WHAT’S MC2T / マウンテン・レースを始めよう
■走り終わるのが寂しいレース
翌朝は朝6時に起床し、我々TRAILS取材班も撮影班として所定の持ち場に向かった。林道の終点からトレイルに入ると20分程で急斜面に遭遇、登りきるとトレイルは痩せたシングルトラックになり、朽ちかけた木の橋を渡る箇所もある。これは確かに普通のトレイルレースではありえないコース設定だと思わされた。
レースのスタート地点まではキャンプ場から車で30分ほどかかり、そこまでの選手の送迎はスタッフ/選手それぞれの車に分乗して行われるため、失礼ながら素人集団の運営では当然スタート時間は押すだろうと考えていた。が、予想は見事に裏切られた。車両班の綿密な計画と奮闘の甲斐あってレースは朝8時の定刻通りにスタートし(本当に信じられない!)、選手たちより30分ほど先行していた僕らもすぐに第一集団に追い抜かされた。
ヤセ尾根を登りきり、さらに急斜面をロープで下るとレース最初の徒渉ポイントに出たが、思ったよりも水深が深く(膝上まであった)、普通なら渡ることを諦めそうな川だった。我々TRAILS撮影班はレース前半はここで徒渉する選手たちを写真に収めていたが、川を見た瞬間の選手たちの「ここを渡るの!?」と言わんばかりの表情が印象的だった。けれど意を決して渡る時には、なぜか皆笑顔なのだ。徒渉ポイントはここからさらに何カ所も続くのだが…。
すべての選手を見送った後、僕らはゴールに移動した。ゴールには”MOUNTAIN CIRCUS”とアプリケが縫い付けれた手製のゴールテープが準備され、TRAIL TOBAのリーダー・ドミンゴさん率いるULTRA LUNCHの暖かいスープとパンが選手たちの帰還を待ちわびていて湯気をあげていた。我らが撮影班長、パーゴワークスの斉藤徹さんは選手たちのゴールの瞬間を撮影しようと手製のGoProワイヤー撮影システムのセッティングに余念がなく、そして自分の仕事を終えたクルーたちは、すでにひと足早く祝杯をあげている…。
相当の寒さを覚悟していたが、空は嘘のように晴れ渡り、秋の美しい小春日和だった。まだしばらく選手は来ないだろうと高を括り、やっと一息ついて遅い朝食のカップラーメンにお湯を注いだ瞬間だった。歓声があがり、見るともう最初の選手がゴールに駆け下りて来るところだった。速い!20キロ以上の激しい山道のコースを、3時間もかかっていない。
それからは次々と選手たちがゴールに飛び込んできた。すべての選手のためにゴールテープが用意され、クルーたちはハイタッチで選手たちの健闘を讃えた。走り終わった選手たちに聞くと、皆口々に最高に楽しかったという。女子1位のマウンテン・クイーンに輝いたチームFUJIYAMA UNITEDの竹本佳世子さんは、走り終わるのが寂しかった言っていた。ずっとトレイルを走り続けていたかったと。それってどんな気分なんだろう?
こうして『マウンテン・サーカス2 in 丹沢』は、これ以上ない程の大成功で終わった。とにかく選手もクルーも、すべての人の笑顔が印象的なレースだった。レースを走りきった充実感とやりきった充実感に満ちていた。そして選手たちは次のマウンテン・サーカスでの再会を約束して、それぞれの地元に帰っていった。次のマウンテン・サーカスは一体どこに行くんだろう?
改めてこれだけ多くの人々が純粋に楽しむためだけに集い、膨大な手間と労力を惜しまず数々の困難をくぐり抜け、そして最高に素晴らしい1日を過ごしたことに拍手を送りたい。 そう、楽しむってこういうことだ。掘っていけば楽しいことっていろいろあるし、なければ作っちゃえばいいんだ。
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