TRAILS REPORT

データで見るOMM JAPAN 2014 / by TRAILS research

2015.10.23
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昨年のアウトドア・シーンにおけるビッグトピックのひとつであった、OMM レースの日本初開催。TRAILS でも「BRAND STORY#003 OMM – Product is born in the race.」において、本国のイベント・ディレクターであるステュアートらに直接インタビューをすることによって、そのレースの本質に迫った。今回は趣向を変えて、「データに基づくOMMレースのストーリー」である。OMM JAPAN 2014出場者への調査によって得られたデータを中⼼に、どのような人がOMM JAPANに集まり、第⼀回となるレースをどのように評価したのか。参加者が使ったギアブランドは何か。第二回となるOMM JAPAN 2015(TSUMAGOI)まで1ヶ月切り、レースのプランニングやギアのチョイスなど、バディとの作戦会議が白熱している今こそ参考になるはず。TRAILS researchの第⼀弾企画としても、是⾮、楽しんでください。

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INDEX
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■OMM JAPAN 2014に集ったボーダーレスなTRAIL LOVERたち
■ストレートカテゴリーでは完⾛率36%にも関わらず、参加者満足度は85%
■DAY2で総合順位5位以上UPの逆転を果たしたペアは30%以上
■参加者が評価するOMMの良さは「地図読み、山の総合力、テン泊」の要素
■OMM JAPAN 2014参加者が利用したギアブランドのランキング
■OMMのBrand Loversが特に満足したのは「ファストパッキング」の実践
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■OMM JAPAN に集ったボーダーレスな TRAIL LOVER たち

おそらくはこんなにも多くのハイカーが参加するレースイベントは他にはないだろう。OMM JAPAN 2014参加者の プロファイル・データを見てみると、52%がトレイルランナー、27%がハイカー、11%がオリエンティア(ロゲイニングプレイヤー)という構成となっている。ある側⾯では、ハイカーは、アスリート志向は強くなく、順位をつけられることや、数字を追うことを忌避する⼈人たちとも言える。しかし、そんなハイカーが参加者の4分の1も占めるレースというのは、事件でもある。それだけOMM JAPANがカテゴリーやジャンルといった分類を軽や かに⾶び越えるトータリティをもち、さまざまなスタイルで自然や山遊びを楽しむ人たちの科学反応を起こさせるボーダーレスな力をもったイベントであったことがわかる。また別のプロファイル・データを見ると、「⼭の総合⼒を問う」というハードルが提示されたレースであったにも関わらず、参加者の16%、つまりだいたい参加者の6人に1人くらいはアウトドア・ランニングのレースのビギナーであり、「そのようなレースには出たことがない、もしくは参加したのも1,2回程度」といった経歴であった。今まで日本で⼀度も開催されたことのない「マウンテン・マラソン」というスタイルのイベントに対して、トレラン・レース参加 10 回以上の経験豊富なランナーから、レース経験などはほとんど持ち合わせていないレース・ビギナーまで、広い層の興味や注⽬を集めたことが、このようなデータからも浮かび上がってくる。

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■ストレートカテゴリーでは完⾛率36%にも関わらず、参加者満足度は85%

OMM JAPAN 2014主催者から発表されたレポートによるとストレートカテゴリーの完⾛率は 36%であり、この数字からレースがタフなものであったこと、また日本初めての「マウンテン・マラソン」にどのようにアプローチしていけばよいのかという参加者の⼾惑いや試行錯誤も⾒え隠れする。しかしながら、参加者の満⾜度は非常に高く、参加者の61%が「とても良かった」と評価。「とても良かった」と「良かった」を合わせると、実に85%の人がこの初開催のOMM JAPAN 2014をポジティブに受け止め、「マウンテン・マラソン」という新たな山 の遊び⽅、自然との向き合い方に対して賛意をもって受け入れていた。さらに特筆するならば、マウンテン・ マラソンとの親和性が最も高いであろうオリエンティアの人たちをも、うならせたレースであることが挙げられるだろう。オリエンティアは、最⾼評価の「とても良かった」を選んだ⼈が66%であり、トレイルランナーやハイカ ーを上回る評価をしていた。 一⽅、データでは少数であるが、当然ながら「まったく良くなかった」と評価した参加者もいる。当然ながら 「マウンテン・マラソン」は山の楽しみ方の唯⼀一の回答などではなく、我々もまずは日本で初めて「マウンテン・マラソン」なるものが開催されたことを歓迎したいし、それに賛意を⽰した人もそうでない人も、「マウンテン・マラソン」が良い刺激となったことを望んでいる。

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■DAY2で総合順位5位以上UPの逆転を果たしたペアは30%以上

OMMレースは、自分とペアを組むバディ(パートナー)の走力、地図読みスキルを加味して、いかに⾃分たちに適したルートチョイスができるかが重要なポイントとなる。「BRAND STORY#003 OMM – Product is born in the race.」 の記事でも昨年のレースで、あるクラスの優勝をした親子ペア(⽗・娘)のエピソードが紹介されている。その親子は、足は速くはなかったが、ルートチョイスのクレバーさで他の速い⼈やタフな人に勝つことができた、と。公表されている Result を分析してみると、そのことを表すようなデータが見えてくる。DAY1時点の順位からDAY2で挽回し、総合順位を5位以上UPさせたというペアが、ストレートで31%、スコアで34%もいる。スコアについては、DAY2 で10 位以上も挽回したというペアも 24%もいることがわかる。DAY1 終了後のテントサイトでは、さかんに参加者同士が、その日のルートチョイスの内容や、その成功と失敗を楽しげに情報交換していた光景があった。この数字に表れている DAY2 での挽回をしたペアは、DAY1 の結 果と反省を踏まえ、改めて⾃分たちの⾛⼒、地図読みスキルなどのマウンテンスキルを見直し、ベストなルートチョイスの戦略を立て、それに成功したペアだったのであろう。OMMレースの醍醐味を体験することが 幸福なペアであったことが想像できる。

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■参加者が評価するOMMの良さは「地図読み、⼭の総合⼒、テン泊」の要素

今回のアンケートでは、レース参加者の評価を直接聞いてみた。その結果は、上位から「地図読みが⾯白かった」、「⼭の総合力を体感できた」、「テント泊ありのスタイルが良かった」という内容であった。なぜ初回のOMM JAPAN が、エントリー開始後すぐに定員に達する人気を集め、アウトドア・シーンをけん引する メーカーやショップのリーダーたちが多く参加したのか。それは端的にこの結果にあるように、スピードや数字を追い求めるタイプのトレラン・レースとは異なり、自分のスキルで自分の身体ひとつで山と向き合う、というコンセプトが多くの⼈に響いたからではないか。またこの結果をつぶさに見ると、参加前の期待よりもレース後に評価が⾼くなった点として、「地図読み」、「パートナーと⾏動するスタイル」、「開催地(伊豆)」が挙がっている。ロケーションについては、本国である英国のレースを思わせるような、あのスタート地点の光景は確かに感動を煽るものであった。またこのレー スをきっかけに地図読みの⾯白さに気づき、自分でトレイルを見つけ山を楽しむ人が増える姿を想像するのは、なんとも楽しいことである。⼀方、「UKの歴史あるレース」であることについては、まだ広く認知はされていない。長く続くレースとなるよう、50年近く続く本国のフィロソフィーやヒストーリーをよく知る⼈が増えることも重要な要素となるだろう。

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■OMM JAPAN 2014参加者が利用したギアブランドのランキング

OMM JAPAN 参加者はどのようなギアで選んだのであろうか。【シューズ】モントレイル、アルトラ、ラ・スポルティバ、イノベイト、サロモンなどバラエティ豊富なチョイス 【バックパック】 OMMが圧倒的な⽀持を獲得!2番手に山と道 U.L.HIKING & BACKPACKING。【レインウェア】モンベルに次いで、ここでもOMMが2番手に食い込む。【テント・タープ】 アライテント、ファイントラック、モンベルが3強。【寝袋】 王者モンベルに次いで、ナンガが⽀持を集める。

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■OMMのBrand Loversが特に満足したのは「ファストパッキング」の実践

最後にブランドとしてOMMが「とても好き」と表明している、OMM Loversの特徴を見てみたい。少しテクニカルなデータの見⽅になるが、レースの満足点を、参加者全体とOMM Lovers で比較してみる。そうすると、特にOMM Loversで特に満⾜が⾼いポイントがあぶりだされる。そこで⼀番の特徴となるのが「ファストパッキング」。このように、OMMのブランドが好きで、レースにも参加した人は、このイベントを「ファストパッキング」の実践の場としても、とても満⾜していることがわかる。今後、ファストパッキングという新たなスタイルも、OMM JAPANのようなレースの開催を契機に広がっていくと、よりシーンが⾯白くなりそうである。

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【回答対象者】 OMM JAPAN 2014参加者
【回答者数】  298 人
【調査実施⽇】 2014年12月1日〜9⽇
【調査⽅法】 インターネット調査
*調査主催 OMM(NOMADICS)
*実施委託 TRAILS

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佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

[about TRAILS ]
TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。有名無名を問わず世界中のTRAILSたちと編集部がコンタクトをとり、旅のモチベーションとなるトリップレポートやヒントとなるギアレビューなど、本当におもしろくて役に立つ情報を独自の切り口で発信していきます!

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