It’s a good day! #10 | ウォーム・アンド・ドライ
文・写真:鈴木拓海 構成:TRAILS
What’s “It’s a good day” ? | ロング・ディスタンス・ハイカーであり、バサーであり、スケートボーダーであるトレイルネーム Sunny (サニー) ことスズキタクミ。2021年よりTRAILS Crewにジョインしたタクミくんによる、ピースでイージーでちょっとおバカな気まぐれハイキングエッセイ。
なんとなくハイキング。で、なんとなくアメリカのあの⽇を思い出す。マストアイテムはウェイファーラーとラジオとハンバーガー。あとはULの屋根が切り取った三角窓のあの景色。それさえあれば、Itʼs a good day.
Warm and dry.
タクミです。今日もどこかのトレイルから、ごきげんよう!
どっちつかずの予報に見切りをつけて、梅雨前線より先にビッグバイトを食らわせる。
湿ったお山の空気を吸い込む。すぅ。
雨が宇宙の鼓動なら、感じる雨粒も悪くない。ふぅ。
少し標高を上げると雲に突入した。こうなれば湿気について悩む意味はなくなる。
身体じゅうが湿っている。
豪快な眺望を期待できないなら、濡れて光る新緑を味わおう。
テントをピッチしてコーヒーを淹れる。
無事に雨が降り始めた。
ラジオは力強いウッドベースを弾いている。
ふはは!やまない雨はないと私は知っている。
ふと、アメリカでのグッデイを思い出す。
初冬のニューメキシコ州は冷たい雨が降り続き、2泊する間に持ち物のすべてが濡れていた。
サボテンにつららが生える丘を超え、ギリギリ「湿っている」と表現できるスリーピングバッグに潜り込む。
雨に美しい渓谷を歩くセクションだったが、濡れ続ける日々は寒くてさすがにウンザリしてくる。
ようやく到着したリサプライスポット。
しかし雨雲が厚くうす暗い。キャンプ場のグロサリーストアは昼過ぎなのに灯りが落とされ、人影もない。主人を待つ寂しげな犬。
のように見えた次の瞬間、傍らにあるピクニックテーブルからハイカーが二人、顔を出した。
「よお!雨ひどかったな〜!オーナーは裏に住んでるから呼んできてあげるよ、もちろん腹ペコだろう?」
「ワン!」
暖かく乾いた声に満たされて、オーナー (とその愛犬) の善意で店内のテーブルで乾杯する。
「ハイカーフレンドリーな人だよ、テントもいいけど雨だぞ?って裏のシャワー小屋ですごしてもいいよってさ」
「新設したばっかりで十分キレイだけど、さっき少し掃除したからみんなでピザとって食おうぜ!」
オーナー自慢の自家製アイスクリームを食べ続けながら、すぐに次のメシについて盛り上がる。
やさしい犬はおこぼれをもらおうと足元に礼儀正しく座っている。
ひさしぶりに乾いた装備と寝床で過ごす夜。
床下を通る温水配管のせいで暑いくらいだった。
翌朝には天候も体力も回復し、オーナーとワンコにお礼を告げる。
「残りも気をつけていけよ、Stay warm, And dry!!」
「ありがとう!」
「ワン!!」
it’s good day!!
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