パックラフトのABC #2 パックラフティング&キャンプ 〜僕らのメロウな川旅〜
川の流れにゆられながら、キャンプ地の河原にとりつき、そこでタープを張って、焚き火をおこして夜を明かす。
この楽しみはそうそうやめられない。バックパッカーとして旅していた青年期の頃からの憧れか、ハックルベリー・フィンのいかだ舟での川旅の情景か、何者にも邪魔されない、心の中にいつもあった冒険が、ちょっと現実になってくれる感覚。
アラスカのブルックスレンジを眺めながらの、パックラフティングももちろんしてみたい。でも、パックラフトが広げてくれる旅の可能性って、もっと自分たちの足元のフィールドにもたくさんある。
ハイカーズデポ長谷川さんと、僕たちTRAILSの佐井・小川の、男3人ででかけたのは、夢のアラスカでなく、茨城と栃木を流れる“関東最後の清流”と称される那珂川(なかがわ)。男3人でパックラフトとキャンプ道具をバックパックにつめこんで、メロウな川旅に出かけてきた。
Packrafting & Camp!
まずは穏やかな流れの川でリバーツーリング
まずは流れの穏やかな川で、リバーツーリングに出かけてみる。これは難しい技術は習得しなくても、しかるべき基礎講習を受け(前回のサニーエモーションの記事を参照)、ある程度パックラフティングに慣れればできる、川旅のスタイルである。
パックラフティングの楽しみは、川の強い流れや波を楽しむホワイトウォーターでのダウンリバーと、穏やかな流れの中でのリバーツーリングに大別される。川の難易度が低いところを選べば、リバーツーリングは比較的、初期の頃から実践できる遊び方であり、パックラフトが広げてくる旅の可能性を味わうのにも適した遊び方である。
パックラフトは単なる人の移動のための舟ではなく、道具も一緒に運ぶための舟として設計されている。パックラッフトは、食料、水、シェルターなどの道具を長期間にわたり一緒に運ぶことができる。パックラフトを使って新たな冒険を求めた先代のチャレンジャーたちは、アラスカ、北米、南米、タスマニアなど、困難な地形の中もパックラフトを使って、長期間の旅を実践してきた。
そんな「パックラフトが広げてくる旅の可能性」。それはハードなコンディションの旅だけでなく、僕らの等身大の旅の可能性も広げてくれる。そんな僕らが今回目指したのは、関東のリバーツーリングのメッカでもある那珂川。
宇都宮駅で集合し、そこから烏山線(からすやません)の電車にことことゆられながら、終点の烏山駅へ。茨城県からスタートし、県境をまたいで栃木県へと下っていく、約30kmの1泊2日の川旅だ。
日本ならではのパックラフトの旅
アラスカの広大な荒野を旅する道具として発展してきた現在のパックラフトだが、日本においては、また違った方法で川の旅を広げてくれるポテンシャルを持っている。
その収納性と軽量さは、日本の発達した公共交通機関での移動も簡単にしてくれる。一級河川沿いには、電車やバスなど交通網が発達しており、川へアクセスしやすいところも多くある。だからこの「パックラフトのABC」で選んだのも、電車でアクセスでき、帰りはバスで帰れる那珂川にした。
茨城から栃木の里山のあいだを悠々と流れる那珂川。那須連山に源流があり、さいごは太平洋へと注ぎ込む。天然鮎の漁獲量が多いこと、関東の中でもいまも鮭が遡上する珍しい川としても有名だ。「関東最後の清流」とも呼ばれ、昔に映画で四万十川での撮影継続が難しくなった際に、残りのシーンを那珂川で撮影したという話もある。
鮎釣りの人、雑魚釣りの親子、BBQやオートキャンプのグループ、カヤックのツアー。那珂川では、今も川遊びの光景が日常のものとして残っている。「関東最後の清流」と言われるゆえんは、水のきれいさもさることながら、このように川と接する人々の日常がいまもあるからではないか。
【次ページ:河原での焚き火キャンプ & 今回のリバートリップのムービー】
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