HIMALAYA MOUNTAIN LIFE #2 – GHT project / ヘランブからツムバレーの秘境へ
グレート・ヒマラヤ・トレイル(GHT)の日本初の踏査プロジェクト『GHT Project』。その第二弾踏査のレポートと映像をお届けします。2014年の第一弾踏査レポートで彼らが見せてくれたのは、アルピニズムのヒマラヤとは異なる、歩き旅としてのヒマラヤの景色でした。そこにはヒマラヤの山々の中で普通に人々が生活している姿があり、ネパールのローカル・カルチャーの匂いがありました。
今回の第二弾踏査で旅したセクションは、まさに『HIMALAYA MOUNTAIN LIFE』の原風景がより色濃く残る、ヘランブ~マナスル~ツムバレーのエリア。『GHT project』のメンバーが、ヒマラヤの懐に息づく生活の道、峠、集落、そして秘境の峡谷を渡り歩いた、旅の様子をお楽しみください。
■ヒマラヤは世界最大の里山
今回はカトマンズを起点にし、ヘランブ・ランタン〜ガネッシュ〜マナスル〜ツムバレーまでの総距離約280㎞、総日数24日間の旅。特にヘランブ・ランタンエリアは、GHTの中でもカトマンズから一番近く、アクセスもしやすい。僕たちはカトマンズから歩いてスタートした。
2014年の第一弾で旅したUpper routeの最東端エリアは、8,000m峰を間近に望めるスペクタクルな世界。一方、今回のエリアは、広大な棚田が広がる田園風景や、斜面に点在する集落、自給自足で暮らす人々、家族の風景があり、歴史と文化および信仰が色濃く残っていた。
そこはまさに『ヒマラヤは世界最大の里山だ』というコンセプトで旅をしている僕たちが、思い描いていた世界だった。
■ヒマラヤの日常に住まうような旅
『GHT project』の特徴は、8,000m級の山頂を目指すのではなく、集落をつないで山々を縫うように歩くところにある。
ヘランブ・ランタンには、シヴァ神が創造したと言われるゴサインクンドがある。ここはヒンドゥ教の聖地であり標高4,000m付近に美しい湖が点在する。またランタン山群の絶景も見どころのひとつ。
ガネッシュには、タマン族が暮らすタマンヘリテイジと呼ばれる遺産群があり、伝統的な家屋が建ち並ぶ。さらに進むと観光客はほとんどいなくなるが、険しい峠や急斜面にも集落があり、住まう人々の日常が存在している。次々に現れる棚田の風景は郷愁を誘う。マナスルに入るとマナスル・サーキットを歩くトレッカーに出会うようになる。
ツムバレーは、まさに秘境。2002年に外国人にオープンになったエリアで、荒寥かつ険しい渓谷沿いを中国国境に向かって歩いていく。歴史ある寺院も複数あり、今もなお伝統文化が息づいている。
変化に富んだルートではあったが、いずれのエリアにも共通していたのは、ヒマラヤに暮らす人々の日常。僕たちは、旅をしていることを忘れるくらい、その日常に浸った。
■震災後のネパール
正直なところ、旅に出る前は不安もあった。しかし、カトマンズに着いてみると、震災前と変わらない光景がそこにはあった。繁華街であるタメル地区の店や宿も普通に営業している。ただ、ネパールとインドとの関係悪化の影響でガスが高騰し、レストランの多くは薪で火を熾している状況。走っているクルマもかなり減っていた。
一方、山間部はどうだったか。家屋の崩壊をはじめ震災の影響はたしかにあった。でも、 村の人々の表情に悲壮感は漂っていなかった。自分たちで簡易の家を建て力強く生きていた。ゲストハウスの人は観光客が減って困っていたが、観光業に頼っていない山奥の人々の多くは、日常を取り戻していた。
結論としては、僕たちは問題なく旅をすることができた。現状、「ネパール=地震=危険」というイメージによる風評被害も多いそうだが、ネパールやヒマラヤに興味のある人は、ぜひ足を運んで欲しいと思う。
■GHT Projectについて
GHTのUpper routeを軸に全行程を踏査するために、山岳ガイドの根本秀嗣、写真家の飯坂大、ライターの根津貴央(Team Monsoon)が立ち上げたプロジェクト。今年の秋には第三弾の旅に出発する。あと4〜5年かけて踏査を完了させる計画だ。
TAGS: