パックラフト・アディクト | #29 アムステルダム運河・デイトリップ
(English follows after this page.)
文・写真:コンスタンティン・グリドネフスキー 訳:トロニー 構成:TRAILS
TRAILSのアンバサダーであるHIKE VENTRESのコンスタンティンから、運河でパックラフティングしたトリップレポートが届きました。
場所は、オランダの首都アムステルダム。運河の街としても知られるこの都市で、仲間とともに、ワンデイのパックラフティング・トリップを楽しんだそうです。
アムステルダムの街中に流れる運河を漕ぐ。今回コンスタンティンは、軽量で携行性に優れたパックラフトならではの遊び方を、示してくれました。
ドイツのパックラフトブランド、Anfibio Packrafting(アンフィビオ・パックラフティング)の新作レビューもしてくれたので、そちらもあわせてお楽しみください。
アムステルダムの街をパックラフトで散策するコンスタンティンと、友だちのペギー。
友人からの誘いでアムステルダムへ
「やぁ、コンスタンティン。たしかキミは、アムステルダムに住んでいるんだよね? 11月に行くかもしれないんだ。どうだろう、会えるかな? スヴェンより」
昨年の10月中旬、ドイツのAnfibio Packraftingの共同経営者のひとり、スヴェンから短いメッセージを受け取りました。
今回のトリップの発起人、Anfibio Packraftingのスヴェン。
僕は以前、彼らのストアで買い物をしたことがあったし、昨年スロベニアで行なわれた『Packrafting Meet-up Europe 2019』(前回のレポート記事を参照)で彼と一緒にパドリングをしたこともあります。
まあ実を言うと、僕はアムステルダムではなく、もうちょっとだけ北東のほうに住んでいるんだけど、スヴェンからの手紙は、この大都市でまた彼とパドリングができるいい口実になると思いました。それで、その誘いに乗ることにしたのです。
アーバン・パックラフティングに適した都市
都市と川について考えるとき、かなりの確率で最初に思い浮かべるのは、運河で世界的に有名なイタリアのヴェネツィアでしょう。
あまりにも有名なので、同じように運河のある他の場所を指すときにも、その名前が使われたりします。たとえば、僕は「北のヴェネツィア」という場所を、少なくとも3つは知っています。そのうちのひとつが、アムステルダムです。
だけど、それについてちゃんと比べてみたのだろうか?(ヴェネツィアが一番なのだろうか?) 僕はそう思っていません。その理由を説明します。
まず、ヴェネツィアには150の運河があるのに対して、アムステルダムには165もの運河がある。運河の全長も、アムステルダムの方がヴェネツィアよりも長い(50km vs 42km)。橋の数でいうと、ヴェネツィアは403ですが、1281のアムステルダムには遠くおよびません。
そして、アムステルダムの運河は、はるかに多様性があります。もっとも古い運河は14世紀に建設されたもので、もっとも新しい運河は1995年に完成したもの。ちなみに、市の中心部にある運河のほとんどは16世紀と17世紀のものです。
その運河は、壮大なキャナル・ハウス(ホテル)とともに、アムステルダムが世界でもっとも重要な貿易の中心地であったオランダ黄金時代の栄光を象徴しています。その歴史的な重要性が評価されて、いくつかの運河群は、2010年に「キャナル・リング」として世界遺産に登録されました。
そのため、アムステルダムを訪れる観光客にとって運河に沿って街を散策することがもっとも人気のアクティビティのひとつであるのは、当然と言えるでしょう。そして、パックラフトを使えば、運河に沿って水面からも街を散策できるのです。
しかもアムステルダムでは、ボートを使用するための免許や許可証も必要ありません。いくつかの交通ルールや制限速度、レクリエーションが禁止されている区域もありますが、できることとできないことを明示した標識があるので、ルールを守りやすい。
だからこそ、この非常に多くの人が密集した都市であっても、隅々まで、何時間も、何日もかけて探検できるのです。
アムステルダムの運河での小さな冒険
アムステルダムの、網の目のように張り巡らされた運河をパックラフティング。中央駅近くをぐるっと1周してから700メートルほど歩き(点線部分)、再乗艇してゴール地点へ。
冒頭で、僕が「もう少しだけ北東に住んでいる」 と言ったのは、アムステルダムまで電車で2時間半くらいかかるから。だから、いつもお昼ごろにならないと着かないんです。
スヴェンと彼の同僚であるペギーは、すでに2日近く市内に滞在していて、僕らは駅で会うことになっていました。なんと彼らはホステルから駅までパックラフトで来ていました。
合流して「どこに行きたい? 何を見たい?」と訪ねたら、「ここはどこも最高だね」と彼らは答えました。「街を探検しよう!」。僕たちがやったのはまさにそれでした。
僕たちは、中央駅の前のエリアを出発して、アムステルダムの中心の格子を形成するいくつかの小さな運河に出ました。
「ダンシングハウス」 に囲まれたある美しい運河は、同じくらい美しい運河につながっていきます(アムステルダムでは、細長いレンガ造りの家がよく見られるのですが、これが 「ダンシング」 と呼ばれるのは、沈下によっていろんな角度に傾くことが多いからです)。
クルマや歩行者、自転車が一段高い堤防や頭上の橋を通ります。何人かは僕たちを見つけて手を振り、僕たちも手を振り返しました。
クレイジー・ジェイコブ・タワーという、決して正確な時刻を示さない時計塔(だからこんな名前がついた)、国立オペラハウスと同じ建物を共有する市庁、歴史あるユダヤ人地区のそばを通り抜けました。
悪名高いレッド・ライト地区の主要運河をくだり、セント・ニコラス教会の裏にある狭い水路を使って、私たちは駅前の出発地点に戻りました。
そこはレクリエーション用の船が禁止されていた地域だったので、パックラフトを持って運河を出て歩かなければなりませんでした(途中でホットチョコレートのために足を止めましたが)。
船の禁止区域は、パックラフトを担いで歩くことに。途中、カフェでホットチョコレートを飲んだ。
世界遺産の運河で、ナイト・パックラフティング。
堤防の高さが1.5〜2メートルもあるため、もう一度運河に戻るのは想像以上に難しいことがわかりました。ちょうどいい水位の場所を見つけることができず、最終的には、アムステルダムの至るところで見られる堤防の中の小さなハシゴを下りることにしました。
僕たちが入ったエリアは、世界遺産の一部でした。ここにある4つの主要な運河(ヘレングラハト、プリンセングラハト、キーザーグラハト、シンゲル)は、いままで僕たちがパドリングした運河よりもはるかに広かったし、多くの家がより大きく、より精巧に装飾されているようでした。なかには「ダンシングハウス」もありました。
そこもまた水量がすごく多く、いくつかの運河は一方向にしか漕ぐことができませんでした。それによって、今回のトリップにちょっとしたパズル要素が加わりました。
あたりがだんだん暗くなり、混雑している運河の危険が増してきました。ところが、スヴェンは素晴らしい解決策を用意していました。
彼は電池式のクリスマスの電飾をいくつか取り出すと、それを自分たちに巻きつけました。僕たちはまるでクリスマスツリーのようでしたが、それは街の景観にとてもよく合っていました。
というのも、1カ月あまりのクリスマス期間で、運河沿いの橋や木の多くがライトアップされていたのです。毎年11月下旬〜1月中旬にかけて開催されるアムステルダム・ライト・フェスティバルのために、インスタレーションを準備をする人たちも見かけました。
実を言うと、この明かりが灯っている間、アムステルダムはまるで違う街のように見えて、もう少しここに残って舟を漕いでいられたらな……と心から思いました。
運河のパックラフティングが楽しすぎて、すごく名残惜しかった。
でも、また2時間半かけて家に帰らなければならなかったので、その日はお開きすることにしました。僕たちは、スヴェンとペギーが泊まっていたホステルからそう離れていない土手でハシゴを見つけ、通りの高さまでよじ登りました。そしてパックラフトを担いで、彼らのホステルまで数百メートル歩きました。
1時間と少し経ったころ、僕はすでに電車に乗って帰路についていました。長い一日でしたが、間違いなく素晴らしい一日でした。
まず、しばらく外出できたのは良かったし、また、Anfibio(アンフィビオ)のRebel2K(レベル2K)という新しいパックラフト(フラットウォーター・パドリングにとても向いてると思いました)を試せたのもすごく楽しかった。
でも何よりも、この 「究極のパックラフティング・シティ」 で、同じマインドを持った仲間たちと一緒にパックラフトを漕ぐ機会を得たことこそが、最高でした。
友人であるスヴェンとペギーと一緒に漕げたことが、最高の思い出となった。
Anfibio Rebel2K(アンフィビオ / レベル2K)のインプレッション
今回、スヴェンが借してくれたAnfibio Rebel2K(アンフィビオ / レベル2K)。
軽くて小さいのに、とても快適でした。スプレーデッキ(コックピットに水の侵入を防ぐためのカバー)を閉じるためのファスナーとマジックテープの組み合わせも気に入りました。
これのおかげで、スプレーデッキは非常にスッキリしていて、水が溜まることがありませんでした。スケグ(方向を変えるためのヒレのようなもの)があるのもとても良かった。
でも、スケグには注意しなければならない。どうしてかわからないのですが、そのうちの1つを失くしてしまったのです。
運河でしか使わなかったし、サイズも1つしかないので、個人的には数日間のホワイトウォーター・パックラフティングには持っていかないと思います。
ただ、昨年の春にスロベニアで、スヴェンがそのプロトタイプで簡単にクラス3の急流を漕いでいたのも事実です。
3人は、ワンデイトリップながら、アムステルダムの運河でパックラフティングを存分に楽しんだ。
コンスタンティンたちによる、運河の街アムステルダムを舞台にしたパックラフティング。
日帰り(しかも昼くらいから)のトリップにもかかわらず、こんなに楽しめるフィールドだとは思ってもいませんでした。
こうやって自由に都市や運河を楽しむことができるのも、パックラフトの大きな魅力。さまざまな国で、アーバン・パックラフティングにトライしてみたくなりました。
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(英語の原文は次ページに掲載しています)
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