ジョン・ミューア・トレイル (JMT) | #02 ギアリスト編 by NOBU(class of 2022)
文・写真:NOBU 構成:TRAILS
毎年、多くの日本人ハイカーが海外トレイルを歩きに行く。スルーハイキングだったり、セクションハイキングだったり、ソロだったり、カップルだったり……それぞれが思い思いのスタイルでロング・ディスタンス・ハイキングを楽しんでいる。
そんなハイカーたちのロング・ディスタンス・ハイキングのリアルを、たくさんの人に届けたい。できれば、それぞれの肉声が伝わるような旅の記録、レポートを紹介することで、読者の方々にその臨場感や世界観をよりダイレクトに感じてほしい。
そこで、ハイカーが自らのロング・ディスタンス・ハイキングの体験談を綴る、ハイカーによるレポートシリーズをスタートさせることにした。
今回は2022年にジョン・ミューア・トレイル (JMT) をスルーハイキングした、トレイルネーム (※1) NOBU (ノブ) による、第2回のレポート。
スルーハイキングに向けたギアの準備編をお届けする。
NOBU’s ギアリスト for ジョン・ミューア・トレイル
JMTのスルーハイキングに向けたギア選びにおいては、UL (ウルトラライト) のスタイルで、MYOG (Make Your Own Gear) にもチャレンジしようと思っていた。
もともとULには興味があった。正確には、ULギアというよりは、ULカルチャーに惹かれていたというのがしっくりくる。それは、学生時代からダンス (LOCK ※2) に明け暮れ、ストリートカルチャーにどっぷり浸かっていたことも大きく影響していると思う。カルチャーと聞くだけでワクワクし、そこに身をどっぷり投じて体感してみたくなる。具体的な理解はそこから。
加えて、何事も自分らしくやりたい自分の性格から、MYOGでそれを表現することにこだわった。世界にひとつしかないギアで、世界にひとつだけの自分らしい旅にしたかった。
とはいえ、僕はこれまで自作の経験もなければ、裁縫の経験もない。そこでTRAILS crewの先輩であり、MYOGerとしてもリスペクトしているSUNNYさん (タクミさん) の指導を仰いで、MYOGに取り組むことにした。人生初のMYOGは、スタッフサックからスタート。そこから、レインスカート、そしてタープまでチャレンジしていった。
歩く:HIKING GEAR
バックパックは、渡米直前に完成したTRAILSの「LONG DISTANCE HIKER」の1st プロトタイプ。容量55Lで重量は546g。現在、販売している最終型は500gだが、この時のファーストサンプルは500gを超えていた。
自分がJMTで使用したフィードバックも踏まえて、その後アップデートを重ねていくことになったこのバックパック。アメリカのロング・ディスタンス・ハイキングで、これを自分が最初に使わせてもらえたことはとてもラッキーで、自分としても愛着のかたまりみたいなバックパックだ。
容量としては、ベアキャニスターの携行も考えて、このくらいのサイズは必要だと考えていた。パックウエイトもマックスで13〜14kgを想定したので、腰荷重ができることも必須条件。軽量でありながら腰荷重を想定した仕様のこのバックパックは、最適だと思った。
ウェアについては、ULを意識しつつシンプルかつクラシックなものを基準にして揃えた。
なかでもレインウェアに関しては、ULかつ換気性能を重視して、レインパンツではなくレインスカートをMYOGすることにした。
ULギアらしく1つのギアに複数の役割を持たせたいと考え、レインスカート兼グラウンドシートに。DCF (ダイニーマ・コンポジット・ファブリック) 0.8ozを用いることで、重量は58gに抑えることができた。
寝る:SLEEPING GEAR
シェルター (タープ) は、もちろんMYOG。もともと一番MYOGしたかったのがタープだった。
軽量性と耐久性を考えて、採用した生地はDCF 0.8oz。自分は身長が183cmあるので、それに合わせて大きめのサイジングにして、長辺を280cmに設定してつくった。それでも、重量はたったの224g。
この写真のようなオーソドックスな張り方だけであれば、ループの数を少なくしてもっと軽量化もできただろう。でもJMTのスルーハイキングにおいては当然ながら悪天候もあるはずなので、ループを計20個つけてシチュエーションに応じて耐候性の高い張り方もできるようにした。もちろん、雨漏りを防ぐためにシームテープを用いてシーム処理もした。
今回のJMT用で使用したのは、「Western Mountaineering / AstraLite 12D (ウエスタン・マウンテニアリング / アストラライト12D)」のダウンキルト。ULでありながらも、9月という寒くなりつつあるJMTにも対応できるもの、という観点でチョイス。
重量454gながらも、首周りの保温性を高めた独自の構造をはじめとしたウエスタンならではなの仕様で、-3℃まで対応できる点がポイントだった。
いずれのギアもULを意識したが、自分は寒がりでしかも初めての海外トレイルということもあったため、リスクヘッジとしてダウンジャケットだけは軽さよりも保温力を優先して「NUNATAK / Skaha UL Down Sweater (ヌナタク / スカハー UL ダウンセーター)」にした。
食べる:COOKING GEAR
基本的にお湯で戻す食事しかしないつもりだったので、ポット、バーナー、カトラリーはシンプルかつ軽量であることにこだわった。風防はMYOGでたったの3g。アルミホイルを折り込んだだけのもので、これなら失くしても現地で作ることができると考えた。
ただ、浄水器およびウォーターストレージに関しては、軽さは意識しつつもそれ以上に使い勝手や耐久性を重視した。というのも、ロング・ディスタンス・ハイキングにおいて、なるべく手間は省きたいし、水は死活問題だからだ。
そのため浄水器は、わずかな力でたくさんの水が浄水ができる「PLATYPUS / QuickDraw Microfilter (プラティパス / クイックドローマイクロフィルター)」、ウォーターストレージは耐久性に優れた「CNOC OUTDOOR / Water Container Vecto 2L (クノックアウトドア / ヴェクト 2L)」にした。
エマージェンシー・その他:EMERGENCY GEAR & OTEHRS
inReach (※3) は、今やアメリカを歩くハイカーの必須ギアとなっているため、エマージェンシーギアとして真っ先に選んだ。用途としては緊急事態のSOSはもちろんだが、初めての海外トレイルということもあり、日々家族やTRAILS crewにメッセージを送信し、安否報告することを想定していた。
また今回、UL&MYOGがテーマではあったが、ひとつだけテーマからはずれた重量のかさむ道具を持っていくことにした。それが一眼レフカメラだ。普段から趣味で写真を撮っており、JMTの風景に憧れていた自分にとってはこの景色を余すこと無くカメラに収めたかった。重量は増えたものの、僕にとっては絶対に外せないアイテムだった。
今回は、JMTをスルーハイキングするにあたってのギアリストを紹介してもらった。次回は、リサプライ(食料やギアの補給) やアクセスのプランニングについてのレポートをお届けする予定だ。
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