢でした。でも『壁にレイアウトされたハイカーの記録』や『トークの内容』、『それぞれが見ている未来』なんかを目の当たりにして、意識が変わりました。
パッションが燃え続けているハイカーや、話をしてみたいハイカーがたくさんいて、フリータイムで普通に話せて、これこそこのイベントの醍醐味だと思いました。同時に、こういう場があるなら、次は僕たちも記憶と記録を伝えていきたいと思うようになっていました」
今回、JMTハイカーの山下くんが、『LONG DISTANCE HIKERS DAY』について、「話す側の人に押し付けがましさがない。あくまで歩いたことで得たことを話すだけ。歩くか歩かないかは自分次第」という話をしていた。
立ち上げ当初から、そういうイベントでありたいと常々思っていただけに、彼の言葉は嬉しかった。ここに集まるハイカーは、みんなロング・ディスタンス・ハイキングが大好きだ。でも、無理強いするつもりはさらさらないし、興味がない人にまで勧めようとする人はいない。
また、PCTハイカーの丹生(ニュウ)くんは、こう語った。「小山くんとは昨年のこのイベントで知り合って、彼にPCTのアドバイスをしていたんです。それが今回は、逆に自分が彼から刺激を受けています」。
これがこのイベントの真骨頂でもある。先輩、後輩、年齢、性別関係なく、ボーダレスに刺激しあえる。ハイカー同士のいい交流、いい循環が生まれているのだ。
今後もそんな心地良い場を維持しながら、誰もが気負いなくふらっと参加できるイベント、そして参加した人が無邪気に楽しめるイベントを作っていければと思う。今年歩きに行く人も、このハイカーの素敵な集まりに立ち寄ってほしいので、ぜひ歩き終えた後に連絡をもらえればと。
また来年も開催するので、みなさんぜひお越しください!
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