TRIP REPORT

ジョン・ミューア・トレイル | #01 スルーハイキング準備編(ルート選定とパーミット取得) by NOBU(class of 2022)

2023.07.28
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文・写真:NOBU 構成:TRAILS

毎年、多くの日本人ハイカーが海外トレイルを歩きに行く。スルーハイキングだったり、セクションハイキングだったり、ソロだったり、カップルだったり……それぞれが思い思いのスタイルでロング・ディスタンス・ハイキングを楽しんでいる。

そんなハイカーたちのロング・ディスタンス・ハイキングのリアルを、たくさんの人に届けたい。できれば、それぞれの肉声が伝わるような旅の記録、レポートを紹介することで、読者の方々にその臨場感や世界観をよりダイレクトに感じてほしい。

そこで今回から、ハイカーが自らのロング・ディスタンス・ハイキングの体験談を綴る、ハイカーによるレポートシリーズをスタートさせることにした。

シリーズ第1弾は、2022年にジョン・ミューア・トレイル (JMT) をスルーハイキングした、TRAILS crewのトレイルネーム (※1) NOBUによるレポート。

まずは、NOBUがJMTに憧れるようになったきっかけも含めて、プランニング編をお届けする。

※1 トレイルネーム:トレイル上のニックネーム。特にアメリカのトレイルでは、ハイカー同士トレイルネームで呼び合うことが多い。自分でつける場合と、周りの人につけられる場合の2通りある。


憧れのジョン・ミューア・トレイルへ。

ジョン・ミューア・トレイル (JMT) とは?


JMTといえば、アメリカのシエラネバダならではの絶景でも有名。

アメリカ西部のヨセミテ渓谷から米国本土最高峰のホイットニー山まで、シエラネバダ山脈を南北に貫く211mile (340㎞) のロングトレイル。スルーハイキングに要する期間は、約3週間 (早い人で2週間)。

1938年に全線開通したトレイルで、花崗岩の山々や湿原、湖など、シエラネバダの風光明媚な風景が広がっている。ハイカー憧れのトレイルとしても有名で、「自然保護の父」として名高いジョン・ミューアが名前の由来になっている。

ヨセミテ国立公園が起点になっており、この国立公園はもちろんJMTも、ジョン・ミューアの自然保護思想が強く反映されている。彼の思想や理念は、アメリカで1968年に初めて誕生することになるナショナル・シーニック・トレイルにも大きな影響をおよぼしている。

TRAILSでJMTの動画を見たのが憧れのはじまり。


TRAILS crewのNOBUにとっては、JMTが人生初の海外ロングトレイル。

僕がロング・ディスタンス・ハイキングを知ったのは2017年のことだった。当時大学生だった僕は、TRAILS編集長の佐井とひょんなきっかけで知り合い、そこからTRAILSに度々顔を出すようになった。

その時TRAILS編集部で流れていた、AT (※2)、PCT (※3)、JMTなど、あらゆるトレイルを歩いたロング・ディスタンス・ハイカーたちの動画を見てぼんやりと憧れを持っていた。

流れる動画を見ていて、特にJMTの動画は目を引いた。乾いたとも豊潤とも表現できる広大な大自然の景色に惹かれたのだ。どことも分からず見ていたこの動画が、シエラネバダにあるJMTというトレイルであることを、佐井が僕に教えてくれた。そして「俺も2010年に、夫婦でJMTを歩いたんだよ」と。

その時に動画の中の世界が一気に手元に近づいた感覚があった。目の前にいる、身近な人がこの景色の中にいたんだと。いつかこの景色の中に自分も……という憧れはこの時から持ちはじめた。

※2 AT:Appalachian Trail (アパラチアン・トレイル)。アメリカ東部、ジョージア州のスプリンガー山からメイン州のカタディン山にかけての14州をまたぐ、2,180mile (3,500km) のロングトレイル。アメリカ3大トレイルのひとつ。

※3 PCT:Pacific Crest Trail (パシフィック・クレスト・トレイル)。メキシコ国境からカリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン州を経てカナダ国境まで、アメリカ西海岸を縦断する2,650mile (4,265㎞) のロングトレイル。アメリカ3大トレイルのひとつ。

TRAILSにジョインする前に、1カ月の休みでJMTへ。


転職のタイミングで1カ月休めることがわかり、ずっと憧れていたJMTに行くことを決意した。

2017年に憧れを抱いたトレイルが、いよいよ現実味を帯びてきたのは2022年になってからのことだった。大学時代は金銭的なハードル、働き始めてからは時間的なハードルで、しばらくは実現が難しかった。

前の会社を辞め、2022年10月にTRAILSにジョインすることにした。その前の9月に、丸々1カ月休みの期間を作ることができそうだった。

僕はすぐにJMTに行こうと思った。転職の合間などを使って1カ月間もあればスルーハイキングできる。そんな、実現できなくないギリギリの旅の行程も、JMTの魅力のひとつだと思う。

休みを作れることが確定し、JMTに行くことを具体的に考えはじめたのが2022年の5月頃だった。

人気ルートはパーミットが取れず、NOBO (北向き) のユニークなルートを見つける。


JMT北端のハッピー・アイルズからスタートするメジャールートではなく、南側から北上するルートを選択。しかも、JMT南端のマウント・ホイットニーからさらに約40kmほど南側にある、コットンウッド・レイクスからスタート。

僕がJMTに行こうと決めた6月頃は、すでにハッピー・アイルズからマウント・ホイットニーへという、メジャールートでのJMTのスルーハイキングのパーミットの申請は終了してしまっていた。通常はスタートの6カ月前からパーミットの申請が開始しているので、人気のJMTは6月にもなるとパーミットを取ることは難しいのだ。

いきなりのパーミット取得の障壁。すぐに他の方法を模索する必要があった。そこでTRAILSでも記事を書いてくれているリズにも相談をしてみることにした。

彼女のアドバイスも含めて検討した結果、JMTの南端から約40km南側に位置する、コットンウッド・レイクスからスタートして、JMTに合流してNOBO (ノースバウンド・北向き) で歩くというルートを取ることにした。


スタート地点である、コットンウッド・レイクスは、クマが生息するエリアだった。

その他にも、下記4つのルートが候補として検討した。

① ヨセミテバレーからスタートし、ハッピー・アイルズ以外のトレイルヘッド (マーセドパス・トレイルなど) から入り、途中からJMTに合流する方法

② モノパス・トレイルヘッド (ヨセミテのトゥオルミー・メドウズの東) から南へ向かい、サウザンド・アイランド・レイクの周りでJMTと合流する方法

③ シエラ東部のシルバーレイク近くのラッシュクリーク・トレイルヘッドからスタートする方法

④ アグニュー・メドウズのPCT (すぐにJMTと合流)、もしくは、ミナレットレイク・トレイルヘッド、レッズメドウのいずれかでスタートし、マンモスレイクのデビルズ・ポストパイルから南下する方法

でも今回は、JMTのスルーハイキングにこだわりたかったこと、また9月という寒くなりはじめる時期で後半に標高の低いエリアを歩きたかったこともあり、下記のルートを選んだ。


JMT自体は全長340kmだが、今回はコットンウッド・レイクスから歩き始めることもあり、約400km歩く計算になった。

シーズン終了目前 (8月25日 20時35分)、ようやくパーミットを取得。


このウェブサイトから、パーミットを取得する。(「Recreation.gov」https://www.recreation.gov/ より)

パーミットは「Recreation.gov」というサイトから予約が可能。スタートの2週間前に予約が解禁され、最初のキャンプ地のみ指定する必要がある。

僕は2022年9月7日にコットンウッド・レイクスのトレイルヘッドから入り、2022年9月25日にハッピー・アイルズに到着するという内容でパーミットを取得した。


JMTで使用したシェルター。詳細については、次回の記事で。

今回は、JMTをスルーハイキングするにあたっての「プランニング編」として、JMTを歩くきっかけからルートの選択までを紹介してもらった。

次回は、ギアリストを紹介してもらう。NOBUは、自分らいしい旅をするためにMYOG (Make Your Own Gear) にもこだわったそうなので、そのエピソードもお楽しみに。

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NOBU

NOBU

2022年にジョン・ミューア・トレイル (JMT) をスルーハイキングした、ロング・ディスタンス・ハイカー。JMTをきっかけにMYOG (Make Your Own Gear) にハマる。学生時代はダンス (LOCK) に明け暮れ、ストリートカルチャーにどっぷり浸かる。学生時代からTRAILSに出入りしており、2022年10月に正式ジョイン。

>その他の記事を見る 

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