Enter The Bikepacking ♯2/ 能登半島バイクパッキング・トリップ
取材/構成:TRAILS 写真提供:千代田高史、小峯秀行、高木義宣
バイクパッキングはゼロ年代後半にアメリカで生まれた新しいカルチャー。しかし日本のフィールドでどうやって遊ぶのか、まだ日本でのバイクパッキングは未知数なカルチャーだ。それゆえ日本ならではバイクパッキング、日本でしかできないバイクパッキングがこれから生まれてくるはずだ。ウルトラライトのスキルとギアを携えて、ULバイクパッキングのフィールドを自分たちで見つけていく。そんな試みをする人たちが増えてくれば、このカルチャーがもっとワクワクしたものになるのは間違いない。遊び心と想像力を全開にして、日本のフィールドでの新しい遊び方、旅の仕方を見つけてみよう。
そこで前回の記事で、八ヶ岳の「パスハンティング」のトリップを紹介してくれたムーンライト・ギア/ノマディクスの千代田高史さんに、今回は能登半島一周のバイクパッキング・トリップについてナビゲートしてもらった。
アメリカみたくどこまでも続く100マイルも200マイルも続くジープロードは無いけれど どこまでも走りやすい舗装された道、バリエーション豊かな温泉、新鮮な食材が購入できる道の駅が点在する。 このどの国にもない日本独自のロケーションは自転車旅に利用しない手はない。
この旅で能登半島を選んだのは島を周回するよりもダイナミックな行程を作れること 最北端の木ノ裏エリアには「海とおれ!」みたいなナイスロケーションのキャンプ場があること 輪島牛食べてみたかったこと、などが旅の動機。
海岸線はビーチに降りて進んでみたり塩田を見学してみたり 比較的フラットな場所が多く、ハイキングのように グダグダ喋りながらもグングン距離が稼げて気持ちが良い。意外におしゃれなカフェなどもあったりして次の目的地の設定がしやすく飽きない。
しかし、やはり峠の登りは気合を入れなと攻略できない。宿泊装備をすべて入れた 自転車を引き上げるのに必要なのは自分の体力と精神力が必要だ。 山でいう偽ピークみたいなもんで終わるようで終わらない道。 だけど、この辛さも旅のコントラストに色を添えてくれる。一旦下り坂になれば一気に距離が伸び 目的地がどんどん近くなる。下りはご褒美。汗が一気に冷やされて気持ちが良い。
能登は北部に行けば行くほど人がおらず キャンプ地は平日だったので貸切状態。抜ける風が心地よくリラックスして過ごすことができた。 今回は比較的気温が上がらない天候だったのだが、夏日なら夜、ハンモックで寝てしまうのもいいだろう。
この旅で強く思ったことがふたつあった。ひとつは衣食住すべてを持っているということで、前半豪雨で思うように距離が稼げなかったときにフレキシブルに旅の行程を変えられたことで感じた自由度の高さ。両手が自由なバックパッカーと同じ。
ふたつめはやはり全体の荷物が軽いと100kmを越えてきたときに現れる手強い峠の登りに絶望しなくて済むということ。勝負する気力と体力残っているという点。これはシンプルに道具が軽いからに他ならない。残りの行程が平地なら今日のうちにあと50kmいっちゃうか!?という気持ちになる。
だがこの旅で結局思い出すのはキャンプの焚き火や途中の美味しい天然酵母パンも捨てがたいんだけど無茶してたどり着いた最終日の夕日だろうか。やはりどこか冒険や旅には振り切れてがんばる瞬間があると強烈にいい思い出になるような気がする。
日本はどこまでも走れる道がずっと続いている。NHKが好みそうな冒険家のパンパンの荷物でなく、ULハイキングのTIPSを生かした軽量な荷物ならもっと無理なく誰だって大冒険ができると思う。
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