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MY TRIP BOOKS | 20人の旅人が選ぶ「旅欲を強烈に刺激した本」 #01

2019.10.09
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旅への強烈な憧れや欲求とは、どのように生まれてくるのか。自分らしい旅のスタイルとは、どのようにカタチ作られていくのか。

その秘密をのぞいてみたくて、TRAILS編集部がいつも刺激を受けている旅人20人にコンタクトをとり、こんな質問を投げかけてみました。

「大自然の中を旅する欲求を、強烈に刺激した本は何ですか?」

気づけばTRAILS編集部には、最前線でハングリーに遊ぶ人たちが刺激を受けた旅の本が、ずらりと並んでいました。この珠玉のブックリストのなかに、その人の旅の本質をかいま見て、僕たちはまた「旅、行きてぇ」とザワつき始めるのです。

そんな旅人たちがセレクトしてくれた本を、全4回にわたって公開していきたいと思います。これらの本によって、「MAKE YOUR OWN TRIP = 自分の旅をつくる」を実践する人が増えてくれたら、僕らとしては最高にうれしいです。

第1回目の今回は、北野拓也さん(Sky High Mountain Works)、舟田靖章さん(Triple Crowner)、佐々木拓史さん(patagonia)、久保勝也さん(Guru’s Cut & Stand)、コンスタンティン・グリドネフスキーさん(HIKE VENTURES)の5名のMY TRIP BOOKSを紹介します。


北野 拓也(Sky High Mountain Works)


トップバッターは、SHMWのタクさん。僕らは、いつだって彼が発信するスタイルにシビれ、自由で一途な姿勢に刺激を受けてきた。

そのタクさんが選んでくれたのは、クライミング、マウンテンラニングのクラシックと呼べる本だ。流行り廃りや周囲の目に一喜一憂することなく、つねに自分基準でエキサイティングかどうかをまっすぐに追いかける。このブレないスタイルが、また僕らを刺激する。

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『日本のクラシックルート アルパインクライミングルート集』
登山から積雪期登山、岩登りを志す者は、間違いなく誰しも憧れて目指す、日本の名クラッシックルートの数々。多くの写真とルート図、紹介文を熟読し、地形図と見比べるだけでモチベーションが上がらないわけがない。発売から20年経った今でもチェックし続ける名著。(北野)

『ランニング登山』 下嶋渓
登山からランニングという強力な機動力というスタイルを手に入れようと、山岳耐久レースなどに参加した頃から読み始めた、自分にとってのバイブル。80年代という時代に、当時の道具でマウンテンランニングを実践して、自身の身体の研究を続けた姿勢が素晴らし過ぎる。(北野)


舟田 靖章(Triple Crowner)


舟田くんにインタビューしたときに彼が口にした、「ロングトレイルは生活の実験の場」という言葉が忘れられない。舟田くんは、もしかしたら日本人で初めて本当の意味でロング・ディスタンス・ハイキングと、ウルトラライト(UL)を結びつけた実践者かもしれない。

そんな舟田くんが本を選ぶ視点には、文学的な豊かさがあり、そして真理に近づきたいという強烈な知的欲求を感じる。

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『遊歩大全』 コリン・フレッチャー
バックパッキングの古典、定番中の定番ですが、やはり私にとってこの本との出会いは大きかったです。自然の中を徒歩で旅をしたい、でも日本的な登山は何か違う。そんな風に思っていた時に出会って、「まさしくこれだ」とのめり込んで読みました。登山道具に関する記述は少々古いですが、いたるところに散りばめられたアメリカのバックパッキングの思想やエピソードは何度読んでもワクワクします。(舟田)

「パパラギ」 エーリッヒ・ショイルマン
約100年前に出版されたサモア人による西洋文明批判演説集。お金を「丸い金属と重たい紙」、西洋人の住居を「石の箱」などと呼び一見滑稽に聞こえ微笑ましくもあるのですが、本当に滑稽なのは西洋人=パパラギの方。何が必要で必要ないのか、本当に大事なものは何なのか。素朴ゆえ常識に囚われないサモア人の鋭い西洋文明批判は現代の我々にも通用するものばかりです。(舟田)


佐々木 拓史(patagonia)


今までに90カ国以上もの国を旅してきた拓史さん。彼が選んでくれた本からは、「冒険」と「旅」に対するまっすぐな欲望が感じられて、とても気持ちがよい。その欲望に常に正直であり続けることこそ、彼の旅のエネルギーの源泉となっているのだろう。

拓史さんは、今もパタゴニアに勤めながら、毎年アウトドアトリップに出かけ続けている。

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『荒野へ』 ジョン・クラカワー
『Into the Wild』という名で映画化もされました。若き日に特有の、ただただ今と違うどこかに行きたい、という主人公の焦燥感が自分の心を揺さぶります。自分はこのままでいいのだろうか、自分に正直に生きているだろうか、ここにとどまっているべきではないのではなかろうか、と思うこと然り。(佐々木)

『旅をする木』 星野道夫
旅に行くときに、何か迷ったらひとまずバックパックに忍ばせるのがこの本。どのストーリーも読みやすく、それでいていつも原点に戻してくれるかのような感覚になります。深いです。「ぼくたちが毎日を生きている同じ瞬間、もうひとつの時間が、確実に、ゆったりと流れている。」このもうひとつの時間を常に感じながら生きていきたい。(佐々木)


久保 勝也(Guru’s Cut & Stand)


久保っちは、今回のなかでは最もジャンルの異なる旅人かもしれない。スケーターである彼は、街も自然も分け隔てなく、旅の行き先としてチョイスする。また雑誌『BRUTUS』にも大きく掲載された「スケートキャンプ」は、彼がクルーと一緒に自然のなかで遊ぶスタイルのひとつだ。

『camp 4』の写真集を出した渋谷ゆりさんは、もともとはNYのスケーターを撮るフォトグラファーだった。きっとスケーター的な感性と、ハイカーやクライマー的な感性との間には、共通するものがあるのだ。久保っちは、それを感じさせてくれる本を教えてくれた。

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『UNDER EXPOSURE JOURNAL』 渋谷ゆり
渋谷ユリさんのことは、NYCのスケーターを撮った写真で知って、それ以来ZINEや雑誌でチェックしていました。この本は『WARP magazine』の連載が一冊にまとまったもので、ニューヨークのブルックリンバンクに集まるスケーターや、ジャマイカの奥地にあるラスタファリアンのコミューンなどで出会ったいろんな人や場所を、写真と文で感じることのできる本。I love Jamaica!旅と写真はステキな出会いが生まれそう!カメラを持って旅に出たい!そう感じさせてくれる一冊。(久保)

『DIY / Underground Skateparks』 リチャード・ギリガン
既存の建造物を利用し、誰も使わない空きスペースを、時に無断借用して作られたDIYのスケートスポットを、ピックアップした写真集。自分も海外旅行には必ずスケートボードを持って行き、海外では現地のスケート仲間と一緒に過ごすことも多い。この本は、世界のいろんなスポットを同じ温度で撮っている写真に感動する。やはり旅によって、その人のオリジナリティが育つんだなと実感できる。(久保)


コンスタンティン・グリドネフスキー(Hike Ventures)


ロシア人であるコンスタンティンは、自分たちにはない自然観があるのだな、と折につけ感じる。そしてそんな自然観をもっていることを、とっても羨ましく思うことがある。

今回、彼が教えてくれた『Nomad』の写真集も最高にかっこよく、すでに何度も見返している。そして『デルス・ウザーラ』。日本人にとっては黒澤明による映画を思い浮かべるが、これを小さな頃に本として読んでいたのだな、と思う。そんなことが羨ましいのだ。

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『Nomad』 Jeroen Toirkens
オランダ人写真家のJeroen Toirkensによる写真集。彼は、北半球のなかで、多くの自然が残っている辺境のエリアを何度も旅をしながら、これらの写真を撮りました。彼は写真を通じて、伝統的な生活文化のなかで生き抜く、現代のノマドの暮らしについて語っています。この写真集を見ていると、自分もその場所に行って、このような人々がどのように自然とともに暮らしているのか、自分の目で見てみたいとと思うのです。そして、こういった生活が世界からなくなってしまう前に、自分もこのような暮らしをできるようになりたいと思うのです。(コンスタンティン)

『デルス・ウザーラ』 ウラジーミル・アルセーニエフ(長谷川四郎による邦訳もあり)
この本は私が小さい頃に、初めて読んだ「まじめな」本です。私はまだ文字を読めず、父にお願いして、この本を読んでもらいました。この本は、ウラジーミル・アルセーニエフが、彼のガイドであり友人であるデルス・ウザーラと、シベリアの僻地にある大自然のなかで冒険をする話です。自分が暮らす土地からずっと遠く離れた場所に存在している自然。そしてその自然のなかで暮らす民族の生活に、私は惹きつけられました。それは私が知っていた世界とは、まったく違ったものだったのです。父は私に本を読んでくれて、私がわからないことを説明しくれました。そうやって父がかわいがってくれたことも、小さい頃の素敵な思い出です。(コンスタンティン)


TRAILS INNOVATION GARAGE


今回紹介した本は、すべてTRAILS INNOVATION GARAGEに置いてあります。ここにあるのは、TRAILS編集部が厳選した1000冊のライブラリー。

この連載で登場してもらった人たちには、「大自然の中を旅する欲求を、強烈に刺激したお気に入り本」を5冊選んでもらっていて、ここに掲載しきれなかった本も展示中です。

TRAILS INNOVATION GARAGEでは、そのすべてを見たり読んだりすることができます。「MAKE YOUR OWN TRIP」の欲求を刺激しに、ぜひ遊びに来てください。

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次回「#02」では、新たな旅人5人が登場しますので、お楽しみに。

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佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

[about TRAILS ]
TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。有名無名を問わず世界中のTRAILSたちと編集部がコンタクトをとり、旅のモチベーションとなるトリップレポートやヒントとなるギアレビューなど、本当におもしろくて役に立つ情報を独自の切り口で発信していきます!

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