TRAILS REPORT

信越トレイル トレイルメンテナンスツアー2019 | (前編)ボランティアが支えつづけるトレイル

2019.08.16
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文:根津貴央 写真・構成:TRAILS

今年も、TRAILS & Hiker’s Depotで、信越トレイルのトレイルメンテナンスツアーを開催しました。

「トレイルを歩かせてもらっているハイカーとして、トレイルを支え、守りたい」。そんな想いがきっかけで2013年にスタートし、今年でこのツアーも7年目となります。

2008年に全線開通し今年で11年目の信越トレイルは、当初からボランティアベースの整備の仕組みを構築し、それをずっと維持してきた日本のロングトレイルのパイオニア。こうやって僕たちが整備に参加できるのも、信越トレイルの受け入れ体制が整っているからこそなのです。

ボランティアによって支えられてきた信越トレイルは、今回の整備のタイミングからドネーション(寄付金)の制度をスタート。そんなトピックスも含めて、トレイルメンテナンスツアーのレポートをお届けします。

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2013年に全線開通した信越トレイルは、今年で11年目を迎えた。



ボランティアによって維持されている信越トレイル



先日、信越トレイルがスタートさせた新たな取り組み『整備協力金』。これはいわゆるドネーション(寄付金)制度で、トレイルの維持と環境保全を目的にはじめたもの。

信越トレイルの力になりたいと思っても、場所や時間の都合もあって誰もが整備に参加できるわけではない。でも、この制度ができたおかげで、一個人が、信越トレイルのサイトを通じて簡単にドネーションをして信越トレイルを支えることができるようになった。

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整備協力金に申し込むと、信越トレイルオリジナルタグがもらえる。表面は信越トレイルのロゴマーク、裏面にはガイドラインが記されている。

ドネーションをすると、信越トレイルオリジナルタグをもらうことができる。アメリカのロングトレイルにも同様の取り組みがある。信越トレイルで働くスタッフのなかには、アメリカのロングトレイルのスルーハイカーがいて、彼らが現地で学んだこのドネーションの制度を、信越トレイルでも実践することになったそうだ。

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バックパックにタグをつけて、トレイルを歩こう。

ドネーション制度は、アメリカのトレイルでは昔から一般的で、ネットから気軽に支援できるようになっている。しかも寄付して終わりではなく、トレイルのメンバーとして認定され、定期的に会誌も送付。そのトレイルについてより深く理解し、興味関心を持ちつづけられる仕組みになっているのだ。



信越トレイルを歩き、トレイルタウン(飯山)を楽しむ(DAY1)



TRAILSとHiker’s Depotがトレイルメンテナンスツアーをはじめた2013年当時は、トレイル整備だけを手がける日帰りのイベントだった。

でも、より信越トレイルとそれを取り巻くトレイルカルチャーを体感するためには、ハイキングもしたいし、トレイルタウンにも足を運びたい。

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寺町を歩くハイカーたち。Photo by Hiroaki Ishikawa

アメリカのロングトレイルも、トレイル沿いにあるトレイルタウンは、トレイルとワンセットで語られることが多いし、ロング・ディスタンス・ハイキングにおいては、その町自体も大きな楽しみである。

そこで2017年から、トレイル & トレイルタウンを楽しむ日(DAY1)と整備の日(DAY2)の1泊2日のツアーになった。

今年は、DAY1でまず赤池〜沼の原湿原〜希望湖という、ブナと湿原が堪能できるエリアのセクションハイキングを楽しんだ。

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この日は小雨が降っていたが、それがさらにブナの瑞々しさを際立たせていた。

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沼の原湿原は、春〜夏にかけて、水芭蕉やアヤメ、ニッコウキスゲなどでいっぱいになる。

その後、トレイルタウンである飯山の寺町へ。ここは、もともと城下町として栄えていて、現在も22の寺社が存在し、雪国の小京都とも呼ばれるほど。

このエリアを代表する真田家ゆかりの「正受庵」や「寺めぐり遊歩道」を楽しんだ。トレイル沿いの町のヒストリーを知ると、トレイルへの関心がさらに増していく。

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親鸞のお弟子さんが開山したという「称念寺」の境内。

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真田家ゆかりの「正受庵」。



重機は使用せず、人力で整備してトレイルをつくっていく(DAY2)



DAY2はメンテナンスデイ。冒頭に書いたように、整備に携わるようになったのは、ハイカーとしてトレイルに貢献したいという想いがきっかけ。そして徐々に他のハイカーも集めて参加するようになった。

僕たちは、ロングトレイルというものを、持続的なものとして、そしてカルチャーとして丁寧に耕していきたいという思いがあり、このトレイル整備についても、一過性のもので終わらせない方法を模索しながらつづけてきた。(詳しくは『ロングトレイルの作り方(後編)/ 信越トレイルのこれから』をご覧ください)。

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今回は、関田峠〜宇津ノ俣峠までを歩きながら整備した。

僕たちもこの7年間で、トレイルの階段づくり、道標立て、草刈りなどいろいろな工程を体験させてもった。

信越トレイルは『生物多様性の保全』を理念に掲げ、地元の自然を大切にすることが基本スタンスであるため、整備においても重機は使用せず人力でなるべく現地にある倒木や落ち葉などを利用しているのが特徴だ。

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剪定バサミや小型ノコギリを使いながら、枝葉を刈っていく。

今年は、このセクション(関田峠〜宇津ノ俣峠)の第1回目の整備ということで、トレイルにはみ出た枝などを払う作業を手がけた。各自、剪定バサミと小型ノコギリを持ち、6〜7時間かけて歩きながら、まずは人が通れるトレイルにした。

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時折、倒木もあり、みんなで力を合わせて撤去する。

さらに今回は、花立山山頂にある『加藤則芳さんを忍ぶケルン』の復旧も手がけた。ここには、信越トレイルの立役者の一人である加藤則芳さんの遺骨の一部が散骨されている場所。

豪雪地帯ゆえ、毎年ケルンが崩れたり埋没してしまったりする。今回、みんなで石を持ち寄り、加藤則芳さんに思いを馳せながらメッセージを書いて積み直した。

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ケルンに使う石にメッセージを書き込むハイカー。

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花立山山頂にある『加藤則芳さんを忍ぶケルン』。

来年2020年、信越トレイルは苗場山までの延伸が予定されている。待ち遠しいハイカーもたくさんいることだろう。

ルートが決まれば、当然ながらその行程をトレイルとして完成させる必要が出てくる。その「新しいトレイルをつくる」という行為にも、ハイカーが参加できるようになると嬉しいし、長らく整備にかかわってきたTRAILSとしても、ぜひそこに参加したいと考えている。

次回、後編では、信越トレイルに深くかかわるスルーハイカーたちの話を中心に、ハイカーから見た信越トレイルおよび整備について紐解いていきたいと思います。

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トレイルズ

トレイルズ

佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

[about TRAILS ]
TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。有名無名を問わず世界中のTRAILSたちと編集部がコンタクトをとり、旅のモチベーションとなるトリップレポートやヒントとなるギアレビューなど、本当におもしろくて役に立つ情報を独自の切り口で発信していきます!

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