TRAILS REPORT

第四回 鎌倉ハイカーズ・ミーティング報告

2015.05.01
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■ワークショップ報告1「ハイカーのための栄養とごはん」

さて、僕の今回のミッションは「鎌倉ハイカーズ・ミーティング」で行われるすべてのワークショップとプレゼンテーションに参加してレポートを書くことである。まずはアパラチアン・トレイルのスルーハイカーであり、TRAILSでも前回の『土屋智哉のMeet The Hikers!』にも登場していただいた「べぇさん」こと勝俣隆さんによるワークショップ「ハイカーのための栄養とごはん」に参加した。実は勝俣さんは食や栄養学にも造詣が深く、個人的にはヴィーガン(肉はもちろん乳製品も食べない完全菜食主義)を実践されているベジタリアン・ハイカーで、現在ではハイカーズ・デポでハイキング・フード部門の担当者もされている。

個人的には結婚前に奥さんを連れて山に登っていたときには山で張り切って食事を作っていたものの、結婚して子供ができて以降奥さんは山から遠のいたため、ひとりか男友達と山へ行くとなると食事は超適当になり、栄養など考えたこともなかった。そこに栄養学の基礎から教えていただいたこのワークショップは大変参考になったので、ここで学んだ知識を読者のみなさんにもシェアしたいと思う。



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アシスタントにはべぇさんと同じくベジタリアン・ハイカーのifyouhave山口貴史さんが参加した。


まず、たんぱく質と脂質と炭水化物を身体を動かすためのエネルギーになる3大栄養素と呼ぶ。そこに塩分などのミネラルと主に野菜や果物に多く含まれるビタミンを加えて5大栄養素と呼ぶが、ミネラルとビタミンは身体を動かすための潤滑油のようなものだという。

主に肉や魚や豆などに多く含まれるタンパク質は疲労した筋肉を回復させ、主にオリーブオイルなどの油やごまやチーズやナッツ類に多く含まれる脂質は体温の生成に役に立つ。そして主に米や小麦粉などの穀物に多く含まれる炭水化物は身体のなかで分解され糖類(ブドウ糖)に変わり、身体を動かす直接的なエネルギーに変わる。なので、ハイキングなど長時間の有酸素運動を行うには、とくに炭水化物を摂取して体内でエネルギーを作る必要があるのだという。

そして炭水化物には摂取することによってどれだけ血糖値(=つまり血液中に含まれるブドウ糖の量)が上がるかを示すGI値と呼ばれるものがある。生成した白米や小麦粉は消化が早い=GI値が高いので、食べても2~3時間で消化吸収されてしまい、ハンガーノックしやすいのだ。チョコレートやコーンフレークなど高GIのものはすぐに血糖値があがりエネルギーにかわるので、食べると一瞬元気になるが、そのぶんバテやすい。

一方、玄米や全粒粉の小麦粉、そばやパスタ類、ドライフルーツなどの果物やナッツ類、さつまいもやポテトチップなどは消化が遅く運動時に食べても徐々にエネルギーに変わってゆくためバテにくい。なので、ハイキング中にはこれら低~中GI値の炭水化物を摂取することを心掛けると良いという。

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なので、日中には低GIなナッツやドライフルーツなどの行動食を食べ、夕方疲れてきたときに回復の早い高GIなチョコレートなどを取り、夕食には運動で失われた塩分と就寝中に身体を冷やさないために脂質を多く含んだごまやチーズや油類を多くとり、筋肉の回復に役立つ肉類や豆類、高野豆腐などのタンパク質を食べるとよいということだ。

後半はこれらをふまえてハイカーズ・デポが提唱しているアルファ米に乾燥野菜や大豆ミート、ひじきや高野豆腐や干ししいたけなどを入れ、お湯を注ぐだけでできる袋飯の試食が行われた。豆豉や昆布だし、粉チーズやドライカレーで絶妙に味付けされた袋飯はどれも絶品で、アルファ米とは思えぬ美味しさだった。

けれど、勝俣さんはアルファ米は好きではないという。玄米をアルコール・ストーブで炊くことも可能だといい、事実、塩麹を入れてアルコール・ストーブで炊かれた玄米はほんのりと甘くおいしかった。

勝俣さんは現在毎週土曜日のみハイカーズ・デポの店頭に立たれているということなので、興味ある方はぜひ訪れて袋飯レシピや栄養学、そしてアパラチアン・トレイルの話などを聞いて欲しい。きっと優しく饒舌に答えてくれるはずなので、時間はたっぷりとって行くことをお勧めします。

■ワークショップ報告2「エナジーバーを作って、食べて、研究しよう」

続いて同じ場所で豊嶋秀樹さんによる自家製エナジーバーのワークショップが行われた。豊嶋さんは主に現代美術のフィールドで作品制作や空間構成、キュレーションやイベント企画など多岐にわたる表現活動を行う傍ら、山と道ともハイキング動画のプロジェクト「ハイクローグ」を制作しており、今回のワークショップも一緒にハイキングに行った際に豊嶋さんが持参した自家製エナジーバーを食べた夏目さんが「これは雲上のスイーツだ!」と感激したことをきっかけに企画されたのだとか。

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豊嶋さんがエナジーバーを自作してみようと思ったきっかけは、何を隠そうあのス○ッカーズ。行動食として1日の山行なら3本、2日なら6本、3日なら9本持っていくほどのヘビー・ユーザーだった豊嶋さん。数日ならばそれでも良いが、一昨年北アルプスを3週間かけて縦走した際、長い期間を歩くときはもっと栄養素が入ったものを食べなければ身体がボロボロになってしまうことに気づいたという。

試食させていただいた豊嶋さんのエナジーバーは甘さとフルーツ感、塩気が絶妙なバランスで、夏目さんが「雲上のスイーツだ!」と言ったのも頷ける味。塩は粒の大きなものを使っているらしく、それが甘さのなかで良いアクセントになっていた。

豊嶋さんがエナジーバーを作る際に心掛けているポイントは、もちろんエナジーバーとしてカロリー補給ができること、栄養素が高く身体によいこと、作るのが簡単なこと、食べるときにモソモソせずに水分をあまり消費しないこと、そして市販品に比べてコストパフォーマンスが良いことだそうだが、ワークショップ当日は参加者においしいものを食べてほしいと超高級素材を持参してくれた。食材は何をつかっても良いが、なるべく様々な種類を入れたほうがそれぞれエネルギーに変わるのに時間差が生まれるのでよりバテにくくなるとか。

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解説もそこそこに、数人づつの班にわかれて早速エナジーバーを作り始めた。ともあれ、手順はマシュマロとバターとピーナッツバターをフライパンで弱火で温めて溶かし、そこにグラノーラ、ナッツ、ドライフルーツ、チョコレートなどを投入して混ぜ合わせ、バットに敷き詰めて冷ますだけ。バレンタイン・デーに女子が湯煎で溶かして作るオリジナル・チョコ並みのお手軽さであった。これなら山へ行く前日にささっと作るのも大した手間ではない。

フライパンひとつで作れるし、何を入れても最終的にはマシュマロやバターで固めれば形にはなるので、ぜひいろいろ実験しながら作ってみて欲しいと豊嶋さん。今回は豊嶋さんのエナジーバー・レシピも特別に公開させていただくので、ぜひ気軽に挑戦してみて欲しい。



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混ぜたエナジーバーの材料をバットにいれ、冷えて固まれば完成! あとは適当な大きさにカットして食べるだけ。



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*その後さらに研究が進み、「マシュマロ量は60gの方が固まりやすい」とのことです。



WRITER
三田正明

三田正明

1974年東京都国立市出身。2001年に『Title』(文藝春秋)の連載「To The Boy /少年犯罪被害者の旅」でカメラマン/ライターとしての活動を始める。2001年にザンビアで皆既日食を見て以来南アフリカ・ジンバブエ・タイ・インド・オーストラリア・アルゼンチン・ブラジル・メキシコ・トルコ・ネパール・アメリカ・カナダ・モンゴルなどを放浪。これまでに皆既日食を五度、部分日食を二度、皆既月食を一度見ている。次第に旅の途上で出会った大自然の世界に傾倒し、気がつけばヒマラヤや北米大陸や日本各地のトレイルを歩くように。雑誌『スペクテイター』や『マーマーマガジン』を始めとする多くの雑誌にアウトドアにまつわるドキュメンタリーやトラベローグや連載記事を執筆、TRAILSではメインライターとエディターを務める。
masaakimita.web.fc2.com

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