TRAILS REPORT

patagonia trip | パタゴニア・トリップ #02 パイネ・サーキットの6日間

2017.12.08
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前半の裏パイネをまわるOサーキットを超えて、旅の後半はパイネ・サーキットのハイライトである「Wルート」へ入る。パイネを象徴する尖塔を戴いた山々や、アンデス山脈に生息するコンドルの姿、パタゴニアの山小屋の様子など、パイネ・サーキットらしい風景が連続する。


DAY4: パイネの角とエメラルドブルーのペホエ湖


グレイ〜フランセス 20.5km, 6.5h / Grey to Francés

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谷の向こうに剣岳のような尖塔群がみえる。

このグレイから、メイントレイルのWルートの区間に入る。ここからのWルートでは、メジャールートならではの壮大なスペクタクルが待っているはずだ。そう思って歩き出したところで便意をもよおしてしまい、トレイル脇の茂みに隠れて失礼する。もちろん持ち帰れるものは持ち帰った。グレイを出発しパイネ・グランデを過ぎると、前方に「パイネの角」という意味をもつ、クエルノス・デル・パイネの山が見えてくる。淡い褐色の花崗岩の上に、黒い堆積岩の泥板岩(でいばんがん)が重なっており、ツートンカラーのとんがり山は独特の偉容をはなっている。この山のかっこよさには、見惚れてしまう。

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パイネの角という意味をもつ、クエルノス・デル・パイネ(Cuernos del Paine)。

曇天の空の中、ときおりお日様の光が射すような、どっちつかずの天気が続く。たまに小雨もちらつく。風の強いエリアなので、天気もそれだけ変わりやすいのだろう。ふと後ろを振り向くと、今まで歩いてきたトレイルの向こうに、きれいなアーチ型の虹がかかっているのに気がづいた。その瞬間にパタゴニアのトレイルに、祝祭的な雰囲気が立ち上がる。まるでパタゴニアの森と山を祝福するような虹だった。

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トレイルの右側には、ペホエ湖という大きな湖が横たわっている。陽光を受けて、エメラルドブルーに輝く湖面が美しい。フランセス渓谷の入り口に、イタリアーノというキャンプサイトがある。フランスだのイタリアだの、なんだかパタゴニア風情が失われるようであるが、この渓谷もハイライトのひとつとなっているところである。谷をつめてピストンで戻ってくるルートなので、人も多くなる。僕らはこのキャンプサイトの予約が取れずに、フランセス渓谷は少ししか登らなかったが、両サイドからパイネの岩綾がせまる迫力ある景色であった。

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[上段:左] ぱっさぱさすぎて、食べきれなかったサンドイッチ。 [上段:右] Wルート真ん中にあるフランセス渓谷 [下段] フランセスのキャンプサイト。ちなみに、ほとんどキャンプサイトでシャワールームの設備はある。

この日、イタリアーノから少し離れたフランセス・キャンプサイトで、テントを張った。緯度の高いパタゴニアの夏は日が長く、遅い時間まで空が明るい。しかし、一日の寒暖差が大きく、気温はどんどん冷え込んでくる。そんな明るく冷たい夕暮れどきのしゃんとした空気のなか、ガスストーブで夕食のカレーを温めて食べる。もうパタゴニアのトレイルの旅もあと2日。この日あたりから、今までの充実感と、近づく旅のおわりの寂しさのあいだを心が漂う。相方はテントのなかで、それまでの旅の光景をノートにスケッチしている。

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DAY5: パイネの空を、巨大な怪鳥・コンドルが悠々と旋回する


フランセス〜チレノ 19.6km, 8.5h / Francés to Chileno

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このクエルノス・デル・パイネの近くで、上空高くコンドルが飛んでいる姿を見た。

僕たちはこの日、コンドルを見た。パイネを含む南米アンデス山脈は、コンドルの一大生息地なのだ。コンドルは、翼を広げたときの幅は3メートル以上あり、飛ぶ鳥の中では世界最大クラスの鳥である。また屍肉を食料とする怪鳥としても知られており、不気味な一面も持つ。

一瞬、それがコンドルとわからなかった。しかし標高2000mくらいの山頂付近の上空でも、肉眼ではっきりわかる大きさの鳥はコンドルしかいない。コンドルは山々のまわり大きく旋回して飛んでいた。悠々と飛んでいるその姿をしばらくのあいだ、僕らはぼーっと見上げていた。

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パイネ・サーキットではときおり馬の姿を見かける。一部の区間をホーストレッキングで移動することもできる。


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コンドルを見たクエルノス・デル・パイネ(パイネの角)を回り込むように、トーレス・デル・パイネ(パイネの塔)へと続く道を歩いていく。途中、向かいからホーストレッキングの人とすれ違う。パイネのトレイルには、馬に乗る文化を残しており、一部は人が歩く道と馬が歩く道に分かれているところもある。

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レフジオと呼ばれる山小屋の風景。泊まったチレノのレフジオは、他のレフジオよりもこぢんまりした、落ち着いた山小屋であった。

翌日にトーレス・デル・パイネ(パイネの塔)まで歩くための起点となる、チレノに着く。今まではすべてテント泊だったが、一度はパタゴニアのレフジオと呼ばれる山小屋の雰囲気も味わおうと、ここではレフジオをブッキングしておいた。天井が高く、大きく採光のよい窓がある食堂では、この日の行程を歩き終えたハイカーたちが、さっそくビールやワインを飲み始めている。夕食で出たサーモンと雑穀のあたたかい料理に、この5日間の疲れが癒される。その夜、寝室のベッドのなかで、雄大なコンドルの飛翔を思い浮かべながら、眠りについた。


DAY6: ハイライトのパイネの塔で夏の雪景色


チレノ〜ラス・トーレス〜アマルガ 13.8km, 7h / Chileno to Las Torres to Amarga

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レフジオ(山小屋)に飾られていた美しいパイネの塔(Torres del Paine)の写真。

標高2500mほどの尖塔がならぶトーレス・デル・パイネ(パイネの塔)は、このトレイルのシンボルでもあり、最大のハイライトだ。トーレス・デル・パイネは、花崗岩が氷河によって長い年月をかけて削り落とされてできあがった、まさに地球が作った造形物。帰りのバスの時間もあったので、他のハイカーより早く早朝にレフジオ(山小屋)を発ち、パイネの塔を間近で見られるBase Torresへ向かう。少しずつ高度を稼いでいくと、ぱらぱらと雪が落ちてきた。

パタゴニアの夏に雪景色。


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パイネの塔(Torres del Paine)の姿は、雪雲の向こうにうっすらと見えるのみ。しかしこの湖の景色は圧倒的に幻想的であった。

見晴らしのある小高いところに上がってみると、あたり一面は真っ白な世界に変わっていた。夏のパタゴニアで雪景色だなんて思ってもいなかったが、とっても幻想的な景色だ。おかげでパイネの塔は雪雲に隠れ、その陰にうっすらシルエットを見せるだけであった。これも自然が相手なので仕方がない。巡り合わせである。

早朝に山小屋にデポしたバックパックをピックアップして、パイネ国立公園の出口へ向かう。すると、山を下るにつれて、ゆるやかに晴れ間が増えてくる。視界にはパタゴニアの大地が広がっている。

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少し急ぎ足で歩いたおかげで、町に戻るためのバスにも余裕がある時間に、ふもとまで降りてきた。山の方を振り返ってみると、さっきまで雪雲に覆われていたパイネの塔が、あっけらかんと青空を背景にくっきりと姿を見せているではないか。まるで朝に見た雪の世界が、夢のなかの出来事であったかのようだ。

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ロングトレイルのカルチャーや、ハイカーによる実践的なノウハウがつめこんだ一冊

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佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

[about TRAILS ]
TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。有名無名を問わず世界中のTRAILSたちと編集部がコンタクトをとり、旅のモチベーションとなるトリップレポートやヒントとなるギアレビューなど、本当におもしろくて役に立つ情報を独自の切り口で発信していきます!

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