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MY TRIP BOOKS | 20人の旅人が選ぶ「旅欲を強烈に刺激した本」 #03

2019.10.16
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旅への強烈な憧れや欲求とは、どのように生まれてくるのか。自分らしい旅のスタイルとは、どのようにカタチ作られていくのか。

その秘密をのぞいてみたくて、TRAILS編集部がいつも刺激を受けている旅人20人にコンタクトをとり、こんな質問を投げかけてみました。

「大自然の中を旅する欲求を、強烈に刺激した本は何ですか?」

気づけばTRAILS編集部には、最前線でハングリーに遊ぶ人たちが刺激を受けた旅の本が、ずらりと並んでいました。この珠玉のブックリストのなかに、その人の旅の本質をかいま見て、僕たちはまた「旅、行きてぇ」とザワつき始めるのです。

これらの本をきっかけに、「MAKE YOUR OWN TRIP = 自分の旅をつくる」を実践する人が増えてくれたら、僕らとしては最高にうれしいです。

第3回目の今回は、土屋智哉さん(Hiker’s Depot)、桑原慶さん(Run boys! Run girls!)、ハミルトン・シールズさん(Mikkeller Tokyo)、リズ・トーマスさん(ロング・ディスタンス・ハイカー)、佐井和沙(TRAILS)の5名のMY TRIP BOOKSを紹介します。


土屋智哉(Hiker’s Depot)


TRAILS読者のみなさんにとっては、もはや説明する必要のない、UL(ウルトラライト)ハイキングの伝道師であるHiker’s Depot(ハイカーズ・デポ)の土屋さん。

日本のULシーンの土壌を作り支えてきた彼のチャレンジと覚悟に対して、僕らは常に刺激を受け続けてきた。その土屋さん個人のアウトドア歴のエッセンスを抽出してくれた、今回の本のチョイス。それまでにないあたらしい世界を探し、そこに魅せられ、チャレンジしてきた彼の半生をかいま見ることができる。

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『サハラに死す』 上温湯隆
登山や野外活動への熱望を決定付けたマイオールタイムベスト。大学探検部時代に読み、探検や旅への初期衝動を激しいほどに駆り立てられた一冊。何かせずにはいられなくなり、洞窟探検に没入するきっかけにもなった。これほどピュアな行動者をわたしは知らない。何の見返りも賞賛も求めず、ただひたすらサハラを求める姿はSNS時代の今から見るとひどく前時代的かもしれないが、だからこそ旅すること、自然の中に入っていくことの根本が熱を持って伝わってくる。(土屋)

『空白の五マイル』 角幡唯介
10年以上続けた洞窟探検の一線から身を引き、ULハイクの世界に傾倒、ハイカーズデポを興して2年後、読みながら敗北感に打ちひしがれた一冊。実は同じエリアで洞窟探索を計画し、出発直前に中国当局から突然の入域禁止を言い渡されて諦めた経験があったのです。そこで角幡氏のように単独で潜入する熱意が自分にはなかったのだと、ある種の不甲斐なさを突きつけられたという意味での敗北感。地理的探検を扱う最後の金字塔。読みながらつい自己投影してしまう。やっぱり自分はこうした活動が好きなんだと再認識させられる。(土屋)


桑原慶(Run boys! Run girls!)


慶さんはトレイルランニングにものすごいスピードとエネルギーでのめり込んでいた。そしてそれまで東京にはなかった、トレイルランニング&ランニング専門店(Run boys! Run girls!)をあっという間に立ち上げてしまう。いまや東京を代表するトレイルラン・ショップとなり、独自のコミュニティができている。

慶さんの人生をも変えてしまった「トレイルランニング」。その存在の大きさを感じることのできる2冊を選んでくれた。

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『The Little Book of Squares』 ジョー・グラント
マウンテンランナー、ジョー・グラント(Joe Grant)の写真集。2015年instagramに1日1枚投稿された写真から52枚をセレクトしていますが、写真集では「即時的なリアクションや、満足、理解の対極にある何かを呼び覚ましたい」というアーティストJonOneのテキストを紹介。Joe自身もその意図を持って撮影した写真たちはとても美しく、心の深いところが揺さぶられて「自然に触れたい」という思いが呼び起こされます。(桑原)

『就職しないで生きるには』 レイモンド・マンゴー
「1960年代、わたしがまだ20代で、炎のような日々をすごし、自由を求めて暮らしたがっていたころ、〈仕事〉というのは憎悪すべき単語だった。今は80年代。わたしも三十路。〈仕事〉は美しい言葉になり、最高の〈あそび〉になった。仕事こそいのち。それ自身が報酬だ。仕事がいいものなら、そう感じることができるのだ。これこそ本当の利益だ」このテキストこそがこの本を選んだ理由、つまりトレイルランニングが僕の仕事になり報酬になり生活になったのはこの本のおかげなのです。(桑原)


ハミルトン・シールズ(Mikkeller Tokyo)


「世界で最もクレイジーなクラフトビールを提供する」と謳(うた)うミッケラー東京。仲間のトレイルランナーも集まる店だ。そのオーナーのハミルトンは、ULハイキングのクラシックであるレイ・ジャーディン『Trail Life』が愛読書でもあるのだ。

聞けば、ハミルトンは自然と酒を求める旅を続ける人生を送っており、なるほどとすぐに納得した。彼の独特のスピリチュアルな感覚も、また僕らにもあたらしい視点を与えてくれる。

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『Trail Life』 レイ・ジャーディン
僕をライトウェイト・バックパッキングの世界に導いてくれた本です。この本は、僕の考え方を変えてくれました。森の中ではサバイバルするのではなく、協力することが大事なのだと。以前の僕は森の中で戦うために、救急時に備えてあらゆる道具を持っていく必要がある、と考えていました。『Trail Life』は、自分が自然のなかにいる時間は、自然と「ともにいる」時間なのだと教えてくれました。これによってギア、食料、スキルの捉え方が変わったのです。その影響で自分でMYOG(Make Your Own Gear)にトライしたりもしたのですから!(ハミルトン)

『The Myth of Sisyphus』 アルベール・カミュ(邦訳『シーシュポスの神話』)
しんどいハイキングは、精神を消耗させることがあります。このご褒美はあるの?そこに目的はあるの?そうやってハイキングは最高の時間で、その一歩一歩に幸せや喜びがあるべきだ、って僕は考えてしまっていました。素敵な写真を撮って、twitterでそれを誰かに伝えようとしてたのです。その一方で、僕には弱さがあり、ダメなところがあったりします。人生も同じことです。この本は、満ち足りていた生活のなかで起こる、自分の弱さや憂うつや挫折を、ふり払ってくれる本のひとつです。ハイキングしているときに、この本のことを思い出してみると良い気づきがあるはずです。(ハミルトン)


リズ・トーマス(ロング・ディスタンス・ハイカー)


アパラチアン・トレイルの、女性スピード・ハイキングの最速記録も持っていたリズ。しかし彼女は、求道師のようなシリアスな性格ではなく、チャーミングでとても誠実な女性なのだ。

それは彼女のULハイキングに対する姿勢にもにじみ出ている。彼女が選ぶ本からは、基本への誠実さを忘れてはならないことに、いつも気づかされるのだ。

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『Ultralight Backpacking Tips』 マイク・クリルランド
この本は、どうやってUL(ウルトラライト)・バックパッキングを実践するかを、イラストを使いながら説明してくれる本です。シリーズものの本で、この本はその3冊目です。なるほど!と思うTIPSや裏ワザがたくさん載っています。この本を書いているのは、国立アウトドア指導者養成スクールで、インストラクターとガイドを務めるマイク・クリルランドという人です。本当に楽しみながら読める、面白いハウツー本です。(リズ)

『Walden』 ヘンリー・ディヴィッド・ソロー(邦訳『ウォールデン 森の生活』)
手垢のついた表現ですが、初めてこの本を読んだとき、ミニマリストであることの喜びと、そのシンプルな美しさに気づかされました。私はこの本を読んだのは、大学を卒業するときです。ソローが説明している、より少ないモノで生きられるということ、また社会一般の思い込みを否定することは、その頃の自分にフィットするものでした。以前は私はアウトドアや冒険に関する本ばかりを読んでいました。そのようななかにあって、ソローの深い哲学やその自然と協調する生活は、私が自然との関わり方を変える上で、とても深い意味を持つものになりました。(リズ)


佐井和沙(TRAILSエディター)


TRAILS編集部crewの佐井和沙は、もともと世界を自由に旅するバックパッカーだったが、いまや2児の母でもある。

そんな彼女が選んだ本は、家族で旅を続けるモチベーションを与えてくれる本、という特徴が色濃く出ている。そして家族ができても変わらずに、ウィルダネスの旅や原住民族がつむいできた自然観などへの憧れを、ずっと抱き続けられるエネルギーに溢れている。

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『Small Feet, Big Land』 エリン・マキトリック
家族で旅を続けるモチベーションを与えてくれた、私の人生におけるとても大事な一冊。1人目を出産した後に生活が一変した。紙オムツと哺乳瓶を抱えながら、今までと変わらずに旅をすることができるのだろうか、と不安になっていた。著者のエリンは、2歳児にとってはアラスカのウィルダネスにいるより、混雑した駐車場にいる方が危険だ、と言っている。また自分も慣れてないことを、子供と一緒にやることは難しいとも教えてくれた。不安ばかりが先立ち、旅に行くことを困難にしているのは自分自身なんだ、と思えた瞬間に何かが変わった。(和沙)

『The North AmericanIndeians』 エドワード・S・カーティス
100年以上前に写真家エドワード・カーティスがネイティブ・アメリカンの実生活の中に入り、北極圏からフロリダに至るまで、80以上の部族の知られざる生活を約30年かけて撮り続けた写真集。辞書並みに分厚い本なのに、どの写真も息を呑むほど美しい。生と死が共存している神秘性、それを圧倒的なスケールで包み込む大自然。彼らの住居、衣類はもちろん、焼けた肌、透き通った眼差しが、野生を感じさせてくれる。自分の根底にあるルーツや感覚を再確認しながら次の旅のモチベーションになっている。(和沙)


TRAILS INNOVATION GARAGE


今回紹介した本は、すべてTRAILS INNOVATION GARAGEに置いてあります。ここにあるのは、TRAILS編集部が厳選した1000冊のライブラリー。

この連載で登場してもらった人たちには、「大自然の中を旅する欲求を、強烈に刺激したお気に入り本」を5冊選んでもらっていて、ここに掲載しきれなかった本も展示中です。

TRAILS INNOVATION GARAGEでは、そのすべてを見たり読んだりすることができます。「MAKE YOUR OWN TRIP」の欲求を刺激しに、ぜひ遊びに来てください。

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次回「#04」では、連載のラストを締めくくる旅人5人が登場しますので、お楽しみに。

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佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

[about TRAILS ]
TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。有名無名を問わず世界中のTRAILSたちと編集部がコンタクトをとり、旅のモチベーションとなるトリップレポートやヒントとなるギアレビューなど、本当におもしろくて役に立つ情報を独自の切り口で発信していきます!

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