TRAILS REPORT

パックラフト・アディクト | #05 夏の紀伊半島トリップ 北山川・櫛田川

2018.08.24
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文・構成:TRAILS 写真:PACKRAFT ADDICT(Fumi Sakurai, Ryusei Murakami, Kenji Habara)

お盆休みに日本各地から仲間のパックラフトアディクトたちが集合して、オトナの夏休み!紀伊半島をめぐる3日間のリバートリップにでかけた。三重の名河川・櫛田川(くしだがわ)から、関西屈指のビッグウェーブの北山川(きたやまがわ)まで、川で遊びつくした3日間の旅のレポート。

昨年にNIPPON TRAILの企画で歩いた熊野古道のエリアに含まれる北山川は、TRAILS的にも馴染みのある地域でもある。熊野古道を、山のトレイルではなく、今度は川のトレイルとして旅する。そんな旅の続け方にワクワクした。北山川の下流の熊野川は「参詣の道」として、熊野古道の世界遺産にも登録されている。まさに熊野では、山も川も旅の道なのだ。

そんな自分たちの旅のストーリーを頭にめぐらせながら、みんなとの合流場所の名古屋駅へと向かった。

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紀伊半島の山深い土地のなかを流れる、北山川をパックラフティング。






日本各地からパックラフトアディクトたちが紀伊半島に集合



昨年に開催したPACKRAFT RoundUp JAPANを機に集まった仲間で、四万十川の支流の黒尊川を漕いだのが、ちょうど1年前(そのときのレポートはコチラ)。そのなかのメンバーに声をかけて、今回も同じお盆休みに、オトナの夏休みよろしく、各地から仲間のパックラフトアディクトたちが集まった。

紀伊半島の付け根の三重に住むリュウセイくんが、ホスト的な役割をしてくれて、紀伊半島の川の情報を提供してくれた。そこに、西からはリバーツーリングとお酒が大好きな広島のケンジくん、東京からはバーダー(鳥見好き)&パックラフター&ハイカーのバダさん。そしてTRAILSからは昨年に熊野古道を歩いた小川が合流した。

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今回集まったアディクトたち。左上から時計回りに、ケンジくん、リュウセイくん、小川、バダさん。リュウセイくんは近畿地方のいろんな川にでかけている。お気に入りは飛水峡。

朝8時に名古屋駅に集合してから、クルマ2台に分かれて、まずは三重県の櫛田川を目指す。途中、お盆の渋滞にがっつり巻き込まれて、旅のスケジュールはさっそく狂いはじめる。「今日は時間がなくて漕げないかもねー」とちょっとあきらめ気味になってくる、アディクトたち。



紀伊半島リバートリップ1本目は三重の櫛田川



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予定より遅れての到着となってしまったが、「ショートコースで下れるところを探して、とりあえず漕ごうよ!」と、自然と気持ちが切り替わる。

がつがつしたメンツじゃないんだけど、みんな、遊ぶエネルギーは大きい。そんな仲間のノリに巻き込まれていく感じが、なんとも愉快だ。

というわけで、赤桶の沈下橋へと向かい、慣れたしぐさで、そそくさと準備を済ませ、さっそく川へプットイン!

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リュウセイくん以外は、みんな初めての櫛田川。長瀞(※)みたいな、強烈な個性の岩が特徴。でも長瀞のような上品な岩畳よりも、櫛田川は荒々しい地質の岩が、ダイナミックでむき出しなイメージを与える。

※ 長瀞: ながとろ。関東では御岳(多摩川上流部)と並んで、多くのパドラーでにぎわう、荒川上流部のダウンリバー・エリア。

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渇水で水位が低く、岩が水面にまで現れている瀬。スカウティングして、ルートを描く。

今回の櫛田川は、雨も少なく渇水でかなり水位が下がっていた。リュウセイ君も、「前に来たときと、川が全然ちがうっすよ」と言っている。(※)

でも水位が低いことがかえって、パックラフトならではの機動性が発揮できて飽きることがない。回転性のよさを活かして、岩をよけてひょいひょい進んだり。舟の喫水(きっすい:船体が沈む深さ)の浅さによって、浅瀬でもがんがん進めたり。そんなふうに、うまく舟を操っていくドライブ感が楽しい。

※ 水位の変化: 川は、トレイルよりも水量の増減や大雨による流れの変化など、うつろいやすい特徴がある。慣れた川でもまったく違う川になることもあるので、毎回注意して、積極的にスカウティングすることをオススメする。

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1本目から素晴らしい川に出会えた。櫛田川は名古屋からクルマで1時間半〜2時間という距離の近さも魅力だ。



関西屈指のホワイトウォターエリアの北山川を目指し、紀伊半島をさらに南下



櫛田川では、2時間のつもりが、メロウに楽しみすぎてしまって、結局3時間も漕いでいた。櫛田川のゴール地点の道の駅 飯高駅からは、紀伊半島を一気に3時間かけて130kmほど南下していった。そして翌日の北山川のプットイン場所の近くにあるおくとろ公園キャンプ場を目指した。

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リュウセイくんの愛車「トヨタ デリボーイ」で、紀伊半島の川を巡っていく。

キャンプ場所に着いたら、もう夜の10時過ぎだった。うっかり1本目の川から遊びすぎて出発が遅れた上に、途中のコンビニでゆっくりとアイスを食べたのがあだとなったか。

キャンプ場は、これまたお盆の影響で、ファミリーのお客さんでいっぱい。都合よく空いていた東屋のようなスペースで、みんなタープもなにも張らずに、ビヴィやキルトだけ広げてごろ寝。だらしなくも、存分に遊びきった1日目の夜がふけていった。

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北山川のプットイン・ポイントに到着。灼熱の暑さのなか、早く川に入りたがるアディクトたち。

2日目。熊野川の上流部の、ホワイトウォーターエリアである北山川へ向かう。けれど、今回のみんなのモードといえば、激しい瀬を楽しむというより、キャンプ道具を積んでツーリングでメロウに行こうよ、という向きである。

今回の北山川のスタートポイントは、小松という場所。ホワイトウォーターメインならば、もう少し上流部の観光いかだ乗り場がある場所あたりがよいだろう。でも、長めにメロウにツーリングすることを考えて、少し下流のこの小松からスタートすることにした。



地球が作り出した巨大な渓谷のなかをパックラフティング



準備がおわり、今回の旅の2本目の川である北山川にプットイン!灼熱の真夏日に、川の水が最高に気持ちイイ!そして、漕ぎ始めれば、すぐに両岸に急斜面の崖が切り立つ、熊野の渓谷美が僕たちの身と心を洗ってくれる。

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異形の岩肌に囲まれた、北山川の風景。

それにしても、この巨大な渓谷の景観美がつくりだすすごみは、どこからくるのだろう?前に調べたところによると、紀伊半島は、日本にとどまらず地球史の規模で見ても、たぐいまれな巨大なカルデラ噴火によって、誕生した土地であるらしい。

紀伊半島が生まれたのが、およそ1400万年前。その大噴火のマグマにより、神奈川県がまるごとおさまるような、超巨大な花崗岩が、紀伊半島の下に埋まっているらしいのだ。紀伊半島に多く見られる奇岩や巨大な渓谷は、そんな地球の息づかいのなかに生まれたものだ。そんな景色のなかにある急流や絶壁の渓谷のなかを、パックラフトで旅していく。

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北山川の上流部では、こんなビッグウェーブが随所にあらわれる。

北山川の上流は、小和田の瀬などの、ビッグウェーブの続くホワイトウォーターエリア。水の流れや波の大きさを読みながら、舟をぐわんぐわん揺らし、水しぶきを浴びて、何度も絶頂をむかえる。

そのホワイトウォーターエリアを抜けて、しばらく漕いで行くと、両岸が高く切り立った渓谷に入っていく。そこが瀞峡(どろきょう)だ。瀞峡はホワイトウォーターの激しさから一転して、北山川の景観美におけるハイライトを見せてくれる。

しばらく漕ぐと、観光船の乗り場にもなっている河原があり、そこに売店が出ている。ビッグウェーブを力いっぱい漕ぎ抜け、その後に流れの弱い瀞場(※)をせこせこ漕いで、いい感じに疲労もたまってる。酒好きのケンジくんと小川の2人は、なにも悩まずに鮎の塩焼きとビールを買って、スーパーリフレッシュ。急流を下ったあと、僕らの極上のエイドステーションとなった。

※ 瀞場(とろば): 川で瀬や速い流れに比ぺて相対的に流れが遅い場所のこと。

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瀞峡(どろきょう)の風景。背景には、築100年以上の歴史のある瀞ホテルが見える。



悪魔の船をかわして、誰もいない河原でキャンプ



瀞峡からは、ずっと流れの弱い瀞場がつづく。漕がないと全然進まない・・・。瀞峡のあたりでは、観光のジェット船も往来する。ジェット船に乗っている人たちは、にこやかにパックラフトで川に浮かんでいる僕らに手を振ってくる。でも、ジェット船のつくる波が大きくうねって、変な揺れをつくりだして、こちらは調子が狂う。

「悪魔の船」、いつのまにか僕らはジェット船をそのように呼ぶようになった(笑)。

瀞峡を過ぎて、玉置のエリアまで来ると、川が大きくUの字に蛇行する。そこが木津呂(きづろ)の集落だ。そこの大きな河原が、2 日目のキャンプ地だ。

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木津呂での河原キャンプの風景。誰も寝袋は持たず、みんなタープにビヴィもしくはトップキルトだけで、夜を過ごす。

どでかい河原のなかに、タープが4張り。35℃近い暑さのなか、みんなタープの影で日よけをしながら、メシを作ったり、酒を飲みはじめたり、気ままに過ごす。山の向こうに見える大きな入道雲が、夏休み感をアゲてくれる。

日が落ちると暑さもやわらぎ、上を見上げれば星が無数に広がっている。タープの下で寝るのをやめて、ベッドにしているパックラフトを外に引っ張り出し、夜空の下でカウボーイキャンプ。

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広い河原には僕らだけ。夜になってからの、星空の下でのカウボーイキャンプが最高に気持ちよかった。※みんなのタープ: [ケンジくん(茶色)、リュウセイくん(黄色)] ローカスギア, タープX・デュオ・シル / LOCUS GEAR, Tarp X Duo Sil。[小川(緑)] エキノックス, グローブスキマータープ Mサイズ / EQUINOX, Globe Skimmer Ultralite Tarps 8×10。[バダさん(白)] ハイパーライトマウンテンギア, フラット・タープ 8×6 / Hyperlite Mountain Gear, Flat Tarp 8×6。

3日目は、余韻を楽しむゆるやかな行程。木津呂から、ゴールにしている湯ノ口温泉の近くの河原まで、7km弱の行程をゆっくり漕いでいく。いわずもがな、旅の最後につかる温泉は最高だった。

今回の旅では、実は櫛田川のしょっぱなのドボンで、TRAILS班の一眼レフとiPhoneが壊れたり、バダさんが新調したばかりのサングラスを川に流したり、ケンジくんの買ったバナナがスタッフザックのなかで潰れてべちょべちょになっていたり、愉快なトラブルもたくさんあった。

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今年のオトナの夏休みも終了。このメンバーを中心に、すでに次の旅の計画も進行中。

そして今回の旅では、紀伊半島にはまだまだいろんな川があることを知ることができたし、熊野はどれだけ掘ってもまだ奥があることがわかった。地元三重に住んでいるということで、今回の旅のホスト役をかってくれたリュウセイくん、THANKS!また、こんな仲間と一緒に新しい旅を探したい。



川地図:櫛田川、北山川



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今回漕いだ櫛田川は、赤桶の沈下橋から道の駅 飯高駅までの約5kmのショートコース。赤桶よりも上流からもプットインすることができる。

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北山川はホワイトウォーターがメインであれば、観光いかだ乗り場のあたりからスタートし、オトノリの瀬、上滝の瀬(ナイアガラ)を含むコースがスタンダード。今回はその少し下流の小松からスタートし、湯ノ口温泉までのツーリングを楽しんだ(Day1 約11km, Day2 約7km)。 

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トレイルズ

佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

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