TRAILS REPORT

Enter The Bikepacking ♯1/ ムーンライト・ギアの八ヶ岳パスハンティング

2015.10.09
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■バイクパッキング座談会2015

Enter The Bikepacking♯1の3パート目は、千代田高史さん、バイク歴5年でバイクパッキングも何度か経験のあるこの稿のライター三田正明、以前バイクには乗っていたものの最近ご無沙汰、でもいまバイクパッキングに興味深々のTRAILS代表佐井聡による「バイクパッキングに詳しい人」「ちょっと詳しい人」「興味あるあまり詳しくない人」という座組での座談会、というか、ぶっちゃけ取材時の雑談です! 

ですが、まだまだ海のものとも山のものともつかない(でも、だからこそワクワクする)バイクパッキングというアクティビティの未来について、あーだこーだワイワイと考えてみている様子をいまここで残しておくのも、何かの意味があるのではないかと…。

2020年あたりに誰かがこれを振り返って、「2015年時点じゃバイクパッキングのこと、みんな全然わかっていなかったんだな〜」なんて思ってくれたら本望です!

佐井 最近「バイクパッキング」って言葉をやたらと聞くようになったのはなんでなのかな?

千代田 まあいろんなとこが広めようと頑張ってるからじゃない? でも、なんていうかまだ「肉」が見えないんだよね。バイクパッキングのバイクとか、装備とかはわかるんだけど。

三田 だからやっぱりまだ日本でバイクパッキングの方法論を使って、どういうふうに旅すればいいのかがまだ見えてないんだと思うんだよね。いま日本のバイクパッキングっていうと、キャンプ場まで自転車で行って帰ってくるって感じでしょ? まあそれはそれでひとつのあり方でいいと思うんだけど、それがすべてになっちゃうと面白くないというか。

佐井 ハイカーとしてはもう少し違うアプローチがあってもいいかもって思うよね。

千代田 リベレート・デザインが出て来てバイクパッキングっていう言葉が来たときは、やっぱり「パッキング」っていうところにググっと来たわけじゃん。でも結局のとこ「サドルバッグは普段使いにもいいですよ~」っていう感じで、モノだけ消費されているのがすごい違和感で、「じゃあ誰がやるんだよ」っていう気持ちがずっとあったんだよね。中身が見えて来ないから。

佐井 今回パスハンティング的なバイクパッキングをやってみて、何にいちばんワクワクした?

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千代田 やっぱ「旅感」だよね。MTBのダウンヒルってアドレナリン・スポーツで、「ヒャッホー、フー!」って感じなんだけど、パスハンティングは取り付きを探してそこから上がっていって、山地図見て「ここは担げるかな」とか「ここは絶対登れないな」とか、攻略する感じがあって。

三田 自転車旅の魅力って、俺にとっては「中学生感」なんだよ。

千代田 わかる、それ!

三田 いい年こいた大人が中学生みたいなことやってる感じというか。「このチャリ乗ればどこまでも行けるぜ!」っていって、とりあえず後先考えず遠くまで行ってみる、みたいな。

千代田 風を感じるとこなのか、速さなのか、なんなのかわからないけどチャリって少年心を焚き付けられるとこありますよね。

佐井 アメリカでのバイクパッキングっていまどんな感じなの?

千代田 一般的なのはコロラド・トレイルみたいな「ここから200マイルはダートが続くよ~」みたいなロングトレイルを、普通に歩くんじゃなくて自転車で旅するっていうのが正しいバイクパッキングなんじゃないかな? それでいうと日本はどこ行っても道きれいだし、そんなに長く自転車で走れるトレイルもないからね。だから2~3年前から「バイクパッキング」っていう言葉とかその道具は日本にも入って来たんだけど、ちょっと違和感があるのはそこで。バイクパッキングを日本に住んでいる自分たちなりにどうやっていったらいんだろうってなったときに、最初はMTBに落とし込もうと思っていたの。でも個人的なMTBのつきあい方って、坂も根性で上って泥だらけのクロスカントリー・タイプよりも、ダウンヒルをどれだけ気持ちよく格好よく下れるかというスタイルが好きで。ハードテイルのシンプルなバイクを操って、テクニックでフルサスペンションの高価なバイクに乗っている奴を華麗に抜き去る! みたいな(笑)。それにバイクパッキングを取り入れるとなると、里山よりももうちょっと標高が高い大きな山に一日目は担ぎ&押しであがって上でキャンプして、登山者が誰もいない日の出の時間からトレイルを下るっていうスタイルだった。それはそれで楽しいんだけど、下りたい欲求が強すぎて、それなら1日で完結する里山でいいじゃん、って思っている自分にも気づいたりして。まあ、このスタイル別角度からみたらサラリーマンが午後休とって夕方から山に向かってそこで寝て、早朝降りてそのまま出社みたいなスタイルもできて面白いと思うんだけど、自分は二日あったらハイキング行きたいな~、みたいな(笑)

三田 バイクで旅するっていうより、バックカントリー・スキーとかクライミングのトリップみたいな感じ?

千代田 そうそう。ULギアってホント、軽いしコンパクトなんで持っていけちゃう。晴れ予報なら小さなタープと寝袋とマットだけでいい。それを無理くりくっつけている感じで(笑)。ただ、やっぱり自分はこういう山関係の仕事をしていると、特に東京付近の今のMTBと山の問題、東京近郊でのマウンテンバイカーとしての立ち振る舞いを考えざるを得なくて。今のトレイルランニングのマナー問題と同じように、とうの昔に閉め出されちゃった「山サイ」っていうカルチャーを郊外のバイクショップのオーナーさんとかが大事に大事に守って、また育てようとしている気持ちを考えると、何かを壊してしまう怖さもあってちょっと大げさなんだけど。だから人に迷惑をかけないために、登山者が登ってこない時間に下りたいセクションを狙ってダウンヒルするっていうバイクパッキングのスタイルも多いにあるとは思うんだけど、林業の人だけが入っているような静かな里山で遊んでる雰囲気を超えて遊ぶほどじゃない、と素直に思ったというのが実際のところだったかな。一方でアメリカでバイクパッキングやってる奴らの写真とか見るとMTBでトレイル走ったりしていて、それを日本の山でやろうとなると縦走になっちゃうんですよ。でも、わざわざバイク担いで山登って細い縦走路を行くのってたぶん辛いだけだし、俺そんなにドMじゃないしって気持ちがあって。で、そこらへんで「日本は日本のフィールドに合ったバイクパッキングの形があっていいんじゃないかな?」っていうことに気づいてくるんですよね。一応調理道具とか宿泊装備は持って行くんだけど、途中の補給とかはコンビニでもいいし、温泉入ってもいいしとか。

三田 たとえばULでも日本のULとアメリカのULがあるみたいに、バイクパッキングだってアメリカのスタイルをそのままやらなくたっていいわけで。

能登半島バイクパッキング。

能登半島でのバイクパッキング。

千代田 それで「日本版バイクパッキングをやろう!」と思って能登半島を一周するっていうのに行ってみたんです。それはそれですごく良い経験で、温泉入ったりキャンプ場に泊まったりしながら名物料理とか食べたりして、旅っぽいとこがすごく良かったんですけど。ただロードでずっと行くのは楽しいんだけど、それってもっと長い距離行かないと自分たちなりの面白さには到達しないのかなっていうのも同時にあって、もっといろんなものをミックスしたくなっちゃったんですよ。旧道とか廃道を越えるとか、長谷川さんの五国ハイクみたいにテーマを決めて旅してみるとか。

三田 ハイキングにも傾倒した身としては、単なる自転車旅じゃなくて、林道とかトレイルも絡めた旅をしてみたいよね。それってハイキングとかキャンピングのスキルや知識があるからこそできることでもあるし。

千代田 そういうスタイルを考えてたときに、日本にむかし「パスハンター」っていう峠ジャンキーがいたんだっていうのを知って、「なぬなぬ?」ってなって。そのルートを見たらよくわかんないルートがんがん行ってるし、ダートも林道も行ってんじゃんってことを知って、もう一度山のなかに入り込むのに興味を持ったっていうのが始まりですね。

佐井 八ヶ岳は走行距離は何kmくらいだったの?

千代田 45kmくらい。

三田 じゃあ標高差はあるけど距離的にはたいしたことないんだ。それなら1泊2日途中山がキツくてもなんとかなるかなって思うかも。

千代田 茅野駅出発した途端に登りだけどね。茅野で標高730mくらいで夏沢峠が2400mくらいだから、登りは結構キツかったけど。

三田 俺も3年前くらいに、“HIKE & BIKE”と称して東京の自宅から大菩薩嶺まで自転車で行って、トレイルヘッドに自転車置いて大菩薩登って泊まって、また自走で家まで帰るっていうのを2泊3日でやったんだけど、それもトレイルヘッドまでの林道の登りがキツかった(笑)。その日は上の避難小屋で泊まるつもりが、結局トレイルヘッド手前の砂利の駐車場みたいなとこでキャンプして。帰りは自分に感動したからね。林道の下りが延々と続いて、こんなに登った一昨日の俺エラかったなって(笑)。

ライター三田のバックパッキング装備。こちらもバイクはサーリー・クロスチェック。

三田のバイクパッキング装備。こちらもバイクはサーリー・クロスチェック。

千代田 俺らもそれは強かった。最初はご褒美の下りのために登っているような気分だったけど、でも思い返すとそれぞれのセクション楽しかったんだよね。

三田 そのとき自分が感じたのは、山だと下山したらもう終わりだけど、でもそこからバイクで家まで帰るってなると、まさに「家に買えるまでが遠足」っていうか、旅が家に帰るまで続く感じが面白かったな。やってることは中学生みたいなもんなんだけど(笑)。電車とかクルマで大菩薩行っても軽いハイキングって感じだけど、やっぱり全部自分の力で行って帰ってきたっていう満足感があった。

佐井 今後もやっぱりパスハンティングのスタイルで攻めていくの?

千代田 今回シクロクロスで山道行ってみて、全然行けるし下れる!と思うと同時に、MTBだったらあのカーブも曲がれたな~みたいなことも思ったりして。自分の中でまだ全然スタイルが確立してなくて、だから面白くて、もう自転車のことばっか考えてる(笑)。テーマによって使い分けたいけど、旅っぽい自転車旅をトレイルだけでもっと味わえないのかともまた思ったりして(笑)。たとえば○○のダート道を上がっていって、あの先にある××峠に泊まって、××峠からの巻道は意外に下り基調で気持ち良くダウンヒルできるから 次の峠までは下り重視でゆっくり行って、また峠を起点にどうするのかと考えながら2、3泊続けてなんていうのもやってみたい。あと、やっぱり高地に行くっていうのを前提にすると、ルート選びでどれだけ林業のための林道が張り巡らされているかっていうのが大事なポイントなんだよね。たとえば奥秩父も雁峠とか将監とかって山小屋の人たちはあそこまではクルマであがれてるわけじゃない? そこ起点にして、あとは石尾根の巻道上がっちゃえば、雁坂のあたりから将監のほうまでは巻道で気持ちよく乗れるんじゃないかなって思ったりとか。やっぱり心はロードより林道、林道よりトレイルなんだよね(笑)。

三田 だからバイクパッキングにはいろんな可能性があっていいってことだよね。パスハンティング的なアプローチでもいいし、MTBダウンヒル的なアプローチでもいいし、もちろんロードを走るバイクツーリング的なアプローチがあってもいいし。

佐井 でもハイカー目線でいうならば、キャンピングのスキルがあがっているなかで、このスキルをバイクの旅に持ち込んだらどうなるのかなって。あと今回話を聞いて俺なりにバイクパッキングの何が楽しそうかっていえば、さっきの三田さんの話でも出てきたみたいな、「家に帰るまでが遠足」なとこかな。カップじゃなくてコーンのアイスみたいな。最後まで食べれるっていう(笑)。

千代田 あとやっぱりなんか引きつけられちゃう中学生感ね(笑)。

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能登半島でのバイクパッキング。

佐井 チャリはランより進めるとこも良いね。

千代田 移動できる距離が純粋にめちゃくちゃ広がるしね。あとさ、なんだろうランって真面目じゃん? 特にロードの人は。わかんないけど(笑)。

三田 努力した人がエラい世界ですよね。真面目に努力したヤツが勝つっていう。

千代田 そうそう。欲が出てきて速くなりたきゃ努力が必要ってことに気づいたりして。

三田 ロードバイクも金持ってて真面目なヤツの方がエラい世界っていう勝手なイメージがあって、そこがあんま好きじゃないんだよな~。自分がそうじゃないから(笑)。

千代田 カルチャーっぽくないっていうかさ。もちろんスポーツとしてのロードバイクならそういう世界なのはあたり前だけど。

三田 でもバイクパッキングって、ハイキングと一緒で自由な感じがして、がんばって峠登ってもゆるゆる林道走ってもいいっていうか。

佐井 でもチャリンコ乗れて山にも行けてキャンプも出来るって、なんか「オイシイ」よね。

千代田 だから今回硫黄岳登ったんだけどさ、シューズあればそこからバイクおいて登れるしね。『山より道具』の寺澤(英明)さんも最近は釣りで川の上流行くときは林道詰めるときにバイク使っているんだって。

三田 たしかにいろんなアクティビティをひとつの旅の中で組み合わせれたら「オイシイ」かもね。

千代田 島回って途中で釣りをして浜辺で焚き火してもいいよね。小豆島とか良さそうなんですよ。で、ハンモックで寝ようかなー、とか。ほらULと一緒で、なんも難しいことないんすよ。

佐井 マジ速攻でチャリ買お!

TRAILSではこれからも“Enter The Bikepacking”でバイクパッキングをフォローしていく予定です。お楽しみに!

[MOVIE]

WRITER
三田正明

三田正明

1974年東京都国立市出身。2001年に『Title』(文藝春秋)の連載「To The Boy /少年犯罪被害者の旅」でカメラマン/ライターとしての活動を始める。2001年にザンビアで皆既日食を見て以来南アフリカ・ジンバブエ・タイ・インド・オーストラリア・アルゼンチン・ブラジル・メキシコ・トルコ・ネパール・アメリカ・カナダ・モンゴルなどを放浪。これまでに皆既日食を五度、部分日食を二度、皆既月食を一度見ている。次第に旅の途上で出会った大自然の世界に傾倒し、気がつけばヒマラヤや北米大陸や日本各地のトレイルを歩くように。雑誌『スペクテイター』や『マーマーマガジン』を始めとする多くの雑誌にアウトドアにまつわるドキュメンタリーやトラベローグや連載記事を執筆、TRAILSではメインライターとエディターを務める。
masaakimita.web.fc2.com

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