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LONG DISTANCE HIKERS DAY 2019 イベントレポート① | NEW YEAR TOPICS

2019.02.22
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日本のロング・ディスタンス・ハイキングのカルチャーを、ハイカー自らの手でつくっていく。そんな強い想いを共に抱いていたハイカーズ・デポとTRAILSが、2016年に立ち上げたイベント、それが『LONG DISTANCE HIKERS DAY』(ロング・ディスタンス・ハイカーズ・デイ)である。

ロングトレイルを歩いたハイカーが、リアルな旅の体験を発信できる場。ロング・ディスタンス・ハイキングの旅の情報や知恵を交換できる場。旅のあとのライフスタイルについて語り合える場。そんなふうに、ロング・ディスタンス・ハイキングの旅を愛するハイカーにとって、もっともリアルな人と情報が交流する場になることを目指している。

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『SPECIAL TALK』では、用意した席がいっぱいになるほどの盛況ぶり。会場内は熱気で包まれていた。

イベントのきっかけは、TRAILS編集・刊行の書籍『LONG DISTANCE HIKING』(長谷川 晋 著)だった。これは「ハイカーによる、ハイカーのための本」。この本の役割は、何年たっても古くなりにくいリアルな情報とカルチャーを網羅的に理解してもらうこと。言わば、ハイカーに最初に手にしてもらう “ロング・ディスタンス・ハイキングことはじめ” 的な教科書。

一方でイベントの役割は、変わりゆく自然環境や法規制などを、速報性、更新性高く共有すること。加えて、もっとも大切な役割は、ハイカーが旅に出発する際のスターティングポイントであり、帰ってくるとかならずそこにあるホームでもある、ということ。ハイカー同士が出会い、化学変化を引き起こす、言わば旅人のターミナル的な立ち位置。

もともと、書籍とイベントのセットが前提だった。カルチャーを築き上げていく上で、書籍とイベントの両輪が必要だと考えていたのだ。

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イベントでは、TRAILS編集部の根津も登壇。2012年にPCTを歩いた仲間たちと思い出を語った。

4回目を迎えた今年の『LONG DISTANCE HIKERS DAY』は、来場者数が過去最高。2日間とも大いに盛り上がった。ロング・ディスタンス・ハイカーはもちろん、ロング・ディスタンス・ハイキングに興味がある人、すでに旅の計画を始めている人、さらにはロシア、フィンランド、アメリカ出身の外国人ハイカーなど、例年以上にさまざまな人が集まり、交流していたのが印象的だった。

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フリータイム中、会場内ではお客さんと登壇者が頻繁に語らい、ハイキング話やトレイル話で盛り上がっていた。

今回、そんなイベントのコンテンツから、NEW YEAR TOPICSをピックアップ。国内外のロングトレイルの最新情報を、ここで共有したい。今年のロング・ディスタンス・ハイキングの旅の計画に、ぜひお役立てください。


2019年は、PCTおよびJMTの渡渉リスクが極めて高い。


今年は、中央カリフォルニアで記録的な積雪量になっている。たとえば、JMT(John Muir Trail)のクラブツリー・メドウズ〜トゥオルミー・メドウズの区間は、積雪量が平均の187%(2/19時点 ※)という状況。つまりこれは、雪解けの時期に例年以上に川が増水し、渡渉の危険性が高まるということだ。

※Postholer.ComのPacific Crest Trail Snow Conditionsのページより。

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2017年にPCTを歩いた本間馨くんが経験した標高3,644m地点のミューア・パス(2017年7月13日)。雪上を歩くスキルだけではなくルートファインディングのスキルも求められた。

ちなみに昨年は平均より積雪量が少なく、ドライな年と言われた。一方でその前年の2017年は平均をはるかに上回る雪が降り、PCT(Pacific Crest Trail)ハイカーやJMTハイカーは困難を強いられた。実際にJMTのエリアで渡渉による死亡事故も起きている。過去を振り返ると2010年も雪が多い年で、当時アイゼン、ピッケルの携行は当たり前だった。

今年は、2010年や2017年と同様な状況になることが見込まれており、PCTおよびJMTハイカーには例年以上にリスク対策が求められる。

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本間くんの渡渉シーン(2017年7月11日)。ウォータースポーツの経験がある人であればわかるだろうが、ヒザ丈くらいの水量でも、屈強な男性がたやすく流されて命にかかわるケースがあるほどの危険性を有している。

JMTハイカーの場合、もし歩くとしても雪も水量も落ち着いた8月以降で考えるべき。PCTハイカーであれば、一般的にこのJMTセクションを6〜7月に歩くわけだが、6月であれば残雪対策(事前に雪上スキルを習得し、アイゼンやピッケルを用いて歩く)が必要だし、7月であれば渡渉のリスクが非常に高いので無理せずこのエリアをスキップしたほうが賢明だ。いずれの時期にせよ、今年歩くのであれば、随時、雪や川の状況をPCTAのホームページでチェックし、それに応じた対策を講じることが欠かせない。

一番安全なのは、今年はJMTとPCTのスルーハイキングを諦めることだろう。決して大げさな話ではなく、この選択肢も含めて計画を立てて欲しい。


スルーハイカーの数が右肩上がり。ここ10年でATは2倍、PCTは10倍に。


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2008年のスルーハイカーの数は、AT(Appalachian trail)で575人、PCTで101人。それが昨年はATで1,115人(推計)、PCTで1130人。この10年間でATは約2倍、PCTは約10倍(しかもATのスルーハイカーと同じレベルにまで急増)にもなっている。

この背景には、ロングトレイルやロング・ディスタンス・ハイキング関連の書籍や映画がヒットした影響がある。

また、2018年の日本人ハイカーいわく、トレイル上でドイツ人と韓国人を多く見かけたとのこと。ドイツでは昨年ロングトレイルのドキュメンタリーが放映されたこと、韓国ではアウトドアブランドの『ZEROGRAM』がPCTにフォーカスしたプロモーションを展開していること、などがその要因のひとつと考えられる。


PCTは、2018年から1日にスタートできる人数を50名までに制限。


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PCTのパーミッション(許可証)取得ページ。これは4月分だが、すでに現時点(2/22)で5月も全日上限に達している。https://www.pcta.org

特にPCTはここ最近、スルーハイカーが急増していることもあり、2018年からはレギュレーションが変更された。

具体的には、1日にスタートできる人数を50人までに制限。11月と1月の2回にわけて申し込みを受け付けている。特に4月スタートはあっという間に枠が埋まってしまうので注意が必要だ。


信越トレイルの延伸計画。


もともと、故・加藤則芳さんはこう言っていた。

「信越トレイルへの私の思いはさらに続きます。関田山脈から東西に距離を延ばすことです。東は秋山郷から苗場山、白砂山へ、西は笹ヶ原高原を通って雨飾山から白馬岳までと、信越国境すべてを貫く壮大な信越トレイルを夢見ているんですよ」

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信越トレイルクラブ事務局の鈴木栄治さん。延伸計画のプロセスおよび進捗状況に加えて、課題や展望を語ってくれた。

その意志を受け継ぎ、現在信越トレイルでは延伸計画が進んでいる。準備を進めているのは、東側、天水山〜苗場山までの約40kmの区間。2012年頃から着手し、2020年度中のオープンを目指している。これにより、信越トレイルは約120kmとなり、スルーハイキングに1週間程度を要するロングトレイルになる見込みだ。

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天水山〜苗場山までの延伸ルートを、地図をチェックしながら調査する鈴木さん。

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昨年実施した延伸ルート調査のひとコマ。この時は、TRAILS編集部の小川も同行した。現在候補となっているルートは複数あり、比較検討を進めている。

延伸ルートの候補は複数あり、まだ確定していない。そこでTRAILSでは、延伸ルートのハイカーモニターツアー(5〜6月)を企画中。実際にハイカーに歩いてもらい、ハイカーのリアルな感想や意見を参考にしてもらう。そんな、ハイカーの声を届けるアクションを行なっていきたいと考えている。


北根室ランチウェイのルート変更。


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北根室ランチウェイのルート変更の標識。すでにこういった案内板も設置されているので、問題なく新ルートを歩くことができる。

北根室ランチウェイでは、昨年、一部ルートを変更した(詳細は、同トレイルのホームページの新着記事にて)。

背景としては、一部の酪農家から、農作業中の事故や口蹄疫などのリスクを心配する声があがったから。北根室ランチウェイは私有地の牧場を複数通るルートであることも特徴のひとつ。近年、同トレイルの人気が高まり歩く人が増えたことによって、牧場主も不安を抱くようになったようだ。

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北根室ランチウェイ代表の佐伯雅視さん。防風林を貫く新ルートもまた、まさに北海道らしい景色が広がっていておすすめとのこと。

そこで、地権者の庭や牧舎の前を通るルートを一部変更し、防風林のなかに道を再整備。眺めも良く、北海道らしい景色も広がっているため、個人で同トレイルを作り、整備も手がけている佐伯雅視さんも気に入っているとのこと。

また、もともと人力で移動できる手段を寛容に受け入れるトレイルでありたいと考えていたこともあり、今後はMTBでトレイルを楽しむ人も積極的に受け入れていきたいとのこと。

さらに、隣町の弟子屈町で、屈斜路湖畔にトレイルをつくるプロジェクトも進んでおり、そのトレイルとの接続も視野に入れている。

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北根室ランチウェイは、歩いても良し、走っても良し、自転車に乗っても良し、そんなトレイルを目指している。


みちのく潮風トレイルの全線開通。


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海沿いを歩くことができるのも、みちのく潮風トレイルの特徴のひとつ。広大な太平洋を眺め、潮風を浴びながら歩くことができる。

いよいよ今年3月中に、『みちのく潮風トレイル』が全線開通する。その距離は、なんと1,000km。日本が誇るナショナルトレイルとして、世界に発信していくことができるのではないだろうか。

また、同トレイルの拠点施設である『名取トレイルセンター』が宮城県名取市に完成(正式オープンは4/19)。ここは、ハイカーが立ち寄り、トレイルの情報を得たり、ハイカー同士交流したり、くつろいだりすることができる施設だ。

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みちのく潮風トレイルを管理・運営する『みちのくトレイルクラブ』事務局長の関博充さん。たくさんのハイカーの方々にぜひ歩い欲しい、そして率直な感想や要望を聞かせて欲しい。そう語っていた。

ハイカーズ・デポの長谷川晋さんは、すでに、この1,000kmを踏破しているハイカーでもある。そして、こんな感想を述べている。

「僕は全部歩いて、歩かなくて良かったところなんて一個もなかった。全部あるいて良かったと思うところばかり。特に、普代村、田之畑村、岩沼、宮古市、このあたりは、PCTでいうとシエラネバダみたいなハイライトと呼べるセクションかもしれません。山田町、大槌町、釜石市、大船渡市は北カリフォルニアとかかな」

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お客さんの表情も真剣そのもの。ロング・ディスタンス・ハイキングに興味がある人以上に、すでに具体的に歩く計画を立て始めている人が多かったことも、今年の特徴だった。

『LONG DISTANCE HIKERS DAY』は、来年以降もずっと続けていく。何があっても続けていくこと、それこそがカルチャーを築き上げていく上で欠かせないと考えているからだ。

今回イベントに参加して楽しい時間を過ごしてくれた人はもちろん、今回イベントに参加できなかった人も、ぜひまた来年お越しください。

主役であるハイカーが楽しめるコンテンツを用意してお待ちしています。

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佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

[about TRAILS ]
TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。有名無名を問わず世界中のTRAILSたちと編集部がコンタクトをとり、旅のモチベーションとなるトリップレポートやヒントとなるギアレビューなど、本当におもしろくて役に立つ情報を独自の切り口で発信していきます!

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