TRAILS REPORT

パックラフト・アディクト | #27 Packrafting Meet-up Europe 2019

2019.09.25
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(English follows after this page.)

文・写真:コンスタンティン・グリドネフスキー 訳:堀 晃 構成:TRAILS

TRAILSのアンバサダーであるHIKE VENTRESのコンスタンティンから、ヨーロッパのパックラフトイベントのレポートが届きました。

コンスタンティンが参加したのは、今年で2回目の開催となった『Packrafting Meet-up Europe 2019』。これはヨーロッパ最大のパックラフト・イベントとも呼べるもので、今年5月1日〜4日の4日間、スロベニアのソチャ川にて開催されました。

ヨーロッパ各国からパックラフターたちが集まったこのイベント。コンテンツもとてもリッチで、パドリング技術と川のレベル別に分かれたダウンリバー・トレーニングや、レスキューのワークショップ。さらに、さまざまなパックラフト・メーカーも集まり、製品をテスト使用することもできる、というなんとも羨ましいコンテンツばかりです。

北米とはまた違った形で、ヨーロッパでもパックラフトのカルチャーが根付いてきているのを感じるイベントです。

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開催地のソチャ川。透き通るほどきれいなエメラルドグリーンの川。(packraftingmeetupeurope.com/より)


プロローグ


60人ほどの参加者は、防寒着を着込み、ポケットに手を入れ、円形に集まっています。

今は太陽が出ていて雨はもう降っていないのに、去年のような暖かさはどこにもありません。5月2日だというのに、私たちがいる渓谷のまわりを囲む山々の頂には、まだ雪が残っています。


ミートアップの開会式。主催者の一人セオンによるスピーチで始まった。

私のそばに立っていた主催者の一人であるセオンが開会のスピーチをし、参加者の私たちを歓迎してくれました。

今日から開催されるパックラフトのイベント、第2回『Packrafting Meet-up Europe2019』が、ここスロベニアのソチャ川にていよいよ始まります。


ヨーロッパのパックラフターの交流の場。


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ヨーロッパを中心に各国からパックラフターが集まった。

パックラフティングは近年ヨーロッパでも人気が高まっていますが、最近まで異なる国々のパックラフター同士がお互いの経験や情熱を話して交流できるような機会は多くありませんでした。

ベルギーやイギリス、イタリア、フィンランドといった国々では、パックラフトのローカルイベントが開催されてきましたが、規模は小さく参加する人のほとんどは地元のパックラフター。スウェーデンのパックラフティング・ミートアップは、他と比べると国際的になってきましたが、それでもまだ参加者は北欧に限られていました。


ソチャ川は美しく変化に富み、ミートアップに絶好の川だった。

真のヨーロッパ全体のミートアップと言えるほど、参加者の出身地が多様になったのは、ここスロベニアで開催された2018年5月のミートアップの時でした。

主催は、スロベニア在住のフランス人マックスと、当時家族とオーストリアに引っ越してきたばかりのオーストラリア人のセオンでした。

2人が構想したのは、ホワイトウォーター(急流)での安全や技術トレーニング、さらには川の保全についての関心を惹くようなイベントでした。

初めての開催にもかかわらず2018年のミートアップは見事成功を収め、そのおかげで、毎年ここで開催することが決まりました。


開催場所は、アルプスの南側、ヨーロッパの中心近く。


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イベント会場は、スロベニアのソチャ川。

ソチャ川がこのイベントの開催に適していることには、いくつかの理由があります。

まずソチャ川の支流であるコリトニカは、ヨーロッパで有名かつ人気のホワイトウォーターのある川です。透き通るほど美しいエメラルド色の水に加え、コリトニカには、緩急ある川の特徴も相まって、パドリング初心者から上級者までが楽しめるコースがあります。

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ソチャ川はバリエーションに富んでいて、いろんなレベルのワークショプが開催された。

ビギナー向けのクラス I や II、中上級者用のクラス III(※)、さらに難易度が高いクラス IVもあります。そして、こうしたコースはそれぞれ近くに位置していてパドリング・テクニックを学ぶには最適な川なのです。

※クラス:瀬(川の流れが速く水深が浅い場所)の難易度。クラス(グレードや級とも表現される)が I〜VI(1〜6級)まであり、数字が大きいほど難易度が高い。

また、スロベニアという立地も理由のひとつです。ソチャ渓谷は特にアルプスの南側、ヨーロッパの中心近くにあるということです。


ヨーロッパ各国から集まったパックラフターが、キャンプしながら4日のイベントを楽しんだ。

イベントの開催地に一番近い街であるボヴェツは、イタリアやオーストリアから車でラクに来れるほどの距離です。ヨーロッパ以外から飛行機で来る場合も、いくつかの空港を選ぶことができます。

ボヴェツからは、スロベニアの首都であるリュブリャナ、イタリアのヴェネツィアやトリエステ、オーストリアのウィーンやグラーツに行くこともできます。

たいていの場合、ボヴェツに行くにはレンタカーで行く人が多いですが、公共交通機関を使うこともできます。また、ミートアップに向かう参加者の車に同乗させてもらって一緒に行くという参加者の人もいるそうです。


ヨーロッパ各国のパックラフターと、パックラフトメーカーが参加。


第1回目の昨年と比べて、参加者は大幅に増えました。開会式にいた60人(パックラフターとその家族など)に加えて、次の数日でさらに多くの人が到着しました。

ただ、期間中は冷え込んだり、雨が降ったりと天候に恵まれなかったため、参加登録したものの実際には参加を見送った人も多くいたようです。


さまざまなパックラフトメーカーの製品を、テスト使用することもできた。

参加者の出身地は、去年と同じくドイツとオーストリアからの参加者が多かったです。しかし今年はイギリスやオランダ、フィンランドにベルギー、スペイン、ポーランド、フランス、チェコ、スイスの人もいて、そしてスロベニアからの参加者も1人いました。

ホスト国であるスロベニア唯一の参加者であるその女性は、主催者のセオンから「スロベニアのトロフィーだ!」と歓迎されていました。

ヨーロッパ以外からも、オーストラリアからパックラフトの経験豊かなマーク & ジェン・オーツ夫妻が参加しました。彼らは、旅行とパックラフトのために数カ月休暇を取り始めたところで、このミートアップは夫妻にとって最初のヨーロッパ滞在になりました。

またマークは、このミートアップで行なわれるパドリング技術のワークショップを開いてくれることになっていました。

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参加者にアドバイスをするマーク・オーツ(手前)とジェン・オーツ(奥)。

また一般の参加者に加えて、パックラフトメーカーの人も参加し、彼らの商品をテスト使用できることになっていました。

というのも、主催のセオンが経営するパックラフト・ヨーロッパは、アルパカラフトの中央ヨーロッパにおける公式ディストリビューターだったからです。さらに、スヴィンが代表を務めるアンフィビオ・パックラフトの商品もありました。

ドイツのココペリ・パックラフトのディストリビューターであるマークは、製品を持ってくる予定でしたが、税関でのトラブルのため残念ながらパックラフトを展示することができませんでした。

他にも、ロシアのタイムトライアルというメーカーも参加する予定でしたが、諸事情のため実現には至りませんでした。マーケットにおける新しい顔ぶれの製品をいろいろ見れたら、もっと面白かっただろうと思うと少し残念ではありました。

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ソチャ川のいろいろなポイントで、ワークショップを開催。


参加者が学び、交流し、そして楽しめるプログラム。


去年の開催趣旨に沿って、今年のミートアップもみんながパドリングを楽しみ、経験を共有できる場を設けらるよう、余裕をもってプログラムが組まれていました。

もちろん、セーフティスキルとパドリングスキル習得の必要性を伝えるプログラムも含まれています。そのため、何人かの参加者は自らワークショップを行ないました。

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パドリングの技術講習をはじめ、興味深いワークショップがたくさん。写真の女性がアニカ。

セルフレスキュースキル、スローバッグの投げ方、ホワイトウォーターでの泳ぎ方、応急処置、エディ(※)での漕ぎ方、パドリングのテクニックなど学ぶことができました。

※エディ:岩などの障害物に流れがぶつかり、その下流側に水がとどまり渦巻いている箇所。

毎日いくつものワークショップを行ってくれたオーツ夫妻以外にも、ドイツにあるラフティングガイド会社であるパックラフト・トーレンのアニカは、ソチャ川の上流で川下りの練習にたくさんの時間をかけて教えてくれました。

またドイツのラフティングガイド会社、ランド・ウォーター・アドベンチャーズのセバスチャンは、パックラフトによる遠征および悪天候でのパッキングについてレクチャーをしてくれて、これは私も実際に聞いたのですが非常におもしろかったです。


イベントでは久しぶりに会う仲間だけでなく、ワークショップに参加しながらあたらしい仲間もできた。

ワークショップはいくつもが同時に行なわれるので、どれを聞くかは参加者が何を知りたいのかによるのですが、どのワークショップもおもしろそうで本当に選ぶのが難しかったです。ダウンリバーもレベル別に少人数のグループに分かれ、ソチャ川のさまざまな場所で行なわれました。

夕食の後は毎晩、交流会をともなったプログラムがあります。初日は、2人のプレゼンテーションがありました。

自らの冒険や旅について情報発信しているアウトベンチャラスのガブリエルはグリーンランドでの経験を話してくれ、私はグランドキャニオンでのパックラフティング・トリップについて話しました。

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プレゼンテーションや映画の上映もあった。

2日目の夜は、リビング・リバー財団(ベルリンにオフィスを構える環境団体)のトビアスが川の保全の重要性を訴える映像を何本か見せてくれました。そして最終日はバルカン・リバー・ディフェンスの設立者の1人であるロック・ロズマンによる、映画の上映とトークがありました。

彼の団体は、メンバーの多くがパドラーで、ダム建設によって脅かされる川の保護に取り組んでいます。近年では、2900近くのダムがバルカン半島に建てられる予定だそうです。ここは、ブルー・ハート・オブ・ヨーロッパ(ヨーロッパの青い心臓)と呼ばれるほど自然豊かなエリアなのです。

このミートアップでは、参加登録費や寄付で集まったすべてのお金(今回は集まった金額は2000ユーロ以上でした)をこうしたNGOへ寄付します。環境保護への貢献も、このミートアップ開催の重要なテーマです。


また来年!


開会式から3日後、私たちは急いで帰りのパッキングをしていました。気温は3度、激しく降る雨。天気予報によれば、これから雪が降る可能性もあるとのこと。雪が降り始めれば、山の中で立ち往生してしまうかもしれません。

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今回宿泊したキャンプ場。

翌日には飛行機で自宅に帰らないいけないので、当然私はそんなことになりたくありませんでした。昨日までテントでいっぱいだった広場もいまではほとんど跡形もありません。ほとんどの人はパッキングをを終えて帰ってしまっていました。残っていた何人かは、グループテントのなかで肩を寄せ合っていました。

彼らに別れを告げ、60キロ南にある海を目指し、ミートアップ会場から出発しました。この刺激的な数日間は悪天候ながらも、面白い経験と新しいスキルを学ぶ可能性をたくさん感じることができました。

旧友に再会したり、新しい出会いにも恵まれました。来年のミートアップでは、とにかく良い天気で迎えられるのを期待するばかりです。


また来年も参加したい、すばらしいイベントだった!

(English follows after this page)
(英語の原文は次ページに掲載しています)

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1978年ロシア生まれ。ここ17年間はオランダにある応用科学の大学の国際旅行マネジメント課にて、アウトドア、リーダーシップ、冒険について教えている。言語、観光、サービスマネジメントの学位を持っていて、研究は、アウトドアでの動作に電子機器がどう影響するか。5年前からパックラフティングをはじめ、それ以来、世界中で川旅を楽しんでいる。これまで旅した国は、ベルギー、ボスニア、クロアチア、イギリス、フィンランド、フランス、ドイツ、日本、モンテネグロ、ノルウェー、ポーランド、カタール、ロシア、スコットランド、スロバキア、スロベニア、スウェーデン、オランダ。その他のアクティビティは、キャンプ、ハイキング、スノーシュー、サイクリングなど。

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