TRAILS REPORT

TRAIL FOOD #07 | パックラフティング × トレイルフード by 中沢優一

2023.11.03
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話・写真:中沢優一 構成:TRAILS

What’s TRAIL FOOD? | 「トレイルで、実際みんな何を食べているの?」。みんなのリアルなTRAIL FOOD (トレイルフード) が知りたくて立ち上げた、トレイルフードを紹介する記事シリーズ。ULハイキングをはじめ、ロング・ディスタンス・ハイキングやハンモック・ハイキング、パックラフティング、さらにはフライフィッシングやテンカラなど、それぞれの遊びに没頭している人たちに、普段どんなトレイルフードを食べているかを紹介してもらう。トレイル上のリアルに触れることが、きっと新たな気づきや刺激になるはずだ。

* * *

ここに登場するのは、世の中でよく紹介されるような「山でこんなに美味しいものが食べられる!」というフードがかならずしもメインではない。それぞれの遊び方やスタイルのなかで、時には質素に見えるかもしれないが、みんなが実際に食べているリアルなトレイルフードだ。

そこには、旅を楽しむための大事なエッセンスや、アクティビティをする上での実践的なTIPSが詰め込まれているはず。そんなリアルなトレイルフードが知りたくて、この連載記事を立ち上げた。

第7回目の今回は、これまで『パックラフト・アディクト』の連載にも何度か登場しているパックラフターの中沢優一 (なかざわ ゆういち) くんだ。

パックラフティング × トレイルフード


西東京在住のパックラフター、中沢優一くん。

中沢くんは、櫻井史彦 a.k.a バダさんとも仲良しのパックラフター。バダさん同様、鳥を探しながらのパックラフティングが好きで、毎年、バダさんと一緒にヤマセミを求めて久慈川をパックラフティングしている。

ハイキング好きでもある彼は、すべての外遊びはハイキングの一環と捉えていることもあり、パックラフティングも急がず焦らず、のんびり漕ぐ。メロウな旅をこよなく愛するパックラフターなのだ。

そんな中沢くんは、実際のところ、パックラフティングで何を食べているのだろう? 下記2つの視点で紹介してもらった。

・「食べる頻度の高い」トレイルフードベスト3
・「記憶に残る」トレイルフード

第1位:炭火焼き (焼き鳥・焼肉など)


レンジで温めたり、プライパンで焼いたりした焼き鳥とは比べものにならないほどの美味さ! 直火最高。

■ 頻度が高い理由とお気に入りのポイント

パックラフトの旅は、河原で焚き火調理ができることが魅力のひとつ。山歩きではなかなかできない焼鳥や炭火焼肉なども楽しめてしまう。漕いだ後の焼きたての食材と白米は最高。

燃料をシビアに計算する山歩きと違ってキャンプ地の河原には燃料 (薪) が豊富にあることが多い。運ぶ燃料と水を少なくできるぶん、食材が多少多くなったり嵩張ってしまっても持って行けるというのが川旅の良いところ。

大抵スタート前に、現地のスーパーなどで買い出しをする。農協や道の駅を物色するのが、また楽しいのだ。まずは「焚き火で焼けそうなものは何があるか」から。そして、肉や野菜、きのこ、ソーセージ、練り物、パンなどを買い漁る。

■ 作り方

薪を集める。かまどを作って焚き火をおこす。熾火ができたら材料を網に乗せて (または網で挟んで) 焼く。その場の気分で塩や醤油で味付けをする。

第2位:もやし挽肉味噌ラーメン


汁物を作る時も、川旅だったら水の心配がいらないからなんでも作れる。

■ 頻度が高い理由とお気に入りのポイント

この、もやし挽肉味噌ラーメンは超簡単で満足度が高いお気に入りメニュー。材料もスーパーでほぼ必ず手に入るし、軽量で直火もへっちゃらのミニトラ (トランギアミニセット) で調理が完結できる点もお気に入り。フライパンで挽き肉ともやしを炒めて乗せる、贅沢ラーメン。

もちろん、ラーメンはハイキングでも食べることはある。でも、水場の心配をして重くて嵩張る水をたくさん持って行かないといけなかったり、少ないお湯で作れるラーメンにせざるを得なかったりする。

その点、パックラフトの旅だと水の心配が要らないし、どんなラーメンだって作ることができる。ちなみに、僕はいつも浄水器 (愛用しているのはソーヤーマイクロスクイーズ) を使って川から豊富に水を確保している。

■ 作り方

焚き火をおこしておく。ミニトラのフライパンで挽き肉を炒める。ラーメンに付いている粉末調味料を半分だけ使って味を付ける。好みで一味か唐辛子ペーストなどを加える。

もやしを投入してさらに炒める。ミニトラの鍋で湯を沸かして麺を茹でる。麺が茹だったら残りの粉末調味料を入れ、先に作っておいた挽肉&もやしを乗せて完成。

第3位:アルファ米


アルファ米の中でもお気に入りは、五目ごはん。

■ 頻度が高い理由とお気に入りのポイント

野営地での出発の準備中や焚き火をおこしている間に、お湯を沸かして注ぐだけですぐに作れるので重宝しているメニュー。

僕はよく出発前にこれを作ってバウバッグ (※1) に入れておいて、途中の河原で休憩する時に食べている。

パックラフトの場合、休憩にちょうどいい河原が見つからなかったり、漕いだことのある川でも水量や季節によって河原の様子が変わっていることは、よくあること。だから、食べる場所の制約が少ない食料を持っていると安心だ。

その点、この調理済みアルファ米は、その場での調理が不要で、その場で食べ切らなくてもいい弁当的なものでもあるので、スカウティング (※2) やポーテージ (※3) で陸に上がった時などにもさっと食べることができて便利。

■ 作り方

お湯を沸かす。アルファ米とお湯をコンテナ (ジップロックスクリューロック300ml) に入れる。

※1 バウバッグ:パックラフトのバウ(船首。舟の前の部分)に取り付けて使用するパックラフト専用のドライバッグ。

※2 スカウティング:岸辺や岩の上などに上がって、事前に前方の様子を下見すること。前方の状況が読めないときに、川の流れ、瀬やドロップの大きさ、岩の配置などを見て、漕ぐことができるか、どのラインを通るかなどを見極める。

※3 ポーテージ:舟を担ぎ上げて、陸路を歩いて障害物を越えること。

記憶に残るトレイルフード:ミニトラピザ


ミニトラがピザ窯になることを発見! 強火だからこそ外はカリッ、中はフワッ。

■ 記憶に残る理由とお気に入りのポイント

以前、毎年恒例の久慈川に櫻井さん (バダさん) と漕ぎに行った時のこと。スタート前のスーパーでの買い出して、冷凍のピザ (あとは焼くだけになったもの) を見つけた。

これまでピザなんて買ったことなかったけど、焚き火で焼いた美味しいんじゃないか? と、ふと思って買ってみた。ミニトラを持っていたので、フライパンと鍋をピザ窯に見立てて焼いてみたというわけ。

少し冷え込んできた静かな夜の河原で食べる焼きたてのピザは、とにかく最高だった。冷凍ピザはスーパーやコンビニで手に入りやすいので、それ以来、今でも時々焚き火で焼いて食べるようになった。

■ 作り方

焚き火で熾火を作っておく。冷凍ピザをミニトラのサイズに合わせて切る。フライパンにオリーブオイルを敷いてピザを乗せ、鍋でフタをする。ミニトラを焚き火に乗せ、蓋の上にも熾火を乗せる。時々フタを開けて確認し、焼けていたら完成。


バダさんと毎年恒例の久慈川パックラフティングにて。

パックラフティングといえば、やっぱり河原キャンプが醍醐味のひとつ。中沢くんのトレイルフードも、それを生かした焚き火ごはんが多かった。

くわえて、川旅なだけに、ハイキングと異なり水場の心配をしなくて良いも大きな特徴。たくさんの水を使う前提で、トレイルフードを考えているのはなるほどと思ったし、料理のバリエーションが増えて楽しそうだ。

中沢くんの川旅ならではのトレイルフード、参考になった人も多いのではないだろうか。また次回の『トレイルフード』もお楽しみに!

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佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

[about TRAILS ]
TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。有名無名を問わず世界中のTRAILSたちと編集部がコンタクトをとり、旅のモチベーションとなるトリップレポートやヒントとなるギアレビューなど、本当におもしろくて役に立つ情報を独自の切り口で発信していきます!

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