TRIP REPORT

TOKYO ONSEN HIKING #20 | 高柄山・秋山温泉

2025.01.08
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取材・写真:利根川 真幸 構成:TRAILS

新年一発目の『TOKYO ONSEN HIKING』。

前回よりバトンタッチしたTRAILS Crewのトニーがレポートするのは、山梨県は上野原市にある『新湯治場 秋山温泉』(しんとうじば あきやまおんせん)。

秋山温泉は、JR中央本線沿いの相模湖の奥にある山あいの温泉である。

高柄山へ向かうトレイルの風景。

TOKYO ONSEN HIKINGのルールはこれ。

① TRAILS編集部 (日本橋) からデイ・ハイキングできる場所
② 試してみたいUL (※1) ギアを持っていく (※2)
③ 温泉は渋めの山あいの温泉宿がメイン (スーパー銭湯に非ず)

目指す山は、高柄山 (たかつかやま・標高733m)。

上野原市の南に位置する低山で、電車・バスでの公共交通機関でもアクセスしやすい。低山でありながらタフな山としても知られており、新年の足慣らしにもよさそうな山だ。

落ち葉でフカフカになったトレイルを歩く。

高尾から大月までの、JR中央本線と桂川の南側に連なる山並みは、いつもハンモック・ハイキングで親しんでいる山だ。

今回の高柄山は、『HAMMOCKS for Hiker』の月尾根自然の森キャンプ場のお隣の山。

そのお隣の山のふもとにある「秋山温泉」は、前から気になっていた温泉だった。


スタート地点近くの奥牧野バス停までは、JR中央本線・藤野駅からバスで25分。コースタイムは、6時間30分。ゴール地点の新湯治場 秋山温泉から奥牧野バス停までは歩いて20分、秋山温泉から上野原駅までの送迎バスも運行している。


奥牧野バス停からすぐのスタート地点「稲荷神社」の前で。

今回のスタート地点は、JR中央本線・藤野駅からバスで25分のところにある、奥牧野バス停近くの稲荷神社。

JR中央本線は各々が目的の山へ向かうべく、早朝からハイカーが多く乗車していた。藤野駅で下車したのは数人で、高柄山方面へと向かうハイカーは自分だけだった。


桜井峠までアップダウンが多いが眺望の良いトレイルを歩く。

トレイルヘッドから入って、桜井峠まではアップダウンを繰り返しながら落ち葉でフカフカになった気持ち良いトレイルを歩いていく。

ところどころ眺望が開け、冬晴れの気持ちいい青空に自然と笑みがこぼれる。どんなハイキングになるのかワクワクしてきた。

タフなトレイルが徐々に顔を出す。


落ち葉が敷き詰められたフカフカなトレイル。

桜井峠から高柄山を目指す。途中、水のきれいな金山川を通る。そこで釣りの下見で魚を探したくなるがグッと我慢。浄水器を持っていれば、水の確保もできる場所だ。

紅葉に色づいた木々を横目にしばらく歩くと、徐々に斜度が強くなっていった。

地図上でも「急勾配」と記載があったので、いよいよかと思っていたら、足元の地質もザレ場へと変化していき、落ち葉との組み合わせが、簡単に足元を滑らす。これは手強いぞ。


足を滑らしながら登ってきたトレイルを振り返る。

トレイルは尾根沿いを通り、左右の斜度も強いため、足元に気をつけながら慎重に登っていく。途中、フィックスロープに頼らないと登れない箇所も出てくるので、注意が必要だ。

油断はできないルートだが、北東側の上野原の町並みや山々を、常に一望できる景色は、たまらない。

さっきまで強く吹いていた風も、少し落ちついてきたので、高柄山山頂手前の小高柄で少し休憩。


オーガニック100%のドライフルーツとナッツを選んで作る『MYOM (Make Your Own Mix)』。

持ってきたTRAILS INNOVATION GARAGE (以下、GARAGE) のトレイルミックス『MYOM (Make Your Own Mix)』をバックパックから取り出す。

今回は、少しハードな箇所もあるという事前情報があったため、できるだけ筋肉のバテを抑えやすいようにカリウム豊富なバナナチップを多めに入れてみた。甘味料を使用していない、自然なほのかな甘さを楽しめるのが、お気に入り。


小高柄から高柄山山頂へ。

栄養補強と軽くストレッチをした後、高柄山山頂まで一気に登る。斜度は今まで以上に強く、足元は滑りやすい。ザレ場にシューズのアウトソールのラグを食い込ませて一歩一歩、ぐいぐいと確実に登っていく。

おしるこで正月気分を味わい、ハンモックタイム。


高柄山山頂から望む、向かいの三頭山や陣馬山が連なる山並み。

ほどなくして、高柄山山頂に到着。

山頂からは上野原市街と、三頭山や陣馬山が連なる山並みを一望できる眺望が気持ちいい。

少し風が強くなってきたので、山頂から千足峠方面に少し下ったところでランチにすることにした。

今回はお正月ということで、お餅とおしるこを持ってきた。

山でしっぽりと、ひとりお正月。


クッカーはTrangiaのMINI SET (ポット93g、フライパン75gのセットでトータル168g) とストーブはEVERNEWのTi Alcohol Stove、五徳はチタン十字ゴトク。

今回使用したのは、小さなポットとミニフライパンがセットになった『Trangia / MINI SET』(トランギア / ミニセット)、通称「ミニトラ」だ。

ストーブは、『EVERNEW / Ti Alcohol Stove』(エバニュー / チタンアルコールストーブ)。

ミニトラのフライパンでお餅を焼いて、ポットで汁物を温めるという組み合わせだ。


ストーブはシンプルな構造ながら火力が強く、五徳を組み合わせると、大きめのポットにも対応できる。

Ti Alcohol Stoveは、中央部と側面の両方から炎がでる高火力モデル。ポットの素材がアルミで熱伝導がよく、ストーブも高火力なので、寒い時期でも熱効率が良く調理がしやすい。十字型の五徳も、クッカーが安定して良い。


まずはミニトラのフラインパンでお餅を焼く。

さて、おしるこを作ろう。

ミニトラのフライパンがお餅を焼くのにサイズ感がピッタリ。アルコールストーブは火力が調整できないので、フライパンが遠火になるように調整しつつ、じっくりと焦げ目が付くまで焼いていく。

お正月らしい良い香りが漂ってきた。お餅が焼けたら、ポットでおしるこを温めて、そこに焼いたお餅を入れて、出来上がり。


おしるこの出来上がり。

今年も良い年でありますようにと合掌をして、いただきます。

我ながら、ちょうど良い焼き加減だ。

さらに追加でお餅を焼き足し、おしるこを堪能した後は、ハンモック・タイム。


快適さと軽さを両立したTICKET TO THE MOON / Lightest Hammock (228g)。

正月だから、晴れやかなオレンジ色のハンモックを持ってきた。今回は『TICKET TO THE MOON / Lightest Hammock』(チケットトゥザムーン / ライテストハンモック)、重量は228g (カラビナ2個 14g含む)

200g台前半の軽さだが、320cmと幅が広めのゆったり寝られるハンモック。独自のシルクのような肌触りの生地で、うとうとしてしまう。

「日本最古のアウフグース」と「強アルカリ性」で知られる秋山温泉へ。


新大地峠からは金山峠・金ピラ山を経て、秋山温泉へ。

下山は、新大地峠から金ピラ山を経て、秋山温泉へ。しばらくのあいだ、整備された緩やかな尾根沿いを歩いていく。

金ピラ山付近は、高柄山とはまた違った雰囲気で、木々が生い茂り、木漏れ日の中を歩くのも気持ちが良い。途中、急斜面で滑りやすいところがあるので、すてんといかないよう慎重に足を運ぶ。

最後は秋山川沿いの舗装路に下り、しばらく歩けば、目的地の日帰り温泉「新湯治場 秋山温泉」に到着!


営業時間は10:00〜21:00。休館日は月曜日 (祝日の場合は温泉、プールのみ営業)。料金は、通常期は1人 1,000円、繁忙期は1人 1,200円 (市民割引や17時以降割引あり)。

秋山温泉は、山あいを流れる秋山川沿いにある、1996年に開業した温泉。

秋山温泉は温泉だけでなくサウナも有名で、「日本最古のアウフグース (ドイツ発祥のサウナの入浴方法)を行なう施設」としても知られているのだそうだ。

支配人の渡辺さんに話を聞いたところ、なんとご本人が現役の熱波師 (ドイツ語でアウフグース・マイスター) なのだそうだ。あのサウナのなかで、サウナストーンから出る蒸気をタオルやうちわなどであおいで熱波を送る人だ。

ちなみに熱波師になるには、きちんとした検定が必要で、秋山温泉は検定試験の会場にもなっているのだという。


サウナはアウフグースが体験できる屋外サウナと、サウナテント、浴室サウナがある。プールも併設、

サウナの話に釘付けになってしまったが、改めて、支配人に温泉の特徴を訊いてみると、秋山温泉は源泉かけ流しで、浴槽の大きさが自慢なのだとおっしゃっていた。

お湯の温度も、加温・加水なしで、体温に近い37℃前後のあたたかさのため、長い時間、入浴し続けやすいお湯なのだという。これくらいの温度が、入浴による体のエネルギー消費量が小さいのだそうだ。


秋山温泉は源泉かけ流しで、内湯も広々している。お湯はアルカリ性単純温泉。

お湯は全国的にも珍しいpH値が10以上もある「強アルカリ性」の温泉。肌の角質をやわらかくしてくれるので肌がすべすべになるという。

また筋肉のこわばりを和らげ、疲労回復にも効果的なので、ハイキング後の温泉としても最適なお湯だ。


強アルカリ性でpH値も高い秋山温泉。

実際に入ってみると、湯温もちょうどよく、体が芯まであたたまり、温泉から上がった後も湯冷めしにくかった。ついつい長湯をしてしまい、帰りのバスの時間もぎりぎりになってしまった。

今回は、水着を持っていなかったため、オススメのアウフグース (サウナ) は体験できなかったが、次に来るときは、ぜひアウフグースも体験してみたい。


都内からのアクセスもよく、里山からタフな尾根道とバリエーションを豊かに楽しむことができた。

高柄山は、急峻でタフな尾根道から、フカフカの落ち葉歩きまで、新年の足慣らしによい山だった。冬晴れの空に望む山並みは、気持ちの良い展望だった。

次は秋山温泉でアウフグースも楽しみたい。

さて、次の『TOKYO ONSEN HIKING』はどこにしよう。

※1 UL:Ultralight (ウルトラライト) の略であり、Ultralight Hiking (ウルトラライトハイキング) のことを指すことも多い。ULは、ロング・ディスタンス・ハイキングから生まれた手法と思想。長い距離、長い時間を旅するための、必要十分でシンプル&超軽量な道具として生まれ、発展してきた。ULの伝説として語られるのが、1955年、アパラチアン・トレイルをスルーハイキングした (女性単独では初)、エマ・ゲイトウッド (エマおばあちゃん) 。1992年、レイ・ジャーディンが出版した『PCT Hiker Handbook』 (のちのBeyond Backpacking) によって、方法論や考え方が確立された。その革新的な方法論と実験精神は、その後、UL黎明期の1990年代〜2000年代に誕生した多くのULガレージメーカーにも多大な影響を与えた。

※2 実は、TRAILS INNOVATION GARAGEのギャラリーには、アルコールストーブをはじめとしたULギアが所狭しとディスプレイされている。そのほとんどが、ULギアホリックの編集長・佐井の私物。「もともと使うためのものなんだし、せっかくだからデイ・ハイキングで使ってきてよ!」という彼のアイディアをきっかけにルール化した。

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利根川 真幸

利根川 真幸

2015年にPCT (パシフィック・クレスト・トレイル) をスルーハイキング。2023年にはCT (コロラド・トレイル) をUL × MYOG (MAKE YOUR OWN GEAR)のスタイルでスルーハイキングした、ロング・ディスタンス・ハイカー。トレイルネームはTony (トニー)。2023年10月にTRAILSにジョインし、『TRAILS INNOVATION GARAGE』の店長に。

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