ドイツ・リーザー川 火山群の渓谷を漕ぐハンモックキャンプ & パックラフティング | パックラフト・アディクト #79
(English follows after this page.)
文・写真:コンスタンティン・グリドネフスキー 訳・構成:TRAILS
リーザー川は、ノルトライン=ヴェストファーレン州のアイフェル火山地帯の大地を刻むようにできた川で、美しい渓谷と森のなかをパックラフティングすることができる。
周辺には古城もあり、ヨーロッパらしい景色のなかも旅するこができる川だ。
それでは、リーザー川のコンスタンティンのトリップ・レポートをお楽しみください。
古代からある火山群のなかを流れるリーザー川。
今年の4月末、友人のハロルド、レミ、フォルカーと私の4には、ドイツのリーザー川を下るパックラフティングの旅に出かけました。リーザー川はモーゼル川の支流で、素晴らしい景観のアイフェルの火山群を縫うように流れている川です。
リーザー川は、ダウンという町近くから始まり、マンダーシャイトを南西に流れ、最終的にはヴィットリッヒ近くでモーゼル川に合流します。この川は古代の火山の大地に深い渓谷を削ってできた川で、メロウで楽しいパックラフティングができます。
今回の私たちの計画は、マンダーシャイトの町からスタートして、ヴィットリッヒまで2日間で漕ぐという内容でした。
古城で有名なマンダーシャイトがスタートポイント。
当初、ハロルスと私は木曜に現地に着いてキャンプ場に泊まり、翌日の金曜に別の川を漕いでから、土曜にレミとフォルカーと合流してリーザーを漕ぐつもりでした。しかし金曜に別の川を漕ぐのはやめることにしました。大雨の影響もあり、また私たちは詰め込んだスケジュールを立ててしまっていたためです。
早く移動したハロルドと私は、予定よりも1日早く金曜日に到着しました。午後の早い時間に到着した私たちは、予定していたキャンプ場に向かいました。しかし、そこは10代の若者たちでごった返しており、テントエリアはぬかるんでいました。
キャンプ場の受付の人も見つからず、私たちはマンダーシャイトの町を探索し、翌日のパックラフティングのスタートポイントを下見することにしました。
マンダーシャイトは、オーバーブルク城 (上の城) とニーダーブルク城 (下の城) という2つの城があることで有名な歴史ある町です。崖の上に建つこの2つの城からは、渓谷を蛇行する素晴らしいリーザー川の景色を眼下に見下ろすことができます。かつてこの町は温泉地として栄え、そのミネラルを含んだ温泉は治癒効果があることで知られていました。現在、この町は、美しい自然が広がるアイフェル地方の玄関口となっています。
私たちは城跡を散策した後、川へ下っていくと、対岸へ渡るための小さな橋があり、プットインするのにちょうどよさそうな場所を見つけました。
丘の上のちょうどよい小屋を見つけてキャンプ。
私たちは近くに無料の駐車場を見つけた後、町のまわりを少し歩くことにしました。城のなかに入るできたので、上に登って周辺に広がる景色を楽しみました。
リーザー川は城の下を蛇行し、深い谷を刻んでいます。リーザー川沿いのハイキングコースは、ドイツで最も美しいハイキングコースのひとつとされ、休憩スポットもたくさんあります。
もう遅い時間になっていたので、混雑したキャンプ場に戻るのはやめて、代わりにちょうどよい小屋を見つけたので、そこで夜を明かすことにしました。その小屋からは、渓谷の景色のなか、遠くに沈む夕日を見ることができました。
目覚めたばかりの春の自然は、茶色い葉の間から芽を出し、花を広げていました。それは魔法のような風景でした。
ハロルドと私は夕食を食べて、屋根の下にハンモックを吊るしました。風もあり、時折雨も降っていましたが、小屋のなかは快適でした。夜はそれほど寒くなかったですが、、朝にはまだ寒くて帽子が必要でした。この頃、別で移動していたレミとフォルカーは、ベルギーの高地で予想外の雪に見舞われていたそうです。
リーザー川のパックラフティングのスタート。
土曜日の朝、ハロルドと私はヴィットリッヒに向かいました。そこで、レミとフォルカーと合流して、パックラフティングのスタートです。今回の旅では、車が2台あったので、1台をヴィットリッヒのゴールポイントに置いて、もう1台の車でマンダーシャイトのスタートポイントに向かいました。
私たちのスタートした場所は、ニーダーブルク城 (下の城) の向かいにある場所です。前日は、ヴィア・フェラータ (山の急峻なルートをワイヤーやはしごなどが固定された設備を使って登攀するコース) を目当てにした人がたくさんいました。地元のインフォメーションセンターでは、ヴィア・フェラータ用の道具の貸し出しもしていました。私たちのスタート地点の近くにある城の崖が、そのヴィア・フェラータのルートにもなっていました。
川は、最近雨が降ったにもかかわらず、水位は比較的低く、スタートを予定していたところにあった瀬も浅く、パックラフトを川底に擦ってしまいそうに見えました。なので、私たちは下流にはもっと瀬があることを期待しながら、その場所は迂回することにしました。
パックラフトを漕ぎ始めると、太陽も出てきてくれて、気温は思ったよりも暖かくなりました。ドライスーツの下に着ていた服を、一枚脱がなければならなかったほどです。
深い森に覆われた渓谷のなかを進んでいく。
リーザー川は深い森に覆われた渓谷を縫うように流れています。私たちは行く手を阻む倒木に何度も遭遇し、ポーテージ (※1) をしたり、木の下をくぐって進んでいきました。
川の脇にハイキング用のトレイルがあり、川を渡る歩道橋がいくつもありましたが、そこを歩く人は見かけませんでした。おそらく季節が早すぎたのか、それかその日の天気予報が悪かったからでしょう。
リーザー川は、漕ぐのが難しい川ではないので、ずっとおしゃべりをしながら、下っていきました。
いつものように、レミとハロルドと私は、パックラフトを漕ぎながら、お互いの近況報告の話をして、楽しみました。ランチをとるのに良さそうな、日当たりのいい場所を見つけたので、私たちはそこで暖かい春の日差しの中でくつろぎ、食べ物をシェアしながら、気持ちのよい風景に浸りました。
川は、深い峡谷のようなところもありますが、時折ぱっと視界が開けるところがあり、そこでは息を呑むような景色が広がっていました。
ハンモック・キャンプするのにパーフェクトな森。
4時間くらい漕いだ後、松の森のなかにパーフェクトなキャンプ地を見つけました。ハンモックを持ってきた私にとっては理想的な場所でした。
もうすぐで陽が沈む時間になっていましたし、この先へ進むと自然の風景は少なくなり、人が多くなるので、これより先に進むつもり気も起きませんでした。
その日の夕方、私たちが食事をしながら話をしていると、思いがけない訪問者がありました。とても小さな灰色のネズミです。
ネズミは、私たちのことををまったく恐れていないようで、キョロキョロと行ったり来たりしながら、葉っぱや茎を巣に集めていました。私はネズミの穴の前にチーズを置いてみました。「ネズミとチーズ」という昔からあるイメージが本当かどうか知りたくなったのです。すると驚いたことに、ネズミはチーズを無視をしました。おそらく本来の食事である植物の方が好きだったのでしょう。
夜になり、私たちは眠りにつきました。私は、最近はハンモックで寝るのがとても好きで、テントよりも場所をとらないですし、ぐっすり眠ることができます。松林の地面は、苔に覆われて柔らかく、まるで足元が絨毯のように感じられました。その夜は前日よりも暖かく、ハンモックの優しい揺れに誘われて、ぐっすり眠ることができました。
今度はきっとファミリーでまたここに来る。
翌朝、簡単な朝食 (ネズミのチーズはまだ手つかずのままでした)の後、私たちは再びパックラフト漕ぎ出しました。残りの距離はそれほど長くはありませんでしたが、帰路につくためには早くゴールする必要がありました。
川の様子は少し変わり、急なカーブのある流れは少なくなり、川幅が広くなっていきました。天気は曇りがちで日差しもなかったため、この最後の区間は楽しみきれませんでした。
また小さな堰堤などの人工物もあったので、ポーテージで迂回することにしました。なんとか漕ぐこともできそうでしたが、浅かったので、パックラフトを破損するリスクも避けるようにしました。このようなダムで、隠れている金属のワイヤーなどにぶつかったという恐ろしい話を聞いたことがあったので、私たちは安全策をとりました。
それでも、この旅にまったく「ダメージがなかった」わけではなく、ちょっとしたパンクが何度かあったのですが。
この旅では、2日間で約25kmを漕ぎました。美しい景色、楽しい仲間、そして冬を越えて再び水の上に戻ってきたというワクワクが合わさって、忘れがたい旅となりました。
私はすでに家族と一緒に、またこのリーザー川に来ることを頭のなかで考えていました。妻と娘もリーザー川のパックラフティングを、絶対に楽しんでくれるはずだと確信していました。
日本にはとても情報の少ない、ヨーロッパのパックラフティング・カルチャーをレポートしてくれるコンスタンティン。
今回は古城と、火山帯の渓谷を漕ぐ、ヨーロッパらしい景色を味わえる川をレポートしてくれた。リーザー川は、ハンモックキャンプができたり、ファミリーでのパックラフティングもできる川としても魅力的だ。また次のコンスタンティンのレポートが届くのが楽しみだ。
(English follows after this page / 英語の原文は次ページに掲載しています)
- « 前へ
- 1 / 2
- 次へ »
TAGS: