TRIP REPORT

ジョン・ミューア・トレイル (JMT) | #07 トリップ編 その4 DAY10~DAY12 by NOBU(class of 2022)

2025.10.02
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文・写真:NOBU 構成:TRAILS

ハイカーが自らのロング・ディスタンス・ハイキングの体験談を綴る、ハイカーによるレポートシリーズ。

今回は2022年にジョン・ミューア・トレイル (JMT) をスルーハイキングした、TRAILS crewのトレイルネーム (※1) NOBUによるレポート。

全6回でレポートするトリップ編のその4。今回は、JMTスルーハイキングのDAY10からDAY12までの旅の内容をレポートする。

※1 トレイルネーム:トレイル上のニックネーム。特にアメリカのトレイルでは、このトレイルネームで呼び合うことが多い。自分でつける場合と、周りの人につけられる場合の2通りある。


John Muir Trail (ジョン・ミューア・トレイル):アメリカ西部のヨセミテ渓谷から米国本土最高峰のホイットニー山まで、シエラネバダ山脈を南北に貫く211mile (340㎞) のロングトレイル。ハイカー憧れのトレイルで、「自然保護の父」として名高いジョン・ミューアが名前の由来。この旅では、JMTの本ルートより南のコットンウッドレイクのトレイルヘッドからスタートし、NOBO (北向き) でヨセミテを目指した。

早朝ミューア・パス越えて、リズムを掴んでいく。(DAY10)


真っ暗の中スタート。地面はまだ凍っている。

9月16日、予定通り3:30に起床。気温は0℃くらいだろうか。気温が冷え切る前に起床できたことで、昨日よりも寒さが幾分マシだった。暗闇の中、出発の準備をしながら体を温めていく。

予定通り4:00に出発。ヘッドライトの明かりを頼りにミューア・パスへと進んでいく。満天の星空と半月の下、凍った土を踏みしめる音だけが聞こえる。パス直前のヘレン・レイク付近で迎えた夜明けは、とても美しかった。


ヘレン・レイクでの夜明け。絵の具で書いたような景色に見惚れながら進む。

ミューア・パスを越えると、長い下り道が続いた。傾斜もきつくなく、晴天にも恵まれペースよく歩いていく。振り返ってみれば、今回のハイキングを通して一番歩きやすかったエリアかもしれない。それだけに、あっという間に時間が過ぎていった。

今日も15時のピーナツバターの時間。歩きに飽きが出て、体も疲れている時に、このピーナツバターを食べ元気を取り戻す。もう一歩の原動力だ。

一方で、栄養素が脂質に偏ったことで少し体の怠さも出てきていた。特に海外は脂質に偏った食事が多めなので、次の補給では、炭水化物やタンパク質もバランスよく混ぜていきたい。


15時のピーナッツバターは定番。休憩すると思ったより疲れている事に気付く。

気づけば38km歩いていた。日が昇る前から歩き始めたこともあり、今日1日でだいぶ進んだ。これなら明後日の雪予報までにVVRに到着出来るだろう。自然の美しさに魅了されるだけでなく、自然とうまく折り合いをつけることに楽しさを感じていた。天気と距離、補給の見通しと体力。そこに自分の調子を合わせていく遊びをしているようだった。

VVR前、最後の補給、シエラの自然に浸りながら足を進める (DAY11)


ミュア・トレイル・ランチでの1コマ。奥のバケツにも食料がぎっしり。

9月17日、6:00起床、気温4℃。標高の低い場所で野営した事が功を奏し、キツイ冷えに見舞われず済んだ。

いつも通りの準備をして、補給場所のミュア・トレイル・ランチに向かう。これまですれ違うハイカーから、バケツに大量の食料があると情報を得ていたので、楽しみだ。

8:30にミュア・トレイル・ランチに到着。既に多くのハイカーがおり、期待通りバケツには大量の食料が入っていた。ただ、あくまで残り物ではあるので、少しかさばったり重くなってしまうようなものが大半を占めていた。軽量化とクオリティにこだわった食料補給には少し不向きだろう。


セルデン・パスは旅の絶景の1つ。感無量。

旅の中盤ということもあり、テンポ良く進んでいく。この日は今まで1人も出会わなかった日本人に3人出会う事ができた。遠く離れた母国からシエラの山奥に同じタイミングでやってきた同志と、久々の日本語での会話。そんな時間にエネルギーを貰いながら、歩みを進めていく。

昼過ぎにはセルデン・パスの頂点に到達。ここからの景色は、人生で3本の指に入る絶景だった。当初検討していた予定より少し遅れがあったものの、この場所での時間を大事にしたく、その場にしばらく留まることにした。パスを登りきったハイカーとこの感動を共有しながら、ハイカーを見送っていく。旅の中でもメモリアルな時間だった。


夕暮れ時、ファイアサークルで焚き火。

1時間ほどいただろうか。セルデン・パスを15:00に出発してから一気に下っていく。予定よりも少し手前の地点にちょうど良い野営場所を見つけ、今日は早めに休むことにした。

ちょうど近くに誰かが作ったファイアサークルがあったので、焚き火で暖を取りながら川で濡れた靴と靴下を乾かした。満天の星空、夜の静寂の中、木のはぜる音だけが耳に届く。豊かな時間に身を預けながら、じんわりとした体の疲労に誘われるように、眠りについた。

VVR到着、久々の文明と贅沢を満喫。(DAY12)


昨日ミューア・トレイル・ランチでゲットしたドライフード。美味い。

9月18日、5:20起床、気温は3℃くらいだろうか。雪がちらついていた。ちょうど今日から2日ほど、気温が下がり天気も悪くなると聞いていた。今日はVVRを目指す。小さな山を登って降りれば到着なので、あと少しだ。風も強く、ちらつく雪が体を冷やし、体の節々も少し痛んでいた。


ベア・リッジ・トレイルの道標。少しマイナーな道なので、見逃さないよう注意する。

VVRには2つのアプローチ方法がある。トーマス・A・エジソン湖の西端に位置するVVRに向けて、湖の北側を通るルートが一般的で、このルートは湖の東端までフェリーで迎えに来てくれるため比較的楽だ。

しかし、2022年は記録的に湖の水位が低く、例年よりも1.5kmも内側の地点にフェリー乗り場が移設されていた。Far Outの事前情報でも、干上がった湖を歩く上にルートも明確ではなく、迷ったハイカーも多いと記載があったこともあり、SOBOではほぼ使われる事のない、ベア・リッジ・トレイルという南側を通るルートを選択した。

ベア・リッジ・トレイルはJMTに比較すると整備が行き届いてない箇所も多く、砂とゴロ石の混じった土砂に足を取られながら進んでいった。自分は下りで使用したが、上りで使用するとかなりストレスがかかるトレイルになりそうだった。ベアリッジトレイルのトレイルヘッドまでなんとか到着し、そこからロードを3kmほど歩いて11:30頃にVVRに到着。


ギター・レイク付近で会った仲間たちとVVRで再会。焚き火とビールで談笑。

VVRは天国のような環境だった。到着早々、ジューシーな肉と野菜が大量に挟まったチーズバーガーをビールで流し込み、フルーツボウルも注文。フレッシュな味が体に染み渡っていった。施設の中には焚き火スペースがあり、同じくJMTを歩くハイカーたちと夜まで団欒して過ごした。

だんだんと人が到着してき、夕食は小さなパーティーのような雰囲気。皆旅の道中での出来事を語り合い、笑い合っていた。VVRでは22:00には完全消灯。少し飲みすぎて火照った体を、久々のベッドに投げ入れる。明日はゼロデイを取る予定だ。翌日の事を何も考えずに寝たのは、アメリカに来てから初めてだったかもしれない。


夕食前に情報交換。ほとんど皆SOBOなので、この先の情報も仕入れていく。

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NOBU

NOBU

2022年にジョン・ミューア・トレイル (JMT) をスルーハイキングした、ロング・ディスタンス・ハイカー。JMTをきっかけにMYOG (Make Your Own Gear) にハマる。学生時代はダンス (LOCK) に明け暮れ、ストリートカルチャーにどっぷり浸かる。学生時代からTRAILSに出入りしており、2022年10月に正式ジョイン。

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