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リズ・トーマスのハイキング・アズ・ア・ウーマン#24 / スルーハイカーは冬に何をしているの?(前編)ハイカーの冬の仕事

2020.02.19
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(English follows after this page.)

文:リズ・トーマス 写真:リズ・トーマス、ナオミ・フデッツ、ポール・マグナンティ、ジョン・カー、ダンカン・チェウン、アーレット・ラーン 訳:トロニー 構成:TRAILS

ロング・ディスタンス・ハイキングを経験してしまったハイカーの多くは、また次の旅に出たいと渇望するようになります。しかしロング・ディスタンス・ハイキングを毎年つづけていくことは、簡単ではありません。

そこでリズをはじめとしたアメリカのハイカーたちが、どのように旅と仕事の生活を両立させているのか。旅を優先した生き方の実践方法を聞いてみました。

「ロング・ディスタンス・ハイカーは、オフシーズンの冬は、みんな何をしているのか? どんな生活を送っているのか?」

ロングトレイルの本場アメリカにおいて、一般的にスルーハイクといえば、夏を中心とした無雪期に行なうもの。そしてアメリカには、リズをはじめ毎年のようにスルーハイクをしているハイカーがいます。では、冬はどうしているのか? どうやって旅と生活の資金を稼いでいるのか?

前編では、夏にスルーハイクを楽しむために冬に仕事をする2組が登場。後編では、倹約生活を送るハイカーと冬のスルーハイクに挑むハイカーを紹介します。

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講演後に、お客さんのリスクエストで著書にサインをするリズ。


夏にスルーハイクをするために、緻密にプランニングしています。(リズ・トーマス)


毎年夏にハイキングをするスルーハイカーである私に、冬に何をしているのか? どうやってハイキング生活をまかなっているのか? と多くの人が尋ねます。

私がハイキングをつづけられるのは、ただ運がいいだけでなく、綿密な計画を立てて戦略を練ることができるからだと思います。

というのも、私が下す決断はすべて(「どんな仕事をするのか」から「新しい服を買うべきか」にいたるまで)、「この決断によって、来年のスルーハイクがやりやすくなるのか、それとも困難になるのか?」につながっているのです。

毎年ハイキングをしている多くの人たちと同じように、私も独立したプロワーカーとして働いています。仕事はひとつの会社ではなく、プロジェクトごとに紐付いたものです。

どのようなプロジェクトやクライアントと一緒に仕事ができるかにもよりますが、他の年に比べて貯金しやすい年もあります。だから、たくさんハイキングできる年もあれば、数週間しかハイキングできない年もあるのです。

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著書『LONG TRAILS』の販促活動も大切な仕事です。

冬の間、私の仕事の大半は執筆です。『Backpacker Magazine(バックパッカー・マガジン)』のような雑誌のために記事を書いたり、もっと大きな、たとえば私の著書『LONG TRAILS:Mastering the Art of the Thru-hike』のような執筆プロジェクトに取り組んだりしています。記事や本が出版されると私の仕事は終わり、外に出て遊ぶことができます。

最近では、自分のギアレビューサイト「Treeline Review(ツリーライン・レビュー)」でも記事を書いています。ハイキングとギアは私が書きたいテーマなので、仕事とハイキングを組み合わせられることも多いのです。

また、大学や企業、クラブなどにおいて、チャレンジを乗り越え、リスクを恐れず、勇気を持ち、そして自分の成長について学ぶことを勧めるような講演も行なっています。

プレゼンテーションでは、私がハイキングを通して得たリアルな経験と、それらの挑戦が私に教えてくれたことを語ります。ハイキングで得た教訓は、仕事や私生活にも通じることが多いのです。

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授業や講演では、スルーハイクを通じて得られた人生に役立つ学びを、わかりやすく伝えています。

さらに、バックパッキングについては、ワークショップや授業でも指導しています。授業や講演は晩秋、冬、春にスケジュールを組むことが多く、私にとっては理想的です。おかげで夏の間に自由にハイキングできるのです。

ハイキングについて書いたり話したりするのはそれほど儲かる仕事ではありません。不安定な仕事でもあるため、私が選んだスタイルを他のハイカーにおすすめすることはありません。

というわけで、次のパートからは、あらゆるキャリアステージ、あらゆる職業のハイカーが、どうやって毎年のようにハイキングができるようになったかを知るべく、インタビューした内容をお届けします。


人生のなかでスルーハイクを優先させることに決めました。(パニッシャー&FEマイク)


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リズの友人でもあるパニッシャー(右)とFEマイク。コンチネンタル・ディバイド・トレイル(CDT)の南端にて。

スルーハイクを毎年の生活の一部にしたいのであれば、職業を捨ててサービス業や小売業のアルバイトとして働かなければならない……多くのハイカーたちはそう考えています。

私の親友のマイク a.k.a. FEマイクとナオミ・フデッツ a.k.a. パニッシャーは、スルーハイクの季節が終わるたびに仕事とキャリアに戻ることができるのを示すよい例となるハイカーです。

スルーハイカーになる前からキャリアを確立している人たちは、自分の選んだ分野で仕事をつづけることを選択するケースが多いです。そして多くのハイカーは、会社員ではなく個人事業主として仕事をすることで、これを可能にしています。

パニッシャーとFEマイクは、プロとして成功した後にスルーハイキングを始めました。二人とも、今でもその仕事をつづけています。スルーハイキングをしている最中は別ですが。

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ウルトラライト・スルーハイカーになる前の二人。クラシカルなスタイルでバックパッキングを楽しんでいた。

マイクとナオミの職業は、何年もの学校教育と専門教育、そして認定試験を必要とする仕事です。マイクは都市計画家として、ナオミはアクチュアリー(保険数理士)として働いていました。

スルーハイカーになる前、二人はそれぞれの会社で出世コースに乗っていました。でも、仕事を休んでパシフィック・クレスト・トレイル(PCT)に挑戦してみると、昇進よりも、毎年ロングトレイルをハイクできることの方が自分を幸せにしてくれると気づいたのです。

二人は、人生の決断の中でスルーハイクを優先することにしました。節約のために、家の規模も縮小しました。コストを下げるために都会から小さな町に引っ越しました。その小さな町は山の中腹にあり、玄関から出るとすぐにハイキングができるようになりました。フルタイム勤務の会社を辞め、自分たちの会社を作りました。

おかげで二人は、自分たちが働く時間を自由に決められるようになり、その結果、所属する会社の名前ではなく、仕事の質の方を重視する顧客を得ることができるようになったのです。

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PCTをスルーハイクしたときの二人。

マイクとナオミの成功の秘訣は、自分たちの人生で何を優先したいかを考えた時に、ハイキングを意識的に選んだことにあります。「会社に残って昇進することもできました」とマイクは言います。でも、代わりに彼らは、自分たちを幸せにする型破りな道を選んだのです。

二人は今でも、企業で働いていたときと同じように、技術的なスキルや専門知識を活用しています。でも今では、どの顧客といつ取引するかを自由に選択できるようになりました。毎年ハイキングをする自由があるのです。

約束された将来のキャリアからはずれることは、多くの勇気が必要です。マイクとナオミは、ハイキングのライフスタイルを実践してきた人たちのコミュニティにおける、すばらしい例なのです。

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コロラド州ボルダーにあるモンベルでトークショーをしたときのリズ。

今回紹介した2組は、スルーハイクと仕事の両立において、参考になる事例のひとつでした。いずれも、人生においてスルーハイクを優先しているのが、印象的でした。

後編では、1年で一気にトリプルクラウン(AT, PCT, CDT)を踏破したハイカーでもあるザ・プロディジーが彼の倹約生活について語ります。さらに、ウィンター・スルーハイクという冒険に挑んでいるアップルパイ&グリーンリーフのライフスタイルを紹介します。

前編の2組とは、また異なるスタイルですのでご期待ください。

TRAILS AMBASSADOR / リズ・トーマス
リズ・トーマスは、ロング・ディスタンス・ハイキングにおいて世界トップクラスの経験を持ち、さまざまなメディアを通じてトレイルカルチャーを発信しているハイカー。2011年には、当時のアパラチアン・トレイルにおける女性のセルフサポーティッド(サポートスタッフなし)による最速踏破記録(FKT)を更新。トリプルクラウナー(アメリカ3大トレイルAT,PCT,CDTを踏破)でもあり、これまで1万5,000マイル以上の距離をハイキングしている。ハイカーとしての実績もさることながら、ハイキングの魅力やカルチャーの普及に尽力しているのも彼女ならでは。2017年に出版した『LONG TRAILS』は、ナショナル・アウトドア・ブック・アワード(NOBA)において最優秀入門書を受賞。さらにメディアへの寄稿や、オンラインコーチングなども行なっている。豊富な経験と実績に裏打ちされたノウハウは、日本のハイキングやトレイルカルチャーの醸成にもかならず役立つはずだ。

(English follows after this page)
(英語の原文は次ページに掲載しています)

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Liz Thomas

Liz Thomas

2011年にアパラチアン・トレイルを女性の最速タイムで踏破した記録(当時)を持っていることで知られている。彼女はトリプルクラウンを達成しただけでなく、米国に15以上あるトレイルでのスルーハイクを経験し、今まで15,000マイル以上ものトレイルを歩いてきた。また、彼女はその経験をロング・ディスタンス・ハイキングのコミュ二ティに還元することにも熱心で、American Long Distance Hiking Assosication-West(ALDHA-West)のバイスプレジデンドも務めている。彼女がハイキングを本格的に始める前は、イエ-ル大学の森林環境学部で環境科学の修士課程を修了し、彼女が手がけた、ロング・ディスタンス・ハイキング・トレイルとその保護およびコミュニティに関するリサーチは、名誉あるDoris Duke Conservation Fellowshipの賞を受けた。スポンサーはAltra, Gossamer Gear, Probar, Vermont Darn Tough socks, Mountain Laurel Designs, Sawyer filters, Montbellで、アンバサダーとして活躍している。
http://www.eathomas.com/

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