TRAILS REPORT

パックラフト・アディクト | #07 DIY PackraftでパックラフトをMYOGしてみた(購入編)

2018.09.26
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文:根津貴央 写真・構成:TRAILS

パックラフトに限らず、何かしらのアクティビティのアディクト(中毒者)であれば、ハマればハマるほど、こんなギア、あんなギアが欲しいと思うようになる。さらには、自らカスタムしたり、イチから作ったりするようになる。そう、MYOG(Make Your Own Gear)である。

そこには、万人向けの汎用品じゃなくて自分仕様にして使いやすくしたいという人もいれば、自分が使う道具をより深く知りたいという人もいるだろうし、たんに作るのが楽しいという人もいるだろう。

まあ、理由はどうであれ、とにかくMYOGっていうのは楽しいものなのだ。

ただ、TRAILS crewの誰もが、パックラフトをMYOGしようなどとは思ってもみなかった。パックラフトは買うもの、そんな思い込みを持っていた。

ところが、いまやパックラフトもMYOGできる時代らしい。そんなホントかウソかわからない情報を耳にした僕たちは、さっそく試してみることにした。

せっかくなので、その製作過程をすべて公開したいと思う。パックラフト・アディクトによるパックラフトの自作体験記(全3回)。第1回目は「購入編」として、MYOGとは? から、自作キットの購入方法までを紹介する!


そもそもMYOGってなんだ?


MYOGっていうのはMake Your Own Gear、つまりはギアを自作するということ。 DIY(Do It Yourself)のアウトドアギア版とでも言えばいいだろうか。

今の時代、わざわざ自分で作らなくても、アウトドアショップに行けば必要なものは何でも手に入る。では、なぜわざわざMYOGをするのか。ハイカーに限っていうと、有名なクライマーでありハイカーでもあるレイ・ジャーディンの存在が大きい。

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レイ・ジャーディンの名著。1992年に『PCT Hiker Handbook』を出版し、それが2000年に『Beyond Backpacking』、2008年に『Trail Life』に改題された。

1980年代後半から90年代にかけて、彼はアメリカの三大トレイル(※)をスルーハイクし、自らの経験にもとづくハイキングの方法論を本にまとめた。それが『Beyond Backpacking』(初版は『PCT Hiker Handbook』。現在は『Trail Life』として販売されている)だ。彼のライトウェイトでシンプルなスタイルは、後に誕生したウルトラライトハイキングのベースにもなっている。

その彼が、ハイカーに対して強く勧めているのがMYOGなのだ。自分に合った道具を自分で作る。彼の方法論は『レイ・ウェイ』と呼ばれ、多くのハイカーに影響を与えた。

※アメリカ三大トレイル:アパラチアン・トレイル(AT)、パシフィック・クレスト・トレイル(PCT)、コンチネンタル・ディバイド・トレイル(CDT)のこと。

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MYOGの第一歩としてよく取り上げられるのが、空き缶を利用したアルコールストーブ。アウトドアイベントのワークショップのテーマになることも多い。

とはいえ、イチから作るのはなかなか難しいもの。そこで彼は『Ray-Way BackPack Kit』や『Ray-Way Tarp Kit』をはじめ、自作キットも販売。これをきっかにMYOGにハマった人も多い。

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編集長の佐井が、約10年前に購入した『Ray-Way Tarp Kit』。

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『Ray-Way Tarp Kit』で作ったタープを、タスマニア島のオーバーランド・トラックをハイクした際に実戦投入(2011年)。


パックラフトも自作できる !?


僕(筆者・根津)は1年前くらいからパックラフトをはじめたのだが、しばらくは人から道具を借りて楽しんでいた。でも、今年のはじめ、そろそろマイパックラフトを買おう!と決心したときに、たまたま友人から教えてもらったのが、このサイト(DIY Packraft / https://www.diypackraft.com)だった。

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パックラフトの自作キットの販売だけでなく、作り方をはじめとしたハウツーものの掲載や、自作パックラフターたちのフォーラム運営も手がけている。https://www.diypackraft.com

アルパカラフトやココペリと並ぶパックラフトブランドかとばかり思っていたのだが、よくよく見ると、パックラフトの自作キットブランドだった。

いまや、パックラフトもMYOGする時代か!と驚いた。ハイカーの端くれである僕は、「MYOGすることでパラダイムシフトしよう!」と説いていたレイ・ジャーディンにならい、これは買うしかないなと思った。

でも、ハイキングギアならまだしも、さすがに川下りのギアを自作するのはヤバイんじゃないか? 危険なんじゃないか? そう思い、悩んだすえに信頼性をとってアルパカラフトを購入したのだった。

ところが、その話を聞いた編集部のパックラフト・アディクトたちは、パックラフトを自作するというロマン?に魅せられてしまい、ほどなくしてポチっていた(笑)。

当初は、MYOGするならやっぱりウルトラライトっしょ!ということで、『Ultralight DIY Packraft Kit(フロア生地40デニール・総重量650グラム)』を購入しようとしたのだが、在庫がない。メールで問い合わせたら、今期は売る予定がないとのこと。

それで泣く泣く少し重たい『DIY Packraft Kit:V3 Deluxe(フロア生地420デニール・総重量1.7キログラム)』のマルチカラーをオーダーした。


わずか11日で商品到着!


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宅配業者から手渡されたのがこれ。厚手のビニールで包んだけのシンプルな包装。

まあ商品がオフィスに届くまで1カ月くらいはかかるかなあと思って気長に待っていたら、たった11日で届いた。関税も1000円ぽっきり。

あれ? なんだやけにスムーズじゃないか。海外輸入といえばハプニングがつきもの!と思っていただけに、ちょっと拍子抜けというか、いい意味で予想を裏切られた。

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梱包された状態での重量は2997グラム。これでも充分軽い。

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サイズは、横幅47.5センチ、縦幅8.5センチ、厚さ9センチ。

さっそく、梱包を解いて、キットを広げてみた。

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これがキットの全パーツ。一見、これだけ?と思ってしまう。

意気揚々と開封してみたものの、中身はただの布切ればかり。まあ、キットなのだからそりゃそうなのだが、まったく完成イメージがわいてこない……。

ちなみに、完成形はこれ!ネットでオーダーした翌日、先方の担当者であるMatt(マット)から「どんなカラーがいい?」と聞かれたので、こんなパターンをお願いした。

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これが手書きの完成図。果たして、このイメージ通りに作ることができるのか……。

とりあえず、問題なく商品は届いた。いよいよこれからがMYOG本番!ハイキングギアなら基本的にミシンを使えばいいが、防水性が肝となるパックラフトとなるとそうもいかない。一体どうやって作るのか。そしてどのくらいの時間がかかるのか。

その模様については、次回の『製作編』で紹介するのでお楽しみに!

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佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

[about TRAILS ]
TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。有名無名を問わず世界中のTRAILSたちと編集部がコンタクトをとり、旅のモチベーションとなるトリップレポートやヒントとなるギアレビューなど、本当におもしろくて役に立つ情報を独自の切り口で発信していきます!

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