HIMALAYA MOUNTAIN LIFE | GHT project 2022(今年の抱負)
文・写真:根津 貴央 構成:TRAILS
ヒマラヤのロングトレイル『グレート・ヒマラヤ・トレイル (GHT ※1)』を踏査するプロジェクト『GHT project』(※2)。
前回の記事では、2014年にスタートしたGHT projectの軌跡を振り返るとともに、今年のプランを発表した。今年の行き先は、「ヒマラヤ最奥の聖地」とも称されるドルポである。
今回の記事では、4年ぶりのトリップということもあり、プロジェクトメンバーの意気込みを紹介したい。今年は、リーダーの根本が仕事の都合で行けない可能性があるため、まずは参加が確定している写真家の飯坂大と、ライターの根津の2人からのメッセージをお届けする。
僕の表現や僕だけが見た世界を伝えたいわけではなく、すでにあるネパールの素晴らしさを伝えたい。(飯坂 大)
飯坂:今回4年ぶりのGHTではありますが、プロジェクトを立ち上げてからはもう丸8年になります。
当初は、GHTに行くこと自体に重きを置いていた感じはありましたが、年々、持ち帰って来ることが大きな目的になってきました。
ネパールのことを自分だけで消費するというよりは、どうみんなに伝えるか。それは単にアウトドアやトレイルのことだけじゃなく、ネパールの日常のことも含めてです。この変化は、自分が東京から岩手に移住したことも影響しています。共通項があるんですよね。日本の日常と重ねてネパールを見られるようになった気がします。
ネパールやGHTに対するスタンスが、よりニュートラルになってきているんですよね。写真に関しても、自分が撮った写真を見てもらいたいという感覚が減ってきているというか。もちろん見てはほしいんですけど、僕の表現や僕だけが見た世界を見てほしいわけではないんです。
すでにあるリスペクトすべき被写体をちゃんと掴みたい。僕がなにか手を加えるというよりは、すでにあるものの良さを伝えたい。それだけ素晴らしい世界がネパールにはあると思っているのです。
今年は実に4年ぶりのネパールです。別に活動休止をしていたわけではないですが、リスタート的な感覚はあります。しばらく離れていたネパールに、今どんな日常があるのか、みんなどんな表情で暮らしているのかが、とても気になっています。
行き先はドルポ。秘境であり、特別な地域として取り上げられることも多いですが、僕たちはGHTの東端からずっと歩いてきて、その続きという感覚です。もちろん、まだ一度も行ったことがないエリアなのですごく楽しみではあるのですが、一方で、このプロジェクトにおいて、たまたま今年順番が回ってきたというだけでもある。これまでGHTの生活道を歩き、村々を巡ってきたスタンスと、なんら変わることはありません。
ドルポを楽しみつつ、誠実に向き合って、記録して、そこにある物語を持ち帰りたいと思います。
『ヒマラヤは世界最大の里山だ』。だから好きなんです。(根津 貴央)
根津:待ちに待ったネパール、待ちに待ったGHTです。この4年は長かったですね。行きたいのに行けない。ネパールのみんなに会いたいのに会えない。寂しさを紛らわすために、新大久保にあるネパール料理屋さんに何度足を運んだことか。
僕はもともとロング・ディスタンス・ハイキングが好きで、アメリカのロングトレイルをよく歩きに行っていました。
ロングトレイルが好きというよりは、ロング・ディスタンス・ハイキングという行為にハマったんです。人間界を離れてウィルダネスに浸るわけではなく、山と町をつなぎながら歩くのがただただ楽しくて。
「自然は寂しい。しかし人間の手が加わるとあたたかくなる」。これは僕が好きな民俗学者・宮本常一の言葉です。やっぱり僕は里山が好きなんです。
そういう点では、グレート・ヒマラヤ・トレイル (GHT) はその大半が生活道ということもあり、必然的に人の営みに触れながら旅をします。僕たちはこのプロジェクトで、『ヒマラヤは世界最大の里山だ』というコンセプトを掲げたのも、これが大きく影響しています。
ネパールとアメリカのロング・ディスタンス・ハイキングで、大きく異なるのはガイドとポーター (荷運び役) の有無です。アメリカでは一人で歩きますが、ネパールではガイドとポーターと一緒に歩くのが当たり前。ガイドがいないとパーミット (許可証) が取れないエリアもあります。
このネパール人のガイドとポーターと一緒に旅するのが、すごく楽しいのです。
毎年、みんな同じくらいの荷物 (20kg前後) を背負い、立ち寄った村で食糧を調達し、みんなで料理して、みんなで同じ釜の飯を食って、みんなで酒を酌み交わす。僕たちには彼らを雇っているという感覚はまったくなく、旅のパートナー、いやもはやファミリーなんです。
早く、ネパールのファミリーと会って、一緒に旅がしたいですね。
メンバーそれぞれが強い想いを持って旅している、GHT project。
今年、どんな旅をして、どんなストーリーを持ち帰ってきてくれるのか。
旅をしながらSNSで情報発信もしていくようなので、みなさん、チェックしてみてください。
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