TRAILS REPORT

パックラフト・アディクト | #01 四万十でローカルリバー・ハンティング!

2017.09.01
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文:根津貴央 構成:TRAILS 写真:PACKRAFT ADDICT (Cover photo: Nakazawa Yuichi)

川旅ってヤツは一度ヤルとやみつきになる。なかでもパックラフトは、川旅を身近にしてくれる最高の道具で、この楽しさを知った人はもれなくアディクト(中毒者)になってしまう。今回は、そんな日本の東西のパックラフト・アディクトたちが集まった川旅のルポだ。

四万十川に集合したパックラフト・アディクト11人。沈下橋のたもとにて。Photo: TRAILS

夏の暑さも真っ盛りな8月中旬の3連休初日。僕らTRAILSクルーは、高知龍馬空港に降り立ち、そこから日本を代表する清流である四万十川へとクルマを走らせていた。6月の『パックラフト・ラウンドアップ』(長野・安曇野で開催した日本初のパックラフトイベント)で出会った仲間が、「今度は西日本でパックラフト・オーナーを集めて、みんなでダウンリバーしよう」と声をかけてくれて、ここまで来たのだ。仲間が仲間をよび、東西のパックラフト・アディクトが四国に総勢11名も集まった。

こんなインディペンデントな集まりが勃発するようになったのも、パックラフト・ラウンドアップを開催したおかげだろうか。今回は西日本開催ということもあり、中国地方をベースにパックラフトで遊びまくっているタツローさん、地元高知在住のココタくんを中心に、『支流ハンター』と称して四国の支流をディグりまくってくれた。そして検討の結果、水の透明度が高く、ドロップが連発するホワイトウォーターも楽しめる四万十川の支流・黒尊川(くろそんがわ)を、みんなでダウンリバーすることになった。

[MOVIE]

Editor: TRAILS, Filmer: TRAILS, Naito Tatsuro, Murakami Ryusei, Sakurai Fumi
TRAILS Youtubeチャンネルはコチラ http://www.youtube.com/c/TRAILS_movie



高知・四万十でフードハンティング!カツオ!うどん!



3連休の初日。時刻は正午前。道の駅あぐり窪川は、家族連れの観光客でごった返していた。そこにぞろぞろと現れたのは、パッと見、ならず者のような輩たち。そう、11名のパックラフト・アディクトである。もはや違和感しかない。

僕たちは、全員集合のあいさつもほどほどに、「腹減ったよねー」となったが、道の駅のレストランは大混雑。土地勘のない面々が無駄に検索をかけるなか、「じゃあ、庄寿庵に行こう!」と提案してくれたのが、高知在住のココタくん。こんなときに頼りになるのが地元民だ。

ローカル案内人のココタくんのおすすめ、庄寿庵。カツオのたたきとうどんに、舌鼓がぽん! Photo: TRAILS

30分ほどで庄寿庵に到着した一行は、それぞれ好きなメニューを注文。打ちたてのうどんが名物ということもあり、うどんをチョイスした人が多数。これが想像以上のうまさだった。薬味のショウガは、もはや脇役ではなく主役をはれるくらいの美味しさ。さすがはショウガの生産量全国第一位!さらにカツオのたたきも文句ナシ。すでに旬を過ぎていたので不安もあったが、なんのその。本州では食べたことのないレベルのクオリティー。高知万歳である。

食後は、ローカルスーパーへ。川旅に必要な食材をたんまりと調達し、今回のスタート地点である黒尊川上流の親水公園へと向かった。今日はここで前夜祭。タープでも張ろうか?という声もあったが、ちょうど東屋があったのでそれを有難く使わせていただくことに。宴の段取りがあるかと思いきや、食べる前に飲む!とばかりに、みんなさっそく飲みはじめた。

ここでも大活躍だったのがココタくん。しれっとカツオのさく(ブロック)を購入していたようで、カツオのたたきを作ってくれた。これがまた絶品で、酒がすすむのなんのって。カツオと酒とともに、初日の夜は更けていった。

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夕食も、ココタくんがつくってくれたカツオのたたき!玉ねぎのスライスに、ミョウガとネギをのっけて、がぶっといただいた。 Photo: TRAILS


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パックラフトを寝床に明日の準備。星降る夜空のもと、待ちに待ったパックラフティングに興奮するばかり。 Photo: TRAILS




急流あり、緩流あり、そして抜群の透明度。アガりまくりのダウンリバー!



一夜が明け、いよいよダウンリバー本番。
前日、川沿いの車道をクルマで走っていたときから、その透明度の高さは明らかだった。間近で見れば、なおさらである。さすが黒尊川!四万十川の支流でもっとも美しいと言われるだけのことはある。「うわっ、やべーな!」「マジか!」「半端ねー!」と声があがる。11人全員が、気持ち悪いくらいのにやけ顔。

宙に浮かんでいるような、水の透明度!黒尊川は、四万十川の支流のなかでも最も美しく、サンショウウオも生息するほどの水のきれいさだという。 Photo: TRAILS


細かく湾曲した流れのなか、瀬と小さなドロップが続く黒尊川。川をつたって、山を下っていくのが体感できる。 Photo: TRAILS

出艇すると、もはやそこは別世界のようだった。青空と降り注ぐ太陽、夏の陽光にきらめく水面、川底が見えるほど透明な水、川を取り囲むみずみずしい緑の木々、辺り一面にただよう夏の匂い、そして川の流れに身をまかせる心地良さ。これが川旅の醍醐味ってヤツか!誰もがそう思っていたに違いない。

下っていくと、まるで黒尊川が、これでもかこれでもか!というくらいにギフトを用意してくれていた。岩が多く蛇行する流れは、曲がりくねる山道を軽快にドライブしているかのよう。ドロップ(川床の落差から生まれる小さな滝のようなもの)は、いくつもあり、スリル満点。迫り来るホワイトウォーター(白い波が立つような急流)に揺さぶられつつそれを乗りこなす快感。もう、最高でしかない。

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2段ドロップを、フリップ(横転)をこらえて漕ぎ抜けるタツローさん。 Photo: Habara Kenji

とにかく退屈しない川だった。緊張感を持って突入することもあれば、のんびりたゆたうこともある。緩急が絶妙なのだ。

ただこの黒尊川は、実は普段は水位が低く、増水しているときにしか下ることができない。今回は幸運にも、1週間前の台風のおかげで水位が上がっていた。ちなみに増水時においても、喫水(きっすい:船体が沈む深さ)の浅いパックラフトのような舟ではないとこの川は楽しめない。黒尊川は、まさにパックラフト向きの川なのである。

河原で休憩。各々がランチを食べたり、水浴びをしたり、のんびり休む。 Photo: TRAILS


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夏を感じる川の風景。 Photo: 左上 Habara Kenji, 左下・右 TRAILS


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【コース】黒尊神社近く〜口屋内 【距離】約20km 【時間】約11時間(休憩込み、参考) 白王橋近く(スタートから約14km地点)で半分のメンバーは切り上げ、残りのメンバーは四万十本流と合流する口屋内まで漕ぎきった。




ローカルリバー・ハンティング。自分たちの遊び場は自分たちで見つけよう。



日本は河川大国である。子どもの頃によく川遊びをしたという人も多いはず。そこかしこに遊べる川があるのだ。

メジャーな川に目がいきがちかもしれないが、全国にはマイナーながらも遊ぶには持ってこいの素晴らしい川がたくさんある。そんなローカルリバーをディグるのは、なんだか日本地図を見ながら宝探しをしているようで面白い。

【経験者の情報、現地の情報】黒尊川は、一度下ったことのあるメンバーの情報と、四万十在住のココタくんによる最新の現地情報を合わせて、ダウンリバーが可能かを判断した。 Photo: TRAILS

山であれば地図も豊富で、近況をSNS等にアップしている人も多く、現地に行かずともある程度の情報を入手できる。ただ川は違う。いまや川地図が掲載されている書籍もほとんどないし、あったとしても川はどんどん形が変わるので、実情とは異なる。だから、現地の人からの情報や、実際に行ってみて確認しないとわからないことが多い。これがいいのだ。自分たちの遊び場を自分たちで手間ひまをかけて探し出す。見つけたときの喜びも大きいし、これこそがローカルリバー・ハンティングなのだ。

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【下見】黒尊川は水深が浅い川なので、下流域で水位が充分あるかどうか下見。 Photo: Nakazawa Yuichi

パックラフトは軽量&コンパクトで携行性に優れているので、どこにだって持っていける。バックパックに収納できるから、交通手段にもしばられない。電車やバス、飛行機だってまったく問題ないのだ。

水深がなく、一見パドルスポーツに向いていない川もたくさんあるけど、喫水が浅いパックラフトだからこそ遊べるところは山ほどある。危険な箇所は、ポーテージ(艇を担ぎ上げて、陸路を歩いて障害物を越えること)すればいい。とにかく、パックラフトは制約が少ないのがうれしい。

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【喫水が浅い】パックラフトは水に沈んでいる部分が少ない。そのため、他の舟では下れないような浅い川もダウンリバーの対象になる。 Photo: TRAILS


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【ポーテージ】パックラフトは軽量なので、かついで危険箇所を回避することも容易にできる。 Photo: Sakurai Fumi




備えあれば憂いなし。川におけるリスク対策は万全に!



パックラフトは扱いやすいし、初心者でもそこそこ遊べる。ただ、川には危険がつきものなので、リスク対策はマストである。むしろ、川への危険意識や恐怖心は、川下りをやればやるほど強くなる。だからこそ、つねに小心者となって安全対策はぬかりなくやろう。

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【水位の情報】台風直後(左)と3日後(右)の川の様子。川によって水位の下がるスピードは異なる。国土交通省の「川の防災情報」で水位を調べたり、ダムの放水量の情報を調べるのが一般的。黒尊川には水位の観測点がないため、こういった地元情報などの収集や、現地に入ってからの下見が重要になる。 Photo: 四万十・黒尊の小さな宿 森のコテージのfacebookより

まずは川や瀬のグレーディング、水位、危険箇所をはじめ、事前にできる限りの情報収集をすること。今回も、ここは徹底的にやった。しかも、メンバーのひとりが前日に現地入りしていたこともあり、現状チェックも行なった。

ダウンリバーの最中も、油断は禁物。ちょっとでもわからない箇所があれば、すぐさま岸に下り、岩に登ってスカウティング(ドロップや瀬の大きさなど、川の状況を偵察すること)。命に直結することなので、これも必須である。

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【スカウティング】流れの先の状況がわからないときは、必ず一度舟を降りてスカウティング。瀬のレベルや危険度、漕ぐコースを確認する。

スローロープ、ホイッスル、ナイフ、リペア道具など、セーフティギアも忘れずに。パックラフトを楽しむ上で、艇以外に揃えるものが結構あるのだが、ケチったり、安易に省くのはNG。何かがあってからでは遅いので、きちんと揃えることが大切だ。

ちなみに支流ハンターの中には、ギアを自作している面々もいるので、参考までにここで紹介しておきたい。

【MASTER WORKSのスローロープ(タツローさん)】
スローバッグには、軽量でありながら高い強度と耐久性、防水性を誇るX-PACを使用。まだ試作段階だが、そのうち販売されるはず。乞うご期待。https://master-works.stores.jp/

タツローさんがつくっているMASTER WORKSのスローロープ。 Photo: TRAILS



Photo: TRAILS


【一二(じゅうに)のモンペズボン(ココタくん)】
「自然の中で、街の中で、そして日々の生活の中で着られる、自由度の高い衣服がほしい。そんな中で頭に浮かんだのは、かつて日本で広く普及していた労働着、もんぺです。主に女性の野良着とされていたもんぺは大変動きやすく機能的で、造りにも無駄がありません。そのもんぺの良いところをそのままに、現代の生活に合った形に見直しました」(WEBサイトより引用)

次回の販売は9月9日午後9時から。モンペズボン以外のアイテムもストックするようなので、WEBサイトを要チェック!https://www.juuuni.com/

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ココタくんがつくる「一二(じゅうに)」というブランドのモンペズボン(右)とハンズボン(左)。 Photo: TRAILS



四万十でのローカルリバー・ハンティング。この魅力を感じていただけただろうか?日本には驚くほどたくさんの遊べる川がある。にもかかわらず、川遊び人口はまだまだ少ない。もったいないじゃないか。
山もいいし、海もいいけど、川の楽しさも知ってほしい。もし敷居の高さを感じている人がいるようなら、ぜひ一度、パックラフトを体験してみるといい。そうすれば、きっとあなたも、パックラフト・アディクトになってしまうはずだ!

今回集まったパックラフト・アディクトたち。 左からHabara Kenji, Murakami Ryusei, Naito Tatsuro, Takashiro Takehito, Sai Akira, Sakurai Fumi, Ogawa Ryuta, Nakazawa Yuichi, Takahashi Kota, Nezu Takahisa, Ogawa Kyoko Photo: TRAILS

乏しくなってしまった日本各地にあるローカルリバーの情報のUPDATEを、これからも続けていくので、今後もお楽しみに。

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WRITER
根津 貴央

根津 貴央

1976年、栃木県宇都宮市生まれ。幼少期から宇宙に興味を抱き、大学では物理学を専攻。卒業後、紆余曲折を経て広告業界に入り、12年弱コピーライター職に従事する。2012年に独立し、かねてより憧れていたアメリカのロングトレイル「パシフィック・クレスト・トレイル(PCT/総延長4,265km)」のスルーハイクのために渡米。約5カ月間歩きつづける。2014年には「アパラチアン・トレイル(AT/総延長3,500km)」の有名なイベント「Trail Days」に参加し、約260kmのセクションを歩く。同年より、グレート・ヒマラヤ・トレイル(GHT)を踏査する日本初のプロジェクト『GHT Project(www.facebook.com/ghtproject)』を仲間と共に推進中。現在はアウトドア系のメディアを中心に執筆活動を行なう。著書に『ロングトレイルはじめました』(誠文堂新光社)がある。

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