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中欧・イザール川 & アンマー川 アルプスでのハイキング&パックラフティング | パックラフト・アディクト #77

2024.06.28
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(English follows after this page.)

文・写真:コンスタンティン・グリドネフスキー 訳・構成:TRAILS

TRAILSのアンバサダーであるコンスタンティンが、今回レポートしてくれるのは、中欧のオーストリアとドイツ南部に流れる2つの川でのハイキング & パックラフティング。

1つ目はヨーロッパアルプスの屹立した山々の景色のなかを、ハイキングでアプローチし、パックラフティングで下って旅するイザール川 (オーストリア~ドイツ) 。

2つ目は、厳しく保護された原生自然の森を流れるアンマー川 (ドイツ) 。

この旅では、アクセスに車を使わず、すべて列車のみで移動をしている。日本から行く人にとっても参考になるトリップになるに違いない。

ヨーロッパの列車にゆられる旅情と合わせて、今回のハイキング & パックラフティングのレポートをお楽しみください。


険しく美しい岸壁に囲まれたイザール川の景色。

ヨーロッパの夜行列車が、今回のトリップのはじまり。


今回のメンバーは左からコンスタンティン、ハロルド、フォルカー。

5月2週目、祝日と重なった週末に、パックラフトをバックパックに詰め込んで、ワクワクする旅に出かけた。

今回はいつもと違って、車を使わず、すべて電車と徒歩だけで移動する旅であった。

目的地はオーストリアとドイツ南部のイザール川上流で、素晴らしいアルプスの景色の中で、数日間のパックラフティングを楽しむプランだった。


今回はすべて公共交通機関で移動したため、すべてバックパックにパッキング。

もともとは、以前からの知り合いであるハロルドと一緒にこの旅を計画していたのが 、今回は新しいパックラフト仲間のフォルカーも誘うことにした。

フォルカーは昨年にフィンランドで開催されたスカンジナビアン・ミートアップに参加し、その時に知り合いになった友人だ。彼はパドリングスポーツの経験が豊富な51歳のドイツ人で、パックラフトについては最近始めたばかりだった。


シャルニッツ (Scharnitz) 駅から、イザール川源流の方向へ10kmほどハイキングしてから、川へプットイン。その後、シャルニッツを通って、ミッテンヴァルトまで漕ぐ。帰りはミッテンヴァルト (Mittenwald) 駅から列車に乗ることができる。

フォルカーが見つけてくれた情報だったのだが、この旅の数日前に、私たちが漕ごうと思っていたイザール川のかなりの部分が閉鎖されていることがわかった (5月に漕ぐ予定だったが、6月1日まで閉鎖の区間がある)。

そこで、この地域をよく知っているハロルドが、アンマー川を旅のプランに入れてみたらどうかと、提案してくれた。そうして、今回はオーストリアとドイツをまたぎ、2つの川を漕ぐプランとなった。


夜行列車の狭いコンパートメントで、ユトレヒトからミュンヘンまで移動。

水曜日の夕方、私とハロルドはユトレヒトから夜行列車に乗り、すでにアムステルダムに着いていたフォルカーと合流した。

列車を待っていると、スノーシューをバックパックにくくり付けたハイカーがいた。夜行列車はノスタルジックな雰囲気で、ロシアやヨーロッパを旅したときの思い出がよみがえった。6人用のコンパートメント (小部屋) では、下段のベッドを使ってもスペースはほとんどなかった。それでも耳栓をしてぐっすり眠り、起きたらミュンヘンに着いていた。

オーストリアの渓谷をハイキングでアプローチ。


ドイツから列車を乗り継ぎ、オーストリアのスタートポイントへ。

ミュンヘンに列車が到着したときに、少し遅延をしていた影響で、急いで次の列車に乗り換えなくてはならなかった。霧が立ちこめ、気温は低めだった。車内の案内掲示板には10℃と表示されていた。

ガルミッシュ・パルテンキルヒェンで列車を乗り換え、さらに南下していく。そしてオーストリアに入ったところにある、最初の駅がシャルニッツという駅で、今回のスタートポイントとなる場所だ。この地点で、標高964メートルある。

シャルニッツから、イザール川の源流域の方にあるプットイン・ポイント (舟に乗る場所) までは、ハイキングをしてアプローチする。


約10kmほどハイキングをして、渓谷のスタートポイントまでアプローチ。

シャルニッツでもっと大きい瀬 (急流) をスカウンティング (※1) した後、そこからプットイン・ポイントまでの10.5kmをハイキングした。ハイキングでは、渓谷や、高山植物の花々、滝など景色を眺めながらハイキングをした。歩いている途中では、小さい滝のような雪崩も見た。

これからの旅の序章となる、美しい景色であった。太陽が顔を出し、暖かくなってきた。道の脇にあった水たまりには、何百匹ものサンショウウオが泳いでいた。


ハイキングでアプローチした先で、パックラフトを膨らませてスタート準備。

道自体は簡単に歩けるところだった。自転車の人や歩く人がよく通る道であり、私たちも途中でたくさんの人と出会った。

※1 スカウティング:岸辺や岩の上などに上がって、事前に前方の様子を下見すること。前方の状況が読めないときに、川の流れ、瀬やドロップの大きさ、岩の配置などを見て、漕ぐことができるか、どのラインを通るかなどを見極める。

高い岸壁に囲まれた渓谷を流れるイザール川。


大きな岸壁に囲まれた渓谷の中を漕いでいく。

イザール川は、オーストリア・アルプスのカーヴェンデル山脈を源流に、チロルやバイエルンを通り、最終的にドナウ川に合流する295kmの川だ。

この川にはクラスI (※2) からクラスIIIまでの難易度が異なるセクションが混在しているが、私たちが漕いだときは水量が少なかったため、クラスIとクラスII+に近い状態だった。そのため、自分のスキルでいけるレベルながら、曲がりくねった川をスリリングに進んでいく体験ができた。


漕いだ日は水量がやや少ない、川の難易度もやや下がっていた。

初日、私たちはイザール川の、美しい渓谷のなかを5kmほど漕いだ。切り立った崖に立つカモシカを見ることもできた。カモシカはカモフラージュが得意なので、簡単には見つけられないのものだが、川に落ちてきた小石によって、カモシカがいることに気づくことができたのだ。

崖の中腹に優雅に立つカモシカの姿は、この日のもうひとつのハイライトであり、この地域の自然の美しさを物語るものだった。私たちは、左右に険しくそびえた岸壁の渓谷による、見事な風景に囲まれて、孤立感と爽快感とを感じることができた。


終始、渓谷のなかを進んでいき、自然のなかでの孤立感を味わうことができる。

私たちの計画では、次の日はドイツのアンマー川まで移動して、ハロルドの友人と地元のパックラフターに会う予定だったが、うまく連絡をとりあえずにあきらめた。代わりにそのままイザール川を進むことにして、ミッテンヴァルトまで10kmほど漕いだ (このあたりオーストリアからドイツに入る)。

1本目のイザール川を漕ぎ終えた後は、次の目的地であるザウルグルプ行きの列車に乗るために、駅まで1.5km歩いた。その後、列車に乗っていると、山々は徐々に後退し、なだらかな丘陵地帯へと変わっていった。

※2 クラス:瀬 (川の流れが速く水深が浅い場所) の難易度。クラス (グレードや級とも表現される) が I〜VI (1〜6級) まであり、数字が大きいほど難易度が高い。ちなみに、I は飛沫もなく静かな流れ、II はやや高い波があるが規則的な流れ。ただし、同じ瀬であっても川の水量や地形の変化などによって難易度は変わってくるので、あくまで目安である。

2本目の川、ドイツのアンマー川へ。


イザール川の翌日にアンマー川を漕ぐために、再び列車で移動する。

ザウルグルプ駅に着くと、まずはスーパーマーケットで食料を補給し、その後に3.7kmほど歩いて次のプットイン・ポイントであるカンメルへと向かって歩いた。

途中、1659年からある古い農場を通り過ぎ、チャペルと地元の農産物を売る店があった。私は地元のものを試してみるのが好きなのだが、このお店でもそうした。

農場の素朴な魅力と歴史的な価値は、私たちの旅に深みを与えてくれた。そして私たちは、この地域にある豊かな文化的遺産の価値に触れることができた。


ザウルグルプ駅 (Saulgrub) を下車し、アンマー川まで徒歩で移動。その後、ロッテンブッフ (Rottenbuch) を通り、。シャルニッツ駅から、イザール川源流の方向へ10kmほどハイキングしてから、川へプットイン。その後、シャルニッツを通って、ミッテンヴァルトまで漕ぐ。帰りはミッテンヴァルト駅から列車に乗ることができる。

アンマー川は、バイエルン州を流れる約79kmの川で、そこに広がる原生自然とともに、その自然環境を守るために厳しい規制をしていることで知られている。

この川にはクラスIからIIIまでの瀬があり、パドラーに人気の川だ。なお舟を漕げる時間は、9:00から18:00までと制限されている。


パドラーにも人気の高いアンマー川。

プットイン・ポイントには何台もの車が駐車されており、なかにはカヤックのルーフラックを積んだ車もあった。あちこちから車が来ていた。地元の人もいるし、ドイツの他の地域から来た人もいた。オランダナンバーの車もあった。

アンマー川のパックラフティングをスタート。


アンマー川では、パドラーだけでなく、フライフィッシングを楽しむ人たちも。

アンマー川を漕ぎはじめて間もなく、私たちは最大の瀬にさしかかった。私たちはスカウティングをして、セーフティに進むようにした。川は高い岸壁に挟まれ、川の流れが狭くなっていた。

この瀬では、フライフィッシングでトラウトを釣っている親子を見かけた。アンマー川は、イザール川ほど水が澄んでいるわけではないが、水生生物の数ははるかに多いようだ。

ほどなくして、美しいシュライアーフェレの滝のところまで来た。モンテネグロのタラ川で見た石灰岩の滝を彷彿とさせる滝だった。水量はかなり少ない時期だったが、水が滴り落ちる様子は魅惑的で、その美しさを堪能し、その滝の水を口に入れた。この日は4kmほどしか漕がなかった。


水が滴る姿が美しい、シュライアーフェレの滝。

夕方、フォルカーは財布と携帯電話が入ったドライバッグをなくしたことに気づいた。どこでなくしたのか思い返してみると、おそらくはザウルグルプのスーパーマーケットだろうと思い至った。

翌朝、フォルカーはそのスーパーマーケットに連絡した。その店を通じて彼の持ち物を見つけた人物と連絡を取ることができ、取り戻す手配をした。ハロルドと私は、フォルカーが戻ってくるまで待っているよと伝えたが、フォルカーは遅れることに後ろめたさを感じて、私たちにそのまま旅を続けてほしいと言った。

私たちはフォルカーの荷物の一部を預かって、そのまま漕ぎ続けた。フォルカーは軽くなったバックパックを持って、なくしものを取りに行くために出発した。

アンマー川の後半は瀬もあるセクション。


目印となる、アンマー渓谷にかかる大きな橋。

フォルカーが漕げなかったセクションは、アンマー渓谷にかかる高い橋があるところで、いくつかの綺麗な瀬がある、息をのむような美しい場所だった。

川岸にキツネが走っている姿を見かけた。キツネは時折こちらをチラチラとこちらを振り返って見てくれた。私たちは堰堤のところにあったすべり台のような落ち込みのところを、漕いでジャンプした。私のジャンプはあまり優雅ではなかったが、ハロルドはプロのようにやってのけた。

フォルカーとは、ロッテンブッフの近くにある橋で待ち合わせようと約束していた。そこはパドラーたちがスタートポイントやゴールポイントとして使う人気の場所だった。


厳格に保護された自然環境のなかを漕いでいく。

私たちは橋の下で本物のトロール (北欧の妖精) のように日差しを避けながら、反対側から数艇のカナディアンカヌーが出発し、15艇ほどの1人乗りカヤックが到着するのを眺めていた。

しばらくするとフォルカーが戻ってきた。ヒッチハイクで戻ってきたので、予定より早く到着した。再会した私たちはランチを食べて、私はパックラフトの上で少し昼寝をした。


フォルカーと再び合流して、3人でパックラフティング。

アメリカで見たような建物の屋根が付いた橋を通り過ぎ、大きなダムの周りをポーテージ (※3) した。そして、この日は全部で17kmほど漕いだ。

※3 ポーテージ:舟を担ぎ上げて、陸路を歩いて障害物を越えること。

旅の最終日にトラブル・・。


最終日のスタート。パックラフトを担いで川へ。

最終日、私たちは最後の4.5kmを漕ぎ始めるのに、9:00まで待たなければなかなかった。規制により9:00からしか川を漕ぐことができないためである。

漕ぎおわった後に、荷物をまとめていると、帰りの列車に乗るのに、あと32分しかないことに気づいた。目的地のパイセンベルグ駅まで、Googleマップだと50分かかると表示されている・・。


2本の川を漕いできた旅も、もうそろそろゴール。

私たちは急いだ。ヒッチハイクを試みたが成功せず、結局、重い荷物を抱えて最後の距離を走った。駅までの急ぎ足は持久力を試すようなもので、荷物の重さが走りにくさに拍車をかけた。

走っていても、遅刻はほぼ確実だった。それでも列車に間に合わせるという決意が私たちを駆り立て、ぎりぎりの時間に到着し、発車間際の列車に乗り込んだ。


旅の最後は、帰りの列車に間に合わなくなりそうになり汗だくで急いだ。

列車はこの長い週末の後だったので、帰る人たちで混雑していた。

ミュンヘンに向かう列車の窓から、雪をかぶったツークシュピッツェ (ドイツの最高峰) を見ることができた。まだ雪に覆われてそびえ立つ山頂の姿は、アルプスの冒険の締めくくりにふさわしいものだった。

旅を振り返ってみると、イザール川はそのきらめく水とアルプスの景色から、私のお気に入りとなった。のんびりさと、景色の美しさと、チャレンジがミックスされた今回の旅は、自分は遠征スタイルのパックラフティングが好きなんだ、ということを再確認させてくれた。

高山の渓谷からなだらかな丘陵地帯まで、さまざまな地形の組み合わせや野生動物との出会いは、私たちに豊かな体験を与えてくれた。次回はイザール川をミュンヘンまで漕いでみたい。たぶん、そうなるだろう。


オーストリアとドイツ南部を、列車の移動だけで2本の川をつないだ旅。

日本にはとても情報の少ない、ヨーロッパのパックラフティング・カルチャーをレポートしてくれるコンスタンティン。

今回はヨーロッパのアルプスの荘厳な景色のなかを、列車の移動のみでアクセスして、ハイキング & パックラフティングできる、とても貴重な情報をレポートしてくれた。また次のコンスタンティンのレポートが届くのが楽しみです。

(English follows after this page / 英語の原文は次ページに掲載しています)

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Konstantin Gridnevskiy

1978年ロシア生まれ。ここ17年間はオランダにある応用科学の大学の国際旅行マネジメント課にて、アウトドア、リーダーシップ、冒険について教えている。言語、観光、サービスマネジメントの学位を持っていて、研究は、アウトドアでの動作に電子機器がどう影響するか。5年前からパックラフティングをはじめ、それ以来、世界中で川旅を楽しんでいる。これまで旅した国は、ベルギー、ボスニア、クロアチア、イギリス、フィンランド、フランス、ドイツ、日本、モンテネグロ、ノルウェー、ポーランド、カタール、ロシア、スコットランド、スロバキア、スロベニア、スウェーデン、オランダ。その他のアクティビティは、キャンプ、ハイキング、スノーシュー、サイクリングなど。

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